日本一ソフトウェアから2020年7月30日に発売を迎えたNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『夜、灯す』のプロデューサー、菅沼 元氏と、月刊『コミックビーム』にて連載中のマンガ『繭、纏う』(まゆ、まとう)の作者、原 百合子先生の対談をお届け。

 両作ともに、少女たちの関係性を深く描いたいわゆる“百合”作品。それぞれが作られるまでの経緯や、制作の裏側について訊いた。『繭、纏う』の読者でもある菅沼氏と、ホラーゲームもよく遊ぶという原先生がくり広げる熱い百合トークにも注目! なお、この対談はオンライン通話にて実施したものだ。

『夜、灯す』

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発売日:2020年7月30日発売
メーカー:日本一ソフトウェア
価格:各6980円[税抜](7678円[税込])
ジャンル:アドベンチャー
対応プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4
『夜、灯す』公式サイト

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『繭、纏う』

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(『繭、纏う』第1話より)

作者:原百合子

月刊『コミックビーム』で好評連載中。単行本は3巻まで発売中。主人公が通う星宮女学園には、珍しい風習がある。卒業を間近に控える3年生は、長い年月を共にしたかけがえのない髪を切り、自らの手で制服をつくっていく……。美しい女性の“髪”と“制服”の美麗な描写が目を惹くガールズラブ作品。

『繭、纏う』試し読み(コミックウォーカー)

菅沼 元氏(すがぬま げん)

日本一ソフトウェア所属の『夜、灯す』プロデューサー。ふだんから百合作品に親しんでおり、本作は2019年に発売された『じんるいのみなさまへ』に続き、百合をモチーフにしたアドベンチャーゲーム2作目となる。

原 百合子先生(はら ゆりこ)

月刊『コミックビーム』にて、マンガ『繭、纏う』を連載中のマンガ家。同作は緻密な筆致で描かれる美しい髪が特徴的で、初の連載作品ながら多くのファンを持つ。菅沼氏も熱烈なファンのひとり。

『夜、灯す』は、ホラーが苦手な百合好きにこそ遊んでほしいタイトル

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『夜、灯す』メインビジュアル

――まずはゲームの話題からお伺いします。『夜、灯す』の開発の経緯についてお聞かせください。

菅沼日本一ソフトウェアは毎年夏にホラータイトルを1本リリースするという試みを行っているのですが、『夜、灯す』はそのホラー枠の2020年度のタイトルとして考えたタイトルです。

 また、私自身“百合”が好きなのですが、「コンシューマータイトルで百合×ホラーのアドベンチャーゲームって最近あったかな?」と考えたときに、パッと出てこないなと思いまして。そこで、ノリノリで企画を作り、社長の新川に見せたら「作っていいよ」と言われので、開発に着手しました。

――フットワークが軽いですね。

菅沼日本一ソフトウェアは新規タイトルを作るという意識が強いので、「新しい企画を考えたので見てください!」といったことが比較的やりやすい環境になっていると思います。

――企画がスタートしたのはどのくらい前なのでしょうか?

菅沼じつは昨年の春先くらいなんですよ。

――かなりのスピード感で開発が進んだのですね。初めて情報が公開された2020年4月の段階ですでにゲームの内容は仕上がっているように見えました。

菅沼情報を初出ししたタイミングであのときは、全体の8割くらいがはできあがっていて、細かな演出の追加や、バグ取りの作業に移っていた時期ですね。

――では、シナリオもかなり短期間で作られたのですか?

菅沼結果的に開発期間が短く済んだのは、最初に「今回はこういうテーマで作る」という根底のコンセプトをしっかり固めてから作り始めましたからだと思います。やはり、アドベンチャーゲームはシナリオがいちばんのキモですから。その分、作り直しなどもなく、スムーズに開発が進んだのではないかなと思います。

――世界設定やプロットなどは菅沼さんが中心になって作られていたのですか?

菅沼シナリオライターさんとコミュニケーションを密に取り、かなり議論を交わしながら作りました。シナリオライターさんが現実味のある世界観でのホラーが得意な方なので、そういった部分ではシナリオライターさんに助けていただいています。

――『夜、灯す』公式サイトを見たところ、一見ホラーっぽくないように感じますね。

菅沼百合×ホラーの作品を作るにあたって調べたのですが、百合が好きでゲームを遊ぶユーザーさんには、ホラーが得意じゃないという方が多いんですよ。実際、Twitterでも「『夜、灯す』ってホラーとしてどのくらい怖いんだろう、怖すぎたらできないな」という声を見かけました。

――ああ、気持ちはわかります(笑)。

菅沼『夜、灯す』でのホラーはある種の舞台装置というか、描いている主題は“怖いことが起きてからそれを乗り越えるなかで女の子どうしの関係性が変化していくこと”なので、むしろ、「百合は好きだけどホラーは苦手」という方にこそ遊んでいただきたいです。

 本作がホラーゲームを遊ぶことに一歩踏み出すきっかけになれるとうれしいですね。ただ、もちろん、ホラーゲームなので怖いシーンは怖いですし、バッドエンドだと人が死んでしまうようなこともあります。

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――原先生は、こういったホラー要素のある作品はお好きですか?

イイですね。バッドエンドはどのくらいヒドいんですか?

菅沼電車にひかれたり、校舎の屋上から飛び降りてしまう、みたいなものを用意しています。

ああ、イイですね……。

――お好きなのですね(笑)。

菅沼でもそれはバッドエンドなので、通常のエンディングでは出ないイベントです。

百合のシーンはどのくらい出てくるんですか?

菅沼序盤は少なめですが、各章に1回は入れていて、シリアスなシーンでも百合は入れるように心掛けました。

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――『夜、灯す』のストーリーはどのような内容なのでしょうか?

菅沼ネタバレになってしまうので細かいところは言えないのですが、“夜”という漢字と“灯す”という文字に対応するキャラクターがいて、ズバリ言ってしまうと“夜”は小夜子というキャラクターなんです。“灯す”のほうはゲームを遊ばないとわからないようになっているのですが、そのふたりの関係性が物語の根幹をなしています。

 ゲームをクリアーした後には「『夜、灯す』ってそういう意味だったんだ」と感じていただけるのではないかなと思います。

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キービジュアルにも描かれている『夜、灯す』の重要人物、小夜子。

――『夜、灯す』のタイトルは『繭、纏う』のオマージュとのことですが、『夜、灯す』という題名は、どのタイミングで決められたのですか?

菅沼まず、原先生、この度はタイトルのオマージュのご快諾をいただきありがとうございます。

いえいえ(笑)。

菅沼『夜、灯す』というタイトルが決まったのは、シナリオが全部完成して、誤字脱字のチェックをしているくらいのタイミングです。僕が個人的に“タイトル回収”という伏線の拾いかたがすごく好きなので、それを考えると、タイトルを決めるのは、逆にシナリオが固まった後で、そうなるように決めるのがまとまりやすいかなと。

――なるほど。ちなみにボツタイトルで覚えているものはありますか?

菅沼う~ん、あまり覚えていないのですが、仮のタイトルは『月がきれいな夜に』……という案だったと思います。

――それはそれでホラーアドベンチャーっぽいですね。その仮タイトルを付けた理由は?

菅沼社内からは、夏目漱石が英語教師時代に「I love you」の和訳として「月がきれいですね」と教えたという逸話から取ったとか、月や夜というホラーっぽいワードを入れたとか思われていたんですけど、じつはぜんぜんそんなことはなく、企画を考えた日の月がきれいだったからです(笑)。

――ロマンチックですね(笑)。

菅沼ほかにも、『闇夜のナントカ~~~』みたいなタイトル案はありましたけど、繊細さや美しさがないと思って候補から省きました。

――タイトルを決めるとき、『繭、纏う』のことは最初から意識されていたのですか?

菅沼『夜、灯す』はもとからタイトル候補の中にはあったんですけど、最初は「『繭、纏う』のマネをしすぎているんじゃないか」という良心の呵責がありました(笑)。それでもやっぱり、字面がすごくすてきだと感じて。

 それから、タイトルに読点が入っているゲームソフトってほとんどないんですよ。だから、お店に並んだときにこのタイトルの背表紙がズラーッと並んでいるとすごく目立つだろうなと。そういった理由からどんどん『夜、灯す』がお気に入りになっていきました(笑)。

――それでは、原先生は『繭、纏う』のタイトルはどう決められたのですか?

私も、いちばん最後の段階で決まりました。連載開始前、第1話が掲載される前月の次号予告ページで仮のタイトルを出すんですけど、その時点では『フラジャイル』という、“壊れやすい”などの意味があるフランス語を仮タイトルにしていました。

 それから約1ヵ月、本タイトルがなかなか決まらず、考えるうちにエロ本の名前みたいな候補ばかりになってしまって。

――たとえばどんなものがあったのでしょうか?

桃色制服』みたいな感じです(笑)。いいタイトルがぜんぜん思い浮かばなくて……。

――『桃色制服』(笑)。

決まったのは本当に最後の最後で、締切の10分前くらいに「『繭、纏う』ってどうですか?」と当時の担当編集者さんに提案してみたら「いいですね」と言っていただけて、ようやくタイトルが決まりました。読点は、難しい漢字が2文字並ぶので読みやすいようにということで入れています。

――『繭、纏う』という言葉はどのような発想で?

女の子は裏と表があるというか、表面上は笑っていても、心の中ではどう思っているのかわからないというところがあるので、その暗喩として『繭、纏う』というタイトルを付けました。

――表面上の部分が“繭”ということですね。菅沼さんは、本企画が動き出す前から『繭、纏う』のファンだったとのことですが、『夜、灯す』のゲーム内容で『繭、纏う』からインスパイアされた部分などはあるのでしょうか?

菅沼時代を感じさせるような、古きよき学校の伝統というエッセンスは『繭、纏う』にインスパイアされたところですね。あと、小夜子は髪がすごく特徴的な設定なので、『繭、纏う』を読み返しながら、「こういう風にすると髪がきれいに見えるな」と、すごく参考にさせていただきました。

『繭、纏う』は、繭から出ていく少女たちの物語

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――続いて、『繭、纏う』について原先生にお伺いしていきます。改めて『繭、纏う』がどんなマンガなのか、企画の発端などについて教えていただけますか?

もともと大学卒業後、マンガ家として生きていくつもりはまったくなかったんです。単行本を1冊出させていただいてはいたんですけど、私としては大学を卒業したらすぐにでも就職したいくらいの気持ちでした(笑)。だから、『繭、纏う』はそもそも短い連載として始まった作品なんですよ。

菅沼そうだったんですか。

もともと私はBLの作品が好きで、男性どうしの恋愛を描きたいという気持ちがあったんです。でも、当時の担当編集さんに「原さんは女性の心情を描くのがとてもうまいから、女性を中心にした作品を描いてみたら?」と言われて。じつは私自身も女子校出身ということもあり、最初は百合ではなかったのですが、女の子どうしの関係について描くようになりました。

菅沼原先生は女の子を描くときはどのようなことに気を遣われているのですか?

女の子どうしって、一を聞いて十を知るというか、言葉とは裏腹なことを言っていてもその裏が通じるときがあるんですよ。その裏の部分が伝わるという空気感は表現したいと思っています。

菅沼なるほど、勉強になります。

――『繭、纏う』は月刊『コミックビーム』での連載ですが、もともと『コミックビーム』編集部に作品を持ち込まれたのですか?  連載開始時、『ビーム』の雑誌の雰囲気からすると、「意外な作品が始まったな」と思っていたのですが。

もともとは『ハルタ』(※)という、『コミックビーム』の姉妹誌に持ち込みたかったんですけど、レーベルを間違えてしまって……。

※『ハルタ』……年10回刊行のマンガ雑誌。連載作品に『乙嫁語り』(作:森薫)や『ダンジョン飯』(作:九井諒子)など。誌名が変わる前は『Fellows!』という名で、コミックビーム増刊という形で生まれた。

――『ハルタ』に持ち込んだつもりが、『コミックビーム』の編集者に見てもらっていたと。

当時は『ハルタ』が『コミックビーム』のレーベルで単行本を出していたんですよ。それで、『コミックビーム』で連載されているんだと勘違いしてしまって。

 持ち込みのタイミングで、見ていただいた編集者さんに「うちで連載している作品なんですけど、よければ読んでみてください」って渡されたのが、おおひなたごう先生の『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』で、それを見た瞬間「あ、ヤバい、間違えた……!!」と気づきました(笑)。

菅沼めちゃくちゃおもしろい(笑)。

――でも、持ち込みに行って、原稿を見てもらっているタイミングではもう「雑誌間違えました!」とは言い出せないですよね(笑)。

はい(笑)。ただ、その時点ではほかの編集部にも作品を持ち込んでいたのですが、あまりいいお返事をいただけていなくて。そんな中、『コミックビーム』だけが「すぐにでもやっていただけるとうれしいです」と言ってくれたので渡りに船でした。

――まさかそんな経緯で連載が始まっていたとは……。

最近では若いマンガ家さんも増えてきましたけど、『コミックビーム』はベテランの先生が多いので、連載が始まったときは「私はここにいてもいいのかな……」と思っていました(笑)。

――菅沼さんと私は『繭、纏う』のファンで、内容も存じ上げているのですが、作品を知らない読者に向けて、改めて『繭、纏う』がどんな作品なのか、紹介してもらってもいいですか。

ひと言で言うなら“美しい髪にとらわれた女の子たちの花園”という感じですかね。

――……菅沼さん。この表現、最高じゃないですか?

菅沼最高です、いや、さすがですね。“美しい髪にとらわれた女の子たちの花園”。『繭、纏う』を布教するときに使おうと思います……僕が言い出したことにならないかな。

(笑)。

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――美しい髪を描くうえで、作画の際にはどういった点に工夫されていますか?

マンガを描く際のふつうの工程として、ネームの作成、線画の下書き、ペン入れ(線画の仕上げ)、黒ベタ(黒で塗りつぶす作業)、トーン(薄い影などを貼り込む作業)とあるのですが、『繭、纏う』の場合は、通常の工程をすべて終えた後に、“髪作業”という髪の毛をきれいにする工程が加わってくるんです。

――“髪作業”!(笑) 具体的にはどのようなことをされるのでしょう?

髪の艶を表現したり、髪の毛を1本ずつ入れていく作業ですね。力が入りすぎてスケジュールの進行を圧迫することもあります(笑)。

――髪の毛を1本ずつ……気迫を感じます。作業はデジタルですか?

フルデジタルですね。黒ベタとトーンはアシスタントさんに手伝ってもらいながらやるんですが、髪作業だけは私ひとりで黙々と、髪との対話みたいな感じで作業しています。

菅沼髪との対話……。あれだけ髪が美しく見えるのにも納得できます。すごい。

――女学校と制服、髪という作品の主題に据えられたモチーフがかなりユニークですが、その発想はどこから?

私は現代美術が好きで展示会を見に行くことも多いのですが、あるとき小谷元彦さんという方の作品で、実際に人間の髪で作られたドレスというのを見たことがあるんです。それがすごく心に残って。

――その作品から受けた印象と、「女性どうしの作品を描けば」という編集者からの助言が組み合わさったというわけですね。ちなみに、作品の大ファンだという菅沼さんが、『繭、纏う』を見つけたきっかけは?

菅沼日本一ソフトウェアは会社が岐阜県にあるのですが、東京に出張に行くことがよくあって。行き帰りの移動時間に読むために、いつも百合のマンガを買っているんですけど、あるとき、東京の本屋さんで『繭、纏う』の1巻を見かけまして。「なんでこれを見逃していたんだろう!」と思うくらい、もう表紙に一目惚れをしまして、すぐに買いました。出会えて本当によかったです。

――菅沼さんが好きなキャラクターは誰ですか?

菅沼僕はやっぱり、いわゆる“学園の王子様キャラ”の華かなぁ。

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『繭、纏う』第3巻書影。左が菅沼氏のお気に入りキャラクターの佐伯華。

ありがとうございます。『夜、灯す』には王子様キャラはいるんですか?

菅沼出てこないんですけど、主人公の十六夜 鈴のことを王子様だと思っている青柳 真弥というキャラクターがいます。

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主人公の十六夜 鈴(画像左)と、彼女に憧れる青柳真弥(画像右)。

――逆に、原先生は『夜、灯す』で「この子いいな」というキャラクターはいますか?

皇さんですかね。ツンデレキャラになりそうでいいなと思います。あと、舞原さん。ギャルの女の子はかわいいですよね。『繭、纏う』には出せないキャラクターです。

――『繭、纏う』世界の雰囲気観に、ギャルはちょっと合わなさそうですものね。

百合に出てくる性格のいい女の子がすごく好きなんですよね。

菅沼わかります……! 多様性を受け入れてくれるギャルはイイですよね。

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原さんイチオシの皇 有華(画像左)と舞原 累(画像右)。

――原先生は女子校出身とのことですが、『繭、纏う』では実体験をもとにした部分などもあるのでしょうか?

あります。“学園の王子様”は実際にいましたね。私の学校ではソフトボール部のキャプテンだったのですが、みんなから一目置かれていました。

――作中では、内部生がイチャついているところを見て一般生が「内部生のアレは慣れないわー」というシーンがありますが、ああいったこともあるのですか?

友だちと朝会から教室に帰っているときに、後ろを歩いていた子たちが「あなたたちさっきキスしてたでしょ」みたいなことを話していたことはありました。

――菅沼さん……最高じゃないですか?

菅沼最高です! 『夜、灯す』でも実際に女子校出身者に取材もしたのですが、“そういう話”もあると聞いて、「ああ、よかった」と思いました。

――ちなみに取材ではどのようなことを聞かれたのですか?

菅沼あまりゲームには入っていないのですが、“王子様はいるのか”ですとか、ゲームに筝曲部が登場するので、“筝曲部あるある”みたいなことを聞きました。

――筝曲部あるある(笑)。原さんは『繭、纏う』を作るにあたって取材されたことはありますか?

女子校に関する取材はしていないのですが、制服を作ることについては、どのような機材を使うのかなどを取材したり、制服の監修をしてもらったりしています。それから、学校は博物館明治村を参考にしながら描いています。

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こちらは『繭、纏う』のキャラクターたちが身にまとう制服を実際に作成したもの。シンプルながらも優雅なフォルムが美しい。特設サイトでは型紙も公開されている。

――『繭、纏う』はこれから連載が続いていくと思いますが、物語の結末はもう考えてあるのですか?

“個人としてどう生きていくか”という自己の確立を描いている作品なので、学園を出た後の生きかたをしっかり描ければなと思っていますが、あと2巻で終わらせて、就活をしたい(笑)。

――いやいや、次回作もお待ちしていますよ……!! 最後におひとりずつ、作品の注目してほしいポイントについてお聞かせください。

菅沼『夜、灯す』は女の子たちの関係性の変化を主題にしているので、そこにぜひ注目していただきたいです! それから僕としては、ゲームをプレイした後にタイトルについてどう思ったかを知りたいので、Twitterなどで感想をつぶやいていただけるとうれしいです。

『繭、纏う』は自分という“繭”から出られない、自分が何者になるかわからない時期の少女たちを描いた作品ですが、これからの連載では少女たちが繭から出る美しさを描いていこうと思います。ぜひ読んでいただけたらなと思います。