『NieR』シリーズの最新作にして初のスマートフォン向けタイトル『NieR Re[in]carnation(ニーア リィンカーネーション)』のクローズドβテストが、2020年7月29日(水)より開始される。本稿では、そのクローズドβテストに先駆けて、βテスト版をプレイできたのでそのプレイレビューをお届けしよう。

※ネタバレには配慮していますが、記事の性質上、多少のネタバレを含みますので、ご注意ください。

檻(ケージ)は予想以上に不条理な世界

 遙か未来が描かれた『NieR Gestalt/Replicant(ニーア ゲシュタルト/レプリカント)』。そのまた遙か未来の荒廃した世界が描かれたのが『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』であり、つまり前二作は地続きの世界が描かれた。

 だが、『NieR』シリーズとはいえ、本作は“檻(ケージ)”と呼ばれる異界が舞台であり、これまでの『NieR』シリーズとの物語的なつながりは不明。いままで以上に未知の世界が広がっていそうなイメージ。

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クローズドβテストでプレイできるのは、砂漠の城のような雰囲気を持ったステージ。外に怪物(!?)が見えるなど、檻(ケージ)はよくわからないことだらけ。
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変なジジイまで(でも、その話っぷりから推測すると、ちょっと切ないし不気味)。

 その異界でプレイヤーが最初に目にするのは、檻(ケージ)の世界に目覚めた少女。首輪や包帯が目を引くが、それにどんな理由があるのか――。

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白い少女 CV: 長江里加
彼女は気付けば檻(ケージ)の石の上に倒れていた少女。毎晩のように見る悪夢に苛まれている。
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よくわかんないけど進むしかない!

 そんなもやもやを抱えながら進めていくと、少女の傍らには“ママ”を自称する不思議な生物が。ママは目覚めた少女の傍らにいて、少女を導いてくれる存在。そんなママによると、少女は多くのものを失っており、それを取り戻すために、少女は檻の奥へ上へと目指していくことに。

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ママ CV: 原由実
“ママ”を自称する不思議な生物。檻(ケージ)について何かを知っているらしく、少女を導いてくれる。景色を楽しんだり周囲の装飾にちょっかいをかけたり、自由過ぎる一面も。
 本作のメインキャラクターデザインは『NieR:Automata』同様、CyDesignationの吉田明彦氏。白い少女はもちろん、オバケのようなシンプルなデザインのママも、すごくカワイイ! さすがのデザインです。
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ママも檻(ケージ)についてあまり詳しくない様子で、あまり頼れる存在ではない……かも。ちなみに、ママのボイスを担当している原由実さんは、先日第一子を出産され、リアルママになったとのこと。おめでとうございます。
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ちなみに、筆者が勝手に脚だと思っていたものは手!? それとも触覚的なモノ!? 何にせよ、個人的には今回いちばんのサプライズでした。
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黒き怪物 CV: 川原元幸
檻(ケージ)をさまよう謎の存在も。その姿は甲冑を着た騎士のようでもあり、物言わぬ虫のようでもある。何か目的があるようだが――。
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この黒き怪物は檻(ケージ)でいったい何を!?

 ちなみに、本作はスマホゲームでありながら、なんとフルボイス! ただし、クローズドβテストでは未実装という……。ボイスについては正式なサービス開始時を楽しみにしたいところ。 

少女とは別の人物たちのショートストーリーが別軸で展開

 物語(メインクエスト)は、章仕立てになっており、章ごとに檻(ケージ)に点在する黒いカカシのようなモノの世界に入り、4つのエピソードを紐解いていくことなる。

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ママが「黒いカカシ」と呼んでいるので本稿でもそれに倣いました。

 黒いカカシには武器とその武器にちなんだ物語が設定されており、プレイヤーが体験するのはその武器にちなんだ物語。つまり、メインクエストは、これまでのヨコオ作品では文字だけだったウェポンストーリー(※)がゲーム内のクエストとして楽しめるのだ。

※ウェポンストーリー……『NieR』シリーズのディレクターを務め、本作ではクリエイティブ・ディレクターを務めるヨコオタロウ氏の作品の多くには、武器などにそれぞれ4つからなるショートストーリーが設定され、最初はひとつしか読むことができないが、その武器を強化することなどで続きを解放できる、というお楽しみ要素が盛り込まれている。

 カカシの中の世界では、少女ではなく、そのウェポンストーリーで描かれる人物たちを操作することになる。檻(ケージ)とは違う人物、違う場所、違う時代の物語が描かれ、グラフィックもまるで絵本のような、とても味わい深いものに。

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クローズドβテスト中はネタバレを防ぐ意味で、ところどころ伏せ字に。
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童話を観ているよう。キレイ……。

 絵本の世界では、やがて黒い鳥のようなもの憑依(?)された敵と遭遇する。その黒い敵がこの絵本の世界の何かを歪め、バトルして倒すことでその歪められた何かを修復できるという。

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二人に対峙する男たちのひとりに、黒い鳥のようなのが……。そしてバトルへ。
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バトルは物語部分から一転して現代ふうなグラフィックに。というか、スマホのゲームでは最高峰では!?

 歪められた何かを修復すると、そのエピソードはクリアーとなり、カカシの中から檻(ケージ)へ。そしてウェポンストーリーも解放される。

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修復され、ウェポンストーリーが解放されたカカシは黒から白く。
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ひとつの章が終わると、この階段を上ってつぎの章へ。

 ちなみに、全武器に通常の(テキストだけの)ウェポンストーリーが用意されており、オトモ(いっしょに戦ってくれる味方)やメモリー(能力アップが可能)などにもちょっとしたストーリーが設定されている。

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ちなみに、キャラクターが装備できるのは、メイン武器、サブ武器、オトモ、メモリー。メモリー?
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味わい深いデザインをしているオトモのひとつ。オトモはサブクエストなどで入手できる。

簡単操作で『NieR:Automata』のバトルっぽい臨場感と爽快感

 今回、筆者がプレイできたのは3章まで(クローズドβテスト開始から数日後には大型アップデートで4章以降も追加されるとのこと)。その中でカカシの中の物語に登場したのは下のフレンリーゼ、リオン、ディミスの3人。バトルも基本、この3人が担当する(少女はバトルしない。少なくともプレイした範囲では)。

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フレンリーゼの左腕、左脚は義体となっており、その白い髪、黒い衣服の刺繍や羽をあしらった袖、そしてモーションも含めて、『NieR:Automata』に登場するアンドロイド“ヨルハ”を連想させる。また、時代はひと昔前、といった雰囲気だが、高性能で近未来的(に見える)義体があるなど、世界観はユニークでファンタジー。

 バトルでは通常攻撃、ウェポンスキル、キャラスキルの3つを使って攻撃していく。ウェポンスキルは時間の経過によりスキルゲージが溜まったら、キャラスキルはダメージを与える、もしくは受けると溜まるキャラゲージがMAXになると使用できる。また、オトモを装備するとバトル中に一度だけオトモスキル使用することもできる。

 操作は発動可能なウェポンスキルやキャラスキルのアイコンをタッチして発動するだけなので、とても簡単。発動可能なスキルは先行入力も可能で、先行入力により連続して攻撃をくり出すとコンボがつながり、コンボ数に応じてダメージの比率がアップする。そんな簡単操作のバトルにも関わらずキャラクターのモーションが『NieR:Automata』っぽくスタイリッシュでド派手。スマホゲームには珍しい臨場感があり、月並みだけれど爽快感は抜群だ。

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敵は動物チックなヤツらも。
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キャラが『NieR:Automata』っぽくカッコよく動く! 『NieR』っぽい天使文字のエフェクトもバンバンに。

 武器は、剣や槍、杖、銃、近接格闘などがあり、キャラクターのジョブ(のようなもの)によって、得意武器が異なる仕組み。ジョブはガチャを引くなどして、特定の武器を入手すると新たに解放される。

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スタート時は“リオン/病弱の亡命者”。
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ある武器を入手すると解放された“リオン/導国の亡命者”が解放。タイプによって得意武器だけではなく、キャラスキルやキャラアビリティも変わるようだ。
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キャラクターや武器、オトモ、メモリーなどさまざまな要素に強化可能な要素が用意されている。サブクエストにはダンジョン、曜日クエスト、ゲリラクエストなど強化素材などが入手できるクエストも多数用意されている。

『ニーア リィンカーネーション』はまったく新しい物語性の強い『NieR』

 なので、『NieR』を知らない人が本作に飛び込んでも、まったく問題なし。ただ、グラフィックの色味や音楽、カメラアングル、バトルのエフェクト、UIのデザインなど、味付け部分でそこはかとなくシリーズの匂いがプンプンするので、ファンは『NieR』らしさも堪能することができるはず。今回はプレイできなかったけれど、みんな大好きシューティングのミニゲームも用意されている様子ですヨ!

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『NieR』っぽいカメラアングルにより、知らない場所だけど、何だか懐かしい気持ちにすらなる。
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イクラ(弾)が飛んで来てもおかしくないアングル。

 また、『NieR』らしさといえば岡部啓一氏による音楽も外せないところ。今回の音楽は少年少女のウィスパー系のコーラスが入った楽曲が多く、『NieR』シリーズの雰囲気も残しつつ、檻(ケージ)の摩訶不思議さも際立たせる名曲ぞろい。通常バトル曲も低音が響くカッコよさでゾクゾクさせられる。早くサントラが欲しいところ。前述した通りイベントはフルボイスなので、イヤホンやヘッドホンなど音を楽しめる環境でプレイすると、よりのめり込めると思います。

 『NieR Re[in]carnation』は、ヨコオ作品の特徴であり魅力のひとつとも言えるウェポンストーリーが物語のベースになっており、『NieR』ファンはもちろん、さまざまなタイプの短い物語を絵本のような世界で手軽に楽しめるのはスマホのプレイスタイルにも合うに違いない。『NieR』は気になっているけど、いきなり家庭用ゲームでガッツリというのは気後れする……といったような方は、ヨコオワールドの入門編にもちょうどいいかもしれません。

 ただし、物語の内容自体は切なかったり、悲劇だったり、やるせなかったりといつものヨコオテイストなので、手軽ではあるけれど破壊力はそれなりにあるので注意が必要です。でも、絵柄のせいなのか、子ども声のコーラスとメロディーが響くのか、ショートストーリーがすごく刺さりやすいのか、というかそれら含めゲームのすべてが要因だと思うんですけど、すごく感動的なの。すごく感動的なんです。儚いし。綺麗だし。

 物語を楽しめるいままでにないタイプのスマホゲームなので、『NieR』ファンならずとも、かなりオススメです。