バンダイナムコエンターテインメントより2020年秋に発売予定が予定される『Until Dawn(アンティル・ドーン) -惨劇の山荘-』を手掛けたSupermassive Gamesにより開発された新作ホラーアドベンチャー『THE DARK PICTURES:LITTLE HOPE(リトル・ホープ)』。
本作は、数年にかけて複数本のタイトルをリリースするホラーアンソロジーシリーズ『THE DARK PICTURES』の2作目にあたる。今作では、放棄され孤立した町“リトル・ホープ”を舞台に、町の深い霧に閉じ込められた4人の大学生とその教授が、迫りくる“何か”に怯えながら生還する手段を模索するストーリーとなるようだ。
今回、本作のデモ版を体験することができたので、プレイレビューをお届けしよう。
結末を左右する選択肢と後戻りできない緊張感がたまらない
デモ版でプレイすることができたのは、とある一家を襲う悲劇的なストーリー。プロローグに当たると思われるデモ版の物語は、本作がどういったゲームなのかを理解するのにこれ以上ない題材だった。
ここで操作することになるのは、アンソニーという青年だ。仕事に問題を抱え酒に酔う父と、そんな父と言い争いを続ける母、不気味な雰囲気の末っ子ミーガン。険悪な空気の家庭を取り持つように、彼は動いていくことになる。
プレイヤーの選択次第でストーリーが分岐していく本作では、“モラル・コンパス”という文字盤に表示される選択肢を選びながら行動していく。会話の途中で相手に対しての返答を選ぶ場面があり、その返答次第で相手の反応が変わってくる。
ただ映像を眺めるだけでなく、相手の反応を窺いながら自分自身がストーリーに参加していく没入感が味わえるのはゲームならではの体験だ。
これが単純な会話分岐であれば気が楽なのだが、これはホラーアドベンチャー。ひとつの選択で、後々悲劇的な結末を迎えるという可能性も考慮する必要がある。
今回のプレイではそこまで大きな変化はなかったが、下した選択によって登場人物との関係性が変化していくのも本シリーズの特徴だ。大した問題ではないと気楽に行動を決めた結果が、後にプレイヤー自身を苦しめることになるかもしれない。
映像を見るだけでなく、自分でキャラクターを動かして周囲を探索するパートも緊張感が漂う。探索パートでは家の中にある日記や本などを読んだり、窓から外を覗いたりして周囲をじっくりと調べることができた。窓から外の覗くときの、何かが突然現れそうな絶妙なカメラアングルには思わず身構えてしまった。
ストーリーの途中には、タイミングを合わせてボタン入力をするクイックタイムイベント(QTE)も登場する。今回の場合、眠っている父親を起こさないようにゆっくり動き、テレビを消すという場面でこのモードに入った。
それほどシビアな入力が求められるわけではないが、絶妙な緊張感が手元を狂わせる。幸い、今回は失敗しても大した問題はなかったが、これがもっと恐ろしい場面……たとえば恐ろしい者から逃げている最中だと考えると、絶対に失敗は避けたいところだ。
ここまで紹介してきたような選択と探索、QTEが発生しながらストーリーを進めるのが基本的な流れとなる。選択やQTEはやり直しが効かないため、後戻りできないことを念頭に入れてプレイすることになるだろう。
なお、今回のデモ版では、前作『Man of Medan』同様に、ほぼ視点が固定される独特のカメラワークに。どことなく、古きよきホラーゲームの固定アングルを彷彿とさせる。ただし、デモ版では体験できなかったが、本作では基本的には自由なカメラ操作が可能になっているとのことだ。詳細は公開中のCEOインタビュー、およびプレイ動画を確認していただければわかるだろう。
プレイヤーを後悔に誘う絶望的な展開
本作は体験するホラー映画のようなテイストになっており、目が離せないそのストーリー展開も見どころだ。
泥酔する父、入浴中の母、脚立を使って屋根裏部屋で作業をする長男、ベランダに閉じ込められる長女、そしてガスコンロでお湯を沸かしながらその場を離れるアンソニー。ホラー映画を嗜む人であれば、つぎつぎと積み重なっていく惨劇への仕込みにニヤリとすることだろう。
案の定というべきか、アンソニーが外に出たタイミングで火事が発生する。さらには家から閉め出され、消火する余裕もナシ。突発的にも、計画的にも思えるこの火事をキッカケに、連鎖的に悲劇が起こっていく。
プレイヤーはアンソニーの視線を通し、目の前の出来事をただ見ていることしかできないのだ。当然、ここでも選択肢が表示されていくつかの行動は取れるものの、望む通りの結果が得られるわけではない。
すべてが終わった後、心に生じるのは後悔だ。あの場でミーガンを追っていれば、ガスコンロを調べておけば……それで結末が変わるかはともかく、もっと理想的な行動を取れたのではないかと思わずにはいられない。
終盤の選択肢はたったひとつの助言がとんでもない結果を残すこともあり、余計に後悔の念が増していく。畳みかけるように襲う絶望的な展開を、ただただ茫然としてしまう。
デモ版ではアンソニーの視点以外に、“Curator’s Cut”というモードが用意されており、こちらでは長女であるターニャの視点で遊ぶことができた。アンソニーと同タイミングでターニャがどう動いていたのか、別側面から悲劇を回避するための答えを探れそうなモードだ。
実際に悲劇を回避できるかはさておき、同じ時間・別の視点で物語を進めるこのモードは、アンソニー視点で選ばなかった選択を試すチャンスにもなる。別のキャラクターを操作することで得られた知識を活用すれば、生存への活路を切り開くことができるかもしれない。
火事が発生し、さまざまな出来事が起こった後にデモ版は終了。選択することの重み、少しの油断が悲劇を生む緊張感は、デモ版を通して十分に実感した。
わずかなプレイ時間でも感じられた、理不尽ににじり寄る恐怖。多角的に情報を集めることで悲劇を回避することができるのか、それとも逃れられないのか……。本編をプレイするのが楽しみになるデモ版になっていた。