任天堂は、2020年6月26日に開催された“第80期 定時株主総会”の質疑応答を公式ホームページに掲載した。株主からの質問に答えるもので、定期的に掲載されているものだが、今回は品薄が続くNintendo Switch本体の生産状況や、次世代ゲーム機の展望についての問い合わせに回答する内容などが掲載されているなど、ゲームファンにも注目の内容となっているため、抜粋してお届けする。

 なお、ピックアップしたもの以外にも、USJのスーパーニンテンドーワールドのオープン予定日が、当初の東京五輪前から変更になったことや、無料配信されたNintendo Switchでなわとびが体験できる『ジャンプロープ チャレンジ』が、配信10日でジャンプ回数5.9億回を突破したことなど、興味深い回答があるので、ぜひ全文を読んでほしい。

任天堂“第80期 定時株主総会”質疑応答

Nintendo Switchの生産状況は夏に改善

 新型コロナウイルス感染症の影響についての質問が多かった今回の質疑応答。その中で、任天堂の代表取締役社長・古川俊太郎氏は、「現在は概ね生産状況は回復してきており、今後は出荷数も増える見込みです、5月の決算発表の際に申しあげた通り、夏頃には生産活動を正常化できるというのが現時点での見込みです」と回答。

 これは、“2020年3月決算説明質疑応答”でも回答していた内容だが、当時は生産状況の改善について“徐々に改善の兆しが見えています”としていたのが、今回は“現在は概ね生産状況は回復してきており”と回答するなど、状況の改善は無事に進んでいる模様。

 一方、ステイホーム期間や『あつまれ どうぶつの森』のヒットによる需要増加から発生した本体の品薄については、“また、世界各地でNintendo Switchに対する高い需要が存在し続けているため、いつ品薄が解消するか、ということについてはお答えできる状況にはありませんことを、ご理解いただきたいと思います”と回答している。

Q2
『あつまれ どうぶつの森』がヒットして、Nintendo Switch本体が品薄状態になっているが、急激な需要増に対応ができておらず、大きな機会損失が生じていると感じている。生産体制や販売方法、需要予測について、今後の対応を教えてほしい。

A2
古川:
 Nintendo SwitchおよびNintendo Switch Liteの品薄により、大勢のお客様にご迷惑をおかけしていることをお詫び申しあげます。とくに(今年3月に)『あつまれ どうぶつの森』を発売して以降今日に至るまで、世界中の市場で品薄状態が断続的に継続しています。本体の精算は概ね回復してきております。ただ、製造してから店頭に並ぶまでの間には一定のタイムラグが存在し、また、世界各地でNintendo Switchに対する高い需要が存在し続けているため、いつ品薄が解消するか、ということについてはお答えできる状況にはありませんことを、ご理解いただきたいと思います。
 なお、生産体制ならびに需要予測等に対するご指摘に関しましては、真摯に受け止め、できるだけ早く状況を改善できるように努めてまいります。

Q3
新型コロナウイルス感染症について、現在どのような対策をして、社員を守り、事業を継続していこうとしているのか。人手沿道も在宅勤務を実施しているのか。実施しているのであれば、どのような業務に対して在宅勤務の許可を出しているのか。

A3
古川:
 新型コロナウイルス感染症の当社ビジネスへの影響は、大きく分けて生産、販売、開発業務への影響があります。まず生産に関しまして、2月に中国で工場の操業等が一旦停止しましたが、3月に入って(中国での)生産状況は回復してきました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響が世界各地に広がったことにより、生産に必要な部品の調達に影響が及び、5月まではNintendo Switchハードの生産に遅れが生じていました。現在は概ね生産状況は回復してきており、今後は出荷数も増える見込みです、5月の決算発表の際に申しあげた通り、夏頃には生産活動を正常化できるというのが現時点での見込みです。
出典:任天堂“第80期 定時株主総会”質疑応答

任天堂の次世代ゲーム機はどうなる?

 質疑応答では、たびたび新作ゲームや次世代ゲーム機への質問などが出てくるものの、だいたいは答えられないものとして回答を控えられることが多い。だが、今回は次世代ゲーム機への質問に対し、直接的には次世代ゲーム機に触れていないものの、現在のNintendo Switchがヒットしている要因や、次世代ゲーム機に活かすために実感したことなどが触れられている。すぐに任天堂の次世代ゲーム機が発表される確率は低いと思うが、こういった回答から任天堂が目指す次世代ゲーム機の姿を考えるのもおもしろいだろう。

Q7
次のゲーム機の展望について教えてほしい。これまでのハードは必ずテレビまたはスクリーンに映して何かをするという形であり、そこには限界というものがあると思うが、この限界を超えるようなハードを考えているか。

A7
古川:
 現行機であるNintendo Switchは発売から4年目に入ったところですが、普及の勢いが増している状況で、その背景には2つの要因があると考えています。一つはNintendo SwitchとNintendo Switch Liteという異なる特徴を持った2つのハードが存在しているということであり、もう一つはNintendo Switchという一つのプラットフォームに向けて当社の開発リソースを集中してソフトをつくっているということです。このような点を最大限に活かしながら、Nintendo Switchのライフサイクルを長期化していきたいと考えています。

取締役 上席執行役員 塩田興:
 当社のつくるゲーム専用機は、性能面(技術的なスペックの高さ)よりも、いかにお客様に楽しいソフトを気持ちよく遊んでいただけるかというところに力点を置いて開発しています。テレビにうつして遊ぶという観点につきましては、Nintendo Switchはテレビでも、ゲーム機本体のディスプレイでも遊べるため、これまでのゲーム機に比べてお客様の生活のあらゆるシーンで遊んでいただける機会が格段に増えたと思っています。Nintendo Switchを通して、お客様の生活の中にゲーム専用機がこういう形で入っていけるんだという新たな発見もこれまでに数多くありました。お子様やそのご家族の皆様がゲーム機を囲んで遊んでおられるシーンもソーシャルネットワーク上で見られ、私たちのゲーム専用機の価値を改めて実感しています。こうした経験を活かしつつ、将来のゲーム機をどういう形で発展させていくべきかについて、しっかり考えていきたいと思います。
出典:任天堂“第80期 定時株主総会”質疑応答