先日インティ・クリエイツよりNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、Steam(PC)向けに『Bloodstained: Curse of the Moon 2』が発表された。
ご存じの通り前作にあたる『Bloodstained: Curse of the Moon』は、五十嵐孝司氏が手掛ける探索型横スクロールアクションゲーム『Bloodstained: Ritual of the Night』のKickstarter内のストレッチゴールとして企画された、2D横スクロールアクションゲーム。8bit風に表現した、懐かしくも新しいグラフィックが特徴の1作だ。
その続編となる『Bloodstained: Curse of the Moon 2』が、満を持してリリースされるとのことで、気になっているファンも多いことと思われるが、シリーズを総括するArt Play五十嵐孝司氏とインティ・クリエイツのプロデューサー・會津卓也氏、ディレクターの宮澤拡希氏にインタビューを実施。Kickstarterのいち企画だった『Curse of the Moon』の続編が、いかに発売されることとなった経緯や本作の新要素、さらには開発にまつわる裏話などを伺った。
なお、『Bloodstained: Curse of the Moon 2』は、2020年7月10日に配信されることが明らかにされている。価格は1480円「税込」。
五十嵐孝司氏(中央)
ArtPlayの代表取締役兼エグゼクティブプロデューサー。本作では監修という形で関わっている。
會津卓也氏(左)
インティ・クリエイツの代表取締役。本作ではプロデューサーを務める。
宮澤拡希氏(右)
インティ・クリエイツのプランナー。本作ではディレクターを務める。
「1作目が売れたら続編も作りたい」と、一応言っておきますよね(笑)
――まずは本作発売の経緯を教えていただけますか。
五十嵐前作の『Curse of the Moon』はKickstarterのストレッチゴールの特典としてお約束したものでしたが、発売後は非常に評判がよくて、だったら続編も作ろうといった感じです。
會津リリースしたあとの販売の初速もよかったですね。大体ですが『Bloodstained: Ritual of the Night』の半分くらいは売れています。
――続編のお話はどちらから提案された形だったのでしょうか。
五十嵐會津さんからでしたよね。
會津そうですね。これはどんなゲームでもそうですが、「1作目が売れたら続編も作りたい」って一応言っておきますよね(笑)。1作目を作るときから「売れたら続編も作らせてください」とは言っていたので、今回提案させていただいた流れです。
――五十嵐さんは本作にはどのような形で関わられていたのでしょうか。
五十嵐前作と同様に、基本的にはインティ・クリエイツさんのほうでゲームを制作していただいて、それを監修するような形でした。
――改めてお話していただく形になりますが、『Curse of the Moon』自体は『Bloodstained』シリーズの中ではどういった位置づけの作品なのでしょうか。
五十嵐スピンオフ作品です。『Bloodstained: Ritual of the Night』との接点はありつつも、設定などもけっこう変わっていたりする、別世界の話が展開されるシリーズになっています。
會津スピンオフ作品なので、けっこう自由に作らせていただきました。
――そもそも、インティ・クリエイツと『Curse of the Moon』を作ることになったきっかけは?
五十嵐もともとインティ・クリエイツさんと『Bloodstained: Ritual of the Night』を制作していたので、その流れですね。ご存じの通り、インティ・クリエイツさんが得意としている部分と、我々が目指している部分との方向性の相違があり、『Bloodstained: Ritual of the Night』のほうは別の開発会社にお願いすることになったのですが、インティ・クリエイツさんは8bitのゲームに強い会社なので、そのまま継続してKickstarterのストレッチゴールでバッカーさんにお約束していた、8bitのゲーム(『Curse of the Moon』)を作っていただくことになった形です。
――『2』の開発にあたって、苦労された部分はありましたか。
宮澤ひたすら時間がなかったです(笑)。今回は前作よりも時間がありませんでした。
會津基本的に前作のときは構想期間が長かったんです。8bitのゲームを出すことは決まっていましたが、『Ritual of the Night』の発売が延びた兼ね合いで『Curse of the Moon』をいつ作っていつ出せばいいのかという部分がずっと謎だったんです。そんな中で、「このくらいに出すのがベストなんじゃないか」という話があり、それが宮澤に伝わったタイミングから発売までは短かったです。
――本作はさらに短かったということですが、なぜそうなったのですか?
會津本作に関しては「続編を作りましょう! これくらいのタイミングで出せたらいいですよね」と、私が設定した時間が単純に短かっただけです(笑)。制作時間自体は前作と変わらないですが、構想時間がとても短かったですね。
宮澤たいへんでした。続編のスケジュールを聞いたときは、「どうなっても知らないぞ……」と思っていましたから(笑)。でも続編でやりたいネタはもともと考えてはいて、なんとか全部入れることができました。
――具体的な制作期間としてはどのくらいだったのでしょうか。
會津構想を含めても、今年の2月からなので、4ヵ月半くらいですね。
宮澤なぜ完成したのか、本当に自分でも不思議です。
一同(笑)
――本作の開発の中で五十嵐さんは監修として関わられていたということですが、どのようなディレクションがありましたか。
會津キャラクターの性格付けの部分は五十嵐さんにすべてやってもらっています。「このキャラクターはこういうことは言わない」とか。
五十嵐新キャラクターを提案していただいたときも、設定を変えてくださいとかは話しましたね。
會津じつは、新キャラクターを提案するなかで、ボツになったキャラクターもいるんです。キャラクターはしっかりと五十嵐さんに監修していただいて、世界観として破綻のない形でご確認いただきました。
宮澤監修していただいたものをまとめて送ってしまうことも多くて、五十嵐さんが困っていることもありましたね(笑)。
五十嵐シナリオのボリュームも、最初は「前作と同じくらいです」と言われていたのですが、蓋を開けてみればものすごく多くて、監修がけっこうたいへんでした(笑)。
――では、前作を上回るボリュームだということですね?
會津やはりくり返し遊んでほしいので……。ただくり返すだけだとつまらないじゃないですか。本作ではくり返しプレイすることでつぎのエピソードが開放される作りになっているので、そのぶんストーリーが増えて多くなってしまった感じです。
――前作では一度目のクリアー後に、新たな展開を迎えて2周目に突入しますが、それとはまた違った感じになるのでしょうか。
會津前作と同じような形ではありますが、その部分をさらに強化した形になっています。
――『Curse of the Moon』の魅力のひとつとして、キャラクターを切り替えて能力を活かすことで難所を乗り越えられる絶妙なゲームバランスがあったかと思いますが、そういったレベルデザインを仕上げるのも時間がかかりそうですよね。
宮澤前作はそこまで並外れた性能のキャラクターはいなかったので、バランスは取りやすかったんです。でも本作は「インパクトのある新キャラクターを入れなくっちゃ」と思った結果、新キャラクターが強すぎてバランスを取るのがたいへんでしたね。最終的には、どのキャラクターも一長一短な能力になっていると思います。
新たに登場した2Pプレイならではの遊びかたも
――本作ではどのようなストーリーになるのでしょうか。
五十嵐1作目のあとのストーリーが描かれます。魔塔が出現したので、ドミニクが斬月に知らせにきたところから物語が始まります。
――新キャラクターについてお伺いしたいのですが、まずはドミニクからお願いいたします。
會津最初に斬月の仲間になるキャラクターがドミニクです。
五十嵐『Ritual of the Night』で登場したドミニクとは違う設定になっています。ですので、武器も槍を使うキャラクターで、性能的にはジャンプが得意だったり、上方向への攻撃ができたり、回復ができたりする万能キャラクターです。
會津とくに回復が強いです。能力で回復の実を出すことができて、キャラクターチェンジを使うと誰にでも使えるので、お世話になる機会も多いと思います。
五十嵐いないと困ります(笑)。
宮澤「こんなに強くていいんですかっていう感じですね。
――では続いて、ロバートはどんなキャラクターでしょうか。
會津元軍人で、いろいろな武器を扱えるキャラクターですね。
宮澤射程距離が長いので非常に強いのですが、ふつうの人間なので撃たれ弱いです。
――ロバートはどういったアイデアをもとに生まれたキャラクターなのでしょうか。
宮澤前作のキャラクターも最終的に登場するということは、じつは早い段階から決めていたんです。ですので、前作のキャラクターとの差別化を考えたときに、圧倒的にリーチの長いキャラクターを出そうというところで、銃を扱うキャラクターになりました。
――斬月との関わりとしてはどういうものがあるキャラクターなのでしょうか。
宮澤昔の戦友という立ち位置のキャラクターですね。
五十嵐戦いを終えた後、家に帰ったらたいへんなことになっていて、悪魔を憎むようになったというキャラクターです。
會津時代背景的に現代の武器は存在しないはずなので、宮澤もけっこう悩んでいました。手榴弾っぽい武器を使いますが、あれは手榴弾ではないんですよね。
宮澤手投げ弾という名称にしています(笑)。あと、本来ならマスケット銃は連射はできないのですが、ゲーム的には1秒に一発くらい撃ちたいので、“嘘リロード”として撃った後にクルっと回してリロードするんです。本当は、そんな風にリロードできない銃なんですけど。
五十嵐まぁ、武器の達人なので。
會津ロバートは難産ではありましたが、ナイスミドルなキャラクターにはなっていますね。
――続いて、ハチの紹介をお願いいたします。
五十嵐斬月がイギリスに渡ってくるときに助けたコーギー犬です。恩義を感じて斬月を追うのですが、途中で悪い錬金術師に捕まってしまうんです。それでも恩義を感じて、ゲームの途中で斬月を助けるためにやってきます。
會津こんなのが目の前に現れたら、斬月もビックリしますよね。
五十嵐「敵だ!」って思いますね(笑)。
――ハチはどういったアイデアから生まれたのでしょうか。
宮澤ロバートと同じく前作との差別化を考えたときに、デカいキャラクターを入れたかったんです。最初は魔物の力を持つみたいな設定を考えていましたが、それだとやらせたいことをすべて満たせられなかったんです。ですので、最終的に魔導アーマーを纏うキャラクターになりました。ただ、「魔導アーマーだったらこういうことをやらせたい」とか、「ゲーム的にこういう能力を持っていないと困る」というものを全部詰め込んだ結果、かなり強いキャラクターになりました。
――ハチはコーギー犬ということですが、これには何か理由があったりするのでしょうか。
會津やはり癒しがほしいなと思って、犬にしました。
――では、ゲーム中にも癒されるような描写があったりするのですか?
會津本作ではステージとステージのあいだに旅の様子を見せる寸劇が入っているんです。そこでハチは魔導アーマーの状態ではなく、ふつうの犬の状態なので、骨を投げられて取りに行ったりします。マスコットキャラクターみたいな感じですね。
――そして前作のプレイアブルキャラクターであるミリアム、アルフレッド、ジーベルも登場することが明かされましたが、変化した部分もあったりするのでしょうか。
會津前作のキャラクターは基本的には同じアクションにはなっています。とはいえ、新キャラクターがどれも個性的なので、前作のままの性能だと見劣りする部分は強化したような感じです。その最たる例が斬月で、前作よりも本作の斬月のほうがかなり強いです。やはり主人公はオールマイティーで使いやすいほうがよいと思うので、ほかのキャラクターに負けないパワーアップがされています。詳しくはプレイしてからのお楽しみということで。
――ストーリーも増えて、キャラクターも増えたということですが、ほかにパワーアップしている要素などはあったりしますか。
會津本作ではローカルマルチの2Pプレイが搭載されています。Nintendo Switch版ならおすそ分けプレイという形で遊べますし、プレイステーション4版とSteam版であれば、リモートプレイで遠距離の友だちといっしょに遊ぶことができます。これがまたおもしろいんですよ。
――2Pプレイでは、仲間になっているキャラクターから選択して、それぞれ操作するようか仕様なのでしょうか。
會津そうですね。ただ斬月だけは例外で、ふたりとも斬月でプレイすることが可能です。2Pプレイでは仲間が全滅したときにリトライポイントに戻る形になります。
――片方のキャラクターが倒れてしまった場合はどうなるのでしょうか。
宮澤片方が倒れてしまったら、生きているキャラクターの中から選んで、その場復活ができます。
――ソロプレイとアクション面で違いも出てきそうですね。
會津1Pの上に2Pが乗ったりすることもできます。たとえば、空が飛べるジーベルの上にロバートが乗って遠距離攻撃ができたり、ロバートの上に乗ったまま壁蹴りアクションで高い所に行って、そこから乗っているキャラクターがジャンプできたりとか。そういったひとりではできないアクションもできてしまいます。
宮澤ソロプレイのときと比べるとゲームバランスとしては破綻していますが、1Pプレイのときとは違って、何でもありな感じがすごく楽しいと思います。
――2Pプレイならではのいろいろな攻略方法が出てきそうですね。
會津あとはお互いのプレイヤーの場所までワープできるボタンがあって、落ちて死んでしまいそうになったときとかは、それを使って助けることができます。ですので、2Pプレイで「置いていかれたな」と思ったときはワープできますし、その機能を使ってショートカットなんかもできてしまうんです。スピードランみたいに最速クリアーしたいという方は、1Pで遊ぶときよりもさらに早い速度でクリアーできるので、“2Pプレイスピードラン”とかに挑戦してみてもおもしろいと思います。
――”2Pプレイスピードラン”という遊びかたはかなりおもしろそうですね。
宮澤見てみたいですね。たぶんひどい絵面になると思います(笑)。
會津(笑)。みなさん、”2Pプレイスピードラン”をやってみてください!
――あとは前作になかった要素として、下方向へ攻撃なども映像の中にありましたね。
會津ドミニクの槍で床下のものを攻撃したりとか、ハチのヘビースタンプで棘を粉砕したりですよね。
宮澤前作ではジーベルみたいに上方向へは強いキャラクターはいましたが、下方向に攻撃できるキャラクターはいなかったので、差別化も兼ねて下方向へ攻撃できるキャラクターを入れました。それにあわせて、本作では床を貫通して下に攻撃できるキャラクターじゃないと倒せない敵なども登場するので、ぜひ新キャラクターを活躍させてほしいです。
――前作ではストーリーを描く演出部分にもかなり力を入れていたように感じたのですが、演出部分は本作でも意識されたところだったりするのでしょうか。
會津演出は本作でも随所に入っています。ゲームの流れとしては、一周目が終わっても続きがあるような終わりかたになっていて、つぎのエピソードが解放されるという流れになります。それぞれのエピソードの最後には、前作のクライマックスのような演出は入れていますね。
ハチのかわいさに、制作陣も思わず弱体化をためらう
――五十嵐さんにお伺いしたいのですが、本作の完成版を遊ばれたときの感想というのはいかがだったのでしょうか。
五十嵐まだ最後までは遊べていないのですが、非常に操作性もよくて楽しかったですね。あと2Pプレイも遊んでみましたが、やはり2Pプレイはかなりおもしろいですよ。
――とくに気に入られた部分などはありましたか。
五十嵐ハチで地面の棘をバリバリ壊すのは気持ちよかったですね(笑)。
――先ほどハチが強いと話していましたが、やはりゲームバランスを取るうえでいちばん苦戦したキャラクターはハチだったりするのでしょうか。
宮澤間違いなくハチですね。
會津開発チームの中でハチを愛している人がものすごく多いんですよ。ですので、宮澤が「ハチを弱体化すると、チームのみんなが悲しそうな顔をするから弱体化できないんですよ」と漏らしていて、何を言っているのだろうと思いました(笑)。
――そんな裏事情もあったんですね(笑)。
會津やはりみんな、犬が好きなんですよね。
宮澤あと設定的にシンプルに強くて、どこも弱体化する要素がないというのもありました。
五十嵐ちょっと弱くすると圧倒的に弱くなってしまうんです。基本性能が高いがゆえに、弱体化するとなると操作性を悪くするような、嫌な方向の調整が入ってしまうことになるんです。そうなってしまうとゲームとしてのおもしろさが損なわれてしまうので、そこまで大きくは調整できませんでした。
會津そうなると遊ぶ側のストレスになってしまいますからね。
――少しバランス面は損なわれるとしても、ゲームとしての楽しさや手触りのよさを優先したということですね。あと、インティ・クリエイツさんから上がってきたキャラクターのビジュアル見られたときの印象はいかがでしたか。
五十嵐新キャラクターのロバートとハチを初めて見たときはやはり驚きましたね(笑)。ビジュアル的には最初のデザインだとゴシック感が足りていなかったので、そこは指摘させていだきました。
會津弊社がロボットを作ると、弊社が作っていた横スクロールゲームに登場していたロボットみたいな感じになってしまうんですよね(笑)。ですので、そうはならないように五十嵐さんと調整しました。
五十嵐ハチの雰囲気が、インティ・クリエイツさんのカラーがいちばん出ているキャラクターだなと思います。
――ちなみにそのゴシック感というのは、どういった要素のことを指しているのですか?
五十嵐機能性とは関係がない装飾の部分ですね。以前のデザインはもっと無骨な感じだったんです。
會津弊社がデザインすると、どうしても工業製品っぽくなってしまうんです。修正後はやはり以前よりもキャラクターとして映えるものになったので、さすがだなと思いましたね。
――では最後に、発売を楽しみにしているユーザーの皆さんへ向けて、本作のオススメポイントをひとことずついただけますか。
會津シリーズとして2作目なので、前作と同じように楽しめる作品になっているかなと自負しています。キャラクターを切り替えながら遊ぶ楽しさはしっかりと本作にも引き継がれていると思いますので、1作目を楽しめた方には絶対に喜んでいただけると思います。
宮澤2Pプレイがとてもおもしろいです! あと、前作の“ナイトメアモード”のエンディングまで見ていただいた方は、あのシーンを気に入ってくれている方がすごく多いと思います。前作では演出的なクライマックスがは2周目にあったのですが、本作ではかなり後のほうにクライマックスがあるので、何とかそこまでたどり着いてほしいですね。
五十嵐前作があって、『Bloodstained: Ritual of the Night』があって、本作はアナザーワールド的な立ち位置となっています。たとえば、ドミニクの意外な一面だったり、斬月の少しおもしろい部分が垣間見えたりするので、そういうゲーム以外の部分も楽しんでいただけたらうれしいです。