王道ファンタジーの物語や、ジョブを切り換えて戦うバトルが特徴の、スクウェア・エニックスのRPG『ブレイブリー』シリーズ。その家庭用ゲーム機向け最新作『ブレイブリーデフォルトII』が、2020年にNintendo Switch向けに発売予定だ。

3月末には先行体験版がサプライズ配信。キャラクターたちの掛け合いや、ジョブの特徴を活かして戦うバトルを、発売に先駆けて体験できた。先行体験版は現在も配信中なので、未プレイの人はぜひダウンロードしてみてほしい。
新たな世界で、新たなキャラクターたちを巡る物語が展開する。

 前作『ブレイブリーセカンド』から5年。世界観やキャラクターを一新して登場する本作について、企画・プロデュースを担当する浅野智也氏と、プロデューサー高橋真志氏に詳しく話をうかがった。

浅野智也氏(あさの ともや)

『ブレイブリー』シリーズの生みの親。『ブレイブリーデフォルトII』では企画・プロデュースを務める。

高橋真志氏(たかはし まさし)

『ブレイブリーデフォルトII』プロデューサー。これまでに『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)』のプロデューサーなどを担当。

※高橋氏の“高”の字は、正しくははしごだかです。

原点回帰を狙ったシリーズ最新作

――昨年末のタイトル発表、そして3月末の先行体験版の電撃配信に、驚いたファンも多いと思います。まず、本作が『ブレイブリーサード』という名前ではなく、『ブレイブリーデフォルトII』であることに驚いたのですが、どのような経緯で開発が始まったのでしょうか。

浅野タイトルの名前について詳しくお話しする前に、まずは『ブレイブリーセカンド』についてお詫びをさせてください。『ブレイブリーセカンド』では、多くの期待をいただいたにも関わらず、ファンの皆様の期待に沿いきれていない部分があったと感じております。『ブレイブリーセカンド』での反省が、いま僕らのチームが手掛けているすべてのタイトルの制作の根底に強く根付いています。

――そういったタイトルのひとつが、2018年に発売された『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)』だったのですね。

浅野はい。その反省を胸に、『オクトパストラベラー』の開発を進めていきました。当時、『ブレイブリー』シリーズの今後の展開は、正直きびしいと僕らは考えていました。それにも関わらず、スマートフォンのチームが、「『ブレイブリー』シリーズの新作を作らせてほしい」と言ってくれたんです。

――それが、2017年に配信開始された『ブレイブリーデフォルト フェアリーズエフェクト』なのでしょうか。

浅野はい。とてもありがたいお話でしたし、『フェアリーズエフェクト』はとてもいいスタートを切ってくれたので、僕らにとっては追い風となりました。いまなら、『ブレイブリー』シリーズの新作を企画できるんじゃないか。そう思ってプロジェクトがスタートしました。

――そこから、タイトルが『ブレイブリーデフォルトII』に決まるまで、どのような試行錯誤があったのですか?

高橋今回は、初心にかえって、初めて『ブレイブリー』シリーズに触れるユーザーの方にも100%楽しんでもらえるものにするために、登場人物や世界観を一新することは決めていました。新しいキャラクターたちの物語であり、かつ『ブレイブリー』の完全新作だと誤解なく伝えるためには、どんなタイトルにすればいいのかを考えまして……。

――シンプルに『II』と名付けたのですね。

高橋はい、『ブレイブリーアーカイブ』や『フェアリーズエフェクト』のようなパターンも考えたのですが、どうしても家庭用ゲーム機向けの新作に見えなくて。今回は完全新作かつ、シリーズの知識がゼロの方でも遊べるタイトルだとストレートに伝えるためには、わかりやすくナンバリングにして『II』がいいという結論に達しました。

浅野ちなみに、この企画を社内向けに説明するときは、「『ブレイブリーサード』ではありません。『ブレイブリーデフォルト オートマタ』です」と説明をしていました(笑)。

――オートマタというと、『NieR』シリーズですが……。

高橋NieR:Automata(ニーア オートマタ)』には自分もすごく感銘を受けていて。『NieR Gestalt(ニーア ゲシュタルト)』/NieR Replicant(ニーア レプリカント)』に続くシリーズ新作でありながら、登場人物や舞台を一新していますよね。「『ブレイブリー』シリーズの最新作もそうなんです」と、わかりやすく伝えるために仮で使っていました。そうして、社内向けには『オートマタ』と言いつつ、さてさて正式名はどうしようかと悩んでいたのですが、やはり『ブレイブリーデフォルトII』しかないなと。

――これまでの家庭用向け『ブレイブリー』作品では、サブタイトルに秘密が隠されていて、ファンのあいだで話題になりました。本作にもサブタイトルがつく予定はありますか?

浅野今回は、サブタイトルはつきません。『ブレイブリーデフォルトII』で正式決定です。

高橋本作は全世界同時発売ということもあり、早めのネタバレは避けられないと思うので、そのあたりのギミックを最大の見せ場に置くのは合わないと考えました。もちろん、サブタイトルのハードルがだんだん上がってきたこともありますが……(苦笑)。

――なるほど。ちなみに、登場人物や舞台を一新したということは、前作のキャラクターが登場することは……?

高橋ファンの皆さんに、変な期待をさせてしまっても申し訳ないので明言しますと、本作に前作のキャラクターは登場しません。

浅野登場させるかどうかはさんざん議論をしました。ファンの方たちは喜んでくれるかもしれませんが、先ほどお話しした通り、新しいユーザーの皆さんにも遊んでいただきたくて。知らないキャラクターが急に出てくると戸惑ってしまうと考え、今回は見送りました。

『オクトパストラベラー』100万本突破記念イラストが、1作目のエアリーの姿を模していたことで話題になったが、これはあくまでシリーズの展開を示唆したのみで、『II』にエアリーは出ないとのこと。では、『ブレイブリーセカンド』にて登場した新たなキーワード、次元管理官やブレイブリーソードといったものにまつわる話が描かれる機会は、今後あるのか? 浅野氏からは、「構想自体はあります。シリーズを応援していただければ、今後、お届けする機会もあるかもしれません」とコメント。エアリーが絡む世界の話の続きは、今後のシリーズ作に期待したい。

大人向けに作られた登場人物と世界観

――本作のストーリーや4人のメインキャラクターは、どのようにして生まれたのですか?

高橋前作までは少年少女の物語だったのですが、本作では登場人物たちの年齢を上げて、青年の物語を描こうと決めました。そのコンセプトから、全体のストーリーや4人のメインキャラクターを考えています。

――エルヴィスは35歳、ほかのキャラクターたちは20代であろうことが、先行体験版でも語られていますね。

高橋浅野チームのゲームを遊んでくださっている方々の年齢層は、僕らといっしょに歳を重ねていて。『ブレイブリーデフォルト』のときは20代、『ブレイブリーセカンド』で30代になって、『オクトパストラベラー』のときに30代中盤のイメージですね。そういった年齢の方たちが、自分の分身としてキャラクターたちを操作するときに、どんなキャラクターだと感情移入しやすいのかを考えると、少年少女よりも20歳ぐらいの青年のほうが、ふさわしいストーリーを描けるんじゃないか……そう考えて設定などを詰めていきました。

主人公である船乗りの青年セスと、亡国の王女グローリア。ふたりの出会いから物語は始まる。
学者のエルヴィスと、彼の護衛を務める傭兵アデル。エルヴィスは、“アスタリスク”と呼ばれる、不思議な力を持った石を探し求めている。

――先行体験版のクレジットには、シナリオ担当として、ファーイースト・アミューズメント・リサーチ(F.E.A.R.)の久保田悠羅さんと、クリーク・アンド・リバーの長井知佳さんの名前がありました。おふたりを起用した理由は?

高橋久保田さんは、『オクトパストラベラー』のときからのお付き合いになります。TRPGで培った、どっしりとした世界観を作る上で久保田さんが頼りになると考えて、今回もお願いしました。

――では、長井さんは?

高橋開発現場に近い視点でシナリオを書ける方を、ということで、本作の開発を担当しているクレイテックワークスのグループ社であるクリーク・アンド・リバーから参加していただきました。“シナリオのためのゲームではなく、ゲームのためのシナリオを作る”ためにと、シナリオ制作の経験が豊富な長井さんにお願いした次第です。

――シナリオに関しては長井さんが、久保田さんやプロデュースチームの皆さんと、開発チームのスタッフをつなぐ役目を果たすのですね。ところで先ほど、メインキャラクターの年齢を上げたとおっしゃっていましたが、キャスティングもそれに合わせていますよね。エルヴィス役の井上和彦さんなど、渋い演技がすばらしいです。

高橋はい、僕も大好きです(笑)。前作までに負けず劣らずのステキな方々にお願いしましたので、ぜひ未公開のキャラクターもご期待ください。

――イベントシーンでは、声優さんたちの巧みな演技はもちろん、登場人物の表情のバリエーションが増えていたのが好印象でした。キャラクターにピントが合っていて、背景の被写界深度が浅く設定されているのも特徴ですよね。

高橋ハードのスペックが上がり、演出に関してもできることが増えました。日本語と英語のそれぞれのセリフに合わせて口パクができるようになったのも、最新技術のおかげですね。

ますます洗練されたジョブシステム

――キャラクターデザインは、『オクトパストラベラー』に続いて、生島直樹さんが手掛けていますね。

浅野生島は、いきいきと取り組みつつも苦労していましたね。これまでは、ジョブのデザインを複数のゲストイラストレーターさんにお願いしていましたが、今回はすべて生島ひとりが担当しているので、量も多くて。

――すべてのジョブのデザインを、ひとりで!? それはたいへんな……。

浅野ゲストイラストレーターの皆さんに描いていただくと、それぞれの個性が感じられますし、華やかでよいのですが、今回は統一感を重視しました。

――本作のジョブの衣装は、モダンなデザインを取り入れているのが印象的です。

高橋『オクトパストラベラー』に登場するジョブは、剣士や踊子など、その世界観や風土に根付いたもの、一般の人々もその衣装を着て実際に生活をしていてもおかしくないデザインを心掛けてもらっていました。一方、本作はアスタリスクの不思議な力でジョブチェンジするものなので、多少ファンタジー色が強くなってもいいので“変わり映え”を意識してほしいと伝えました。それによって生島は筆が乗っていたようでも、逆に苦労しているようでもありましたね。

――デザインの幅が広がったからこその悩みですね。先行体験版では、新ジョブのヴァンガードが公開されましたが、ほかにどんな新ジョブが用意されているのか楽しみです。

浅野ヴァンガードのほかにも、もちろん新ジョブを用意しているのでご期待ください。

高橋とはいえ、モンクや白魔道士、黒魔道士といった既存のジョブも、デザインはもちろん、習得できるアビリティを変えるなどしていて、すべて新ジョブのつもりで開発を進めています。前作をやり込んだファンの方も新鮮な気持ちでプレイできると思いますよ。

ジョブを変えると、キャラクターの見た目が変わるのも楽しい。

――ジョブと言えば、前作までの“ジョブコマンド”のシステムが、サブジョブという名称に変わりました。仕様にも違いが?

高橋サブジョブに関しては、名前は変わりましたが、基本的にジョブコマンドのシステムと変わりません。メインとサブのジョブの組み合わせを考えるのが本作のおもしろさのひとつでもあるので、システムを大きく変えるのではなくて、組み合わせの選択肢をできるだけ増やして楽しめるように調整を進めています。

浅野本作は久しぶりの『ブレイブリー』シリーズのタイトルなので、どの要素を残して、どの要素を変えるのか。変えるにしてもどれくらい変更するのか。試行錯誤を続ける中で、新しいシステムを作っては壊す時期がありました。

高橋先行体験版に収録した要素で、前作との違いが感じられるのは、コマンド入力の仕様だと思います。前作までは、4人全員のコマンドを入力してから各自が行動していましたが、本作では個別入力になりました。これだけでも戦略が大きく変わってくるので、前作までとの違いを体感してもらえるとうれしいです。

――ジョブの醍醐味を感じられる、ベストな塩梅になっていると。

高橋『ブレイブリーセカンド』では新要素を詰め込みすぎてしまい、本来の目的であるジョブの組み合わせの楽しさや、ブレイブ&デフォルトの駆け引きが少しブレてしまったという反省があります。そこで本作では、核となる要素をしっかり楽しんでもらうことを目指しました。

――なるほど。とはいえ、いちユーザーからすると、未公開であろう要素が気になってしまって……たとえば、シリーズおなじみのオンライン要素は、今回はあるのでしょうか?

浅野「ない」とは言わないです(笑)。

高橋もともと『ブレイブリーデフォルト』のコンセプトが、“みんなで遊ぶひとり用RPG”でした。このコンセプトは本作にも受け継がれているので、みんなで楽しめる何かしらの要素はご期待いただけたらと。

前作を正当進化させたグラフィック

――先行体験版をプレイして、街やフィールドマップの描写が、パワーアップしていると感じました。

高橋ありがとうございます! 街に関しては、“絵の上を歩ける”という前作の開発コンセプトがありまして、それを正当進化させるなら「ペーパークラフトのような街にするとステキだね」と考え、いまの形に落ち着きました。ただ、その街の見栄えと比べると、開発当初のフィールドマップは見劣りしてしまって。それを解決するため、いろいろな方向性を探る中で、「鉄道模型のようなミニチュアの雰囲気にするといいんじゃないか」というアイデアが出て、いまの形で作り込んでいきました。

浅野そうしてフィールドマップのクオリティーが上がったので、何か遊びが欲しいという意見も出て。それで草を刈れるようにしてみたんですよ。

高橋草を刈ることで、たまにアイテムが入手できるようなっています。冒険が進むと、草のほかにも切り倒せるものが増えるかもしれませんね。

――つい、冒険をほったらかして草刈りに熱中しそうです(笑)。ミニチュアといえば、モンスターのデザインもミニチュアっぽいですね?

高橋おっしゃる通り、モンスターのデザインはミニチュア感を意識しています。前作よりも表現力が上がっているので、動きにも気をつかいました。

――先行体験版では、ウッドゴーレムのような強敵がフィールドに突如出現したので驚きました。製品版のフィールドマップでも、強敵と戦えるのですか?

高橋長い冒険になるので、もちろんウッドゴーレムより強い敵も出てきますよ。ただそのころには、主人公たちももっと強くなっているので安心してください。ちなみに、先行体験版のウッドゴーレムは特別に調整した状態なので、製品版ではふつうの雑魚モンスターとして登場します。名前や出現する場所も、ちょっと変わると思います。

――フィールドマップやモンスターとのバトルと言えば、Revoさんが手掛ける楽曲は、本作でもすばらしかったです。

高橋体験版にも収録されているノーマルバトルの楽曲は、『ブレイブリー』シリーズのつぎの作品を担当することになったときのために、以前から温めてくださっていたとお聞きして、ジーンとしました。乗りに乗って作曲してくださっているので、曲数は前作よりもかなり増えています。すでに楽曲のデモはすべて揃っているので、あとは収録を進めていくだけですね、自分も日々の楽しみにしているところです!

――今回の曲は、『ブレイブリーデフォルト』と比べると、大人っぽいといいますか、切ないテイストが増していると感じたのですが、皆さんからRevoさんに何かリクエストしたのでしょうか。

高橋プロジェクトのコンセプトや、キャラクター、シナリオ、世界観の設定などの膨大なテキストを読み込んでいただきました。が、その後はすべてRevoさんにお任せしていますので、受け止めていただいたゲームの印象がそのまま楽曲として表現されていると思います。

体験版にも決して手は抜かない

――浅野チームタイトルと言えば、体験版を配信するのが定番となっていますが、今回も最初から体験版制作を決めていたのですか?

高橋はい。体験版を出すことで、遊んでくれた方たちからフィードバックを受け取ることができますし、ほかにもメリットがあるんです。

――と言いますと?

高橋世間の目に触れられるクオリティーのパッケージとして、一度完成させられるという点です。ゲームを作るときは、優先順位を決めて開発を進めていくのですが、後回しにしていた作業にいざ着手してみると、想定以上に時間がかかってスケジュールが……なんてこともあって。体験版を作ると、パッケージとして一度完成させるまでに発生する問題点を洗い出せますし、それによって、「こうすればよかった」、「こうしたい」という開発メンバーの認識も再統一できますから。

浅野とはいえ、うちのように、体験版を丁寧に作るところは少ないと思います。体験版用にオリジナルストーリーを用意して、バランス調整も行って……というのは、なかなかたいへんです。

高橋体験版を遊んでいただくからには、短時間で登場人物やシステムのことを理解してもらわなければならないので。短時間のプレイでもジョブやアビリティをうまく使わないと勝てない難度に調整するのは、時間がかかりましたね。

――ところで『オクトパストラベラー』のときは、先行体験版の後に、製品版にデータを引き継げる体験版も配信されました。本作ではいかがでしょうか。

浅野製品版にデータを引き継げる体験版は、多くの方に喜んでいただけたので、本作でも前向きに検討したいと思います。

高橋アンケートで届いた意見が、これからの調整の大事な指標になります。ひとつひとつ丁寧に拝見していますので、今後ともよろしくお願いいたします!

※アンケートの募集は4月末をもって締め切りました。
たくさんのご協力ありがとうございます。皆さんからいただいたご意見を元に一生懸命開発中です!(SQEX高橋)