インディーゲーム賞IGFの今年の大賞候補にもなったAnalgesic Productionsのアクションアドベンチャー『Anodyne 2』(PC/Mac/Linux)が日本語対応。Steamでは1週間の記念セールとして20%オフの1640円で配信されている。

歪んだローポリ3Dの外の世界と2Dの内的世界で進む冒険

 本作の主人公ノヴァは、冒険の舞台“ニューザランド”一帯の秩序を司る“センター”によって生み出された“ナノクリーナー”。ナノサイズに体を縮小させて体内に飛び込み、住人たちを蝕む“ナノダスト”を除去するのがその仕事だ。

 ナノダストに侵されると、怒りっぽくなったり、忘れっぽくなったり、目的を見失ったりと、身体だけでなく心まで曇ってしまう。だからノヴァが2Dドット絵で描かれる彼らの心象世界に降り立ち、心のトゲを抜いていくのだ。

ノヴァは人々を救うために生まれてきた。
ナノダストは心まで蝕んでしまう。ノヴァの出番だ。

 ゲームは外の世界を探索する3Dアクションアドベンチャーパートと、そこで出会った奇妙なキャラクターたちの中に飛び込んでいく2Dのアクションアドベンチャーパートで構成されており、戦闘要素はほぼない。

 厳密に言えば後者にはダメージを与えてくる“敵”もいるのだが(前者にはまったくない)、基本的には限られた要素の中で特定のキャラを倒すなどの謎を解くと先に進めるようになるパズルの一環という性質が大きい。

 解法を間違えても部屋を出入りするたびにすぐに全キャラのリセットをできたり、体力回復を落とすキャラをくり返し倒すことで簡単に全回復できるといった辺りの設計からも、2Dアクションの戦闘に比重を置いているわけではないことがうかがえる。

体内パートに突入する前には音ゲー風に迫ってくる弾をガードしながら接近していくパートも。グラフィック、演出、セリフのあらゆる部分に染み渡っている、なんとも言えない奇妙なノリは特徴のひとつ。
体内は2Dドット絵のステージ。パズルアクション風に謎解きしながら進んでいく。

傷口を静かに優しく包みこむような物語

 このゲームの核を成しているのは、奇妙な世界を探索しながら味わう、痛みや歪みを受け止めてほぐしていくような唯一無二のストーリー体験だ。

 本作のスクリーンショットをいきなり見せられたら、その歪んだ荒いポリゴンモデルと薄汚れたようなテクスチャーを「汚い」と思う人もいるかもしれない(特にそれがPS1の頃のゲームの独特な味を狙っているのだとわからなければ)。

 あるいは、難解な詩的表現やメタ表現が突然連発されるテキストをいきなり読んだら、なにか気取ろうとして滑った、鼻につくゲームだと思うかもしれない。

 実際、本作はまったくもって万人向けではない。が、このまったくもって奇妙な世界で人々を救おうと健気に奔走し続けるノヴァの姿は、息が詰まる用な思いで今日を生きている人の一筋の救いの光となりうるものだ。これほど「届くべき人に届いてほしい」と思うゲームもそうない。

 音楽も素晴らしく、歪んだローポリ3Dの世界の中でふわふわと流れるシンセが、時折とてつもない美しさを描き出す(サントラはBandcampで試聴可能)。鎮痛剤(Anodyne)を飲んで祈るように横になった夜の静けさのように、心の曇りに染み渡っていく。

ノヴァの誕生から優しく見守るふたり。でもお母さんではありません。
怒りの底から聞こえてきた救いを求める声。泣くだろこんなん。

 なお前作『Anodyne』は架け橋ゲームズによる日本語ローカライズ版が配信中。ただし(繋がりがまったくないわけではないが)『Anodyne 2』は基本的には独立したゲームとなっており、本作だけプレイする場合でも特に支障はない。

 そして本作の家庭用ゲーム機版も夏の配信を目指して開発中とのことなので、気になる人は記憶にとどめておくといいだろう。