楽器演奏ゲーム『ロックバンド』シリーズなどで知られる洋音楽ゲーの雄、Harmonix Music Systems。その最新作である『FUSER』を先日遊んだのでご紹介しよう。本作は海外で2020年秋にプレイステーション4/Xbox One/Nintendo Switch/PCで発売予定。

新旧の海外クラブヒットをパートごとに自在にミックス

 さて『FUSER』は、オーディエンスの要望に応えて実在のヒットチューンをミックスしていくDJゲームだ。100曲以上の収録曲はドラム、ボーカル、コード、ギターといったトラックごとに分割されており、それを自在に組み合わせて演奏できるのが特徴となる。

 例えば、Lil Nas Xのヒット曲“Old Town Road”のラップパートに、ビリー・アイリッシュの“bad guy”のベースとファットボーイ・スリムの“The Rockafeller Skank”のドラムを乗せ、そこにクラッシュの“Rock the Casbah”のギターをぶっこむ、といった事ができる(曲がわからない人は「なんか鉄板の曲が揃っているらしい」と思って下さい)。

『FUSER』往年のクラブチューンからビリー・アイリッシュやLil Nas Xなどの最新ヒットまで、各パートを自在に組み合わせてミックスできるDJゲーム_02
各ステージでは、「『パーティー・ロック・アンセム』のドラムをかけろ」といった注文に応えつつプレイしていくことになる。

 テンポは自動で調整されるし、曲のキーなどもシステム側で最初から合ったものを提示してくれるので、その辺の音楽的知識は不要。DJが本能的に習得している16/64小節ごとの展開づけも、ゲーム上のUIに沿って行えば自然と行えるという寸法だ。

 各ステージでは「この曲のこのパートをかけろ」といったお題や、「ヒップホップが欲しい」とか「80年代モノかけてよ」といったリクエストに応えつつ、かなり自由にプレイしていくことができる。

 細かい部分は自由にアレンジしていいので、うまくいくとパーティーピーポーがガン上がり絶頂のフロアキラーが誕生というわけだ(自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、「とても盛り上がる感じになるので気持ちいい」という意味)。

最新のSTEMスタイルをゲームプレイで実現

 実在のクラブヒットを収録したDJゲームとしてはアクティビジョンが海外で発売した『DJ Hero』シリーズなどがあったが、それらの多くは“2台のターンテーブル(DJ向けレコードプレイヤー)をミキサーで切り替える”という伝統的なDJ手法をなんとかゲームに落とし込もうとしたものだった(ターンテーブルを模した専用コントローラーがあったほど)。

『FUSER』往年のクラブチューンからビリー・アイリッシュやLil Nas Xなどの最新ヒットまで、各パートを自在に組み合わせてミックスできるDJゲーム_01
『DJ Hero』シリーズではターンテーブル風の専用コントローラーがあったが、『Fuser』ではターンテーブルのメタファーを使わずにStemで構成しているので、普通のコントローラーのボタンだけで完結したプレイができる。

 実は本作、DJ文化の中でも比較的新しい“STEM”(※)でのプレイをゲームプレイで実現した形になっていて、DJ文化的にも最新かつ正しいゲームになっているのだ。(※本作の収録曲のように、曲がパートごとに分割して収録され自在に抜き差しできるようになっているデータ形態)

 しかもターンテーブルのメタファーを使っていないので、普通のゲームコントローラーで何も問題なくすべてをコントロールでき、ゲームの設計的にも理にかなっていると来ている。

 Harmonixは以前、専用カードとスマートフォン/タブレットを組み合わせた同コンセプトのトイ製品『DropMix』をリリースしており、その蓄積(と失敗)を活かしてテレビゲームの形に昇華させたのが本作なのだろう。

 なお、本作が出展されたボストンのゲームイベント“PAX EAST”で担当者に日本リリースについて聞いてみたが、「特にリリースしない国は決めていないので出るのでは」という曖昧な回答だった。

 日本で収録曲の著作権処理をちゃんと行って正式にリリースされるかは正直微妙だと思うが、専用コントローラーがなくソフトを入手してしまえば遊べるゲームなので、洋音ゲーマニアやパーティーピーポー寄りのゲーマーなどは要チェックと言えるのではないだろうか。