アメリカのボストンで行われたゲームイベント“PAX EAST”の3日目、プラチナゲームズが“101 Things You Didn't Know About PlatinumGames”(プラチナゲームズについてあなたが知らない101のこと)と題したトークセッションを開催した。
PAXでは97個の小ネタ+4個の発表を公開
さて101もの内容を時間内に話せるのか……と思いきや、97個は某有名映画シリーズの冒頭のイントロ風のテキストロール動画で一気に消化。残り4つが本題として話されることに。
98個目:『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン:リマスタード』
さてその本題、まずはKickStarterでのクラウドファンディングの成功を経て、6月11日にNintendo Switch/プレイステーション4/PCでの日本発売が決まったアクションゲーム『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン:リマスタード』から。
オリジナル版が残念ながら商業的に成功したとは言えない中で、稲葉氏と神谷氏がなんとかもう一回世に出して遊んでもらう機会をふたたび作り出そうと目指してきたという本作。
実現の方法としてクラウドファンディングを選んだのは、どれだけの人が好意的に受け止めてくれるかを確認したいという意図があったという。結果としてクラウドファンディングは初日で目標額をクリアー。当時の社内の様子をにこやかに語る両氏からは、本当にファンの支えを喜んでいる様子が伺えた。
ちなみに、これまでパブリッシャーがIPを所有する形で作品を開発してきたプラチナゲームズの場合、関連グッズはパブリッシャーやパブリッシャーに商品化提案するメーカーがあってのことだったが、今回クラウドファンディングの支援者向け報酬を理由にグッズを作れるのも楽しかったそう。
なお、クラウドファンディング自体はまだ実施中。その後の追加ゴールの達成により追加モードの制作なども決まっているので、「そういえば忘れてた」という人は出資を検討してみてはいかがだろうか。
99個目:東京開発スタジオ
お次は4月に東京に開設されるという開発スタジオ“プラチナゲームズTOKYO”について。
これまでさまざまなパブリッシャーと組み、精力的にタイトルをリリースしているように見えるプラチナゲームズだが、「やりたいことがいっぱいある」(稲葉氏)中で、これまでプロジェクトを諦めたり断ったりすることも多々あったという。
東京スタジオの増設はそういった状況を変え、「人を増やし、これからも新しいチャレンジをやっていく決意の現れ」だと語られていた。
100個目:自社パブリッシング進出
そしてここまでの流れと繋がってくるのが、ファンとの間にパブリッシャーを挟むのではなく、直接発信していく自社パブリッシングへの進出だ。
稲葉氏は「この話はピンと来ないかもしれないけど、ここで伝えたいメッセージはひとつだけです」と前置きして、自社パブリッシング進出の意図について「僕たちは、よりユーザーのみんなと近い距離で、自分たちの思っていることを直接伝えるために、自分たちの作っているゲームを直接皆さんの手に届けるためにこの道を踏み出したという気持ちです」と説明。
101個目:オリジナルIPでの自社パブリッシング進出第1弾タイトル『プロジェクト G.G.』
じゃあ何をやるのか? というのが最後の項目の『プロジェクト G.G.(仮題)』だ。本作は先日ティザー動画とともにプロジェクトの開始が発表され、話題を呼んだ。
本作はプラチナゲームズが権利を持つ自社パブリッシングタイトルの第1弾となり、稲葉氏プロデュース&神谷氏ディレクションというタッグでは、『ビューティフル ジョー』、『大神』、『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン』に続く第4作となる。
そしてティザー動画に出ているように、どうやら巨大ヒーローが出てくるらしい本作、『ビューティフル ジョー』(ライダーのような単独ヒーロー物)と『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン』(戦隊シリーズのようなチームヒーロー物)と一種のヒーロー物三部作をなすような存在になっているという。
ちなみに本作、ティザー動画にはいろいろと秘密が仕込まれているらしく、Twitter等で推測などを書き込むと(それが違っていても)採用されるかもしれない……とのことなので、「ここがもしこういうことだったら最高なんじゃないか」という意見がある人は書き飛ばしてみるといいんじゃないだろうか。
“プラチナゲームズ第4の星”は思わず呆気にとられるもの?
その後、連日行われていたサイン会も終えた両氏にインタビューを行った。『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン:リマスタード』で追加ゴールとして決まった新たなモードはどんな内容になるのか、そして“Platinum 4”と題されたサイトで残された“4番目の星”には何が来るのか?
――まずは今回PAXに出展ということで、イベントの感想などはいかがですか?
稲葉ボストンのPAXは初めてですけど、お互いシアトルのPAX(PAX WEST)には来たことがあるので、ユーザーが濃いイベントだというイメージはありました。
ただこれまではほとんどパネル(講演)だけで、出展関係で来たことはないので新鮮でしたね。ブースを出すというのも会社として初めてですし。
めちゃくちゃ濃いユーザーイベントだからこそ、より楽しめているというのはありますね。結構前に出したゲームでもいっぱい人が並んでくれるというのはうれしいね、と神谷とも話していました。
――ちなみにイベント出展ということであれば、ビットサミットでフィギュアを販売されたりしましたね。
神谷物販ではワンフェスにも出したりもしましたが、ゲームの出展では本当に初ですね。
稲葉今回は本業(ゲーム)での出展なので、感慨深いものがありますね。
『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン:リマスタード』について
――『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン:リマスタード』クラウドファンディング成功の感想を。
神谷ひとまずほっとしたというか……ちゃんと101ファンっていたんだなと。
稲葉本当に冗談抜きで心配だったんですよね。どれだけバッカー(支援者)がいるのか、イニシャルゴール(目標額)を達成しなかったらすげぇかっこ悪いなとか、いろいろ不安がありました。
――発表時には「クラウドファンディングしなくても出せるのでは」といった反応もありましたけど、今日話されていた、どれだけファンが支えてくれるか確認したかったという意図は結構納得がいきました。
神谷そういう反応もありましたけど、ごく少数でしたね。もっと来るのかと思っていたんですけども。暖かく迎えてくれる声が多かったですね、意外にも。
稲葉なので1億円突破を社内でお祝いした際も「みんな集まれ」とかやっていたんじゃないんですよ。誰かが「そろそろ突破しそうだぞ」というので表示し始めたのを自然とみんな集まってきてモニターを眺めていて。
神谷KickStarterのおかげでグッズもいろいろ作れたので、ありがたいですね。こんなにいろいろフィギュアまで作れるってほとんどないので。
稲葉グッズってやっぱり、ゲームがめっちゃ売れないとなかなか作れないですから。
――これは自社パブリッシングの話と繋がってきますけど、グッズが出るかもパブリッシャーの意向が関わってきますからね。
稲葉それもありますね。『ベヨネッタ』とかでも、そんなにグッズの数があるわけではないんですよ。
神谷結局「グッズを作らせてください」と持ち込むさらに外の会社(グッズのメーカー)があってのことだったりもするし、自分たちで「じゃあフィギュアを作ろう」と動けることはあまりないので、それが今回いろいろできたなと。
稲葉グッズまみれになれましたね。
――クラウドファンディングの追加ゴールとして“Luka’s First Missionモード”というのが達成されていますが、これは新しいコンテンツになりますよね?
神谷そうですね、もうちょっと世間に騒いで欲しいんですけど(笑)。『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン』のコンテンツ自体はすでにパンパンなので、リマスターでそこになにか足すということは考えていなかったんです。
それで追加ゴールで何を用意するとなった時に、「ステージを足すとかキャラクターを足すのではなくて、それなら別のものを作ったほうがいいんじゃないか」となりまして、いろいろ考えた末に「横スクロールって面白いよね」というので見切り発車ですよ。
稲葉何も決まってないですよ(笑)。
――説明には一応“横スクロールのアドベンチャー”と書かれているので、「アクションじゃなくて完全にアドベンチャーゲームなのか?」と思ったりもしたのですが。
神谷うーん、アクションではあると思いますよ。あれはルカの冒険(アドベンチャー)という意味でですね。
実際どういうものになるかはこれからなんですけどね。海外のユーザーが「横スクロールということは『ビューティフル ジョー』の精神的続編じゃないか」みたいなことを言い出したのを見て、逆に「なるほどな、その線で考えてみるか」と思ったぐらい、まだこれからなんですよ。
稲葉あのあたりはピュアに「達成したら考えましょう」ということで、最初から仕込んでいるわけじゃないんです。
――ではもう、プログラム的にも本編とは別に?
稲葉別ですね。まぁ、どこかのメニューから起動はするんでしょうけど、それでまったく違うゲームが始まるのはダウンロードコンテンツと言えるのかどうか(笑)。
――フルオーケストラで曲を収録するという項目も達成する可能性がありますが、その場合は支援者特典のサントラ盤には収録されるのでしょうか?
神谷それは入れたいですね。でもフルオーケストラでやるのは2曲です。特に人気の高い曲で、ちょうどいい具合にゲームの中でも回数かかるものがあるので、これをやったらどうかという話をしています。
――ちなみに日本だけ少し発売が遅れるのは……?
稲葉単純に流通や製造の仕組みの違いと思ってもらうのがわかりやすいと思います。今回クラウドファンディングをやる上で、海外の方がそういったパートナーシップがスムーズに行ったんですね。
日本はそこに少し手間取ってしまって、日本でもパッケージを出したかったので諦めずにやったのですが、結果的に少しずれてしまって申し訳ないです。
『プロジェクト G.G.』について
――次に『プロジェクト G.G.』について。まったく新しいジャンルを目指すという事ですけども、こちらもアクションはするんですよね?
神谷アクションはしますね。
稲葉わかりやすい例で言うと“アクションRPG”みたいなジャンルがあるじゃないですか。それは昔のコマンドバトルのRPGみたいなものがあった上でこうやるという事だと思うんですけど、そういう意味では“アクションなんとか”とか“なんとかアクション”にはなると思います。
神谷僕が過去に作ったゲームだと、『大神』にはアクションの手触りがありますけど、あれは“アクションゲーム”ではないと思うんですよ。
――つまり、アクションはするけどもそれ以外の要素があって、それがまた新しいプレイのコアを形作るかもしれないというような。
神谷そういうことですね。
稲葉そこが多分、予想をだいぶ超えると思いますね。
――巨大な姿に変身するキャラクター、あれはティザーとしてのイメージなんでしょうか、それともモヤの向こうに正式な姿があるんでしょうか?
稲葉どうなんですかねぇ……。あのPVにはいろいろな謎が隠されています。
神谷どうなんでしょうねぇ……。でも、キン肉マンの悪魔超人で、次の号になるとぜんぜん違うちゃんとした奴が出てきたりしたじゃないですか。そういうレベルの“嘘”まではついていないです。
自社IPや新スタジオについて
――自社IPを育てていくという話の中で「2年ぐらい前に準備が整った」という表現をされていましたけど、実際どういうことなんでしょう?
稲葉あそこで言った“準備”というのは、社内で「自社IPでやろうぜ」という意思決定をしたということですね。
意思決定をしてからがいろいろ大変で、実際作るためには開発ラインも資金も用意しなければいけないので、なかなかそういうところに紆余曲折があって、なかなか自社IPをやると発表できなかったという感じですね。気持ちは決まったけど、時間が必要だったと。
神谷資金ができたから準備できたとかではなくて、時間の流れとしては「この先こういうタイミングで自社IPを実現していくには、そろそろここで企画書が必要だよね」という算段をつけたということですね。
――また東京スタジオでは運営型のゲームを手掛けるという話がありますが、これはどういったものをイメージすればいいのでしょう? パッケージのあるゲームでも運営型のこともありますし、基本プレイ無料でということもあると思いますが。
稲葉そこはスタイルを限定しているわけではないです。やっぱり僕らは売り切り型のゲームをずっと作っていたので、もうちょっと長く世界に浸ってもらう、ずっとそこに居続けるようなゲームを作りたいよねという気持ちがあるんですよ。あくまでそういう意味です。
なので、基本プレイ無料がそれに適しているのであればそうするかもしれないですし、『GTA Online』みたいに売り切り型のゲームでもずっとやっているものはありますし、ずっと遊んでもらえるタイプのコンテンツにはいろんな形が出てきていると思うので、そのどれかにこだわっているわけではないです。
“4つ目の星”について
――“Platinum 4”の4つの星ですが、101リマスター、自社パブリッシング、東京スタジオと、3つまでは立て続けに発表されました。4つ目はどうでしょう?
稲葉……出す日は決まっています。そんなに遠くないと思いますよ。いつかは言えないですが、むちゃくちゃお待たせすることはないでしょうね。
――それはゲーマー向けの内容なのでしょうか、業界向けの内容なのでしょうか?
稲葉両方じゃないですかね? 「……は?」って言うと思います。
神谷激震が走ると思いますよ。我々の真骨頂というか。「あ、これがプラチナなんだな」という。
稲葉人間、驚くと本当に二度見することがあるじゃないですか。「は? えっ?」って。
――では「あぁ、そういえばプラチナってこうだったわ!」となるのを楽しみにもう少し待てば何かがあると。
稲葉そうですね。あぁ、こいつらやっぱりこうだったわ、と。