日野晃博(ひのあきひろ)

レベルファイブ代表取締役社長/CEO。プログラマー、シナリオ、ディレクター、プロデューサーとして数々のゲーム制作に携わり、『妖怪ウォッチ』、『イナズマイレブン』、『二ノ国』など、大ヒット作をつぎつぎと世に送り出している。現在も『妖怪学園Y』や『メガトン級ムサシ』などの新作を展開中。古参の『FFXIV』ハードプレイヤーでもある。

吉田直樹(よしだ なおき)

スクウェア・エニックス 取締役/執行役員第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。

 レベルファイブが手掛けるスマートフォン用のRPG『ファンタジーライフ オンライン』(以下、『FLO』)。レベルファイブの日野晃博社長は、古くからの『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)プレイヤーとしても知られています。日野氏はスクウェア・エニックスの吉田直樹氏との親交も深く、これまでに『FLO』にて『FFXIV』とのコラボイベントを開催し、『FFXIV』ファンも驚くほどのクオリティーで蛮神“タイタン”とのバトルを再現してみせました。

 そんな『FFXIV』コラボイベントですが、2019年末から2020年の始めにかけて、第2弾として蛮神バハムート・プライムとの壮絶なバトルが楽しめる“大迷宮バハムート”が開催中です。これがまたしても異常なまでの再現度に、現在両タイトルのプレイヤーを大いににぎわせています。

 今回、これまでのタイタン、バハムート・プライム戦のコラボイベントが、どうしてこんなにまでも高品質な再現度で実装されたのか。その謎に迫るべく、日野社長と吉田氏への対談を依頼! 多忙を極める両氏を直撃することに成功しました。

 吉田氏に『FLO』コラボを初プレイしてもらった感想も交えつつ、やがてふたりの話題は、『FFXIV』の思い出話から、いまのゲームプレイのための“時間”についてのつれづれなるゲーム談義に……。日野氏の『FFXIV』への深すぎる(?)愛情。そして、これまでに培われた吉田氏と日野氏の友情と、オンラインゲームへの考え方までもがチラリと垣間見えた対談をお届けします。

『FLO』と『FFXIV』のコラボ企画第二弾は、2020年1月16日まで開催中の“大迷宮バハムート”コラボイベント。オンラインのマルチプレイで、圧倒的クオリティーで再現されたバハムート・プライムとの死闘が楽しめる!
2020年1月6日より、3段階用意されたコラボイベントの最高難度“テラフレア”が開幕中。“アク・モーン”などさらに熾烈な攻撃をくり出すバハムート・プライムに挑戦できるのはいまだけ!
『ファンタジーライフ オンライン』公式サイト

バハムートとタイタンの“2大象徴”が最難関として揃い踏み?

──2019年7月の『FFXIV』コラボイベント“タイタン襲来”に続いて登場が予告されていた、“バハムート・プライム襲来”コラボ……いよいよ始まりましたね。2020年が明けて、1月6日からは、最高難度の“大迷宮バハムート テラフレア”も解禁されています。

日野そうですね。『ファンタジーライフ オンライン』(以下、『FLO』)のコンテンツにおいて、『FFXIV』に登場する敵とのバトルコンテンツは高難度なのですが、なにしろバハムートですから。まさに最難関という位置づけです。

吉田他社さんのタイトルとのコラボでは、たいていできるだけ多くの方に触れていただきたいと思うはずなのですが……このあたり、我々の考えかたがちょっとおかしいですよね。コラボの要素を最高峰のコンテンツとして入れてしまうなんて。しかも、タイタンとバハムート・プライムですよ?(笑)

『FLO』と『FFXIV』の初めてのコラボイベントは、蛮神“タイタン”とのバトルが驚異の再現度で楽しめた。タイタンの“ランドスライド”を喰らうと、ステージから落とされてしまう恐怖が、当時のメインビジュアルでも表現されている……! じつは背景にはバハムート・プライムの姿も。
開催中のバハムート・プライムとの決戦を描いた、コラボのためのイメージイラスト。

日野バハムートとタイタンは僕の中での『FFXIV』の“2大象徴”で。なので、『FFXIV』のプレイヤーが『FLO』とのコラボに触れたときに、うれしさを感じてもらうために、象徴的かつレイドのおもしろさを感じることができるようなテーマを選びたかったんです。

──それで、タイタンとバハムートとのバトルを題材にされたと。

日野コラボはタイタン戦で始まったのですが、僕も『FFXIV』で最高峰の難度で毎回展開している最新のレイドコンテンツを楽しませてもらってきました。その中で、いちプレイヤーとして体験した、ローンチ直後に味わった“真タイタン討滅戦”のあのインパクトが、ずっと心に残り続けています。……奈落の底に落とされてバトルにまったく貢献できなかったにも関わらず、報酬だけはしっかりともらっていくというあのシチュエーションが(笑)。

──かつて日野さんもタイタンに落とされてしまって、下で何もできずにカベを見ているしかなかった、という話を伺いました(笑)。

ちなみに、『FLO』でタイタンがくり出してくる、当たると落とされるランドスライドはこのような感じ。
「あっ!」と思わず声が漏れてしまうほどの恐怖が『FLO』で再現。衝撃のタイタンコラボでしたが、大盛況のうちに終了しました。

吉田当時の『FFXIV』では、落ちてしまったプレイヤーが確認できる情報は、眼前に横たわる自分のキャラクターと、パーティメンバーとタイタンのHPだけでした(苦笑)。あのころは『ワールド オブ ウォークラフト』があったとはいえ、グローバルでサービスを展開しているMMO(多人数同時参加型オンライン)RPGのレイドが持つ特徴を日本で知る人は少なく、それもインパクトの原因かもしれません。僕たちにしても、何しろレイドを作るのが初めてだったこともあり、けっこうムチャをしたと反省しています……。サーバー判定の数値に関しても、本来使ってはいけない数値ギリギリを設定していたこともあり、難度はいまに比べても高かったと思います。また、当時は、「崖から落ちたのだし、戦列に復帰できないよね」とふつうに考えてしまっていて(苦笑)。「カメラの位置だけでも崖の上に戻してあげよう」といったことは、考えもしなかったので、ひどい話ですね。

──落ちたのだから当然だよねと。

吉田カメラはつねにキャラクターのそばにあるべき、という考えかたです(笑)。でも、実際自分でもプレイしていて、バトルの序盤で谷底に落ちると、「このままクリアされると猛烈に恥ずかしい……ほかの人も落ちてこないかな……」とさえ思ってしまいましたし(苦笑)

日野僕だけがこの場所にいるのはイヤだ……誰か落ちてこないかな(笑)。

吉田「失敗してこっちに誰か来てくれ!」と念じる(笑)。

日野でも、オンラインゲームの楽しさと怖さが同時に味わえたんです。僕は『FFXIV』の魅力はそこにあると思っていて。「人生でこれくらい本気になることはありますか?」というほど真剣に戦ったその果てに、念願のアイテムが待っている。「プレイヤーの心をそこまで震わせるほどのゲーム体験を生む『FFXIV』はすごい」と心から思ったので、タイタン、そして今回満を持して登場したバハムート・プライムのコラボで、皆さんにそうしたところを味わってもらいたくて。

吉田あのころ日野さんは、いっしょに食事に連れて行ってくれるたびに、「『FFXIV』には、ゲームだからこそ本気になれる場所があるのがすばらしい」とほめてくれたんです。そのうえで、「プレイヤーどうしで軋轢が生じるのを恐れて安全策ばかりを採用するのはよくない。みんなが本気だからこそ、いさかいが起こるのであって、それこそがオンラインゲームの持ち味のはずだ」と説いてくださって。きっと日野さんは、(当時最高難度のコンテンツだった)大迷宮バハムート:邂逅編/侵攻編/真成編の最前線にいてプレイしてくれていたからこそ、そうした気持ちを強く感じていたのだろうと思います。

日野僕がここまで人生で何かを覚えようとするのは、受験勉強に励んだ学生時代を除けば、『FFXIV』のレイドのギミックくらいだったとさえ思いますからね。まさにバハムート・プライムとのバトルのころから、攻略するために必要な動きをノートに書き込みながら覚えてきたのですが、ときおりふと……「僕は何をやっているのだろう」と(笑)。

吉田そういえば、大迷宮バハムート:邂逅編の5層でヘビ(ヒュギエイア)を適切に誘導するために、ナイトの日野さんは、北ザナラーンで“シールドロブを使って敵視を集めて誘導する練習”をしていたって言っていましたよね。

日野自主練していました(笑)。モンスターの敵視を集めた後、狙った場所まで引っ張っていく練習をひたすらして。あのころの僕は、レイドを攻略するうえで欠かせない「コマンドを入力しながら移動しつつ何かほかのことを行う」といった技術が不足していたので、フィールド上でかなりトレーニングを重ねました。当時のレイドって、まさに“ムリゲー”だったので、本当によくやったなと(笑)。

一同 (笑)

日野とくに、大迷宮バハムート:邂逅編2層で“アラガンロット”というアイテムを仲間内で受け渡さないとたいへんなことになるギミックが本当に難しくて。いまとは違って、プレイヤーに取って不利益になるデバフアイコンの大きさや表示位置を変えられなかったりしたので、当時は「そんなの気づけないよ!」と画面に向かってツッコミを入れながらも、最高難度コンテンツに挑んでいました。あ、いまも、一応は最新のレイドコンテンツである“希望の園エデン零式:覚醒編”をラストの4層までクリアー済みではありますけれど(笑)。

日野氏も楽しんでいる最新のレイドは、『FFXIV』の最新パッチ『FFXIV 漆黒のヴィランズ』で楽しめます。気になる方は以下のリンクをチェック!
ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ 公式サイト

吉田これだけ忙しい人なのに、それがすごいなと(笑)。ちなみに、攻略期間としては1ヵ月くらいですか?

日野海外出張などが重なったこともあり、最速攻略の波に乗り遅れてしまって……。ふだんならもう少しできたはずですが、今回は落ちこぼれたかもなぁ(笑)。

吉田いやいや、コンテンツが実装されて1ヵ月ちょっとくらいで零式4層を突破できたのなら、落ちこぼれてないですよ。日野さんは往年のレイドの猛者だから、もはや価値観がおかしなことになっているのかな(笑)。

──ちょうど高難度レイドへ挑むお話になったことですし、ここでいよいよ『FLO』最難関レイドのバハムート・プライム戦をおふたりを交えて遊んでいただきましょう。

ファンタジーライフ オンライン ファイナルファンタジーXIV

バハムートと戦うフィールド外周を取り囲むトラップを目にして、思わず「触ると死ぬのかなあ」と吉田氏から笑い声が。その後も「アースシェイカー巻き込んでる巻き込んでる!」などと、終始白熱したプレイが続いた。
一方の日野氏は、善戦するも自分が盾スキルを持つラウラを操作して参戦していたことに気づかず、“テラフレア”に併せて盾スキルを発動するタイミングを逃し大惨事に……! 『FFXIV』でいうところのリミットブレイクの不発? あまりの再現度の高さにふたりともプレイに没頭していました。

お墨付き

(ふたりでバハムート・プライム戦をじっさいにひとしきりプレイした後で)

──吉田さんは、実際に『FLO』でバハムートと戦ってみて、どう感じられましたか?

吉田いやあ……バハムートですね(笑)。今回はテストプレイのために『FLO』のアバターがかなり強化されていたから倒せましたけど、『FFXIV』と同様、攻撃をよくばると範囲攻撃を踏むし、敵の詠唱に合わせてしっかりと移動すれば気持ちよく回避できる。このあたりの作りや、範囲攻撃が発動するまでの猶予時間の設定が、本当にすばらしいと思います。

日野その部分は、ものすごく『FFXIV』ぽい感じが出せていると思います。『FFXIV』では範囲攻撃の予兆マークさえ回避できていれば、実際のエフェクトを踏んでもダメージは受けません。ですが、『FLO』はそういったシステムにはなっていないので、そのあたりのプレイ感の調整は力を入れました。

吉田スタッフの皆さんは『FFXIV』の動画を観て研究されたでしょうし、なかには実際にプレイして確認された方もいたのだろうなって思います。

日野まさに、ひたすらプレイし続けて研究したスタッフもいましたし、動画をくり返し視聴して理解を深めようとしていたスタッフもいましたね。動画を観ただけでは判断できない微妙なニュアンスに関しては、自分が「こういう感じなんだよ」とフォローした感じでした。というのも、やはりいま『FFXIV』で大迷宮バハムートをプレイしたとしても、実装直後のあの興奮と緊張感は味わえないことこそが、開発を進めるうえで大きな障壁で。でもこの課題を乗り越えて、昔から『FFXIV』を長くプレイしてきた人が今回のコラボを遊んだときに、ちょっとだけでも納得感が得られるようにしなくてはダメだと。

吉田いや、納得感はありましたよ。予兆マークが画面に複数表示されているときでも、その隙間にいればキッチリと攻撃を回避できたので、“ダメージ判定が実行されるまでの猶予”や“ダメージ判定のサイズ”などは、とくに徹底して作られているなと感じました。自分が範囲攻撃の“アースシェイカー”を受ける位置を事前に決めておき、ボスの詠唱が見えたら順番に回避しつつ、移動を最小限にして攻撃したほうが、もっとキレイに立ち回れるはず……とか、そう思いながらプレイしてましたから(笑)。つい、プレイヤーごとの散開位置を指示するマクロ(あらかじめ設定したメッセージやマーカーなどをすぐに展開できる機能)が欲しくなりますね。

──『FLO』でマクロが欲しくなるとは(笑)。でも、範囲攻撃のターゲットになった人に、的確に仲間を巻き込まない位置で受ける(捨てる)ように、移動場所を速やかに促せますね。

吉田アースシェイカーを捨てる位置を、どうにかしたくなってしまって(笑)。

日野何もわからない状態でアースシェイカーを受けたら、みんな範囲攻撃に巻き込まれるから。

吉田メンバー全員がダメージ受けますからね(笑)。

──それにしても、『FLO』でも攻略法が『FFXIV』と同じというところにも、おもしろさを感じます。

日野もはやモバイル版『FFXIV』のような(笑)。でも、攻略については頭割り(編注:誰かひとりが大ダメージを受けるが、近くにメンバーがいれば人数分でダメージが割られる攻撃)を示す予兆マークなど、大迷宮バハムート:真成編の当時にはなかった要素も多数入れました。

──前回のコラボで実装されたタイタン討伐戦のときも落下後も復活できるチャンスが設けられていましたが、今回も日野さんの『FLO』プレイヤーへのやさしさを感じました。

日野当時はそうした予兆マークが原作になかったから、『FLO』にもそれを入れなくてもいい、というわけにはいかないですから。最新の『FFXIV』に盛り込まれているサポート機能がないと、多くのかたが円滑にプレイできないので。

吉田当時は個別の担当者がバラバラに(予兆マークを)作っていたので……僕たちもまだまだ整理まで手が回っていない時期でしたね。2015年くらいから、コンテンツにまつわる表示類を統一・整理し始めました。本来、そうした交通整理はもっと初期の段階で行われるべきなんですが……。

日野ちなみに、いまの『FFXIV』の“大迷宮バハムート:真成編”はどうなんですか?

吉田集合などを示す予兆マークの表示は、いまもありません。“絶バハムート討滅戦”に関しては、こうした整理が行われた後に作られたコンテンツですので、各種マークによるサポートはしっかりと行っています。迫ってくる範囲攻撃(エクサフレア)の予兆マークも、そのとき初導入されたもので、以降は類似のギミックで同じマークが用いられています。

日野つまり、“大迷宮バハムート:侵攻編の4層”で多発した、いわゆる予兆が無く攻撃される、“サンダーテロ”のような悲劇が、いまでもそのままになっていると。「“サンダーウィング”のデバフ(プレイヤーに不利益なステータス異常)が付与されたら、急いで遠くに離れよう」という……いやあ、最近のレイドは挑んで解き明かす楽しさがあって納得感があるのですが、古きよきレイドを知らない方や『FLO』 のプレイヤーは、一度『FFXIV』の大迷宮バハムートを遊んでみるといいかもしれません。

吉田おそらく「うわ、わけわからん!」という叫びが(苦笑)。

歴戦の光の戦士だからこその再現度

──それにしても、こうして原作の大迷宮バハムートのお話を伺っていると、今回のコラボのバトルが挑み甲斐のある難度なのもうなづけます。ちなみに、曲は絶バハムート討滅戦のBGMなのですね。

吉田ええ、今回ご提供したのは『FFXIV』の絶バハムート討滅戦で、バトルの後半に流れる特別なBGMが使われています。大迷宮バハムートの曲は権利の関係上ご提供が難しい曲があったので、その代案として僕がチョイスさせていただきました。前回のタイタンに続く『FLO』コラボなのですが、レベルファイブさんがひとつのコンテンツに対して複数の難度を作っていただけるのであれば、絶バハムート討滅戦のBGMを使うことでバトルがより盛り上がりますし、それ自体が話題になることもあるだろうなと。仮に、『FLO』とのコラボで実装されるコンテンツの難度がひとつしかないのであれば、また話が変わっていたかもしれません。

──なるほど。 

吉田こうした判断は総指揮を執っている僕の仕事ですので、「使ってもらっていいよ」と『FFXIV』側の担当者に伝え、レベルファイブさんにお渡ししました。今回のコラボは、グラフィックスとニュアンスの両面で、極力『FFXIV』に近づけて作ってくださっていますよね。日野さんをはじめとするスタッフの方々の努力のおかげで、信じられないほど忠実に再現されています。

大迷宮バハムートのイベントには、メガフレア、ギガフレア、テラフレアの三種類の難度が用意されており、現在はすべての難度が解禁。吉田氏肝煎りのBGMも、『FFXIV』プレイヤーなら必聴!?

日野吉Pも納得ということで(笑)。お墨付きがもらえたコラボです。

吉田BGM、SE、攻撃方法、当たり判定、猶予時間の取りかた……どれを取ってもカンペキです。それはもう……我々のプログラマーが、日野さんのチームにいるのかなと思えるほどで。もしかしたら、こっそりと内職しているんじゃないか? って思うレベル(笑)。

一同 (笑)

日野いやあ、よかった(笑)。僕としては、『FFXIV』のバトルをスマホゲームで再現する、という企画に許可を出してくれたことが本当にありがたいんです。だからこそ、「『FLO』のチームは『FFXIV』を誤解しているぞ」と思われないようにしたかったので。開発スタッフの中にも『FFXIV』ファンが多いですし、僕と吉Pの関係もよく知っているので、その点にすごく気を配って作ってくれたと思います。

吉田自分は日野さんのことを、勝手に頼れる“お兄ちゃん”だと思っていて、食事に連れて行ってもらうたびに、いろいろ話をさせてもらってきたんですが、日野さんはとにかく負けず嫌いな性格なんです。『FFXIV』が『妖怪ウォッチ』とコラボさせていただいたときもそうでしたが、「ここまでやって当然でしょう」くらいのクオリティーを実現させて突きつけてくる。そのせいか、僕がチェックしても直すところがほとんど見つからなくて……どうしようかと思ったくらいです(笑)。今回のコラボに関しても、キャラクターデータを我々の側からお出ししているのに、新たにキャラクターを描き起こしたうえでデフォルメまで加えていて。おそらく、キャラクターデータの縮尺をどれくらいまで下げれば『FLO』の世界に違和感なくなじめるのか、といったことや『FFXIV』のプレイヤーが“違い”を感じることなく遊べるにはどうすべきかといった、日野さん自身の思想を、スタッフの皆さんが共有しているのだろうなと。

──コラボ内容の確認の段階で、そこまで感じられるほどなんですね。

吉田だから実機で開発する段階に突入すると、僕の側から指摘する点は何もありません。むしろ、企画時点のチェック回数のほうが多いくらいです。最終的に僕からは“すばらしいです。ありがとうございます。問題ありません”としか返事をするほかないのに……もしや日野さんには「吉田は何もチェックしていない」と思われているかもしれません(笑)。

日野そんなことないですよ(笑)。

吉田この対談を読んだ方は、今回のコラボが「ものすごくきびしいチェックを経た結果、その一文を書き記すことになった」ということだけは、どうかわかっていただけるとうれしいです。

日野ははは(笑)。ただ、僕とスタッフもすごく悩んだ点がひとつだけあってですね……。

吉田え、どこですか?

日野『FLO』のバハムート・プライム戦の報酬となる装備“ハイアラガンブレード”が、片手剣ではなく両手剣である点です。『FFXIV』の両手剣に対応するバハムート装備は、正しくはハイアラガンブレードではなく、暗黒騎士向けの“ハイアラガン・ディバイダー”になります。ところが、僕が『FFXIV』で大迷宮バハムート:侵攻編を戦っていた当時は、まだ両手剣を装備する“暗黒騎士”というジョブ自体が実装されていなくて……。

吉田たしかに、当時暗黒騎士と両手剣はまだ存在していませんでしたね。

日野なので、スタッフが両手剣として提示してきたのがハイアラガン・ディバイダーのほうで、柄に玉がハマったデザインだった。でもその武器を一度も見たことがない僕は「……このデザインは違う。『FFXIV』の剣をちゃんと確認したのか」と本気で詰め寄ってしまって(笑)。「ハイアラガンブレードはこれじゃない。そもそも柄の部分に玉なんて付いてないから」と言うと、「暗黒騎士の両手剣をベースにしているので、こういう見た目になっています」と反論されるという。

──スタッフの方が最新の装備をモチーフにしてデザインしたのに(笑)。

日野それでも僕は「これは違う。僕の知っているハイアラガンブレードはこれじゃない!」と(笑)。その両手剣の見た目を、どうしても片手剣のハイアラガンブレードにしたくて……すごく悩みました。かっこいいんですよ。とにかく。

吉田……これはまさに一線の光の戦士である日野さんならではのエピソード。ふつう、画像を見ただけでは違いはわからないですって(笑)。

日野氏の愛とこだわりが詰まったハイアラガン装備は、イベントに挑戦することで入手可能! 強化することで“ケアルガ”が使える、白魔導士のタイラス(杖)装備も手に入れたいところ。

バハムートのその先へ

吉田ところで日野さんは、『FLO』を開発されるなかで、バトルとそれ以外の要素の割合みたいなところはどんなふうに考えたりしますか?

日野僕自身がゲームデザインの細部にまで関わっているわけではないのですが、『FLO』を俯瞰して見たときに、まだバトル以外のゲームシステムに行き届かない点があるのが課題だと感じます。僕はゲーマーでもあるので、『スカイリム』や『ウィッチャー』はもちろん、『FFXIV』が選んできた道のように作品全体が“表現している”ポリシーがあると思っていて。いまの『FLO』は、そこがちょっと弱めだなと。

吉田そういえば、まさに『FFXIV』で大迷宮バハムートのシリーズが閉幕するころ、日野さんから「このままでは同じパターンの遊びのくり返しに陥るので、選択の余地を広げるなどして、もっと幅を持たせたほうがいい。あと、フェラーリのような自慢できるアイテムも入れるべき」と助言していただいたんです。確かに当時の『FFXIV』は、旧『FFXIV』をバハムートが破壊して新生した後、ある意味ゲームとしては“一本道”の作りでした。なので、そうしたところを踏まえて、僕たちはいろんな脇道を作った結果、いまの全体像が確立できたようにも思えます。日野さんのいまの話を聞くと、『FLO』は、まさに我々が歩んできたのと同じ道の途上にあるのだろうなと。

日野いまスマートフォン用のRPGで試行錯誤をしながら運営している『FLO』も、いままさにその脇道を、今後少しずつ肉厚にしていきたいと思っていて。それにしても、個人的にはバハムートがメテオで振ってきて世界を壊す前の、旧『FFXIV』についても、あれはあれで好きだったんです(笑)。

吉田日野さんは、昔からずっとそう言ってくださいますよね。

日野旧『FFXIV』は、ゲームシステムの完成度という点では決して高くはなかった。でも、「新しい世界の創造とはこういうことだ!」という、作り手側の意気込みが、しっかりと感じられて。

吉田日野さんってゲーマーであり、同時に経営者でもあるうえにクリエイターでもある。おそらく、複数の視点を持っているからこそ、作ったものを多角的に見ることができるんですよね。この点が本当にすごいなと。確かに旧『FFXIV』はラグがひどかったですし、キャラクターの動きもモッサリとしていましたが、当時の日野さんは「これだけの作品に挑戦できる人はほかに誰がいるのか。その点に着目しなければ、今後誰も同様のチャレンジをしなくなる」とクギを刺したうえで、「“その先”をちゃんと見据えたうえで応援してあげないと、業界全体がダメになる」と力説されていて。日野さんがいつも「この部分に不満がある」と指摘するのは、そのタイトルには“その先”があると感じているからですよね。一見すると、日野さんは個別の課題を単純に挙げているだけのように見えますが、じつは違っていて。そうした課題を投げかけてもらえるのは、“その先”があるタイトルであることの証なので、だからこそ僕は、逆に励まされた気持ちになれたんです。

日野なるほど。『FLO』の先……これからを考えると、MMORPGでできることを用意しつつ、それらをデフォルメかつ簡略化したうえで、「いろんな人生がありますよ」と提案できることが『FLO』にとって重要なポリシーかもしれません。さまざまなゲーム性を手軽に楽しめるのが魅力ではあるのですが、そうしたところがもう少し進化すると、さらにおもしろくなるだろうなと。

吉田手軽さというのは大切ですよね。現代人は余暇を過ごす時間が極めて限定されているので、複数の要素を軽めに遊ぶのか、あるいはひとつのコンテンツに深くのめり込むのか。作り手は、どちらに重点を置くのかを選ぶことになるのですが、そのサジ加減は本当に難しくて。興味を抱いた要素に触ってもらい、そこからある程度の時間を費やしてもらうことで、そのゲームのおもしろ味を理解してもらう。ここに至るまでが本当に難しかったりします。いまの時代は、おカネよりも時間の価値のほうが高くなっているので……。

日野そういう意味では、今回のコラボではかつて僕が必死に挑んだバハムートとの死闘が手軽にスマートフォンで体験できるのだから、かなりいいですね(笑)。

吉田『FFXIV』は、モニターやテレビの前に座ることで初めて楽しめる作品です。一方、スマホ向けタイトルである『FLO』にはそうした制限がないので、電車やバスで移動する時間などを利用して、バハムート・プライムと戦ってもらえるんですから(笑)。双方のタイトルが持つ魅力の違いを体験できるところが、コラボレーションの本当の利点だと思います。なので我々のタイトルもバリエーション豊富なバトルコンテンツが多数用意してあるので、併せて興味を持ってもらえたらうれしいですし、好評であれば、この先も何かやりたいですよね。レイドはまだまだたくさんありますから(笑)。

日野今度は……アレキサンダーとか?(笑)。