かつてメガドライブとPCエンジンというゲームハードがあった。ファミコンブームの次代を担うゲームハードとして、1980年代後半~90年代中盤までのゲームシーンをともに盛り上げた2機種。そして現在、かつてのライバルハードが時をほぼ同じくして、メガドライブミニ、PCエンジン miniミニとして復刻を遂げることになる。

 そんなドラマチックなタイミングを見逃す手はない! ということで、ファミ通.comは両ミニハードの開発キーパーソンであるセガゲームスの奥成洋輔氏と、コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の吉室 純氏の対談をオファー。両ハードの実現までの道のりや、開発の苦労など、共通する話題で大いに盛り上がったスペシャル対談の様子を、たっぷりとお届けする。

奥成洋輔氏(おくなりようすけ・左)

セガゲームス所属。1971年生・東京都出身。1994年、セガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)に入社。セガサターンのPR業務などを経て、ドリームキャスト用『エターナルアルカディア』でアシスタントプロデューサーデビュー。2005年より『SEGA AGES 2500』シリーズのプロデューサーを引き継ぎ、以降“セガ3D復刻プロジェクト”などクラシックゲームの復刻プロジェクトを数多く手掛ける。メガドライブミニではソフトウェア側の責任者を務める。

吉室 純氏(よしむろじゅん・右)

コナミデジタルエンタテインメント所属。1980年東京都出身。幼少のころから『桃太郎』シリーズの大ファン。2006年にKONAMIに入社。PCゲームやモバイルゲームを手掛け、これまで『戦国コレクション』や『スター・ウォーズ フォース コレクション』の運営ディレクターとして手腕を振るう。PCエンジン miniでは、ディレクターとして復刻への情熱を注いている。

2019年9月19日発売に発売されたメガドライブミニと、2020年3月19日発売予定のPCエンジン mini。

両氏の出会いはクラシックゲームイベント!?

――本日はよろしくお願いします。おふたりは、初対面ではないんですよね。

吉室初対面は、秋葉原のゲームショップBEEPさんが2019年8月に開催したMSXのイベントでした。僕はゲームファンとして一方的に奥成さんを存じていましたけど、ちゃんとご挨拶できたのは割と最近で。

奥成こから東京ゲームショウの両社のステージで、両ハードの共演につながるまでは速かったですね(笑)。吉室さんは、もともとKONAMIファンだったんですか?

吉室KONAMIももちろんファンだったのですが、当時のハドソンも大ファンだったんです。最初のゲーム体験がファミリーコンピュータの『忍者ハットリくん』で、7歳のときに『桃太郎伝説』と『ファルシオン』に大ハマリしていました。それに同じ1987年ってPCエンジンが発売された年で、お小遣いの大半をソフト購入に当てていました。

奥成PCエンジンで桃太郎シリーズというと、『桃太郎伝説ターボ』ですかね。

吉室そうですね。1990年に『桃太郎伝説ターボ』、『桃太郎活劇』、『桃太郎伝説II』、1991年に『スーパー桃太郎電鉄II』が発売されて、勉強を投げ出してでも『桃太郎』シリーズをやりたいと思っていたほどで。あまりに気持ちが高まりすぎて、自作の“桃伝”ゲームブックも作りました。

奥成それはすごい熱意だ。僕も中学生時代に遊んだマークIIIのゲームがいちばん好きで、そのころに遊んだハードがパーソナリティーを作るんだなって思っています。

吉室わかります! 中学受験直後に『天外魔境II』が発売になったのはよく覚えています。『SNATCHER(スナッチャー)』と『銀河お嬢様伝説ユナ』が同日発売で2本とも購入したのも思い出です(笑)。

両ハードがこだわった“サイズ感”

――PCエンジン miniの開発はいつ頃スタートしたのでしょうか?

吉室2018年中に開発が動き出して、実際に作業が進みはじめたのが2019年に入ってからです。それ以前からPCエンジンにまつわる何かを作りたいという企画は社内でずっとあって、どこの会社と組んだら実現できるかというのを模索していました。企画が大きく前進したのは、やはりニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ(以下、ファミコンミニ)の成功があったからですね。「ウチにもPCエンジンがあるじゃないか」って。

奥成メガドライブミニの成り立ちと似ていますね。我々もファミコンミニの成功を受けて「ウチでもこういうアプローチができるよね」と、2018年に企画が立ち上がりました。海外では本体のライセンス生産がおこなわれていたので、まずは日本国内で発売して海外はそのあと、というつもりだったのが、海外からの反響がすごく大きくて、1年延期してほぼ全世界同時で発売することとなりました。やはりハードを出すとあっては苦労があったのでは?

吉室そうですね。KONAMIは家庭用ゲーム機を作ったことがないのがいちばんの難関でした。開発はエムツーさん、製造はHORIさん、流通はAmazonさんと、それぞれのパートナーと組めたことで道筋が見えてきた感じですね。現状はソフトの開発は終了していて、生産の真っ最中です。

――メガドライブミニを手にした印象はいかがでしたか?

吉室ソフトもハードも、とても完成度が高いですよね。ミニチュアとしてもよくできていますけど、ガワはどのように作られたんですか?

奥成当時の設計図のデータがあるので、そこから起こしました。それに、当時メガドライブを設計・製造していたスタッフがセガや、グループ会社のセガトイズにいるんです。メガドライブ本体の開発部隊がつぎの仕事として、キッズコンピュータ・ピコを手掛けていた経緯があったためですね。そのため、当時を知る者が参加するメリットが多数ありました。その点でいうと、KONAMIさんはウチより苦労されたのでは。

吉室そうですね。当時の設計図はないので、実機を採寸してデータ化するところから始めました。そこから3Dプリンターで出力したモックアップを使って、ミニ版の仕様に合わせてコントローラーや背面端子の形状を調整していきました。実機どおりにHuカードスロットも再現したかったのですが、残念ながら強度上の問題などで埋まっています。最終的には、時代に合わせつつ “忠実な再現”ができたのではないかと。最終的にはどこまでこだわるか、ですね。

――本体がこのサイズになった理由というのは?

奥成きっと(中に収録されている)基板のサイズからですよね。

吉室さすがです(笑)。現状、実機の85%サイズになっていて、もう少し小さくすることも可能ではあるんです。ただ、元が小さい分だけこれ以上小さくすると扱いにくいサイズになってしまう。ある程度存在感がある大きさということで、手のひらサイズという目安にはしました。メガドライブミニは?

奥成ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンが実機の55%というのを聞いて、「隣に並べてほしい」という思いで同じ縮尺にしました。とはいえ、吉室さんのおっしゃる手のひらサイズっていうサイズ感は大事ですよね。メガドライブミニではコントローラーのケーブルを長めにしたつもりだったんですけど、遊んでくださった方からは「熱中すると引っ張って本体が動いちゃう」なんていう話がでるくらいで。これでPCエンジン miniが55%だったら、もっと振り回されてしまう(笑)。

吉室コントローラーに本体がぶら下がってしまうかも(笑)。でも、実機のメガドライブはメガCDやスーパー32Xと合体させると「こんなに大きいのか!」と思うほどのすごい存在感で、それがメガドラタワーミニでも再現されているのが嬉しいです。

奥成タカラトミーアーツさんのカプセルトイであったり、変形トイのメガドライブメガトロンなどがあったので、ミニチュア化には恵まれているんですよ。そんな情熱がほとばしりすぎると、メガドラタワーミニになってしまう。

(一同爆笑)

奥成悪ノリで作ってみたものを、せっかくだから損をしない程度でオモシロ感を共有してもらえたらくらいのつもりで予約を始めたら、即日完売になって(笑)。さすがにつぎは余るだろうと思った増産分も即完売。最終的には、欲しい人が定価で購入できるくらいのちょうどよさで行き渡ったかなと思っています。ぜひKONAMIさんにも“CD-ROM2ミニ”やってほしいなと。

吉室残念ながら現状ではそういった企画はないんですよ~(悔しそうに)。でも、本体の背後に合体する形で“天の声”型のACアダプターがあったらほしいですね。

奥成白本体だったら最初に買ったのはAVブースターですよね!

吉室確かに(笑)。洒落のわかるメーカーさん、ご連絡をお待ちしております。

――ちなみに、メガドラタワーミニに内部回路を描いた紙が入っているのが話題になりましたが、あれはどなたが?

奥成あれはセガ側の制作スタッフです。「中身が空っぽなのも寂しいよね」という遊び心からですね。

吉室愛ですよね……。ファンが「こうだったらいいな」ということをひとつひとつ実現している。子どものころに持っていたハードって、大事な思い出の塊。その思い出を崩さずに最大限に増幅しているのは、素晴らしいことだと思います。

奥成セガトイズという玩具メーカーがあったことによるグループシナジーですが、「ユーザーさんの盛り上がりにどう応えていくか」という気持ちが、ただ商品を作るだけじゃなく、関わったスタッフのそれぞれがお客様を喜ばせたいという意識に結実したんだと思います。

――ハードウェア商品という、形のあるものだったからこそ生まれた熱かもしれないですね。

奥成そうですね。現在のセガはソフトウェア開発がメインなので、ハードを作ることでの特別な“お祭り感”を楽しんでいたというのはありますね。

吉室ファンの皆さんとのコミュニケーションは大事ですよね。僕らも東京ゲームショウで展示させていただきましたけど、そこでのお客様の意見をできるだけ聞き入れて、どうやったらおもしろくできるかと考えることは、クリエイティブをやる上では必須事項です。コアなお客様の熱量に負けないよう、僕たちがどういう思いでこのハードを作っているかはしっかり伝えていきたいです。

収録タイトルの選定にも見えない苦労が

――PCエンジン miniの収録タイトルは、どのように選定していったのでしょうか。

吉室最初に意識したのは“ハードの顔”として本体のセールスを牽引したソフトは外せないよな、という点です。初期のソフトである『R-TYPE』や『THE 功夫』、複数人プレイの楽しさを提供した『ダンジョンエクスプローラー』や『ボンバーマン '94』、CD-ROM2の可能性をみせた『イースI・II』や『天外魔境II 卍MARU』など、国内でのPCエンジン発売タイトル600本超の中には、PCエンジンの顔と言えるタイトルが都度都度に現れてきました。そこを押さえた上で、コアなお客様が好むタイトルを用意していく。そうした議論を社内でした上での選定をしていったのですが、セガさんは?

PCエンジン mini収録の『天外魔境II 卍MARU』。1992年にハドソンから発売された。PCエンジンの名作RPG。

奥成いや~、日本語版のラインアップは僕と宮崎でほとんど決めてしまいました。自分が9割、宮崎が1割みたいな感じで(笑)。プロジェクト当初に宮崎から「人を集めて議論する?」という話もあったのですが、多数決だと全体のバランスを取りづらいので断りました。

吉室すごい(笑)。僕らは社内のスタッフ数名、それと海外のスタッフのヒアリングをしてラインアップを決定しました。海外で発売するPC Engine Core Grafix miniやTurboGrafx-16 miniに日本語版のソフトを収録したのも、当時の海外のゲーマーたちは「日本語版を遊んでいた」という証言があったためです。

奥成北米版の収録タイトルは、当時大ヒットしたゲームを中心にアメリカのスタッフが選定したので、セガ社内でもアプローチが違うんです。日本版に『獣王記』が入っていたら怒る人がいるかもしれないですし(苦笑)。逆に僕からは、アメリカのスタッフに「『ゼロウイング』はどうだい?」(※)とか、いくつか海外ならではのタイトルの提案はしたのですが、まったくピンときていないようでした(笑)。

※当時発売された英訳があまりにもおかしな文法であったため、英語圏のゲームマニアの間では(ゲームの評価とは別に)語り草になっているタイトル。

――伝説の誤訳には興味がない、と(笑)。

奥成これもいまだから話せるネタなんですけど、じつはメガドライブミニに『Mega Bomberman』を収録しようとKONAMIさんに持ちかけたことがあったんです。当時は海外のみの発売でしたが「じつはハドソンの対戦型『ボンバーマン』がメガドライブでも出ていた」というのは、歴史的な意味からしてもおもしろいなと思って、初期のタイトル候補の中に入れていたんです。ただ、ラインアップを決めていく段階で、1本だけ海外版のソフトが収録されているのもバランスが悪いな……という判断で、KONAMIさんには「やっぱりごめんなさい」したんです。

――もったいない!

奥成社内からも同様の声はあったんですけど、内心では「遠くない時期にPCエンジン miniで遊べるからオーケーでしょ」と思っていました(笑)。

――『ボンバーマン』では実現しませんでしたが、双方のハードに同じタイトルが収録されていますね。『大魔界村』や『(スーパー)ダライアス』が。

吉室ラインアップを見比べて「あれっ?」となりましたね(笑)。あの時代の『大魔界村』って、やはりすごくエポックメイキングなフランチャイズで、最新ゲームハードに移植されることは必然ともいえました。ただ『大魔界村』はPCエンジンスーパーグラフィックス(以下、PCエンジンSG)用のもので、上位機種のハードの性能をフルに見せるためには必須なタイトルだったと思うんです。PCエンジン miniは、最初の白い本体からCD-ROM2、アーケードカード、そしてSGとすべてのバージョンのハードに対応しているんです。その象徴としての『大魔界村』収録でもあります。メガドライブミニへの収録はどのような理由からなのですか?

奥成ゲームとしてのおもしろさはもちろん、アーケードの人気タイトルがハードの発売から1年を経たずして移植されてヒットしたこと、中裕司さんがプログラムを手掛けたことなどいろいろですね。たぶん全世界レベルだと、アーケード版よりも遊んでいた人が多いのではないかというメジャーさで。あとはアーケードゲーム全盛期におけるカプコンさんの技術力の高さが出ていたゲームですよね。ただ、メガドライブとPCエンジンの『大魔界村』って、発売日が2年くらい違うんですよね。

メガドライブミニ収録の『大魔界村』。オリジナル版は1989年にカプコンからリリースされた。言わずとしれた2Dアクションの傑作。PCエンジン miniにも収録されている。

――たしかに(笑)。

奥成ですので、当時は特に競合したということはないんです。ただ、Wiiのバーチャルコンソールのときに『大魔界村』で検索すると両方表示されて「同じハードでプレイできるのはおもしろいな」と思っていました(笑)。

吉室バーチャルコンソール版が出るまで、なかなかPCエンジン版は遊んでもらう機会が少なかったと思うんですよね。メガドライブミニの発売前夜配信で駒林名人(エムツー広報の駒林貴行氏)がメガドライブ版をクリアーしていたので、ウチの配信ではPCエンジン版もクリアーしていただきたいなって(笑)。

奥成PCエンジン miniが出れば、そういった比較プレイが気軽にできるのでおもしろそうですよね。余談ですけど、メガドライブ版はプレイフィールがアーケードに近いので、アーケード版をクリアーするための練習台にもってこいなんです。とはいえ逆に、アーケード版をメインにプレイする人はメガドライブ版は手こずるそうなんですね。なぜかというと、容量の関係でキャラクターパターンが一部端折られているので、タイミングを取り切れないんだそうです。PCエンジン版ではその点ね。

吉室そうですね。後発な分だけ“アーケード完全移植”に近くて、容量もメガドライブ版の5MBに対してPCエンジン版は8MBです。

奥成もしかしたらアーケード版に慣れた人だとPCエンジン版のほうが遊びやすいかもしれない。ただ、メガドライブ版には8方向入力に対応した操作も用意されていたりするなど、家庭用ならではのチューンは充実している。そういった違いを感じてもらえるのも興味深いですね。いまみたいにハード性能に余裕がなく、“限られたハードスペックや容量の中でどれだけ移植度を高めるか”という開発スタッフの努力みたいな部分が見えてくるのがおもしろいです。

吉室一方で『スーパーダライアス』は、もともと3画面を使ったアーケード版の『ダライアス』を、PCエンジン移植にあたって1画面にしたのが最初で。メガドライブミニに収録されている新作も、ある種『スーパーダライアス』を参考にしていただきつつ、メガドライブ仕様に則ったものとなっている。僕もプレイさせていただきましたが、『スーパーダライアス』とも違ったおもしろさがあるなと感じました。ハードによる違いもですが、移植した方の思想で変わってきますよね。もしかしたら、客層に合わせて難易度を変えている部分もあるかもしれない。

PCエンジン mini収録の『スーパーダライアス』。1990年にNECアベニューより発売。タイトーを代表するシューティング。メガドライブミニには『ダライアス』が収録されている。

奥成あくまで予想なのですが、『大魔界村』とは逆のアプローチなんでしょうね。『スーパーダライアス』の場合は家庭用に移植する上でさまざまなアレンジを加えて家庭用として遊びやすくした上で、追加要素を加えたと思うんですよね。一方のメガドライブ版はPCエンジン版の追加要素をいただきつつ、ゲームの移植そのものはアーケード版をモチーフにしているんです。PCエンジン版で採用されている“1画面向けのゲームバランス”を見ずに、アーケード版のプレイ感覚そのままをメガドライブで遊べることを目標としている。先程吉室さんがおっしゃったように、作り手も違えばアプローチは異なるので、その見比べが令和の時代にも味わえるのは、楽しいだろうと思います。

クラシックゲームを売るには伝道師が必要

――両ハードには、セガとKONAMIで2タイトルずつが収録されていますね。

吉室PCエンジン miniには『ファンタジーゾーン』と『SPACE HARRIER(スペースハリアー)』、メガドライブミニには『VAMPIRE KILLER(バンパイアキラー)』と『魂斗羅 ザ・ハードコア』ですね。

PCエンジン mini収録の『ファンタジーゾーン』。1986年にアーケード向けにリリースされるや、数々のハードに移植された横スクロールシューティング。PCエンジン版は1988年に発売されている。メアドライブミニには、続編となる『スーパーファンタジーゾーン』が収録。

奥成たくさんあるKONAMIさんのタイトルから、どれを収録するかはかなり悩みました。最終的に2タイトルになったのですが、「ウチとしては問題ないのですが、どちらも別途移植(『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』、『魂斗羅 アニバーサリーコレクション』で)しますよ?」と言われて(笑)。

吉室ちょうど同じタイミングだったんですよね(苦笑)。

奥成でも逆に言うと、KONAMIさんの社内的にも権利などがクリアーされているので、とてもスムーズに許諾をいただけて。

吉室光過敏対応など、どこを手直しすればいいかもわかっていましたからね。

奥成しかも開発担当も同じところという。六本木のKONAMIさんにうかがってデータを受け取るときに「じつは移植しているのはエムツーさんです」って聞かされてひっくり返りました(笑)。

吉室開発中は、つねにエムツーさんのパワフルなオーラが後押ししてくれました(笑)。

奥成真面目な話をすると、eスポーツなどゲーム業界全体がいろんな形で盛り上がっていこうという機運がある中で、今回のミニハードもうまくハマったのかなと思っています。

――おふたりの対談が実現できたのも、そういう高まりがあったからだと思います。

吉室業界の後輩として、ありがたい限りです。

奥成個人的にはバーチャルコンソールでKONAMIさんのタイトルが配信できなかったことへのリベンジなんですよ。メガドライブミニの収録タイトルとしてを発表させていただいたときのものすごい反響があって。自分たちからも「第一弾発表の目玉とさせてください」とは伝えてはあったのですが、他社さんのタイトルを移植するということが、こんなにも“セガの本気”として伝わるとは思っていませんでした。その後のメガドライブミニの盛り上がりの足がかりとして、KONAMIさんには本当に助けていただいたなって。

吉室ありがとうございます。『VAMPIRE KILLER』は当時から希少なソフトで、僕も入社するまでプレイする機会がなかったんです。じつは当時『VAMPIRE KILLER』や『魂斗羅 ザ・ハードコア』に関わったデザイナーが僕の席の隣にいるんですけど、そういった方々も「懐かしいな~!」と感激するラインアップだったことが嬉しいですね。それと、収録タイトルを小刻みに発表していくというやりかたは、メガドライブミニの手法から学ばせていただきました。それと僕自身の立ち位置も(照れ笑い)。

メガドライブミニ収録の『VAMPIRE KILLER(バンパイアキラー)』。メガドライブオリジナルとなる『悪魔城ドラキュラ』シリーズのアクション。1994年リリース。
©Konami Digital Entertainment

――いわゆる“伝道師”役ですね。

吉室ええ。なるべく当時のことを知った上で、愛を込めて伝える役割が必要だろうと思って、奥成さんから学ばせていただいています。

奥成(笑)。ありがとうございます。僕自身が顔出しを始めたきっかけは“SEGA AGES 2500”のプロデューサーを引き継いだことなんです。それまで“3D AGES”が手掛けていたタイトルは、正直購入してくれた方の満足度が低かった。それを「これからは満足していただけるゲームを出すので信じてください」というのを告げる役割だったんですね。やはり“中の人”がそれを言わないと信じてもらえないと思ったので。それが気がついたら10数年続いているんですけど(笑)。

吉室スゴイことだと思います。

奥成「ベタ移植します」と「こだわって移植します」の違いって、しゃべらないと伝わらないんです。実体験として、いくらリリースや公式サイトに書いても読まれないというのがある。そういった前提があるので、吉室さんが「PCエンジン miniはホンモノです!」としゃべる代表として出ているのは、大事なことだと思います。

吉室僕らとしてもハードウェアを語るにはストーリーが必要じゃないですか。奥成さんもきっとそうだと思うのですが、「いつかはメガドライブを復活させたい」という想いがあって、その野望にも似た熱がちゃんと伝わることが大事なんじゃないのかなって。

――作り手の“白けたビジネス感”をファンは察知しますものね。ところで、先程奥成さんの発言にもありましたが、バーチャルコンソールですでにお互いは共演しているんですね。

奥成じつはそれよりも前に、ドリームキャスト用の配信サービス『ドリームライブラリ』で、メガドライブとPCエンジンのゲームを配信しているんです。当時のハドソンさんにライセンスアウトで協力していただいて。

吉室かつてPCエンジンとメガドライブが共通のハードで動くというレーザーアクティブがありましたけど、それは特例として(笑)。『ドリームライブラリ』は夢の共演でしたし、あれがエミュレーターを使った過去アーカイブの走りですよね。

奥成そうですね。ドリームキャストでもハドソンさんには初期から『なすびの懸賞生活』とか『ドリームプロデューサー』などネットワークタイトルを積極的にリリースしていただいたりと、セガとの協力関係は深いんです。ドリームキャスト初のネットワークRPG『ルーンジェイド』ですとか。

吉室その後には任天堂さんのWiiでバーチャルコンソールがあって。

奥成2006年ですね。立ち上げ時に任天堂さんから、弊社とハドソンさんに「こういうサービスをやりましょう」というお話をいただいたことで、ローンチ時から両ハードのソフトが山盛りそろっていました。

――当時はライバルハードでしたが、共演の機会はこれまでも多かったですね。

吉室タイトルの傾向が違うというのもあってのことなんでしょうね。メガドライブは16ビットのハード性能を活かしたカートリッジソフトがすごくて、PCエンジンは早期に投入したCD-ROM2があって音やアニメーションに特化したタイトルが数多く揃った。ユーザーの色合いもはっきり違っていましたよね。それに、海外だと『ウインズ・オブ・サンダー』の海外版『Lords of Thunder』がGenesisでリリースされていたり、『SNATCHER』のSEGA CD版が発売されていたりと、意外に関係は濃いんですよね。

奥成ですよね。初対面のときに、いきなり「『SNATCHER』ってどこまで再現しているんですか?」みたいなストレートな質問をしたんです。というのも、SEGA CD版は当時ですらいくつか表現がカットされていたくらいなんですね。プレイステーション版やサターン版などはさらにマイルド化していましたし、気になっていたんですよ。聞くと「そこはオーケーなんだ!」という部分まで再現されていてビックリしました。

PCエンジン mini収録の『SNATCHER』。1988年にMSX2向けにリリース。2042年のネオ・コウベ・シティを舞台に、正体不明のアンドロイド“スナッチャー”と、捜査官であるギリアン・シードとの戦いを描くアドベンチャー。オリジナルPCエンジン向けには1992年に発売。

吉室PCエンジン版の表現は、極力そのままにしてあります。なにしろ、そのための“CERO D”ですので(笑)。

奥成頼もしい! 吉室さんのような“最善の方法”を追求してくれる人がいることで、PCエンジン miniは限りなく当時に近い内容でのプレイが可能となっているのだと思います。

クラシックゲーム復刻の“タイムリミット”

――当たり前の話ですが、ひとことでクラシックゲームの“復刻”と言っても開発、製造、設計などさまざまな形での苦労があるわけですね。

吉室それと、ライセンス保有者探しですよね。我々もPCエンジンの全タイトルを選定対象としたのですが、どうしてもわからなかったり、調査が必要だったものがあって、収録を断念したケースはあります。また、当時はオーケーでも現在の基準に照らし合わせると、再現性が担保されなかったり、表現や光過敏の基準などで修正が必要であったり。

――奥成さんもメガドライブミニに「『スタークルーザー』を収録しようと動作させたがライセンス元がはっきりしないので断念した」とコメントされていました。

奥成ライセンスの話でいうと、僕は10年前のバーチャルコンソール開発のときからやっていたので、ある程度道筋は立てやすかったですね。逆に、KONAMIさんのように、当時移植できなかったメーカーさんのタイトルが実現できたので、リベンジ達成ですね。ただ、時間の経過とともに窓口が変化するケースもあったので、『ドリームライブラリ』では配信できたけど、現在では権利者が不明なタイトルもきっとあると思います。

吉室そういった意味でいうと、今回のような復刻をするのにはギリギリのタイミングだと思うんですよ。

奥成すごくよく、わかります。

吉室というのも、いまって当時の制作者の方々が定年退職される時期なんです。ですので、今回もPCエンジンの制作者の方々に直接お会いしてヒアリングをして、整合性が取れているかを確認できる最後のタイミングだったかなと思います。個人的には、当時の裏話を聞けるのが嬉しかったりします(笑)。

――ここ数年でミニハードの企画が続いたのも、必然だったタイミングだったのかもしれませんね。もっとお話を伺いたいところなのですが、残念ながら時間切れです。では最後に、クラッシックゲームファンへのメッセージをお願いします。

奥成PCエンジン miniを購入したら、まずは初移植となるPCエンジン版『SPACE HARRIER』と、『ドリームライブラリ』以来の復活となる『ファンタジーゾーン』をプレイしてみてください。『SEGA AGES 2500 ファンタジーゾーン コンプリートコレクション』にも収録されなかったこともあり、エムツーさんの“ファンタジーゾーン愛”が、ここでもきっと炸裂しているはずです。

――メガドライブミニのユーザーにもひと言!

奥成メガドライブミニをご購入いただいた皆さんには、想像以上にしっかりとクラシックゲームを遊んでいただいて本当にうれしい限りです。皆さんが楽しそうに、しかも特定のタイトルに偏らずに遊んでくださっているんですよね。週刊ファミ通の事前アンケートでは期待値が最下位だった『パーティークイズ MEGA Q』が、ツイッターではよく話題になっていて、『MEGA Q』ファンの私としては「しめしめ」という思いです。PCエンジン miniに収録の58タイトルからも、きっと同じように発売後に「これ、じつはおもしろいじゃん!」という発見が起きると思います。それまでは、メガドライブミニの『大魔界村』と『ダライアス』をやり込んでいただいて、PCエンジン miniの発売に備えていただければ(笑)。僕もAmazonからの到着を心待ちにしています。

メガドライブミニ収録のパーティークイズ MEGA Q』。1993年にリリースされた最大5人で楽しめるクオズゲーム。クイズ番組の出演者となって優勝を目指す。バラエティーに富んだクイズが楽しい。

――では、吉室さんお願いします。

吉室僕もメガドライブミニは購入済みですが、さすがに42タイトルすべてをクリアーするのには時間がかかるので、PCエンジン miniが出るまでのあいだにじっくり遊ぼうかと思っています。当時はメガドライブのソフトを一気に遊ぶことがなかったので、セガさんは本当にいい機会を作ってくださいました。同時期に市場を競ったライバルハードの共演を楽しんでほしいです。偶然なのですか、メガドライブミニが42タイトル、PCエンジン miniが58タイトルと、あわせてちょうど100タイトルとなるのもなにかのご縁な気がします(笑)。

――PCエンジン miniに期待している皆さんにもひと言お願いします。

吉室PCエンジン miniの開発はすでに完了していますが、2020年3月19日の発売まだ2ヵ月半ほどありますので、皆さんに楽しんでもらえる情報を出していきます。すごくいいものに仕上がっていますので、ぜひご予約ください。詳しくはまだ言えませんが、エムツーさんならではのちょっとした遊びも用意していますし、たくさん売れれば“そのつぎ”もありえるかもしれませんので。……セガさんはどうなんですか?

奥成ウチは……まず価格.comプロダクトアワードのゲーム部門で大賞を受賞しました! ありがとうございます! 引き続きPCエンジン miniが不在のうちに、宮崎がいろいろおもしろいネタをいくつか仕込んでいます。この年末年始は、意外なところでメガドライブミニの話題を見かけるんじゃないかと思いますよ。あと、個人的には白い初期型本体よりも、PCエンジン Duoのほうに思い入れがある人は多いと思うので、第2弾としてPCエンジン Duo miniが必要だと思いますね。55%縮小のやつです(笑)。

――ミニハードの今後の展望に期待して終了とさせていただきます。本日はありがとうございました。

じつはTGS2019の舞台裏でも遭遇していた両氏。こんな写真も撮らせていただきました(笑)。

付録【発売年別】メガドライブミニ/PCエンジン mini 収録タイトル一覧