【ファミキャリ!会社探訪(80)】ストイックに最新技術を追求できる背景にあるのは“固定時間勤務制”? Luminous Productionsを訪問!_08

“ファミキャリ!会社探訪”第80回はLuminous Productions

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回は、Luminous Productionsを訪問。

 Luminous Productionsは、スクウェア・エニックスのグループ会社で、新たなAAAタイトルの創出などを目的に2018年に発足。“世界最先端のテクノロジーとアートを融合させ、今まで誰も経験したことがないゲーム体験を作ること”をビジョンとし、自社開発のゲームエンジン“Luminous Engine”によるコンシューマーゲームやスマートフォンゲームの開発を手掛けている。今回は、リードコンセプトアーティストの松澤雄生氏とプロジェクトマネージャーの中原沙綾氏に話を聞いた。

松澤 雄生(まつざわ ゆうき)

Luminous Productions
リードコンセプトアーティスト

中原 沙綾(なかはら さや)

Luminous Productions
プロジェクトマネージャー

ストイックかつコミュニケーションも活発な賑やかなスタジオ

――まずはおふたりの経歴についてお話いただけますでしょうか。ゲーム業界を志したきっかけはどのようなものだったのですか?

松澤私は新卒で順調にゲーム業界に入ったわけではなく、高校を卒業したものの、大学受験に失敗してモラトリアムな時期を過ごしていました。そのときにアルバイトを転々として、CG制作会社で働いたり、雑誌を編集する仕事をやったりしていました。雑誌といってもメジャー誌ではなく、ちょっとした会報誌みたいなものを作っていました。

 それで、23、24歳ぐらいのときにその会社の偉い人から「あなたもそろそろ覚悟を決めなさい。うちの正社員になって働きなさい」と言われました。それを言われて私は「……これが本当にやりたいことだろうか?」と考え、それで一念発起してコナミさんに契約社員で入社しました。

――その社長さんにとっては裏目の結果に(笑)。

松澤そうですね(笑)。コナミさんでは2Dアート・キャラクターデザインとしてタイトルを1本仕上げました。その後、2004年ごろにスクウェア・エニックスに転職してから、いまにいたります。

――ゲーム業界に関わりたい気持ちは学生のころからあったのでしょうか?

松澤絵を描くのはずっと好きでした。しかし、それを仕事にできるとは思えませんでした。母は美大を出ているのですが、母からは「絵なんて仕事にならない」とよく言われていました(笑)。それもあって、ほかのことに目を向けようとしてみたのですがうまくいかなくて……。けっきょくは大学にも行かなかったですし、やはり絵以外のことには興味が向かなかったんだと思います。

 アルバイトをしているときにも「やっぱり絵の仕事がしたいなぁ」という気持ちがありました。その当時、絵で関われる仕事のなかで、いちばん勢いがあり、発展性もあり、自分も興味が持てるものが、ゲームの仕事だったんです。

――紆余曲折を経つつも、いちばんやりたいことに行き着いたというわけですね。中原さんはいかがでしょうか?

中原私は大学に行って、卒業後はどこかに就職しなければということで、ふつうに就活をしました。ゲームに限らず、エンターテインメントが好きでしたので、何かしらそういうものに関われる仕事をしたいなと思っていましたね。それで、漠然と好きな会社さんや知っている会社さんを受けていました。その後、コンシューマーゲームのパブリッシャーに新卒として入社し、アシスタントディレクターとしてゲーム開発に携わることになりました。内部に開発部署がなかったため、開発いただく外注会社さんとのやり取りがおもな仕事で、その中で開発のことやプロデュース、ディレクションについて少しずつ勉強させてもらいました。

 そうしてしばらく働いたのですが、最終的に自分のクリエイティビティに限界を感じ始めたんですよ。

――限界と言いますと?

中原はい。ゲームの企画を考えたりもするのですが、周りの人はすごく優秀だったので、自分はそこに行き着ける気がしなくて。それで「もっと自分に合う仕事は何だろう?」と考えて、進行管理や周囲とのやり取りや調整などがどちらかと言えば得意だと思えたので、プロジェクトマネージャーという未経験の仕事をやってみたいと思うようになったのです。

 そうしたなか、Luminous Productionsの募集を見かけて転職しました。私は約1年ほど前にLuminous Productionsが独立してから入社したので、スクウェア・エニックスには在籍していないんですよ。

――松澤さんはスクウェア・エニックス時代から15年ほど在籍と長く、一方で中原さんはまだ1年くらいということですね。おふたりから見て、Luminous Productionsはどんな会社ですか?

松澤仕事にストイックに取り組むスタジオですし、一方でコミュニケーションの量も多いので、わりと賑やかな感じになったりもしますね。なにしろ大人数で作り上げていかないといけませんので、ストイックさもコミュニケーションも、両方が必要なのかなと思います。

中原1年前に入社した当初から技術力の高さに、ただひと言、「スゴイな」と感じていました。前職では開発会社さんとの関わりはあったものの、開発の中に入って仕事をしていたわけではなかったので、いま日々作られていくものをリアルタイムで見ることができるようになり、驚きと感動の連続でした。その上、Luminous Productionsは業界の中でも屈指の技術を持っているスタジオだと思いますし、あらゆることに妥協せず、ストイックに開発に取り組む方がほとんどなので、よりインパクトが大きかったです。

松澤ストイックさという点では、ギリギリまで諦めない人が多いですよね。

中原そうですよね。どんなことも「やったらできるかもしれないから、とりあえずやってみよう」っていう空気感があるんです。

――やる前から「それは無理だ」とは誰も言わないような。

中原最初から無理だと言う人はいないですね。

松澤ネガティブな発想を意図的に避けているのか、嫌っているのか、そもそもそう思わないのか。そういうことを言う人がいないです。

中原ムチャ振りに対しても、「やるだけやってみます」という反応をしますよね。

松澤文句を言いつつもね(笑)。

――(笑)。

中原いろいろと思うところはありつつも、「がんばってみます」と始めたら、最終的には本当にできあがって、周囲は「え、本当にできたんだ!?」と逆に驚いたり(笑)。

松澤やればできてしまうものだから、つぎにまた新たなムチャ振りがふりかかってくるんだよね(笑)。

――向上心が強いというか、負けず嫌いなところもあるのかなと感じますね。

中原それはありますね。負けず嫌いな人が多いと思います。

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“ワールドワイドを視野に入れたAAAタイトル”を開発中

――おふたりの現在の業務内容はどのようなものでしょうか?

中原プロジェクトマネージャーとして、業務としてはお金周りやスタッフの管理をしつつ、開発のスケジュールや進捗をチェックしています。チームの皆さんとコミュニケーションを取って、協力していくという感じですね。チームのスタッフと話す機会が多いですし、入社してすぐに中に入れてもらって、いろいろな人と話しながら仕事をしていくということを日々行っています。

松澤開発の人間はストイックに取り組むあまり、どうしても視野が狭くなっていってしまいます。日々、いろいろな人とコミュニケーションを取っているものの、それでも視野が狭くなっている状態で、その視野で見える人とだけ話しているような状態になってしまいます。

 そこにプロジェクトマネージャーがあいだに入ってくれて、「それはこちらのチームと共有したほうがいいですね」とか、「こっちにも話をしておくといいですね」など、交通整理をやってくれている感じです。

――プロジェクトマネージャーさんが交通整理ですか、わかりやすいですね。日々、「何か困っていませんか?」とチームの人に声をかけているような感じでしょうか?

中原スタッフが集中して開発に取り組めるよう、スケジュールや予算の調整などの視点から、皆さんの困りごとを解決できるように取り組んでいます。

――松澤さんのリードコンセプトアートディレクターというお仕事はどのようなことをされるのでしょう?

松澤私はもともとはコンセプトアーティストだったのですが、現在はアートディレクターという立場になっています。チーム内のアーティストの動きを見て、「ここに行くんだよ」と目標の旗を立てて、アーティスト陣がみんなちゃんとそこに行ってくれるようにするのが役割です。

 どちらかというと自分が手を動かすのではなく、人と話をしたり、会議で進捗を確認したりといったことがメインになっています。

――アートワークチームの内部のやり取りというのは、なかなか想像しづらいところがあるのですが、たとえばチームの人にどんなアドバイスをしたりするのでしょう?

松澤人によって変わりますが、アーティスト陣はよく知っているので、「この人にはこういう言いかたをしたほうがいいだろう」とか、「この人にはこういう絵が必要だろう」と、人によって分けて接しています。「この人はこの分野の理解がまだ足りないので、サポートしたほうがいいか」などを考えたりすることもあります。

――Luminous Productionsさんというと、技術力が高いイメージで、それこそ技術屋集団的なカラーを感じますが、技術をうまく扱っていくためにこそコミュニケーションが重要になるのでしょうか?

松澤コミュニケーションは非常に重要だと思います。技術だけで何とかなっているというわけではないです。とくに私はアーティストチームで2Dアートディレクターをしているのですが、開発工程のなかでは上流工程(※)になります。最初に言葉のやり取りだけで始まっている企画を、まず絵に変えるところを手がけることが多いんですよ。

※上流工程は、開発・設計において最初に行う初期段階の工程のこと

 その最初の言葉のところというのは、プロデューサーやディレクターが話し合ったものですが、技術チームが求めていることとは噛み合わなかったりするんです。目指している方向が違うことがあるので、それをうまく絵で見えるようにして、お互いの理解が噛み合うようにしていくということをしています。

――“ワールドワイドを視野に入れたAAAタイトル”を開発中とのことですが、現在お話しできる範囲での開発状況等を教えてもらえますか?

松澤なかなかお話できることは少ないのですが(笑)。現在は決まっているところもあれば、まだ決まっていないところもあり、積み重ねをしているところですね。ですので、私のような上流工程にいる人間がすごく忙しくしている段階です。

――目指しているビジョンの共有をかなり重要視されているのでしょうか。

松澤そうですね。それに新規IP(知的財産)ですので、これまでと勝手が違うところもあると思います。取り組みに難しさがありますし、時間もかけています。

中原この時期をうまくやらないと、開発が途中で作っているものを見失ってしまいます。なにしろ新規IPですので、参考にできるものもありません。ここが緩いとあとでブレが出てきて、修正ができなくなってしまうので現在は妥協なく話し合って、時間をかけていますね。

――なるほど。そうしたディスカッションの場の雰囲気はどのようなものでしょう? 上下など関係なく、誰もが遠慮なく意見を言えるような空気ですか?

松澤そうなっていると……信じたいです(笑)。

中原大丈夫です(笑)。私は入社して1年ですが、上下関係や長くいるかどうかで意見に差をつけるような空気はまったくないですよ。

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固定時間勤務で心身を充実させて取り組む“アートとテクノロジーの融合”

――先日、ゲーム開発エンジン“Luminous Engine”の技術デモ“BackStage”を公開されました。開発にあたって大切にしていること、意識していること、共有しているキーワードについて、どんな言葉が思い浮かびますか?

松澤“アートとテクノロジーの融合”は、ずっとチーム内のテーマとして持っていたものですので、もうとくに意識することもなく、その方向性で最先端を目指す想いを共有しています。

 技術デモ“BackStage”を公開したCEDEC 2019の講演では、レイトレース(※)という最新の光の計算のデモを行ったわけですが、それに限らずCGの進化というのはどんどんリアリティを追求していく方向へ行っているんですよね。

※レイトレースレンダリングは、光線(レイ)を追跡(トレース)してオブジェクト表面の色や輝度を計算させるレンダリング技術。光の物理現象を擬似的なものではなく正確に表現することで、より自然でリアルな映像を作りだすことができる。

――最新技術でさらにリアルへ。

松澤我々もそれを追いかけていく方針ですが、ただ、リアルになり、現実的になっていくことで、ある意味ではつまらなくなる可能性も考えているんです。

――ゲームとして、表現として、おもしろいかどうかというような。

松澤そうです。海外のタイトルはひたすらリアルになっているわけですが、我々は日本のスクウェア・エニックスを母体にしたLuminous Productionsという会社として、リアルを目指すにしてもどういう特徴を出せるのか。これまで培ってきたものを活かせるのか、活かせないのか。どこを切り捨てて、どこを残していけば、リアリティのなかに自分たちの世界を出せるのか。そういうことをすごく意識しています。

――次世代に入っていくこともあり、またひとつ考えかたを練っていくべき時期なのでしょうか?

松澤1段階ステップが上がるのではと思います。技術が向上してさらにリアルになると、別のところに新しい違和感が出現します。いままではこれでよくても、急に違和感を覚える見えかたになってしまったり。そういう問題も出てくるなかで、どうやって自分たちの個性をつけていこうかと模索していますね。

――膨大なデータをAIに生成させたり、デバッグをまかせたりなど、技術によってこれまでのアプローチが変わってきていることもあるのではないでしょうか?

松澤ありますね。プロシージャル(※)の技術も進んでいて、我々コンセプトアート側がきっちり「こういうものにしたい」とデザインを決めて持っていっても、「そこはプロシージャルで全部のキャラクターが勝手に変わってくれるんですよ」などとあっさり言われたりします(笑)。

※プロシージャルは、数式や処理を組み合わせで自動生成を行うこと。テクスチャやアニメーション、さらにはモデリングもプロシージャルで生成できる

――なるほど。プロジェクトマネージャーである中原さんとしては、いまのような技術的なお話にもついていって、みなさんのパフォーマンスがより高まるように提案したり、チーム間の橋渡しをされるわけですよね。相当に多岐にわたっていてたいへんな業務なのでは?

中原そうですね、やっていることの幅は本当に広いと思います。ただ、Luminous Productionsでは、いわゆる庶務・雑務系の業務はプロジェクトマネージャーとはまた別で、担当がついています。たとえば、開発者の海外出張の手続きですと、お金の管理などの大事なところはプロジェクトマネージャーで見ていますが、手配などはその担当の方々におまかせしています。ですので、私たちは開発の方とのコミュニケーションを取ってうまく物事が進むようにすることに集中できます。

――開発サイドから要望されたことで、こういう対応をしましたというエピソードが何かありますか?

中原ツールの導入について、いわゆる“社内Wiki”のようなものが作れるといいのではという声があって、導入したんです。いままで、開発の中で口頭で伝わっていた技術や議事録を膨大な量のメールでやり取りしていたものが、すべてその社内Wikiに集約されるようになりました。何か困ったときには、そのWikiを検索すれば詳しい対応をすぐに見つけられます。

――チームパフォーマンスの底上げになるお話ですね。やはりそういった施策がうまく機能して喜ばれるのは、やりがいや達成感を感じるポイントでしょうか。

中原はい。「助かりました」と感謝されるのがいちばんうれしいです。プロジェクトマネージャーの仕事の中では、そう言ってもらえることが大きなやりがいになります。

――松澤さんのやりがいや達成感を感じるポイントというのはいかがでしょうか。アートとしての喜びや達成感というと、なかなか深い話になりそうですが。

松澤いやいや、単純ですよ(笑)。描いたものが褒められればうれしいですからね。ただ、そのうれしさが単純に褒められたからうれしいというだけでなく、“狙いどおりにハマってくれたからうれしい”みたいに達成感のレベルが上がってくるところはありますね。アートワークは自分の我を出せばいいだけの仕事ではありません。「このキャラクターはこういう人物なので、こういうデザインに」ということを、ゲーム中に目立ち過ぎないぐらいに入れていくなど、ちゃんと狙いをもって落とし込みます。それがうまく形になってくれると、すごくうれしいんですよね。それが、ユーザーさんにうまく伝わったと実感できたときがいちばんうれしいですね。SNS等で反応してくれているのを見て、すごく喜びになります。

――まさにモノ作りの醍醐味ですね。ちなみに、技術的な勉強会などはあるのですか?

松澤ありますね。プログラマーであればプログラマー勉強会のようなものを定期的に開いたりしています。

中原最近、プランナー勉強会も発足しました。いろいろな部署から自発的に「こういったことをやりたい」と相談されます。それで、社内のコミュニケーションツールで告知して、参加したい人を募集しています。そんなふうに行動を起こしやすい環境になっています。

松澤ライブペイント配信をしたいっていう相談をしたこともありましたね。

中原会議室では参加人数に限界がありますし、忙しくて全員が集まれなかったりしますが、配信なら自分の席でいつでも見られますからね。ミーティングの様子や作業風景の中継ができますよね、と松澤とも相談しています。

松澤アーティストが絵を描いているところを社内に配信したり。まだ実現できていないのですが、そういうこともやりたいですね。

――お互いのことを知ってもらうための社内活動がいろいろできるんですね。ちなみにLuminous Productionsは、業務時間を固定時間制(9:30~18:00)にしているということですが、それについてはいかがでしょうか?

松澤大きなメリットとして、“インプットの時間が取れる”ことが挙げられます。18時に仕事が終われば、外にご飯を食べに行ったり、飲みに行ったりと余裕でできますし、家に帰ってから映画を見ても、まだゆっくり寝られる時間的な余裕がありますよね。

 やはり、ずっと開発に根を詰めて、毎日帰るのが終電間際というのは、開発が佳境の時期は必要かもしれませんが、それが常態化して続いてしまうと、インプットする時間がなく、最先端のものにはついていけなくなります。何よりモチベーションが枯れてしまいます。固定時間制ですと、補充する時間が取れるところがいいですね。家族との時間も作れ、家庭も安定した上で仕事をしていくと。

――心の充実度を保てる環境で取り組めているんですね。

中原固定時間制なら会議を開きやすいというメリットもあります。この時間なら、誰もが基本的には会社にいるというのがハッキリしているんです。自由出社だと、会議に呼んだはずの人がいないといったことがあったので、そういうことがないのもメリットですね。18時になったら帰ることが当たり前になっているので、その範囲の中で仕事をするペース配分が身についています。それはいい環境だと思えますね。

――非常に働きやすい環境が整っていると感じますが、ほかのスタジオにはなさそうだなというような、特徴や強みはありますか?

松澤それぞれの“こだわりの力”がすごいと感じます。モデラーによるキャラクターモデルも、背景のアートも、VFXのエフェクトも、どれをとっても各々がものすごくこだわって取り組んでいます。

 そこはコンセプトアーティストとしてもうれしいところで、こちらが出したアートからできたものの魅力が下がらないんですよ。むしろ高められて返ってきたりするので、やりがいがありますね。

世界に挑んで自分を成長させられる刺激的なスタジオ

――求人にあたって、どのような人といっしょに仕事をしたいとお考えでしょうか? または、どのようなタイプの人がマッチしていると思いますか?

松澤チームの規模が大きくていろいろなタイプの人がいますので、最低限のコミュニケーションが取れることは必要だと思います。ただ、能力について言えば、人が大勢いるだけ、“とがった能力の人もいられる”環境だと思えるんです。

――大規模なチームだからこそ?

松澤たとえば、少人数のチームだと、マルチにいろいろなことができる人を集めないと回らなくなってしまいます。しかし人数が多ければ、“何かに特化していて一点突破の能力がすごい人”もいてほしいですし、実際にそういう人がたくさんいるんです。

――なるほど。何でもこなせる平均値の高い人がたくさんいるイメージを持っていたのですが、むしろ逆で、“特化した人の強み”こそ力を活かせる場かもしれないと。

松澤特化した人が集まって全体を形作っている……そういうイメージのほうが近いかもしれません。

中原「〇〇ならあの人にまかせよう!」といった存在の人がかなり多いですよね。

松澤アーティストの中には、動物にやたらと詳しい動物博士みたいな人がいるのですが、その知識を活かして、モンスターのデザインをしてくれているんですよ。

――ゲーム以外の特化した知識が活きるところもあるというわけですね。

松澤もちろん幅広くできる人にも来てほしいです。ただ、“〇〇に関しては負けない!”人にも、ぜひ応募してもらいたいですね。

――なるほど。プロジェクトマネージャーとしての目線からはいかがでしょうか。

中原「わからないけどやってみます!」という気持ちで取り組める人のほうが活躍できると思います。すごい技術を持っている人がすでにたくさんいますので、知りたいことは聞けば教えてもらえますし、聞きやすい環境が整っていますから、「やってみるので教えてください!」と言える人がいいのかなと感じますね。

――「知らない」と言えることや「教えて」と言えることは大事ですよね。社内はそれが言いやすい空気だと。

中原そうですね。自分にとって難しいことがあったとしても、なにしろ大規模なチームですから、得意な人にまかせて、自分は別のことをやるという分担ができます。それは大事なことだとプロジェクトマネージャー内でよく話しているところです。それぞれに得手不得手がありますから、協力して教えあいながらやっていける人が向いていると思います。

――「こういうことをやってみたい」と、新しいことにチャレンジしたいという人でもいいですか?

中原もちろんです! 何しろ、私がまさにそうでしたから。

松澤それにしてもプロジェクトマネージャーはたいへんですよね。最初は戸惑うと思うんです。それこそ、高度なエンジニアがたくさんいて、モデラーはレイトレースなどの専門的な技術話をしていて、アーティストはと言えば、抽象的な話ばかりする(笑)。

中原入社直後は、何を話しているのかも分からないところからのスタートでした。ひたすらメモを書いて、この人たちが何の話をしているのかを考えるところからでした。最近はやっとついていけるようになって、ツール導入などのお手伝いもできるようになりました。ただ、完全に専門的なことも理解しないといけないわけではなくて、それぞれに仕事の範囲があって、お互いに助け合うところが大事なんですよね。それが分かってからは混乱せずに取り組めるようになりましたね。

――そうした体制で挑んでいるのは、“ワールドワイドを視野にした新規IPのAAAタイトル”ですが、そのやりがいも大きいでしょうか?

松澤プレッシャーも大きいのですが、Luminous Productionsはまさにそのために作られた会社ですし、我々はそこに挑むために参加しているという、やりがいのあることだと思えます。「ハードルが高いな……」と思わずに、求人に応募してもらいたいと思います。

中原私でも入れましたから(笑)。最初は「私がこんなところに来ていいのか?」と何度も思ったのですが、「これならできるかも」ということがちょっとずつ増えていきました。社内にはいろいろな人がいて、やっていることを見せてもらったり、話を聞いているだけでも、すごく刺激をもらえて成長していける環境ではないかと思います。

松澤興味があれば臆さずに応募してほしいと思います。現在はモバイルゲーム界隈のほうが人の動きが激しくて、むしろそちらの経験しかない人もいると思うのですが、HD機での開発をしたい人もいると思うんですよね。そういう人はぜひ、ポートフォリオなど何か送ってきてほしいです。

中原私がLuminous Productionsに入ったばかりのころは、どんな会社なのか分からないことも多かったです。同じように思っている人もいると思うのですが、CEDECでの講演やファミキャリ!を見ていただいて、より広く私たちの取り組みを知ってもらいたいです。大きなチャレンジができるチャンスだと思いますので、ぜひ応募してほしいなと思います。

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Luminous Productionsってどんな会社?

 2018年に『ファイナルファンタジーXV』を手掛けたスタッフを中心に、スクウェア・エニックス・グループのゲームスタジオとして発足し、2018年12月には新スタジオヘッドに荒牧岳志氏が就任。新たなAAAタイトルの創出と、“世界最先端のテクノロジーとアートを融合させ、今まで誰も経験したことがないゲーム体験を作ること”をビジョンとしている。自社製ゲームエンジン“Luminous Engine”で開発を進めており、CEDEC 2019では最新技術デモ“BackStage”を公開するなど、最先端の技術を追求し、いままでにないゲーム体験を提供することを目指している。

株式会社Luminous Productions

●代表取締役:松田 洋祐
●設立年月日:2018年
●従業員数:約130名(2019年8月現在)
●事業内容:ゲーム等エンタテインメント・コンテンツの企画・開発

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日本の開発スタジオでは珍しい“固定勤務制”を導入。メリハリの効いた社内環境を実現している。
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CEDEC 2019で発表された最新技術デモ“BackStage”。自社ゲーム開発エンジン“Luminous Engine”(ルミナス・エンジン)の一環として発表されたもので、次世代ゲームグラフィック技術レイトレーシングのひとつ“パストレーシング”を導入して制作。