2Kが、ゲーム開発スタジオCloud Chamberの創設を発表。『バイオショック』シリーズの最新作をこれから数年かけて開発することを明らかにした。
Cloud Chamberのオフィスは、2K本社があるサンフランシスコ・ベイエリアのノヴァトとカナダのモントリオール州ケベックの2ヵ所に設けられるとのことだ(ケベックのスタジオは、2Kにとって初のカナダオフィスとなるらしい)。スタジオには、Visual ConceptsやFiraxis Games、Hangar 13、Cat Daddy Games、2K Silicon Valleyなど、2K傘下の開発スタジオの一団が加わることになるという。
Cloud Chamberのスタジオ総合代表(Global Studio Head)に就任するのはケリー・ギルモア氏で、2K史上初めて女性として開発スタジオを率いることになる。ギルモア(Kelley Gilmore)氏は、2Kの完全子会社であるFiraxis Gamesに20年近く勤務し、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション』や『XCOM』といったシリーズに携わるなど、22年のキャリアにおいて、これまでに40以上のゲームを世に送り出してきた。
ギルモア氏がノヴァトを拠点として業務にあたる一方で、モントリオール州ケベックのスタジオ・マネージャーを務めるのは、ケン・シャクター(Ken Schachter)氏。シャクター氏は、トロントにあるZyngaの元ゼネラル・マネージャーであり、独立系ゲーム開発販売会社であるTrapdoorの創設者でもある。GameloftやAutodeskなどで重要な地位に就いていた経験もあるとのことだ。
ファミ通.comでは、Cloud Chamberのスタジオ総合代表に就任したケリー・ギルモア氏にメールインタビューする機会を得たので、以下にお届けする。
世界を魅了する最高のゲームを作り上げるという究極の目標を達成したい
――Cloud Chamber成り立ちの経緯を教えてください。これまで『バイオショック』シリーズを開発していたIrrational Gamesとはまったく別物のスタジオなのでしょうか?
ケリー2Kでは『バイオショック』シリーズの拡大を以前から検討していました。2Kには素晴らしいスタジオがいくつもありますが、彼らはすでにほかのゲームの開発作業に取り組んでいます。そこで、『バイオショック』の新作を製作することが決まったとき、2Kはその実現のため、才能溢れるクリエイターたちによる新たなチームの編成に取り掛かったのです。
発売からかなりの年月が経過していますが、いまも『バイオショック』は世界中で愛され、たくさんの受賞歴を誇り、最高の評価を得たシリーズのひとつです。その売上はシリーズ累計で3400万本を上回っており、この大人気シリーズの次回作を製作できることをCloud Chamberは名誉に思うと同時にとてもワクワクしています。
――Cloud Chamberにはどのようなスタッフが参加しているのでしょうか? これまで『バイオショック』シリーズを手掛けていたケン・レヴィン氏などのスタッフはCloud Chamberに参加していますか?
ケリー幸いなことに過去の『バイオショック』シリーズに関わっていたベテラン経験者の製作スタッフもチームに加わってくれています。クリエイティブ・ディレクターのホーギー・ドゥ・ラ・プランテ(Hoagy de la Plante)、アート・ディレクターのスコット・シンクレア(Scott Sinclair)、そしてデザイン・ディレクターのジョナサン・ぺリング(Jonathan Pelling)など、チームの何人かは過去の『バイオショック』シリーズ製作において重要な役割を果たした人物であり、現在はCloud Chamberで開発指揮を担当しています。また、チームには『コール オブ デューティ』、『アサシン クリード』、『スター・ウォーズ』、『バトルフィールド』、『ウォーキング・デッド』といった人気作に携わっていたベテランメンバーも在籍しています。Cloud Chamberのゲーム開発経験の深さと多様性は、必ずやつぎなる『バイオショック』シリーズを素晴らしいものに導いてくれると私は信じています。
ケン・レヴィン(Ken Levine)率いるGhost Story Gamesのチームは、まったく別の、誰もが楽しめる最高のゲームになるに違いない新作の開発に全力を傾けています。彼はCloud Chamberの傘下にはなく、『バイオショック』次回作の開発にもタッチしていません。
――スタジオの方針を教えてください。
ケリー『バイオショック』シリーズのような一世を風靡した不朽の名作に携わることの責任を、私たちは真剣に受け止めています。期待に違わぬ作品を生み出すため、私たちは「スタッフを何より大切にするべき」と考え、毎日の仕事が楽しくなるスタジオ作りに専念しています。私たちは自分たちの仕事に情熱を持っていますが、スタジオ外での生活も同じくらい非常に重要であると承知しています。ワーク・ライフ・バランスの実現に必要な業務上の柔軟性をスタッフに提供する一方で、スタッフが互いを信頼して高品質な仕事をスケジュール通りに進められるようにすることにより、私たちは世界を魅了する最高のゲームを作り上げるという究極の目標を達成したく思っています。
――カリフォルニア州ノヴァトとケベック州モントリオールという、拠点をふたつにした理由をお教えください。どのような効果を期待していますか? ふたつの拠点はそれぞれ強みを活かしての作業分担が異なるということでしょうか?
ケリーCloud Chamberのスタジオをノヴァト(サンフランシスコ・ベイエリア)とモントリオールの両方に設けたのは、ゲーム開発で世界の頂点に立っているふたつの都市で素晴らしい才能の持ち主を雇用する機会を得るためです。また、私たちが2K初のモントリオール・スタジオであることにもワクワクしています。私たちは、世界で活躍する人材を惹きつけ、『バイオショック』次回作の開発に加わってもらいたいと考えています。ノヴァトとモントリオールは、この目標実現のために最高のロケーションなのです。
私たちは自分たちを、開発プロセスの全局面において責任を共有する、ふたつの場所に存在するひとつのチームと考えています。さまざまな異なる経歴と経験を持つ人々から学び、力を合わせる機会が得られることは、スタジオの大いなる成長へもつながるでしょう。
――Cloud Chamberという社名の由来をお教えください。
ケリーCloud Chamber(“霧箱”)とは、科学実験に用いられる装置の一種で、通常は見えない大気中の粒子を可視化します。いわば霧箱は、異なる要素を混ぜ合わせて実体化させる空間を作り出すのです。この装置からインスピレーションを得て、私たちは自分たちの創造的精神の中にあるアイディアを見えない要素、日々の共同作業をそうしたアイデアを世界中の人たちの目に見える形にするための媒体と考えました。人を媒体とした“霧箱”、それが私たちのスタジオなのです!
――現時点でのスタッフ数は何名となりますか?
ケリーいまの時点で具体的なスタッフ数をお答えすることは難しいのですが、『バイオショック』の次回作を素晴らしいものにするため、ノヴァトとモントリオールの両方で、あらゆるレベルとジャンルの人材を数多く雇用するつもりです。もしこの記事を読んで興味を持った方がいらっしゃいましたら、Cloud Chamberの公式ウェブサイトをご覧ください。募集中のポストをご確認いただけます。
感動的なストーリーと魅力的な世界観を提供する
――新作に着手するにあたって、Cloud Chamberの皆様は、『バイオショック』というIPの魅力をどのようなものだと分析し、次世代の『バイオショック』はどのようなコンセプトやビジョンのもとで開発しようとされているのでしょうか?
ケリー『バイオショック』は感動的なストーリーと魅力的な世界観でビデオゲームに新たな定義を与えました。プレイヤーはそれぞれが違う方法でゲームの世界へ飛び込み、忘れられない経験をすることができるのです。これがデザイン・ビジョンの中核であることは『バイオショック』の次回作においても不変ですし、それを最高の形で実現するためのアイデアもたくさんあります。
――新作『バイオショック』の対応予定ハードを教えてください。プレイステーション5やProject Scarletということでしょうか?
ケリー『バイオショック』の次回作の開発には数年を要します。プロジェクトは始まったばかりですので、特定のプラットフォームに関してまだ具体的なお答えをするのは難しいです。
――次世代のハードに向けて、新作『バイオショック』で取り組んでみたいことはありますか?
ケリーこの業界の魅力的なところは、テクノロジーの様相が変化しつづけ、それによって物語の語りかたやファンを楽しませる方法も変化し続けていることです。まだ開発はごく初期の段階にあり、詳細をお話しすることは難しいのですが、さまざまな選択肢を試し、リスクに挑むチャンスがあることを私たちは嬉しく思っています。
――『バイオショック』ファンは日本にもたくさんおります。今回の報に驚喜する日本のファンも多いと思いますが、最後に日本のファンに向けてのメッセージをお願いします。
ケリー素晴らしい日本の『バイオショック』ファンの皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。このシリーズの次回作に携われることに、Cloud Chamber一同とてもワクワクしています。『バイオショック』に関する皆様のお考えをぜひお聞かせください。私たち発表に皆様がどのような反応を返してくださるか、皆様のご意見ご感想を拝見することを楽しみにしております。