“夏川椎菜の世界”が詰まった『Ep01』

 精力的にアーティスト活動を続ける、声優・夏川椎菜さんのミニアルバム『Ep01』が2019年9月25日に発売された。夏川さん自身が作詞を担当した楽曲3曲に加え、2曲の楽曲を収録したミニアルバム形式のCDで、そのミニアルバム全体のコンセプトや作詞の方向性に関しても、夏川さんのこだわりが随所に散りばめられた1枚となっている。

 そんな『Ep01』について、そして現在開催中の1stライブツアー“プロットポイント”について、夏川さんに語っていただいた。

Ep01【初回生産限定盤】
2019年9月25日発売
2222円+税
Ep01
2019年9月25日発売
1852円+税

夏川椎菜(なつかわ しいな)

1996年7月18日生まれ。千葉県出身。代表作は、『ハイスクール・フリート』(岬明乃役)、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(望月杏奈役) など。ユニットTrySailとしても活動中。文中は夏川。

秘蔵の楽曲たちを収録した自信作

――今回の『Ep01』ですが、収録曲に統一感がないように感じたのですが、これはあえてのコンセプトだったのでしょうか?

夏川そういうコンセプトです。でも、私が最初のころに考えていたのは、もっとガチガチのコンセプトにまとまったものでしたね。もともと、この『Ep01』を作ろうとなったときは、何曲入れるかすら決まっていなくて。ただシングルよりはたくさん入れたいねという話で、3曲から4曲、5曲と話すうちに増えていって、最終的に5曲入りでまとまったんです。

 「ワルモノウィル」が表題曲になることは最初に決まっていたので、こういったダークファンタジー風の曲を3曲くらい集めて、ジャケットもダークファンタジーみたいな雰囲気にして……というコンセプトミニアルバム的なものを作りたいです、と言っていたんですが、スタッフさんから「それだとそもそもの“EP”の意味からズレるよ」と言われまして。

――EPの本来の意味?

夏川サウンドプロデューサーから聞いたのですが、そもそもEPとは“アルバムでもないし、シングルでもないし、でも活動を続けている中でできあがった5、6曲の楽曲をコンパイルした”というものだそうなんです。それを聞いて「じゃあEPとして出すなら、逆にもっといろいろな曲を詰め合わせて、ごちゃごちゃのほうがいいのでは?」と。そう考えていたところに、今回の『Ep01』用に曲たちが集まってきて。聴いてみたら、本当に方向性がバラバラだったんです。

――結果的に(笑)。聴き進んでいくたびに、まったく異なるイメージの曲が出てくるので、驚きました。

夏川 “バラバラにする”というコンセプトになってからは、曲のアレンジもイメージを合わせるのではなく、むしろバラバラになるように散らしていきましたね。

――1stアルバム『ログライン』のインタビューのときに、入れたいけれど入らなかった曲があるというお話をされていましたが、そのあたりの曲が『Ep01』に入っているのでしょうか?

夏川「ワルモノウィル」と「キタイダイ」が、まさに『ログライン』のときに漏れちゃった曲になりますね。ちゃんと収録できてうれしいです。

――入れたかったものが、ついに入れられたと。

夏川そうですね。アルバムのときに入れられなくて泣く泣くあきらめた曲もあったんですが、今回の『Ep01』で整理がついたので、出し切ったような気はします。まだ、いろいろとやりたいものはありますが(笑)。

――『ログライン』が(2019年)4月に出て、半年足らずでシングルではなく、EPを出すというのは早い展開だと思うんですが、もともとこういったスケジュールを考えていたんでしょうか?

夏川ライブをやることが決まって、「ライブまでに新曲が欲しいです」という話をずっとしていたんです。それで、最初はシングルを出そうという話もあったんですが、もっと新曲が欲しくてEPという形になりました。

――なるほど。ライブに合わせてのものなんですね。

夏川初のソロライブツアーなので、なるべく“夏川椎菜”の世界でやりたいという想いがあって。でも、そのためには曲が足りないし、私自身アーティスト活動が好きで、今後もずっとコンスタントにやりたいと思っていたんです。そうなると、やはり曲がいっぱい必要ですし、今後の展開も考えて、なるべく早めに新曲を出したいですと、スタッフさんと話をしました。

――イベントなどではカバー曲を披露されていましたが、ソロライブではご自身の曲がもっと必要になりますからね。今回、『Ep01』に収録されている5曲のうち、3曲で作詞をされていますが、これは当初からそれくらい作詞をする予定だったんでしょうか?

夏川60%ぐらいやっていますね(笑)。作詞をやりたい気持ちはもともとあって。『ログライン』のときに「(作詞を)やってみない?」と言ってもらえたんです。そのときは結局3曲書いたんですが、そこで自信みたいなものもついたので、「つぎもやれるぞ!」という気持ちになりました。

 その後、『Ep01』の会議のときに「何曲やる?」、「表題はやりたいでしょ?」ということで表題曲は私が作詞をすることに。「キタイダイ」という曲は『ログライン』のときにずっととっておいた秘蔵曲でありつつ、『Ep01』全体を通しての“裏表題”となっている曲でもあるので、『Ep01』のカギになる曲という意味で、「これもやりたい」と。

 さらに、「グルグルオブラート」は今回『Ep01』のために集めた曲の中で私がイチバン好きな曲で、「こういうのやりたかった」みたいなドンピシャな曲だったので、「これは自分でやりたいです」と言った結果、3曲になりました(笑)。

 逆に今回作詞をお願いしているワタナベハジメさんやHAMA-kgnさんには、ぜひ書いていただきたくて、私からお願いしたんです。「HIRAETH」という曲が夏川的には初の癒し系の曲で、私的にも英語の歌詞に挑戦したいという想いもあって、そこはいつも私の曲の歌詞を書いてくださっている安心・安定のワタナベハジメさんにお願いさせていただいて。

 「ロジックルーパー」はHAMA-kgnさんの曲なのですが、HAMA-kgnさんは、私たちのスタッフ内で“驚異の高打率”と言われているんですよ(笑)。アルバムのときも2曲、今回も2曲やっているので、本当に何曲も作っていただいてお世話になっているんです。なぜそこまで高打率なのかというと、HAMA-kgnさんの曲は仮歌の時点で詞のハマりかたがキレイなんですよね。そこが私はすごく好きで。しかも、HAMA-kgnさんは作詞もできるとうかがったので、HAMA-kgnさんにやっていただいたらハマりのいい、ノリのいい曲になるんじゃないかと。ちょうど、「ロジックルーパー」もそういう曲だし、ハマりいい感じに作っていただきたいと思っていたのでHAMA-kgnさんにお願いしました。

――そういうお話を聞くと、本当に夏川さんの望んだものが詰まっているんですね。

夏川そうですね。制作陣に関してはアルバムのときからお願いしている方もいっぱいいらっしゃいますし、逆にはじめましての方もいらっしゃいました。

――ちなみに、今回の作詞は順調でしたか?

夏川アルバムのときよりは順調だったと思います(笑)。アルバムのときは初めてだったこともあり、わからないことが多くて。あと自分の中の“うまくいくための方程式”ができていなかったんです。でも、今回はアルバムの制作の中で方程式を生み出してからの作業になったので、けっこうスムーズにいったんじゃないかなと。完成した後の作品を見ても、自分的にいい歌詞が書けたなと思えるデキになっているので、すごく満足しています。

――だいぶ慣れてきたと。

夏川はい。でも、スケジュールなどはいまだに少し怖いです。「3日後に完成させてください」みたいな締切を設定されたら、できるかわからないですね。そこまでのコントロールはまだできなくて。たとえば、今回で言うと「グルグルオブラート」は完成まで3時間で一気に書けて。

――3時間!? それは早いですね。

夏川「グルグルオブラート」と「キタイダイ」の2曲は、けっこう早くできたのですが「ワルモノウィル」が難しくて……。テンポが速いというのもありましたし、どうしても思いつかないところがあったりもして、その部分の詞を思いつくのにすごく時間がかかりました。でも、“ひらめき”さえすれば、あとは流れるようにという感じでしたけどね。この“ひらめき”がいつ来るのかがわからないので、まだスケジュール管理まではつかめていない感じです。

――なるほど。歌詞に関して「ワルモノウィル」や「グルグルオブラート」は若干、闇の夏川さんが出ている感じがありましたけど、そこはもう気にせず、自分を出していこうという感じですか?

夏川なんかひとつ吹っ切れたなって(笑)。

――(笑)。

夏川前回の作詞でけっこうとんでもないものを書いたりもしたので。アルバムのときは「自分はこういう歌詞は絶対受け入れられない」という人もいるだろうな、と思いながらも出したところがあったのですが、意外と受け入れてもらえたり、「歌詞好きです」と言ってもらえたので、「あ、じゃあ! (この方向性で)いいんですか!?」と(笑)。「ワルモノウィル」までいっちゃったら、もう戻れないかもと思ったんですけど、怖いながらも受け入れてもらえると信じて……。

――まわりの人から心配されたりしませんでした? プロデューサー陣とかから「大丈夫か?」みたいな。

夏川「ワルモノウィル」を提出したときは目の前でチェックしてもらったんです。そうしたら、プロデューサーがめっちゃ笑いながら、途中苦笑いもしながら、「なんかごめんな」みたいな。

一同笑

夏川別にあてつけというわけではないんですけど、そう感じ取られてしまったらしく……。こんなこと書いたら「あれ、俺のこと言ってる?」ってなりますよね(笑)。

――(笑)。たぶん、夏川さんと同年代の方だったり、ファンの方は共感したり、何かしら感じ取る部分があると思うのですが、まわりの大人たちはこの歌詞を見て心配するんじゃないかと。

夏川されましたされました。心配されました(笑)。こういう歌詞になった理由としては、もちろんアレンジだったり、そもそもの曲の方向性だったり、自分のもっていきたい方向性だったという意味もあります。ただ、細かいニュアンスなどは、そのときの心理状況みたいなものが色濃く出るな、と。ストレスが溜まっているんだなっていうのは、ちょっと思いますね(笑)。

――(笑)。歌詞を最初に見たときに、「ここまで書くのか」とちょっと思ってしまいました。

夏川でも、ここまで書いてもオーケーを出してくれるんですよ、大人たちが。細かい意味合いの部分ではペケ出されたりもしますけど、基本的な方向性や伝えたいワード、伝えたいコトが否定されることはまったくなくて。それは前回のアルバムのときもそうでした。「伝えたいことはこれでいいけど」と言ってくれるので、そこは心配せずに自分が伝えたいことは言っていいんだと思いながら作詞をしています。まあ、プロデューサーはそれでオーケーだけど、いつかマネージメントからNGが出る可能性はあるかもしれません(笑)。

――行きすぎてしまうと戻れなくなりますからね。続いて、各楽曲のイメージをうかがえればと思うのですが、「ワルモノウィル」はゴシックロックのように感じました。

夏川そうだと思います。もともとの原曲というか仮歌状態のときは、いま以上にハロウィン感が強かったんです。メルヘンチックというか、ダークファンタジー寄りではあるものの、かわいい系の音がもっと混じっていたんですけど、アレンジの段階でそういったものを全部削ぎ落として、低音をドスドスいれてバンドサウンドっぽく寄せました。

 あとはMIXのときに細かい音の調整をしたのですが、「これもう(調整じゃなくて)アレンジじゃね?」と思ってしまうくらい変わったところもありましたね。冒頭の“ドッドーン!”って広がる感じもホラー感があるじゃないですか。ああいう部分を後から追加していった感じです。「ホラーとはなんぞや?」というところを突き詰めたような曲になっているんじゃないかなと思います。

――MVもちょっと怖いイメージですね。

※『ワルモノウィル』のMVはコチラ

夏川“怖さ”と“得体の知れなさ”、“不気味さ”というのをけっこうグチャグチャにしたような雰囲気ですね。でも映像としてはキレイで美術的に見えるように作るというのを大事にしていたので、色味の調整だったりとか、フィルムの撮りかた、照明にも気を遣って撮りました。

――野菜とかも色味がしっかり出るようにされていますよね。黒いソースをかけて食べているのがすごく不気味で、怖くて。あれどんな味なんだろうと……。

夏川言ってしまうと、あの黒いのはデミグラスソースに墨を入れたやつなので、味的にはデミグラスソースです。ふつうにおいしかったですよ(笑)。今回メイクにもこだわっていて、ジャケットもそうなんですけど、目もとに印象的な色を入れたり、リップも濃いめのものを使ったり、いままでとは違うんだぞ、というところを意識しています。

 これまでの私のMVって明るいものが多かったりとか、やわらかい衣装というものが多かったんです。だから、メイクもふだんの雰囲気からあまり変わらないものとか、髪型もあまり奇抜なものにしないというのを意識していました。ただ、今回はアルバムを経て、つぎの段階にいくときに「ガラッと変わったな」という印象を見せたかったので、いままでの衣装では着ていなかった青を着てみたりとか、メイクをちょっと濃くしてみたりしています。

――確かにだいぶ印象が違いますよね。

夏川このMVの撮影のために髪を染め直したんです。ストレートにはしようと決めていたので、ストレートが映える色は何かなって考えたときに、明るかった色を抑える方向にして。わりと色を抑えたら、3、4年前の黒髪時代に戻ったような感じがして、それはそれでよかったなって感じはしますね。

――最近明るい色が多かったですからね。

夏川ここで一度、原点回帰もありつつ、新しい一面も見せるという意味では、意味のある髪色になったんじゃないかな、と。自分ではすごく満足しています。

――間奏のところのダンスも印象的ですね。映画●棒的な……。

夏川(笑)。やっぱり生で見るこういうダンスはすごかったですね。私自身は後ろですごく無愛想な顔をしているんですけど、心の中では興奮しっぱなしでした。「スゲェ!」って(笑)。しかも、ふつうは見られない後ろから見ていたり、めっちゃ近くで見ているので筋肉の動きとかもわかるんですよ。相当たいへんなんだなって。

 あと、このMVでいうと“ループ感”を大事にしたくて、最後のほうから最初に戻っているような構成になっているんです。「ワルモノウィル」の歌詞で伝えたいことって、何を言われても解決しないというか、何があっても解決しないこと、というか。一度これに気づいてしまったら絶対にもとには戻れない、それから先は誤魔化していくしかない、という内容になっているんです。だから、“解決しなかったです”というバッドエンド感を表現したくてループものにしました。私、バッドエンドものが好きなんですよね。小説とか映画とか、結果振り出しに戻ってしまうみたいな作品が好きなんです。

――なるほど。そして、「グルグルオブラート」はかわいらしい感じのポップソングというか。

夏川そうですね。曲がかわいらしいからこそ、こういう歌詞にしたかったというのがあります。歌詞の内容としては、“おとなクソ”みたいな(笑)。

一同笑

夏川すごく簡単にですよ? すごく簡単に5文字で言うと“おとなクソ”(笑)。歌詞の方向性としては、アルバムで言うと「ステテクレバー」に近いですね。何かに対する文句をつらつら言っているイメージ。

 これもやっぱりループ感を大事にしていて、もともとの仮歌詞がメリーゴーランドみたいな歌詞だったんです。それが印象に残っていて。明るい歌詞だったんですけど、サビもずっとくり返しだし、印象に残るメロディーがずっと頭の中でぐるぐるぐるぐる回っているようなイメージで。解決しない感覚や、ループするようにずっとぐるぐる同じことを考えているような感覚を出したいなと思ったので、結果こういう歌詞になりましたね。

 サビは最後の最後まで全部いっしょっていう、歌う側は超覚えやすい歌詞になりました(笑)。でも、“歌詞が全部いっしょ”という構成も、頭の中でずっと「ああなったらいいな」、「こうなったらいいな」ということをぐるぐる考えている感覚を演出するために選んだ構成でしたね。

――韻を踏んでいるところもありますし、くり返しを意識しているんですね。

夏川そうですね。後はすごくメタなことなんですけど、「単純なけいさんで」と「だんじょんも最短で」が完璧すぎて、私の中で。「やばい、すごくいいの出た!」って、興奮しました(笑)。

 ちょうど、この歌詞のところでシンバルがシャーンシャーンって鳴っているんですよ、そこに合わせて「ここで韻を踏みたいな」と。かつ子どもと大人を対比させたいと考えたときに、「これ以上いいものが書けない!」と思える歌詞が出てきたんです。それで、いいものができたから、これ3回くり返しても許されるんじゃないかと思って(笑)。むしろ「3回くり返したほうがちょっと美しいまであるわ」って思ったので3回くり返しました。

――(笑)。2回よりは3回くらいいったほうが美しいと。

夏川下手にこれと同じような韻を踏んで違うものを作るよりは、同じものをくり返すことで、ここを際立たせて印象に残らせたかったんですよね。強行突破でした。

一同笑

――歌詞を見たときに、すごく目につくんですよね。ひらがなとの使い分けも含めて。

夏川そこもすごく意識しました。私自身、ダブルミーニングのような歌詞が好きで。文字の違いだったり、スペースの有無でふたつの意味を表現しているような作品がすごく好きなんです。ですので、そういう技術もふんだんに使いながら、使えるものは全部使って書きましたね。それこそ「ワルモノウィル」でもスペースの違いでちょっと違うことを言っているという歌詞にしているので、スペースにも注目していただきたいです。表記にもこだわっているので。

――3曲目の「HIRAETH(ヒライス)」ですが、この言葉は調べてみたらウェールズ語なんですね。

夏川そうです。これも私のミーハー心でつけちゃったんですけど、『なくなりそうな世界のことば』という本の中に“ウェールズ語”がありまして。“消えそう”というのは、いまウェールズ語を使っている人が少なくなっていて、いつかはなくなっちゃうかもしれない言葉ということなんですね。

 “HIRAETH”という言葉は、日本語には訳しきれない言葉になるんですけど、簡単に言うと、“昔はあったけどいまはないものを懐かしむ”みたいなことなんです。もうなくなってしまったものを懐かしむ。虚しいけれど、懐かしいという気持ちだけはある、という意味合いがあるんです。初めてその言葉を聞いたときに、めっちゃいい言葉だと思って、いつか使いたいなと。それでここぞとばかりにワタナベハジメさんに「“HIRAETH”って言葉があってね」とお願いしたんですよ。

――言葉の意味から説明して。

夏川ワタナベハジメさんにはメールでお願いしたんですけど、「HIRAETH」は癒し系の曲というか、私の曲の中では異質な曲になるんじゃないかなと感じていたので、雰囲気を重視してもらいたいということをお伝えして。かつ“HIRAETH”という言葉が持つ雰囲気、“空虚な懐かしさ”というのをテーマにしてほしいとお願いしました。

――その結果なのか、英語詞がふんだんに盛り込まれていますね。

夏川英語詞が多くなったのは、曲を書いてくださったkidlitさんが歌っていらっしゃった仮歌がほぼ英語だったというのもあるのですが、私からこういう曲が欲しいんですと提出した曲があって。その曲が英語だったのもあって、雰囲気を少しでも寄せられればとお願いしたんです。

 英語詞というのが、私の中での挑戦でもあったんです。それでタイトルも英字にしています。『Ep01』に収録された5曲中、4曲が全部カタカナだったりとか、アルバム『ログライン』の楽曲も、最初に出したシングル『グレープフルーツムーン』に収録された「Daisy Days」と「gravity」以外全部カタカナなんですよ。別に超こだわっていたわけではなくて、私の好きな字面を集めたら結果カタカナになっちゃっただけなんです。「HIRAETH」はそういう意味でもほかの曲とは違うんだぞ、ということを表現したかったので、このタイトルにしました。プロデューサーはすごく気を遣って、最初“ヒライス”とカタカナにしてくれていたんですけど、「もとのスペルでいいですよ」と言って、英字にしてもらいました。

――確かに夏川さんの曲はカタカナだらけですね。

夏川そうなんですよ。よく「意味があるんですか?」と聞かれるんですけど、ないです。ただ好きなだけなんです、カタカナが(笑)。

――(笑)。“HIRAETH”は曲調的にはボサノバやフレンチホップのイメージかなと思いました。

夏川ちょっとレトロなイメージを意識して作ってもらいました。なのでウッドベースとか、ふだんあまり使わないような楽器も使っています。ウッドベースとドラムは生の音を録っているんですけど、その収録現場に私もおジャマさせていただいて、曲ができていく過程を見せてもらいました。もうそれ以来、ウッドベースの心地よさが本当に忘れられなくて。もともとベースは好きなんですけど、ウッドベースの音を迫力ある生音でちゃんと聴いたのは初めてだったので、「ウッドベース超いい!」って。また使いたいなって思いました。

――アコースティックやジャズのような曲調のものが今後出てくるかも、ということですか。

夏川もともと、そういう曲が好きだったりもするので、すごくツボなんですよね。また新たにハマるものができそうです。

――4曲目の「キタイダイ」は、ロックですかね。

夏川そうですね。「エモエモのロックで」という頭の悪いお願いをしたんですけど(笑)。

一同笑

夏川これも秘蔵の曲で、最初聴いたときから「すごくエネルギッシュな曲だな」と思っていたんです。最初のイントロのコードが不思議なんですよ。そのコードがずっと頭の中にあったので、私からしたらもはや懐かしい曲になっているんですね、ずっと聴いていたので。だから、ようやく歌えてよかったな、という気持ちがあります。アレンジを川口圭太さんにやってもらったこともあって、すごくエモいロックになりました。

――ほかに作詞した2曲よりも、歌詞が若干前向きに感じました。

夏川私が書いたにしては前向きですね。

一同笑

夏川しかも、ちょっと解決の兆しが見えるという。方向性としてめちゃめちゃ明るいのは合わないなと思っていたのですが、まっすぐ伝えるように歌うから、不満だけじゃ伝わりきらないなと感じたんです。だから、希望が見えるというか、これを聴いた人といっしょに歩んでいけるような曲にしたかったので、少し前向きさを出しました。

 あとはメロディーやアレンジがそもそもバンドライクな曲ではあるんですけど、ちょっと乱暴な印象を受けたので、歌詞も乱暴な雰囲気が合うだろうなと。そこで言葉使いもちょっと若者言葉というか、力が入りやすい単語をチョイスしています。

――そして、ラストは「ロジックルーパー」。これもポップスなのかロックなのか、その中間のような感じですかね。

夏川私的には不思議な感じがする楽曲で、すごく好きな曲です。この曲もEPの5曲の中では明るいほうだと思います。曲を聴いて、みんなで手を振りながらライブで盛り上がる、みたいなイメージが真っ先に浮かんだので、みんなに共感してもらえるような歌詞をお願いしました。それと「世の中生きてると、こういうこともあるよね、こんなことだってあるしたいへんだよね、でもそんなの全部忘れてこうすればいいでしょー!」みたいな、ちょっとバカになれるような曲にしたいです、とお願いしたのでこのような曲になりましたね。「ロジックルーパー」はイントロが本当に好きな曲です。HAMA-kgnさんの曲は全体的にイントロがめちゃくちゃいいんですよ。イントロのあのパー↑パー↑パー↑パー↑って入ってくる、あのバカな感じ。

――(笑)。

夏川あの音がライブで流れたら、みんな「ファー!」って一気にアガるじゃないですか。それが頭に浮かんだので、これは収録したいと思った曲でしたね。

――確かに、すごくライブ向きな曲調ですよね。

夏川今回だけじゃなく、アルバムのときもそうだったんですけど、全体を通してイントロは大事に作りましたね。

――最初に受ける印象は大事ですよね。今回『Ep01』はライブのセットリストのような順番になっているなというイメージがありました。「ワルモノウィル」が勢いある感じでスタートして3曲目でしっとり系の曲を入れて、後半さらに盛り上げる、という流れで。

夏川じつはバラバラな雰囲気の5曲を集めましたと言いつつ、私たちの中では、一応方向性として2種類に分けていて。「ワルモノウィル」が表題で「グルグルオブラート」と「HIRAETH」の前半パートがA面。「キタイダイ」がさっき言った通り裏表題ということで、「キタイダイ」と「ロジックルーパー」がバンドサウンドでライブを意識したB面みたいな感じですね。昔のレコードで言うと表と裏で入っているような感覚で、この2グループは分けて考えていました。そういうふうに分けていたこともあって、曲の収録順を決める会議があったのですが、30分ぐらいで終わってしまって、みんなすんなりと同意してくれましたね。

――なるほど。タイトルが『Ep01』と、ドストレートなものになりましたが、その理由は?

夏川これもいろいろな人から“EPとはなんぞや”という助言を聞いたうえで考えたものではあるんですけど、すごく要約すると「ストレートなほうがカッコイイぜ」と言われたので、じゃあストレートでいきましょうと。

――(笑)。

夏川EPという言葉は絶対に入れたくて。EPの正式表記ってどっちも大文字なんですよ、EもPも。これを小文字にした理由というのがあります。

 EPというのは“Extended Play”を省略したものなんですけど、“エピソード(Episode)”もEpって略すじゃないですか。私としては『ログライン』で物語チックに作ったアルバムがあって、そのつぎの展開が『Ep01』だと考えているんです。“ログライン”というのは、物語を1行で簡潔に示す文章のことで、“〇〇が、××をして、△△をする物語”みたいな叩きのことなんですね。そのつぎに出すモノとして考えたときに、“#1”、“1話”かなと。そういう“EP”の使いかたもしたいなと思ったので、Pを分かりやすく小文字にして、01は単純に1枚目というだけなんですけど。

 ちなみに、01(ゼロイチ)の読みかたが、なんで“ゼロワン”じゃないのかというのは、単純に私が読みやすいからです(笑)。どうしてもゼロイチのほうがなじみがあるので。そうして、『Ep01』というタイトルになりました。

――では、もしかしたら02、03と続く可能性もあると……?

夏川そうですね。今回のEP制作で、EPの楽しさがわかったというか、ミニアルバム(EP)を作るワクワクとかウキウキをすごく感じてしまったので、もう2曲入りのシングルには戻れない自分がいます(笑)。

――(笑)。夏川椎菜の世界を表現するには、2曲じゃ足りないと。

夏川むしろ、もったいないと思ってしまいますね。このCD(容量的に)もっといっぱい入るよ? って思っちゃう。

一同笑

夏川もちろん、作るのはめちゃめちゃたいへんなんですけど、作詞曲を3曲も入れられるっていうのは5曲作っているからこその強みでもあるので。

 私としては「CD全部、私の作詞です!」というものを作る気はいまのところなくて。自分の考える世界や物語を歌いたいという気持ちはあるのですが、一方で、誰かが作った物語を演じたい気持ちもあるんです。それをどっちもやるとして、でも、それこそシングルの2曲だったら1曲ずつになっちゃうじゃないですか。それはなんか寂しいな、と。だから曲をいっぱい作りたいんですよね。

――できるなら、今後もシングルよりはEPを続けていきたい?

夏川必要ない限りは、もうシングルはやらないかもしれないです。あんまり断言するとよくないかもしれないですけど。

――制作陣からすると、「え?」って困っちゃいそうですね(笑)。

夏川今回、“01”とつけたのは、02、03と続けていきたいな、という意味も込めているので、ぜひ続けていきたいですね。

――このミニアルバムを経て、ライブツアー“プロットポイント”が9月25日から始まります(※このインタビューはツアー開始前に行いました)が、『Ep01』の曲も歌われるのでしょうか?

夏川『Ep01』の曲も歌う予定ではあるのですが、あくまで今回は『ログライン』のライブというか、『ログライン』を経てのライブというイメージが強いので、『ログライン』をたくさん聴いて物語を想像してきてくれたらなと思います。

 “プロットポイント”は『ログライン』制作時に考えていた私の妄想を実現する目的でやっているようなライブになっていて、「ファーストプロット」で語っていることを表現できたらいいなと思っています。ああいう形でライブをするのは最初で最後なんじゃないかなと思うので、ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

――ライブツアーについては、夏川さんから「こういうことをやりたい」という意見を出されたんですか?

夏川そうですね、ほぼ私が文句ばっかり言っていました。

一同笑

夏川今回は私の文句ばっかで成り立っています。「これやりたい、あれやりたい」って。むしろ私が固めすぎて困っていると思いますね。本当に申し訳ない。だから、宣伝をがんばろうって思っています。いろいろと無理させているような気がするので、宣伝とか今後がんばっていきます。

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