夏川椎菜さんが語る『ログライン』

 声優・夏川椎菜さんが、2017年4月5日に1stシングル『グレープフルーツムーン』でソロデビューしてから約2年弱。夏川さんの日とも言える、2019年4月17日“417(しいな)の日”に1stアルバム『ログライン』が発売される。

 これまでの3枚のシングルをすべて収録しつつ、初の作詞に挑戦したという、夏川さんのアーティストとしての成長が詰まった1stアルバム。今回、このアルバムについて、夏川さんへのインタビューを行った。

2年の歩みを示す、夏川椎菜1stアルバム『ログライン』インタビュー。初挑戦の歌詞には光と闇のナンスが!?_01

 『ログライン』に込めた想いから、アルバム発売日に開催されるイベント“平成31年度4月17日(しいな)の日”、そして、ファミ通.comで連載中のゲームブログ“夏川椎菜のGAMEISCOOL”に絡んだゲームのお話まで、たっぷりとお聞きしたので最後まで読んでほしい。ちなみに、ファミ通.com Twitter(@famitsu)で、夏川さんのサイン入りポラロイドのプレゼントもあるので、そちらもお見逃しなく!(応募の詳細は記事末尾に)

夏川椎菜(なつかわ しいな)

1996年7月18日生まれ。千葉県出身。代表作は、『ハイスクール・フリート』(岬明乃役)、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(望月杏奈役) など。ユニットTrySailとしても活動中。

夏川椎菜1stアルバム『ログライン』
2019年4月17日発売

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初回生産限定盤A(CD+BD)4300円[税込]
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初回生産限定盤B(CD+DVD)3600円[税込]
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通常盤(CD)3000円[税込]

苦心の先で見出した自分の歌詞

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――まず、1stアルバム『ログライン』のコンセプトをお聞きできますか?

夏川アルバムタイトルの“ログライン”って、あまり聞きなじみのない言葉じゃないかなと思うんです。私もアルバムのタイトルをつけようと思っていろいろと調べているうちに見つけた言葉で、ふだんから使っている言葉ではないですし。意味合いとしては、あらすじよりも短い、その物語を表す短文というイメージで。

 今回のアルバムは、私がいままでリリースしたシングル『グレープフルーツムーン』から『フワリ、コロリ、カラン、コロン』、『パレイド』と、新曲が入ってまとまったものになっているんですが、ソロデビューしてから2年ほど経って、その私のソロの流れというか、曲や歌いかたも含めて本当にいろいろなものが変わっているので、そういうものを全部この1冊にまとめましたという、私の“ログライン”という意味でタイトルをつけました。

 このタイトルがまさにコンセプト代わりで、新曲もいろいろありますし、いろいろな歌いかたをしていますし、この1冊でいまの夏川のことを全部わかっていただけるようなものなっています。

――先ほど、“ログライン”という言葉を見つけたというお話がありましたが、タイトルは夏川さんご自身が考えられたんですか?

夏川そうです。今回は、本当にほとんどの部分の制作に関わらせていただいていまして。「こういう曲がいいです」といった希望は、『フワリ、コロリ、カラン、コロン』のあたりから出させていただいていたんですけど、そこからシングルで曲を重ねるにつれて、私が口を出すことが多くなりまして(笑)。

――(笑)。

夏川今回は、作詞もさせていただきましたし、細かいアレンジ部分まで希望を出したり、ミュージックビデオ(以下、MV)やジャケットのイメージも提案させていただいたりして、そういった部分のひとつで、タイトルも決めさせていただきました。

――なるほど。先日、“TrySail”のライブ“The TrySail Odyssey”を拝見したのですが、MCで作詞がとても苦労したとお話されていましたね。ライブでも歌っていた『ファーストプロット』の作詞は、いかがでしたか?

夏川新曲として選ばれた曲が何曲かあって、その中でいちばん書きたいなと思ったのが、この『ファーストプロット』だったんです。ただ、『ファーストプロット』が、私にとって初めてちゃんと作詞に挑戦した作品だったので、作詞がどういうものなのかもわかっていないし、セオリーやルールも知らない。でも、そういうものをあまり聞かずに、とりあえず書いてみたんですよ。

 そうしたら、最初は自分の好きな歌詞や好きなアーティストさん、好きな曲の方向性に寄せようとしすぎて、しかも音にハメるという部分ばかり重視してしまって。できあがったものは、聴いている感覚ではすらっと読めるし、リズムにも乗れていていいんだけど、意味が全然伝わってこない歌詞になっていたらしく、ディレクターさんにそれをズバッと言われちゃったんですね。

 それで、試作を3作くらい重ねて、ようやく『ファーストプロット』のプロットみたいなものにたどりついたのは、1ヵ月半くらい経ってからだったので、本当に長かったですね。大変でした。

――もっとも苦労したのは、メロディーに詞を当てはめつつも、意味をちゃんと整えるという部分ですか?

夏川はい。最終的には、メロディーはあとでいいんだと思いました。いちばん伝えたいことと、物語をどうまとめるかが重要で。それって、ファミ通さんで書かせていただいているゲームブログだったり、自分のブログだったり、いろいろな文章を書いてきたものに近いんですよね。ですから、これまでの経験や学んできたことを活かしてやるということにしてからは、わりと早かったですね。

――いつもの文章のパターンに持ち込めたというイメージですね。

夏川ディレクターさんからも「いつも書いているブログとかで、自分なりの手法をわかっているはずだから、しっくりくるやりかたがあると思う。あまり肩を張らずに、緊張しないでやってほしい」と言われて。確かにそのとおりだなと思いました。

――『ファーストプロット』の歌詞を拝見したのですが、夏川さんご自身のことを語っているのかなと感じました。

夏川そうですね。それこそ『ファーストプロット』って、『ログライン』をさらに集約したような歌詞で、いままでのソロの歩みなどを、ちょっと抽象的に言っているようなイメージになっていて。

 ソロを始めてすぐの1stシングルのときは、どういう歌を歌いたいといった考えもわからなかったし、こういうアーティストになりたいという想いもわからなかったんですよ。だから、けっこうまわりにお任せしっぱなしで、と言いつつ文句だけは言うみたいな(笑)。「いやだ、歌いたくない」、「こういう歌詞じゃない」、「これは違う」といったことは言っちゃう、すごく小生意気な娘だったんです(苦笑)。

――(笑)。

夏川それで、「なんでそうだったんだろう?」と考えたときに、本当に自分のことも音楽のこともわかっていなかったんだなと思って、そのあたりが一番とサビあたりまでで言っています。ちょうど2コーラス目からの歌詞は、いろいろな人に助けていただいたりして、自分でもこういうのが好きなんだなと、いろいろ研究するようになってからのことですね。

 今回、歌詞を書かせていただくということもちょっと入れ込んでいて。ちょうど“散らかっていた言葉に音を見つけて”という部分ですね。あとは、“僕ならこのメロディで何を話すかな”という部分では、今回の作詞へ向けた気持ちや、ちょうどいまの私が思っていることと、これまでの私のことを全部まとめた曲になっています。

――本当にソロの歩みになっていますね。最初から歌詞はこういう内容にしようと考えていたんですか?

夏川いえ。試作3作と言いましたけど、その1作目は、内に秘めたる想いを隠したまま……みたいなこっぱずかしい歌詞だったんです(笑)。方向性としてはそんなに変わっていないんですが、自分のこととして書いていなくて、それを自分のこととして書いたのがこの『ファーストプロット』ですね。

――ああ、なるほど。では、試作3作は方向性は似ているけれど、内容は全然違うものなんですね。

夏川そうですね。この曲が持っている雰囲気やカラーに寄せた詞ではあったんです。自分の中にないものを書いたつもりはなかったんですけど、ムダに難しい言葉、ふだん使っていない言葉を入れようとしたりして。そういう部分がけっこうあったなーと思ったので、反省しました(笑)。だから、結果的には、いつも自分が使っている言葉ばかりで、あんまり聞きなじみのない言葉は使っていないつもりです。

――夏川さんの“いま”が詰まったようなイメージになったと。

夏川はい。結果、等身大の私の歌になりました。

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――この経験を経て、もし今後作詞をする機会があれば、だいぶやりやすくなったのではないでしょうか?

夏川じつは、今回のアルバムでは3曲の詞を書いているんです。『ファーストプロット』と同時期にもう1曲、さらに時間をおいて1曲書いたんですよ。で、最後に書いたのが、『チアミーチアユー』という曲なんですが、この作詞はあっという間に終わって。曲をいただいてから、3日間くらいで終わったんです。

 最初からコンセプトを決めて、言いたいことを決めて、なるべく自分の知っている言葉だけで書こうと思って。まさに『ファーストプロット』で学んだこと、反省したことを活かして臨んだら、本当に3日で終わったんですよ! ディレクターさんからも「いいね」とすんなりOKが出て。めちゃめちゃうれしかったです。「ああ、活かされた」と思って。

――経験が活きるのが早い! (『チアミーチアユー』の歌詞を拝見して)これは、『ファーストプロット』と雰囲気がだいぶ違っていますね。

夏川応援ソングらしいメロディーとアレンジで、タイトル通りの応援歌にはなっているんですけど、単純な応援歌というよりは、「私のことも応援してね」、「私も応援できるようになりました」という想いを込めていますね。ダブルミーニングを含めたところもいっぱいあります。ちょうど、TrySailのツアーのリハーサル真っただ中あたりに曲ができあがってきたので、自分でも「大丈夫かな」と思いつつも、「これ、作詞を自分でやるのアリですか?」って聞いちゃって(笑)。

――やりたいという思いがあったんですね。

夏川ただ、単純に時間が足りるのかなと。でも、時間がない中でもやりたいなって、思ってしまって。自分に枷をはめました。

――まわりのスタッフから心配されませんでしたか?

夏川「本当にできる?」って心配されましたし、『ファーストプロット』が1ヵ月半かかっていたので、自分でも不安はあったんですが、やってみたら意外とするっと書けて。曲自体、そんなに難しい曲ではなくて、わかりやすいメロディーだったり、でもちょっといたずらっぽいところもあったりで、それもあってコンセプトが早めに決まって、早い完成につながったんだと思います。

――時間がない中でも、「これは行ける」っていう自信や手応えはあったんですか?

夏川いや、なかったです(笑)。

一同 (笑)

夏川なかったですけど、とりあえず言ってみた、みたいな。まず「ちなみに、これって作詞を自分でするとしたら、締切はいつですか?」と聞いたんですよ。その時点で、「2週間後」と言われて、ちょっと迷いつつも、一回やってみるという方向でいいですか、と。

――で、やってみたら3日。

夏川取り掛かったら、意外と早かったですね。

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――この『チアミーチアユー』が3番目に作詞をしたものなんですよね。

夏川はい。最初、アルバムの会議をしたときに、いろいろな方から「作詞をするなら、ぜひ表題曲をやってほしい」と言われて。たしかに表題曲をやったらカッコいいなというのもありましたが、表題だけじゃなくて、もう1曲くらい自分でも書きたいなと思っていました。で、『ファーストプロット』が等身大の自分を書いたような歌詞になっていて。つぎに挑戦した2番目の曲、『ステテクレバー』がけっこう皮肉っぽいと言いますか、ちょっと賛否両論ありそうな、正統派ではない、下手したら私のイメージが変わるかもしれない曲なんですよね。

 ちょっと言葉が強いんです。曲がけっこう攻めたなイメージだったりするので、その影響もあるんですけど。だから、スタンダードというか、みんなが受け入れやすい曲をもう1曲自分で書きたいなという想いが出てきたのと、2よりも3の方がカッコいいなと思って(笑)。

――(笑)。

夏川本当に、そういうくだらない理由で、みずからに枷を。完成したから、よかったですけど(苦笑)。

――その2番目の曲は、そんなに賛否両論を生むような歌詞なんですか?

夏川『ファーストプロット』が光の私だとしたら、これは、闇の私です。

――闇の夏川さん!

夏川闇です(笑)。私が書くいろいろな文章を、ディレクターさんがよく「視点がおもしろい」と言ってくださって。「変なところから変なことを言っている」みたいなことを言われるんですけど、まさにそういう歌詞だと思います。

――(『ステテクレバー』の歌詞を拝見して)……そうですね。斜に構えるような内容というか。

夏川なんだ、この小生意気な娘はみたいな(笑)。

――いやいや。でも、この歌詞には若干ケンカを売っているようなイメージありますよね(笑)。

夏川そうですね、各方面にケンカ売っている(笑)。でも、それもそれで私だから、隠すものじゃないなと思ったんですよ。なんか漏れ出ているわけですし(笑)。隠しても意味がないというか、どちらも嘘じゃないというか。同じ人が書いたとは思えないくらいのものですけど、『ファーストプロット』も私の気持ちだし、『チアミーチアユー』も私の気持ちだし、『ステテクレバー』も私の気持ちですから。

――『チアミーチアユー』を聴かせていただいていますが、かなりカッコいいライブで盛り上がりそうな曲ですよね。

夏川今回は、エモさに振った曲もあればライブでやるような曲もあったりと、いろいろな曲がありますね。それこそ、『チアミーチアユー』はライブを想定した歌詞にもなっていますので。

――掛け合いができるような。

夏川まさにそうです。でも、アルバム全体で言うと、斜めに見たような歌詞はこれだけじゃなくて、ほかの新曲『シマエバイイ』、『イエローフラッグ』、『キミトグライド』なども、ちょっと視点が斜めなんですけどね。

――『シマエバイイ』はまさにそうですよね。タイトルからして、けっこう過激ですし……。

夏川ああ(笑)。たぶんそれが一番過激です。一部の歌詞をレコーディング前に変更したくらいで。でも、それもすごくうれしかったです。結果、変えましたけど、それくらい攻めた歌詞でもよくなったんだなというのもありました。たぶん、デビュー当時だったら、私に聴かせてもくれなかったと思うので(笑)。

――まわりが理解をしてくれていると。

夏川ざわざわしましたけど(笑)。でも、常にざわざわさせていようとは思いました。たぶん、私の作りかたとしては、このくらいのほうがいいんだろうなって。

――なるほど(笑)。今回のアルバム全体を見ると、1stシングルの『グレープフルーツムーン』に始まり、とても多彩な曲が入ったアルバムになっていますよね。

夏川そうですね。でも、大きくはふたつかなと思っていて。エモーショナルというか、どちらかと言うと、心情的なもの、感情的なものを歌った歌と、私の好きなものや小生意気なところ、斜めの夏川を理解して作っていただいた曲、という感じになっていますね。

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――聴いていて感じたのは、『パレイド』からの延長線上にあるようなイメージだなと。

夏川やっぱり、皆さんそう言われますね。『ファーストプロット』でそう感じましたか?

――そうですね。『ファーストプロット』は、とくにそういうイメージがありました。

夏川TrySailの幕張ライブで初披露した後、ファンの方からも「『パレイド』のアンサーじゃないか」ということを言っていただいたんです。まだ歌詞も世に出ていないので、私の歌を聴き取ったりして、皆さんが想像してくださったと思うんですけど。そう言われてみて初めて、私も「あ、確かにそうかも」と思ったんです。

 決して、自分で意図してアンサーソングにしようとは思っていなかったんですが、でも結果アンサーソングに近いことを言っているなと。それだけ、『パレイド』の歌詞が自分の中でも強いものだったんだなと思いましたし、無意識にアンサーが出たのかなと思いました。『パレイド』が去年(2018年)の7月だったんですけど、そこからいろいろなことを経て、自分の中のアンサーがちゃんと出せるくらいには成長できたというか、自分の心の整理がついているんだなと思っています。

――アーティストとしての成長が詰まっているわけですね。

夏川写真で言うところの、思い出のアルバムという内容になっていますね。

――ミドルテンポの曲のほかにEDM調の曲も多いですが、これも夏川さんのご希望があったのでしょうか?

夏川私の好みが強いですね。EDM調、すごい好きだし。最近は、バンド系のものも好きなので、アルバムの新曲ではバンドっぽい作品が入ってきたり。というか、私が好きじゃないモノは基本的に入っていないですね(笑)。

――(笑)。好きがだいぶ詰まったものになっていると。

夏川アルバムの曲を決める前に、20曲くらい候補のデモをいただいたんですが、それを聴いて私が“これとこれとこれはマストで歌いたい”というのをリストアップして、ほぼその希望がかなった形になっていますね。希望がかなったというか、押し通したというか……。

――けっこう強く主張したんですか?

夏川絶対折れないですから(笑)。それくらい、「絶対にこの曲やりたい!」というのが多すぎて。あと、「これは今回はやらないけど、いつか絶対やるのでとっておいてください」みたいな曲もあったりして、それもいつか歌えたらいいなと思っています。

――TrySailのユニットでのアルバムと、心構えなどは違いましたか?

夏川そうですね。関わらせていただく量が大きく違うので。TrySailの場合、私たちは、いただいたアイデアに対して「もうちょっとこうしたい」くらいのことは言いますけど、3人がひとりずつ意見していると方向がまとまらないので、ある程度はスタッフさんにお任せするところも多いんですよね。でも、ソロに関しては、私は好き放題に言う感じになっているし、言えば言うだけかなえてくださるスタッフの皆さんだから、それにめちゃめちゃ甘えていろいろ言っていますね(笑)。