“光吉猛修ディナーショー@社員食堂”

 2019年10月28日、セガ公式ツイッターに踊ったその文字列に騒然とした人は多いことだろう。光吉猛修氏と言えば、セガ・インタラクティブのサウンドクリエイターにして、セガが世界に誇る“日本一歌のうまいサラリーマン”として知られる人物。とはいえ、「社員が社食で歌うの?」、「なんでディナーショー?」というかつてない試みに、ネットを中心に大きな話題となった。こんなおもしろそ……いや、世界初であろう画期的な試みを黙って見過ごしてはメディア魂が廃る! というわけで、ファミ通.comでは急遽取材を打診。本来はセガサミーグループ社員向けのこのイベントに、潜入取材したきた成果をガッチリお届けする。

バーエリア前に設置されたデジタルサイネージにはショー開催を告げる看板が。ものすごい本気度を感じさせる。

 ディナーショーの会場となったのは、東京・大崎のセガグループの本社ビルにある社員食堂JOURNEY'S CANTEEN。その一角にあるバーエリアで、事前の応募より抽選で選ばれたグループ社員たち約40名がテーブルを囲み、光吉氏の登場を待つこととなった。

ディナーショーの会場となったのは、東京・大崎のセガグループの本社ビルにある社員食堂JOURNEY'S CANTEEN。その一角にあるバーエリアで、事前の応募より抽選で選ばれたグループ社員たち約40名がテーブルを囲み、光吉氏の登場を待つこととなった。
ディナーショーなだけあって、ブッフェ形式での食事と飲み物(アルコールも)が用意され、飲食も楽しめるひとときとなった。

 司会によるカウントダウンに合わせて登場した光吉氏は、まるで昭和のスターを思わせるようなド派手なコスチューム姿! 勢いのままに『デイトナUSA』のヒットナンバーをアレンジした『Let's Go Away 2016』を熱唱すると、来場者も手拍子や掛け声で応え、ショーの冒頭から大いに盛り上がっていた。

 「皆さん戸惑っていますか? 僕も戸惑っています」、「じつはディナーショーに行ったことがないんです」と、トークでも好調ぶりを魅せた光吉氏。続いては、セガの音楽ゲーム『チュウニズム』に収録の“ムーンライト伝説”とレベッカの“フレンズ”を披露。誰もが知っている盛り上がれるナンバーだけあってサビでは合唱が沸き起こるなど、またまた大盛りあがり。気がつけば、バーエリアの周囲を立ち見のオーディエンスが取り囲み声援を贈るという、ライブハウス状態となっていた。

「これがやりたかったんです」と、歌いながらテーブルの間を歩き回り来場者たちとの握手やハグをこなしていた。

 続いて行われたのは、事前に募集した質問に光吉氏が答える“教えて! 光吉さん!”のコーナー。数ある質問のうち、ごく一部を紹介するが、どんな質問にもきっちりと答える姿勢からは、光吉氏の真摯な人柄がうかがえた。

来場者から寄せられた質問に答える光吉氏。丁寧に回答するその姿から、真摯な人柄が。

・ふだんどんな仕事をしてるんですか?→皆さんと同じセガのサラリーマンです。約30年間、アーケードゲームや家庭用ゲームのサウンドにまつわる仕事をしています。

・一番好きな自作の曲は?→初めてオーケストラ曲を作った『WCCF』のオープニングテーマ。

・ボイス出演に関するエピソードを教えて→歌よりも前に声の仕事はあって、『バーチャファイター』のアキラやカゲ、『電脳戦機バーチャロンマーズ』のハッター軍曹をやっている。細かいところだと、メガドライブミニに収録されている『レンタヒーロー』のやられ声や、『タントアール』のカウントダウンボイスも。

セガ社員同士ということで会社近隣のおすすめグルメを紹介したり、今日が誕生日だという来場者にバースデーソングを贈るひと幕も。

 中盤戦最初の曲は、『電脳戦機バーチャロン フォース』から“Conquista Ciela”。聞けば血が熱くなるヒーローソング調なこの一曲を高らかに歌い上げる光吉氏は、取材している筆者から見ても明らかに気持ちよさそうであった。

客席の間を巡りながら歌を披露する光吉氏。なんともディナーショーな姿だ。
光吉氏の足元を彩ったのはGUCCHI製のシューズ。ゴージャスな衣装に負けない輝き!

 「せっかくのディナーショーなのでバラードを歌いたい」と披露されたのは、ベストアルバム『From Loud 2 Low』に収録されている描き下ろし曲“Night In H.A.P”。かつて大鳥居にあったセガ2号館から見える羽田空港(羽田エアポート)の明かりをイメージして作ったというだけに、セクシーなフリューゲルホルンの音色と光吉氏の甘い歌声が絡み合って生まれたしっとりとしたムードが、会場全体をベールのように包み込んだ。

曲中には来場者から振る舞われたワインを飲み干すサービス精神を発揮。

 中盤戦最後の曲は、『ファンタシースターオンライン2』から“終わりなき物語”。ボーカル違いなど複数のアレンジがあるこの曲だが、この日は光吉氏ソロ歌唱でのバージョン。会場にはシリーズの楽曲を多数手掛ける小林秀聡氏の姿もあり、それを見つけた光吉氏が握手を求めにいく場面もあり、場内は“いい光景を目にした”という温かな空気に包まれていた。ここで光吉氏は衣装チェンジのために、一旦会場を後にした。

気がつけば演者と来場者が一緒になって拳を突き上げる光景が。セガサミーグループのみなさんはノリがいい!
光吉氏が居ない間は、歌のフレーズを使ったカルタ『狩歌』を使って参加者が楽しむひとときが。勝利したグループにはミニサイン色紙が贈られた。

 最後のパートとなる後半戦では、光吉氏はタキシード姿で登場。フォーマルにキメた姿で披露したのは、カバー曲“EVE ~Piano Version~”。元セガのサウンドクリエイターであるササキトモコ氏プロデュースによる音楽ユニットであるセラニポージの一曲にして、「切ない歌詞が大好き」というからどれだけ好きなのかがわかるというもの。ピアノの伴奏のみに乗せてメロウな歌詞を歌い上げると、感情の高ぶりから一瞬声がつまりそうになる様子がうかがえた。

目を閉じて歌詞を噛みしめるように歌い上げる光吉氏。

 しっとりときたら後はアゲていくだけ、とばかりにつぎのナンバーはサッカーゲーム『ビクトリーゴール ’96』のオープニングテーマ“未来へと続く空”だと告げた光吉氏。ショーを見物しにきていた「JUN SENOUE(瀬上 純氏のこと)が作ってくれた曲で、ボーカル仕事を始めた直後の曲」という解説に続いて歌を披露すると、スポーツゲームらしい躍動感のある曲調と伸びやかな光吉氏の歌声が重なりハーモニーを奏でた。

オーディエンスにウェーブを求める光吉氏の恒例のパフォーマンスも飛び出し盛り上がりは最高潮に。

 勢いのままに流れ出したのは、ラストを飾るのにふさわしい盛り上がる一曲 “Burning Hearts ~炎のANGEL~”。アップテンポかつグルーヴィーな伴奏に光吉氏のハイトーンボイスが絡み合うと、オーディエンスも自然とノリノリに。サビでは「バーニングレンジャー!」の大合唱となるほどの盛り上がりとなっていた。

 これにてディナーショーは終了……かと思いきや、なんと緊急告知が! 2020年3月22日にライブレストラン・銀座ケントスにてディナーショーの開催が発表されると、会場からは大きな歓声が。しかも、こちらは一般のユーザーも参加できるとのことだ。

 さらに緊急告知は続き、なんと30周年記念CDの発売までが決定! 詳細はまだ未定とのことだが、久々のソロCDとなるだけに期待は高まるばかりだ。

 「これにてディナーショーは終了」という司会のひと言に、会場からは当然のように「ええーー!」という声が。それに応えるように流れ出したアンコール曲は、TVアニメ『バーチャファイター』の後期主題歌“愛がたりないぜ”。「一時期はJAEPOやAOUショーのエンディングを飾ったお疲れ様ソング」と光吉氏が選んだ曲だけにエンディングにはもってこいなのかもしれない。アウトロで光吉氏は「皆さん、月曜の夜からありがとうございました。明日もまた仕事です!」とマイク。“セガ社員による社員のための社員食堂でのディナーショー”という前代未聞の試みは、そんなことを忘れさせるほどの熱狂を残したまま終演となった。

興奮のあまりハグを求める来場者も。
「久々に10曲も歌ったら喉の調子がよくなった」と最後まで絶好調だった光吉氏。万雷の拍手に包まれる中ショーを終えた。
ショー終了後には光吉氏とのツーショットチェキ撮影&お土産がもらえるサービスが。夜が更けてきたにも関わらず大勢が行列を作った。
ツーショットには小林氏の姿も。なかなか見られない光景を。
プレゼントのチロルチョコ。使われている写真は撮り下ろしとのこと!

■光吉猛修ディナーショー セットリスト
M01.Let's Go Away 2016(Daytona 3 Championship USA)
M02.ムーンライト伝説(チュウニズム)
M03.フレンズ(チュウニズム)
M04.Conquista Ciela(電脳戦機バーチャロン フォース)
M05.Night In H.A.P(オリジナル)
M06.終わりなき物語(ファンタシースターオンライン2)
M07.EVE ~Piano Version~(セラニポージ)
M08.未来へと続く空(ビクトリーゴール'96)
M09.Burning Hearts ~炎のANGEL~(バーニングレンジャー)
EC.愛がたりないぜ(TVアニメ バーチャファイター)

主役の光吉氏と企画・運営の木下氏に直撃インタビュー!

 ショーを終えた直後の光吉氏と、司会を受け持ったセガサミーホールディングスの木下 亮氏(本業は楽曲ライセンス管理)の両氏に、ディナーショーの開催経緯や終演後の感想を独占取材。さらなる将来的な野望も!?

ショーを終えたままのテンションでインタビューに答えていただいた光吉氏と木下氏(右)。木下氏は本業ではないにも関わらず流暢な司会ぶりを披露していた。

――まずはディナーショーを終えられた感想をお聞かせください。

光吉いや~、いつもとは違う緊張感がありました。グループ社員がいる前でということでは、以前セガ公式アカウントのファンミーティングイベントの最後に歌を歌っていたことがあるのですけど、やっぱり少ない人数を目の前にしてというのはね。あとはグループ社員ということで知った顔もいるんですけど、そういった形でのライブパフォーマンスをやったことがなかったのでどうなるかという不安はありました。でも結果的にはいつもどおり、盛り上がるべきところで盛り上がれたし、10曲を歌っても声が枯れることなく終えられたので安心しました。

――素晴らしいパフォーマンスでした。ところで、そもそもディナーショーをやろうとなった経緯というと?

木下かねてから光吉さんが「ディナーショーをやりたい」と何度か公言していたのですが、ちょうど私が本業のライセンス関連の仕事でライブレストランを運営している会社さんとのつながりができたんですね。それだったらもしかして……と相談してみたのがきっかけです。銀座でのライブありきでの社内ディナーショーではあります。やはりぶっつけ本番でやるよりは、一度経験しておいたほうがお客さんにより楽しんでいただけるだろうということで、一度社内でもやりましょうということで、本日の開催となりました。

――ショーの構成や演出がしっかりと仕込まれていて、いい意味でビックリしました。

木下真面目におもしろいことを一生懸命しようと、告知用のビジュアルもあらかじめ衣装を用意してスタジオで撮影をしているんです。

光吉一般向けディナーショーありきで企画を進めていたので、スタッフ全員が最終形のイメージを共有できていたのがよかったんでしょうね。木下くんは裏方としてもすごくがんばってくれました。3月のイベントでも司会を受け持ってくれることになっています。

――開催までの準備はすんなりと?

木下光吉さんのライブが社内で開催されたことはありましたが、社食でのディナーショーは初めてですし、私も普段ライブの運営に関わっている訳ではないので……何もかも初めてで、各所との確認にかなりバタバタしましたね。社食で大きな音を出していいのかも施設管理の部門に確認しましたが、その部署の方もディナーショーと聞いて戸惑っていましたね(笑)。

――ショーの構成はどのように決めたのでしょうか?

木下自分や光吉さん、協力してくれているスタッフを含めて、誰もディナーショーを見た経験がないまま本日を迎えました。ですので「ディナーショーってきっとこんな感じ」と思い描いたものが形となっていますね(笑)。昭和スター風のひらひらのついた衣装ですとか。

――セガ公式ツイッターで「ディナーショーが行われます」と告知された直後からものすごい反響でした。

木下3000RTくらいされたのかな?(2019年11月現在では、4000RTに達している) 告知と募集は2週間ほど前に社内イントラで行ったのですが、そこの反応もよかったですね。

光吉僕の中では「誰かがやる前にセガがやらねば!」と思っていたので、ほかのゲーム会社の方々、とくにサウンドクリエイターが反応してくれたのが嬉しかったですね。そこで僕のミッションは達成です(笑)。

――3月22日に開催される一般向けディナーショーについてお聞かせください。

木下最大キャパシティが200名くらいのライブレストラン、銀座ケントスで行います。準備はこれからなので最終的にどうなるかは決まっていませんが、大まかな構成は今日と近いものになる予定です。

光吉今日の開催で手応えは感じたので、あとは当日来てくださる方に楽しんでいただくだけですね。
 個人的には、これを機にディナーショーというエンターテインメントパッケージが広がっていけばいいと思ってます。「そういえば弊社は宮崎にリゾートホテルがあったな」、「そういえば韓国のインチョンに統合型リゾート施設・パラダイスシティがあったな」、「娯楽の本場といったらラスベガスだよな」と夢はどんどん広がっていきます。まあ、それは冗談としても、ゲーム音楽のオーケストラコンサートはここ数年で増えていって成熟していますけど、それとは別のアプローチってないのかなということで、飲食と弊社のゲーム音楽が新しい流れを……(ひらめいたように)感動体験を想像し続けていければと。

木下セガサミーグループの企業理念でシメていただきました(笑)。自分はふだんライセンス部署の一員として光吉さんたちが作った楽曲をCDにライセンスアウトしたりしていますが、光吉猛修という知的財産についても売り込んでいくお手伝いをしていければと思います。

光吉それがディナーショーにつながっていったのは、いかにも“セガ”って感じだけどね(笑)。セガって「10年早い」とか「また変なことしてる」といった話題性には事欠かなかったけど、ここ数年はそれが薄かった気もするんです。それがメガドライブミニの流れもあってお祭りムードが高まったいまなら、セガらしいことにより注目が集まるのかなと。

木下チケット販売はなるべく近いうちに行う予定なので、セガの公式アカウントなどをチェックしていただければと思います。

――もうひとつ発表となった30周年記念CDについてもお聞かせいただけますか?

木下本格的な制作はこれからですが、やはり30周年の集大成となる内容にしたいということで、グループ会社のウェーブマスターさんと企画を練っているところです。

光吉これまでのようなベスト盤にするのか、あるいはコンプリート盤とするのか。まだ詳しくは言えないですけど、ファンの方が納得できるようなものにしたいと思います。個人的には、“FROM LOUD TO LOW SUN”からだいぶ経過しているので、そのあいだに歌って曲を網羅できたらいいなと思っています。

――わかりました。3月のショー開催と記念CDの発売を楽しみにしています!

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