ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がアメリカで展開していたストリーミングTVサービス“PlayStation Vue”(PS Vue)が、現地時間の2020年1月30日をもって終了することが発表された。
PS Vueは、月額会員制のインターネットテレビサービス。映画やドラマなど個別のコンテンツを配信するNetflixなどとは異なり、インターネット回線と対応端末があれば有料のケーブルテレビ局を視聴できるというもの。2015年3月に当初はニューヨークなどの限定した地域のプレイステーション3/4用サービスとしてスタートし、その後対象地域やプラットフォームを拡大してきた。
現地テレビ事情と“コードカッティング”
アメリカ現地でのテレビ事情を簡単に説明しておくと、日本で言う所の無料で見られる“地上波”は限られており、従来は有料のケーブルテレビを契約するのが一般的で、インターネットの普及以降はさらにそのケーブル回線を通じたインターネット契約を付随させる事が多かった。
しかしその費用がなかなか馬鹿にならない事から、2010年代に入ってケーブルテレビ契約をなくしてインターネット契約だけにしたり、あるいはネット接続はモバイルデバイスなど別の方法で確保することにする“コードカッティング”(ケーブルテレビのケーブルを切る事を意味する)を選ぶ人が徐々に増加。
とはいえいきなりテレビを見なくなった人ばかりというわけではなく、“ケーブルテレビ契約はしたくないがネット経由でテレビコンテンツは見たい”というニーズが誕生。PS Vueはそういった需要に応えて登場した初期のサービスのひとつとなる。
コンテンツ獲得競争の激化が終了の背景
しかし、通信会社AT&T系列のAT&T TV Now(旧DirecTV Now)、衛星放送のDish Network系のSling TV、さらにケーブルテレビネットワークComcastが自ら運営するXfinity Instant TVや、近年ではストリーミングサービスHuluの上位サービスであるHulu + Live TV、そしてGoogle傘下のYouTubeが運営するYouTube TVなど、同様の競合サービスが年々増加。
またケーブル局や映画会社などのコンテンツ提供側が直接自局のコンテンツを見られる定額サービスを立ち上げるということも続き、結果としてコンテンツ獲得競争は激化の一途を辿ることに。特定の局の提供が終了されて見られなくなったり、月額利用料が値上げされるといったことは珍しくない(記者自身、“コードカッティング”を試してみようとした際に一度はPS Vueを契約したのだが、アニメ『サウスパーク』を見られるコメディ・セントラルの契約が終了しているのに気がついて無料期間内にHulu + Live TVに乗り換えた経験がある)。
海外PS Blogに掲載された小寺剛SIE副社長によるサービス終了の告知記事ではこうした状況でのコンテンツ契約料の高騰などが撤退の理由として挙げられており、プレイステーション本来のコアゲームビジネスに改めて集中することが述べられている。