Paradox Interactiveがリリースする新作『Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2』(以下、『BL2』)は、現代シアトルの裏社会における吸血鬼の抗争を描くFPS視点型のRPG。
原作のテーブルトークRPG『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』(日本語版も発売された)から“ワールド・オブ・ダークネス”の世界観を引き継ぎ、前作『BL1』のシナリオライターが本作でも執筆を手掛けるなど、ファンの期待が高まる本作。
開発スタジオHardsuit Labsで、『BL2』のシナリオやキャラクターを担当するキーマンふたりに、本作の見どころについてうかがった。
Brian Mitsoda(ブライアン・ミッソーダ)
ナラティブ・リード。『BL2』でシナリオのディレクションを行う。『BL1』でもライティングを担当。
Cara Ellison(カラ・アリソン)
シニア・ナラティブ・デザイナー。シナリオのほか、ミッションやクエストの制作、キャラクターや街のデザイン、ファクションやクランの構成など、本作の重要なパートを幅広く手掛ける。
――現在の開発状況はいかがでしょうか?
Caraメインとなるストーリーラインが完成しました。NPCとの会話など、細かな部分を調整しているところです。先日、リリースを延期することを発表しましたが、ゲーム全体のクオリティーアップを図るためです。前作ではリリース当初に不具合が多かったので、今作ではとくに注意して制作しています。
――本作の発表後、これまでのファンの反応はいかがでしょうか?
Brian15年以上経過しているのでコミュニティがとても大きく、ファンの皆さんの期待も非常に高いです。そのため、プレッシャーも感じています。皆さんの声も聞いてますし、私たちのスタジオやParadoxの中にも前作や原作のファンが大勢いますので、自分たちの仕事を信じて続けています。
Cara自分ももともとファンのひとりです。前職ではジャーナリストとして、『BL1』の記事を書いていました。
――本作でとくに注目してほしいところはどこですか?
Cara自分が担当している部分で言うと、おすすめはノストラトゥのクランです。そのクランはシアトルの地下を根城にしているのですが、歴史的な場所なので見どころが多いと思います。また、ノストラトゥのサミュというキャラクターにも注目してほしいです。彼はとても魅力的で、ソフト開発会社に勤めています。
Brian舞台となるシアトルも見どころです。ランドマークなども多数ありますけが、街の政治的な面も含めて、ゲームに反映させたいと思っています。ゲームのスタート地点となるパイオニア・スクエアは、シアトルでもっとも古い場所のひとつで、観光客にも人気のエリアです。実際にシアトルに足を運んでゲームと現実を比較すると、ほぼ一致していることがわかると思います。
――シアトルを舞台にした背景はなんでしょうか?
Brian順番についてお話しますと……まず先にこのゲーム自体、原作のテーブルトークRPGにおける“ワールド・オブ・ダークネス”の世界観が元になっていまして、そこから多くの要素やルールを取り入れています。そして私は、ライターとして熱意のある、おもしろいストーリーを用意する必要がありました。自分にとってもおもしろい物語ではないといけません。そこでシアトルの歴史や街の雰囲気が、ワールド・オブ・ダークネスとマッチするのではと思いました。シアトルを舞台にしたヴァンパイアの物語を描いてみたい、と。
Caraゲームでは政治的な派閥である“ファクション”という要素が重要になっています。シアトルには実際に古い伝統と新しい物が混在していています。ゲーム内のファクションの中にはノストラードやアンシーンといった派閥があり、ファクションどうしの抗争が描かれています。そういったファクションを通して、現代のシアトルを表現したいですね。
――本作のヴァンパイアは、人間社会においてどのような存在なのでしょうか?
Brianヴァンパイアはプレデター(狩猟者)ですがその反面、存在は知られてはならず姿を隠しています。一方で、ヴァンパイアはシアトルの街で社会的権力を持つことを重要と考えています。血を求めて人間を襲いながらも、どうやって力を保持するか。この世界ではそういったことが大事になっています。
――ヴァンパイアには意思疎通ができる人間臭さもありますよね。そういったヴァンパイアを描く際に、どういったところに気をつけましたか?
Cara一般的に言うと、ヴァンパイアはとてもチャーミング(魅力的)で、人間を魅了して意のままに操ることが得意です。リスクは低くリターンは非常に高いというのが、まさにヴァンパイアですね。ヴァンパイアと会話する際には、多くの選択肢が用意されており、ヴァンパイア社会にはファクションやクランどうしの関係性や抗争がありますので、そこに注意しています。
――本作におけるメインストーリーの制作期間はどれくらいでしたか? その中でも苦労した点を教えてください。
Brian数年を要しました。非常に多くのキャラクターがいて、ボイスオーバーもあるので多大な時間がかかりました。もっとも苦労したのは、選択肢によるリアクションのバリエーションと、それらにもとづく分岐シナリオを書くことでした。
Cara前作にはファンクションがふたつしかありませんでしたが、本作では多数のファクションがあるので、すごく時間がかかりました。ほかにもマルカヴィアンというクランについては、完全に別ストーリーになっていますので、セリフも専用のものを用意しています。もしマルカヴィアンを選択した場合には、ほかとまったく別のストーリーを体験することになります。
――物語の中でプレイヤーはどのようなヴァンパイアになれるのでしょうか?
Brian腕力のあるヴァンパイア、知性の高いヴァンパイアなど、何者にもなれます。ゲームの中には多くの種類のヴァンパイアがいます。物語を作成する中でいちばん重要なのは魅力的なキャラクターを作ることと、魅力的な会話とストーリーです。シアトルは若い街なので、ヴァンパイアは年寄りではありません。そんな彼らがこの世界をどう見ているのか、何を考えいるのか、それらを言葉にするのはたいへんで、ひとつの挑戦でもありました。
Caraどんなヴァンパイアにもなり得ますが、ヴァンパイアには重要な“掟”があります。正体を人間に知られないよう、隠しながら生きることです。もしそれを違反した場合、その地域に人間が少なくなって血を吸うことが難しくなりますし、警察も増えます。もし数回違反した場合、同報に狙われる危険性も高くなります。勝手にすべての人を殺すことはできません。それは自分の首を絞めることと同じですから。
――本作のストーリー展開は『BL1』を意識しているのでしょうか?
Cara本作は完全に新しいストーリーになります。前作をプレイしていなくても十分に楽しめますし、『BL2』ではあくまでもシアトルの街に暮らす吸血鬼の物語になっています。
――前作から引き継いでいる要素はどこでしょうか?
Brian世界観やゲームの雰囲気は前作を引き継いでいますが、『BL2』ではとくにキャラクターとストーリー、舞台をどう描くかということを重要視しています。そこで大事になるのがインタラクションです。キャラクターどうしの会話について、選択肢を選んだ後の個々の反応について、より繊細に描いています。
――Caraさんは、『BL1』を担当したBrianさんと組むにあたって、どう感じましたか?
CaraBraianは“いいテスト”みたいな感じですね(笑)。自分のアイデアが前作ですでに出ているかどうかチェックをしてくれています。また、私が提案した物語はほぼ気に入ってくれているようです。(Brian氏に)ですよね?(笑)
Brianイエス。だから君はここにいるんだよ(笑)。彼女は女性のストーリーを書くのが好きで、女性キャラクターを作るのも得意です。彼女が時間的にきびしい部分は、私がサポートして制作している感じですね。チームの中では男性は私ひとりで、ほかにふたりの女性インターンを加えた4名で制作しています。
――原作のテーブルトークRPG『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』は遊んだことはありますか?
Brianもちろん。すべてのソースや資料を読み込んでいます。
Caraチームの中で集まってプレイしたことがあります。
Brianシナリオを書くことに時間を取られ、あまり原作を遊ぶ時間がないのが残念です。
――もしも、ゲームの世界に入ったらどのクランに入りたいですか?
Cara人間を魅了するのが得意なトレアドールですね。ファクションについてはノストラトゥが好きですが、ノストラトゥはトレアドールのことを快く思っていないので……アンシーンにしようかな。
Brianファクションについては、もっとも古いファクションであるパイオニアを選びますね。自分が参加したいクランは、前作にあったギャンレルというクランです。自分自身を動物に変えたりする能力を持っています。
――自分が欲しいヴァンパイアの能力は何ですか?
Caraコウモリになって空を飛んだり、コウモリを召喚する能力です。すごく便利だと思いませんか?(笑)
Brian私もコウモリの能力が欲しいですが彼女に取られてしまいましたね(笑)。ですので、ブラッドマジックを選びます。すごく派手でファンシーでキレイな能力ですが、いかんせんその名の通り“血生臭い”です。
――日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Brian日本で発売されることを、とてもエキサイティングなことだと感じています。本作が日本の皆さんの目に触れてどんな反応があるのか、非常に楽しみにしています。
Cara私も皆さんの反響が楽しみです。私たちの作品をぜひ楽しんでください。日本には友達がいますので、その友達にもプレイしてもらいたいですね。個人的に東京に行ってみたいので、東京ゲームショウに参加したいです!