『幻想郷萃夜祭』は東方Projectの二次創作ゲーム。東方Projectはこれまでさまざまな形態で二次創作が行われているが、本作はかわいらしいドット絵が目を引く2Dコンボアクションとなっている。

 2019年10月14日からSteamで早期アクセスが開始されており、今回、その最新バージョンでプレイすることができたので、プレイレビューをお送りしたい。

かわいらしいドット絵とは裏腹にド派手でダイナミックなアクション

 東方Projectには膨大な数のキャラクターが存在するが、本作の主人公は伊吹萃香(いぶき すいか)。ツノが生えている外見から分かるように、彼女は鬼で、手に持つ瓢簞(ひょうたん)に入った酒を飲みまくる、お酒・宴会大好きキャラクター。この設定は本作にも生かされており、瓢簞に入ったお酒を飲んで体力を回復できる。

『幻想郷萃夜祭』プレイレビュー。東方Projectのキャラクターがドット絵で躍動する2Dコンボアクション。クリエイターのtea_basira氏からのコメントも掲載_01
チビキャラで描かれる萃香(※拡大図)。何もせずに立ち止まっていると、酔っ払ったような動きでフラフラするのがカワイイ。これが、どれくらいチビキャラかというと……
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これが実際の画面。拡大しないとドット絵の可愛らしさが伝わらないことが伝わっただろうか……。なお、十字キーの上を押すことで「伊吹瓢」を使って体力を回復可能で、現在のバージョンでの瓢簞の初期使用回数は8回。この回数はセーブポイントに触れることで回復する。

 萃香の攻撃手段は、近接攻撃とその組み合わせによるコンボ攻撃、ショット攻撃、ショット攻撃のボタンを押し続けることで巨大なエネルギー弾を生み出す“元鬼玉”など、豊富だ。しかも、コンボ攻撃はコントローラのスティックの倒しかたによって変化する。どのアクションも丁寧なドット絵で描かれ、ピコピコとかわいらしく動くドット絵と、派手なエフェクトは見応えがある。

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スティック操作によって変化する、さまざまなコンボ攻撃。チビキャラを覆い隠すほどの烈火の拳、突き上げ攻撃、地面から火柱。空中で火車のように回転したりも。
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元鬼玉は、まさにその名の如くの技。溜める時間によって大きさが変化し、当たれば破壊力は大きい。みんな、オラに元鬼を分けてくれ!
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元鬼玉は、道を塞いでいる巨石なども破壊できる。元鬼玉後に疲れてる萃香もカワイイ。

 道中に徘徊しているザコ敵相手はコンボ攻撃でサクッと倒し……たいところだが、意外とカタかったり、クセのある動きをするので、コンボ攻撃を熟知しておく必要がある。

 萃香は“密”と“疎”の能力を持っており、このふたつの能力を使い分けつつチャージすることで、コンボ攻撃やショット攻撃に変化が現れる。……のだが、初見ではどれがどう変化するのかが把握しづらい(※とくに“疎”のチャージ)。手探りで覚えていくしかない。

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通常、コンボ攻撃の締めに出る火柱はこんな感じだが……。
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“密”チャージ状態で同じコンボを放つと、さらに横に火柱が広がったり。
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“密”をチャージした後、キーを下に入れて攻撃ボタンを押すことで、氷床を破壊することができる。

 そのほか、空中攻撃の直後にショット攻撃を撃つと、そのショットが着弾した場所に萃香がワープするという能力もあるのだが、これはちょっと操作が忙しく、難しい印象を受けた。逆に言えば、すべての能力を完璧に使いこなせたら『ドラゴンボール』の空中戦のようなスピード感を味わえるのではないかと思われる。

本作のメインディッシュ、ボス戦は弾幕アクションバトル

 東方といえば弾幕美だが、本作も、その部分には力が入っている。
 といっても、本作はシューティングゲームではなく、本家東方のようなすさまじい弾幕でもない。あくまで“2Dアクションのボス敵が弾幕のような攻撃をしてくる”という形であり、シューティングにはない、2Dアクションならではの回避と攻撃が可能だ。

 特筆すべきは“グレイズ状態”。この状態だと、敵の弾幕をノーダメージですり抜けることができる。筆者のように動体視力の弱さに定評がある者にとっては心強い能力だ。

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緑色の大きい玉が敵弾。これに向かってグレイズ状態で体当たりしたところだが、画面左上の体力ゲージが減らずに突き抜けているのが分かるだろうか。

 Bボタン(※Xbox Oneコントローラの場合)を押して移動している最中はグレイズ状態となるが、グレイズ中は画面左上の青いゲージを消費するので、ずっとこの状態でいることはできない。ここぞという場面で効果的に敵の攻撃を回避するために使うことになるだろう。

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ボス戦での、レーザーが円を描くように回転する攻撃。萃香に当たる直前にグレイズ状態で華麗に回避したい。
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2体目のボス・魔理沙の攻撃“マスタースパーク”。波動砲のような容赦ない攻撃で、グレイズ必須!

 まだ早期アクセスということもあってか、現在のバージョンでは、ボス戦は2体のみ。どちらもそこそこ体力があるため、短期決戦は難しく、敵の攻撃を回避しつつも、いかにこちらからの攻撃の手を緩めないかが問われる戦いになりそうだ。
 また、現時点ではザコ敵を倒すことにメリットがなく、ただのお邪魔キャラ状態だが、正式版では経験値制が導入されるとのことだ。

 萃香の能力に関しても、正式版では徐々に能力を獲得していく仕様になるようだが、今回プレイしたバージョンでは最初からさまざまな能力が解放された状態ということもあり、空中を無限に飛び回ることが可能だった。上記のグレイズ攻撃に関しても、ゲームのどの段階で使えるようになるのかは不明だ。できれば、序盤だと助かるが……。

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マップを隅々まで探索していたらいくつか発見できた、「○○の星」。東方ファンには説明不要だが、にとりは商売にうるさいキャラクターだ。何と交換してもらえるのか……?
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探索好きにはそそられるマップ画面。ああッ、マップ完成率とか表示してくださいッ!

 まだまだ未実装の要素が多いため、ゲームそのものの評価をいまの段階で下すことはできないが、可能性を感じさせてくれる1本。基本的にストーリーよりもアクションを楽しむゲームであるということもあり、東方Projectをまったく知らない人でも、さほど問題はない。「あー、このキャラクター、何か見たことあるー」くらいの感覚でガシガシ進めてしまってOKだ。むしろ、このゲームを入口に、東方キャラを知っていくくらいでもいいだろう。

 現在のバージョンで遊べるのは、萃香が神社に着くまでの1ステージのみだが、正式版では全6ステージを予定しているらしく、新しいギミックや敵、中ボス・ボスの追加も予定されているとのこと。正式リリースまでにはプレイヤーキャラや技の追加もあるとのことで、現状は出発点に過ぎない。少しでもビビッときた人は、早期アクセスで本作を応援していただきたい。

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開発も、ゆっくりしていってね! ……と言いたいところだけど、気になるから急いで!

早速、聞いてみました! 開発者(tea_basira氏)への突撃メールインタビュー

Q1.まずは無難な質問から……。本作を開発するにいたった経緯を教えてください。

A1.緋想天・非想天則で動かせる萃香が好きで、「この萃香でアクションゲームをやってみたかった」というのが開発を始めたいちばんの理由です。
 自分でプレイしたいゲームを目指して作っては壊して、をくり返していたら、4年経っていました。その間は『東方萃想神楽』という名前で作っていました。
 作っては壊しをくり返して、ゲームの全体像が見えてきたあたりで、どうゲームを公開するかちょっと困っていたタイミングがあったんです。
 そんなとき、"Whysoserious?”の斉藤さんから声をかけられて、いろいろとお話する中でいまの形のゲームにまとまっていき、『幻想郷萃夜祭』と名前も改めていま絶賛開発をしている、という感じです。

Q2.本作でとくに注力しているポイントは?

A2.とても大好きな世界観である『幻想郷』をゲームで表現することと、萃香が派手なエフェクトで攻撃する気持ちよさには力を入れています。
 それによって好きな『東方』を表現したかった感じがあります。
 なので、萃香を動かして『幻想郷』を歩き回ることを楽しんでもらえたら嬉しいです。

Q3.プレイしていて気になったことをいくつか……。現在のバージョンでは萃香の能力がいろいろと解放された状態で、正式版ではゲーム進行に合わせて徐々に能力が解放されていく形となるとのことですが、ゲームが最終的にどの程度の難度に落ち着くのか気になります。“グレイズ”は最初から使えるのでしょうか……?

A3.グレイズを含め、アーリーアクセス版でチュートリアルがあったアクションはそのまま使えるようにしようかな……といまのところ、思っています。
 じつはほかにもアーリーアクセス版では、チュートリアルはないのですが、チャージ状態で地面に体当たりすると衝撃波を出すことができたり、魔理沙戦前でブラックホールが使えるようになっていたりします。
 ちょっとさすがに短期間で覚える操作が多すぎるかな……と思っており、そのあたりをアーリーアクセスで調整して、最適な形で徐々に開放していこうと思っています。

Q4.マップの各所に隠されている「○○の星」。「集めると役立つ物と交換してくれる」そうですが、具体的には、どんな感じの物と交換してもらえるのでしょうか……!?

A4.“役立つ”というよりも、“楽しい”と書いたほうがよかったかな……と、いま思っています。というのも、何かがついてくるようになったりとか、2Pカラーとか、見た目に変化が現れるようなものにおもに交換してもらえます。
 あとは“新しいショット”(これはすこし役立つかもしれません)が撃てるようになったりするものも交換できる予定です。

Q5.本作にマップ踏破率やモンスター図鑑のようなデータが表示される予定はありますか?

A5.余裕があれば……w

Q6.最後に……完成版の発売はいつごろになりますか? “こんなふうにしたい”みたいな思いがありましたら。

A6.完成は来年の春くらいを目指しています。自分がこう想う『幻想郷』というのがあるので、完成版ではそれをすべて見せられるようなものにしたいと思ってます!!