ローンチタイトルの顔ぶれ

 既報の通り、Steam Chinaのローンチイベントが中国・上海で2019年8月21日に開催。イベント全体では20タイトル以上が並んでいたが、まずは日本企業が開発またはパブリッシャーを務めるタイトルを紹介しよう(会場でのブース並び順)。

  • 戦場のフーガ(サイバーコネクトツー)
  • 東方月神夜(Baka)
  • RPGメーカーMV(デジカ)
  • Manga Maker Comipo(デジカ)
  • OneShot(デジカ)
  • Virgo Vs The Zodiac(デジカ)
  • ドラゴンファング(デジカ)
  • 不思議のダンジョン 風来のシレン(スパイクチュンソフト)
  • Two Point Hospital(セガゲームス)
  • 三國志13(コーエーテクモゲームス)
  • 三國志14(コーエーテクモゲームス)
  • 真・三國無双7 猛将伝(コーエーテクモゲームス)
中国でもバッチリポーズを決めてくれたサイバーコネクトツー松山洋氏。

 そのほか、日本でなじみがあるタイトル/IPとしては『東方大戦争』、『OPUS』、『Dead Cells』、『オーバークック2』、『Human Fall Flat』、『Risk of Rain 2』(こちらはGearbox Publishingがパブリッシャー)、『FTL』、『ABZU』、『Euro Truck Simulator 2』なども出展(このほか、地元中国からもNetEaseなど複数社の出展があった)。

 また出展はなかったが、イベント冒頭の挨拶で完美世界CEOロバート・H・シャオ博士が「VRタイトルも扱う」と明言していたことも付け加えておく。

CEOロバート・H・シャオ博士。

 総合的に見て、肌の露出が多いコンテンツや流血を伴う暴力表現が肝になるタイトルはないものの、アクションゲームや“キャラクターがバンバン死亡する”ゲームも一定数揃ったラインアップと言える。

 ジャンルの側面から見てみると、(銃殺がメインとなる)FPS/TPSタイトルはなし。シミュレーターやストラテジー系多め(骨太なゲームプレイを提供しつつ暴力表現が回避できるため?)、ドット絵表現のシューティングやアクション複数(リアルな暴力表現を伴わないため?)、さらに『ABZU』や『OPUS』など独特の空気感を持つインディーが揃っているような顔ぶれだ。

 “ローンチタイトルがプラットフォームの特徴を反映する”と仮定すれば、そこからSteam Chinaのスタンスを想像できそうなラインアップである。

既存Steamは今後中国から消えるのか?

 今回のイベントにおいて、中国での無印Steamの行方についての言及はなかった。出展していた開発者も問い合わせているということだったので、現時点ではどちらに転ぶか分からない。速報記事ではこれを注目ポイントに挙げたが、こちらについては続報を待つしかなさそうだ。

“ローンチタイトル”、その進捗は?

 かなりの数の開発者に話を聞いたが、じつは“審査プロセスが進行中”のタイトルはほぼ存在しなかった。すべての出展者から話を聞くことはできなかったので不十分なデータではあるが、審査を終えてリリースの目処が立っているタイトルは中国産1本、進行中の中国国外タイトルが1本といったところで、それ以外の多数タイトルはまだ“着手するところ”という段階のようだ。

 もちろん各タイトルともゲーム内テキストの中国語化などは進行中だったが、最大の懸念であるセンシティブな表現やゲーム内容のローカライズ作業についてはこれからであり、それはつまり「実際にリリースするまでどれくらい大変なのか」は未知数であるとも言える。

リリースまでのプロセスは?

 ではSteam China上でリリースするまでのプロセスはどうだろう? 複数の出展者から聞いた話をまとめると、Steam Chinaでゲームをリリースするには、まず完美世界にゲームを精査してもらい“中国当局の認可を得る上で必要になるだろう変更内容”のフィードバックを受けるところから始まり、その後本格的に中国政府による審査を進めていくことになるようだ。このプロセスを維持するとすれば、対応できるタイトル数に限界が出てくるため、大量のゲームが連日リリースされ続けて市場が飽和することはなさそうだ。尖ったゲームであれば従来よりも“ほかのゲームに埋もれず”よい結果をあげられる可能性もありそうである。

コンテンツ修正の手間が大変と聞くが、そのハードルは?

 中国市場を目指したことのある開発者ならばご存知のことばかりになるが、審査をクリアーするには“外来語を残さずすべて簡体中国語で表記する”、“性的(肌の露出割合など)・暴力的(流血など)コンテンツの表現基準をクリアーする”などゲーム内部の修正が必要になる審査項目は多い。
 この点、今回出展していた『Euro Truck Simulator 2』は長年多言語でリリースをしてきた経験がある上に規制を受けるであろうゲームプレイ要素も少ないため、開発者と話をした際にも申請はスムーズに進むだろう、と見ていた。

MODの互換性は?

 先述の『Euro Truck Simulator 2』は歴史が長いため、ユーザー作成のマップや車両MODが多数存在する。そのあたりはSteam Chinaでどうなるのかと開発者に聞いてみたところ、実際にローンチこそしていないので確定的なことは言えないが、技術的にMODが機能しなくなることはない、とのこと。無印SteamとSteam Chinaの構造は共通のようだ。
 ただしこの点もSteam China側から“MODはOK”と明言があったわけでも、却下されたわけでもなく、純粋に開発側から見て技術的問題はないという話だった点に留意したい。
 PCゲームのプラットフォームが複数立ち上がっている現在、MODの存在はSteamを選ぶ大きな理由になりつつあるだけに運営側としては対応したいはず。ここはValve/完美世界/上海市の手腕に期待するところだろう。

出展者の温度感

 無印Steamでリリース済みタイトルを出店していたある開発者は「現状、本作のプレイデータを見ても中国市場の存在感は大きい。そんな市場に対して(VPN接続による遅延などの)“障害”なく意図したゲーム体験を届けられるならば可能な限り参加したいと思うのは当然。あとはSteam Chinaがうまくいってくれることを願うだけ」と語ってくれた。その直後に「期待は大きいか?」と質問したときに「もちろん!」と満面の笑みを向けてくれたことが強く印象に残っている。

 また複数タイトルを扱う欧米系パブリッシャーの方数名とも話をすることができたが、彼らの意見は“投入するタイトルを厳選し、リリースまで尽力するのが我々にできる最善の手”という点で一致していた。

まとめ

 Valve/完美世界/上海市にとって、Steam Chinaをオープンかつ合理的なプラットフォームとすることは“理念”ではなく事業上の目標である。美しい理念“だけ”に突き動かされているのではなく、それぞれが事業として“中国ゲーム環境の最適解”を築こうとしているのだから、当然全力を尽くしてくれると期待できるだろう。

 冒頭の挨拶で完美世界CEOのロバート・H・シャオ博士が語った内容の一節は次のようなものだった。
 「昨年Steam Chinaを発表した際にさまざまなお話をしたにもかかわらずしばらく沈黙が続いてしまいましたが、今回ようやく進捗報告ができました。プロジェクトが着実に進捗を重ね、リリースが近づいていることをお知らせできて大変嬉しく思います」
 挨拶では引用部以外でも“着実に”、“協力して”、“多様性のあるラインアップ”という表現およびその類義語が複数回にわたり発されていた。

 あとはこれらのキーフレーズがどこまで実現できるかにかかっている。

 本当にローンチの目処がつかないのならばこのようなイベントを改めて開催しないだろうし、まして上記のようなコメントもしないであろうから、しっかりと地固めが進められていると想像しても良いだろう。

 今回のイベントは、情勢に詳しい人にとっては“とくに新しい情報がなかった”と思われるかもしれないが、個人的にはひとつずつ“着実に”前進していることをしっかりとアピールする場だったのではないかと受け取っている。引き続きSteam Chinaには期待と継続的な注目のまなざしを寄せていきたいところだ。