この夏、スクウェア・エニックスから“問題作”が出る。……と、いうと誤解を生んでしまいそうだが、もちろん、これは褒め言葉だ。ボクが個人的に“問題作”と思うのが、2019年8月22日発売の『鬼ノ哭ク邦』。

 本作は、『いけにえと雪のセツナ』、『LOST SPHEAR』などを手がけたTokyo RPG Factoryが開発。同スタジオが得意とする、人々の生と死を描く切ない物語を、往年の名作RPGへのオマージュと、美麗なグラフィックと巧みな演出で見せていくアクションRPG。本記事では、本作をプレイした感想と、本作ならではの魅力を紹介したいと思う。

『鬼ノ哭ク邦』プレイレビュー。アクションはディープ! ストーリーは激ヘビー! スクウェア・エニックスの気になる新作は「めちゃくちゃ攻めた」内容に_01

 本作のどこが“問題”かというと、ずばり“物語”なのだが……、具体的に描くとネタバレになってしまい“驚き”が減ってしまうので、ここではあえて触れません!! でも、ひと言でいうなら“めちゃくちゃ攻めてます”。デフォルメされた見た目に反した冒頭からアクセルベタ踏みのド・ハードな展開! 

 正直、ボクは“とあるイベント”で「攻めすぎている」と一瞬踏みとどまってしまいましたが、それにより先がとても気になり、いままだ冒険の途中です。プレイしたら「誰かに語りたくなる」内容なんです。ハードな世界設定が好きな人には、ぜひいちど体験版の範囲でもいいので、遊んでみてほしい。製品版ではより……いや、これは楽しみにとっておくべきか。

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 そんな『鬼ノ哭ク邦』がどんなゲームか、気になった人に、ゲームの内容を紹介しましょう。

そもそも『鬼ノ哭ク邦』って結局どんなゲームなの?

 『鬼ノ哭ク邦』は、【輪廻転生を守る“逝ク人守リ”となって“現シ世”と“幽リ世”を行き来しながら“鬼ビ人”の力を借りて、“迷イ人”を浄化していく作品】です。

 ……難しい? 「う~ん、ちょっと何言ってるか分からない」と某芸人さん風に突っ込んだ人、訳しますので、下を読んで!

 【輪廻転生を守る“戦士”となって“生者の世界”と“死者の世界”を行き来しながら“ジョブを持つ者”の力を借りて、“成仏できていない死者の魂”を浄化していく作品】です。
 
 「最初から、かんたんな言葉で言ってよ!」と思った人、違うんです! 『鬼ノ哭ク邦』は、この作品内の専門用語の多さからも分かるように、雰囲気作りが半端ない!!

 この世界は、“輪廻転生”に重きを置いています。現実の世界では大切な方が死んでしまったら、もちろん悲しいですよね。でも、本作ではその“悲しむ”行為は死者の魂を現世につなぎとめてしまう、残された生者も死者に気持ちを囚われてしまう。とされて、タブーとされているのです。

 大切な人が死んでも、悲しんではいけない。笑顔で送り出さなければ、輪廻転生の輪から外れ、いずれ魔物と化してしまう……。この設定がこの世界を理解するために、非常に重要なものになります。本作の世界観は少し特異で、フィールドの人々の会話でもそれを感じることができます。隅々まで見ることで、よりこの世界に入り込めます。

 光り溢れ、人々がたくさんいるけど、どこか乾いた感じのする“現シ世”――。

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 暗さの中に闇がもたらす神秘的な美しさと怪しさを合わせ持つ“幽リ世”――。

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 荘厳なBGM、引き込まれるグラフィックと、それぞれ“生者の世界”や“死者の世界”という言葉だけでは表せない“深さ”があるんです。そんな対をなすふたつの世界を、いつでも“ボタンひとつ”で切り替えながら、冒険や謎解き、戦闘を進めていきます。

 現シ世に悔いを残して成仏できない“迷イ人(魂)”を見つけて、彼が成仏できる手段を見つけたり

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 “幽リ世(死者の世界)”の暗闇を発生させている敵を、“現シ世(生者の世界)”で見つけて倒したり

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 と、対をなすふたつの世界の切り替えによる、“発見”や“違い”が冒険にメリハリをもたらしてくれます。しかも、主人公の職業は、輪廻転生を守る“逝ク人守リ”。職業柄、否が応でも人の様々な“死”に直面しなければならず、“幽リ世(死者の世界)”で会う無念を残した魂、“現シ世(生者の世界)”に残された家族や恋人のエピソードが、濃いんです。

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ちょくちょく現れる謎の敵、黒夜叉。声優が“???”というのも想像をかき立てますよね。

戦闘は“鬼ビ人”=最新型ジョブシステム!?

 本作では、プレイヤーは“幽リ世(死者の世界)”で出会う“鬼ビ人”の力を借りて魔物と戦います。そんな“鬼ビ人”をあえてザックリ説明すると、“ジョブ”です。皆さん親しみありますよね。“鬼ビ人”は刀や槍、斧、弩などの武器を司っており、自身の体に憑依させる“鬼ビ人”で使用武器やスキルが変化して……。

 つまり本作は、スクウェア・エニックスの得意とする“ジョブシステム”のバトルが楽しめる最新作のアクションRPGといえるのです。

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槍の“鬼ビ人”ザーフは、竜騎士的なジャンプ攻撃も持っている!

 「でも、ひとりで戦うアクションRPGだから、パーティーでいろいろなスキルを駆使して戦うジョブシステムならではの戦いの醍醐味は、味わえないのでは?」

 と思った人、ご安心を。主人公のカガチは、通常攻撃以外に、4つのボタンに覚えた技をセットでき、ボタンひとつの簡単操作で技を発動できます。一度発動した技は、“アクティブターンバトル”のようにゲージが貯まるまでは使用できないが、逆に言うとゲージさえ溜まっていれば、4種類の特殊技を立て続けにくり出せます。

 そして、“鬼ビ人”にはたくさんの種類があり、自分のタイプにあった“鬼ビ人”を4人冒険へ連れていけ、バトル中にリアルタイムに切り換えられるんです。敵によって、回避が必要な場合は、素早い“鬼ビ人”で戦い、敵がダウンすれば、動きはゆっくりだが一撃のダメージが大きい“鬼ビ人”に切り換えるなど、戦略性も広がりますよ。

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スキルを連続して発動して、敵を一層する爽快感もあります。

 また、最初はほかの“鬼ビ人”への切り替えに時間がかかりますが、“鬼ビ人”を育てていくことで短縮も可能。“ひとりぼっち”でも、まさにスキルが入り乱れるジョブシステムならではのバトルが楽しめるというわけ。

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鬼ビ人は最大4体まで同時に連れていける。つまり4×4の16種類の技を使える。
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 そしてこの“鬼ビ人”のジョブバトルのもうひとつの大きな特徴が、“鬼ビ人”ごとに用意された敵の攻撃を防ぐ手段。プレイヤーは、ダッシュやジャンプ、防御、ワープなど、憑依させた“鬼ビ人”で異なる立ち回りを行うことに。これが攻撃以上に“鬼ビ人”のアクションを際立たせ、使い分けのおもしろさをアップさせています。もちろん、お気に入りの“鬼ビ人”だけ徹底的に強化するという遊び方も可能で、その自由度も、ジョブシステムならではです。

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 前述のように “攻めている”物語が楽しめるのも、しっかり作り込まれた世界やシステムがあるからこそ。そんな作り手の“覚悟”と“自信”が感じられる『鬼ノ哭ク邦』。
 1990年代のスクウェア作品の直撃世代としては、つねに“驚き”を与えてくれた、野心溢れるあのスクウェアRPGのDNAとともに、新たな挑戦も感じられる作品です。

 発売を直前に控えた本作。気になる方は、まず体験版を遊んでみてはいかがでしょうか。製品版に引き継ぎもできますので、ぜひ!

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