ナチスの超科学に屈した第2次世界大戦後の世界を舞台に、ナチスの圧政に反旗を翻し、自由を取り戻すべく立ち上がったレジスタンスの戦いを描く人気FPSシリーズ、『Wolfenstein(ウルフェンシュタイン)』。

 1992年に発売された『Wolfenstein 3D』は、FPSというジャンルを確立した作品として、世界中を席巻。その流れを汲み、2014年に発売された『Wolfenstein: The New Order』は、ナチスを相手に戦うというコンセプトは踏襲しつつ、敵の超科学兵器との壮絶な戦いをブラッシュアップして表現し、『Wolfenstein』の新生は成功した。

 シングルプレイのみ、ヘルス&アーマー制の採用、深い探索要素など、シンプルかつ骨太な作りで高評価も獲得。2017年に発売された正統続編となる『Wolfenstein II: The New Colossus』では1960年代のアメリカを舞台に、進化したナチスとレジスタンスの戦いをさらに過激に描き、その人気を不動にした。

 そして、2019年8月8日に発売を迎えたNintendo Switch/プレイステーション4/Xbox One/PC用タイトル『Wolfenstein: Youngblood』。スピンオフという位置づけながら、CO-OP(協力プレイ)などの新しい要素をふんだんに取り入れた意欲作となっている。正直、日本では好き者向けのハードコアなFPSという認識が強い『Wolfenstein』シリーズだが、本作はそんなイメージを払しょくする、ユーモア溢れる世界観を軽妙に楽しめるタイトルだ。

双子の娘がパリで文字通りの大暴れ!

 
 まずは、本作の基本情報から説明する。舞台は前作より19年後となる、1980年のパリ(Neu Paris)。シリーズを代表する歴戦の闘士、B.J.ブラスコヴィッチが主人公……ではない。本作の主人公は、B.J.とアーニャの双子の娘、ジェスとソフである。

 第二次独立革命に成功したアメリカで、B.J.たちは娘に生き残るための方法を教えながら、束の間の平穏を楽しんでいた。しかし、B.J.はナチスの支配下にあるパリに向かい、消息を絶ってしまう。父の戦闘技術、母の屈しない心を持つジェスとソフはパリに向かい、父を捜すべく、レジスタンスとナチスの戦いに身を投じる。

 プレイヤーはまず、ジェスとソフのどちらかをプレイヤーキャラクターにするか、選択することになる。見た目以外に能力的な違いはないが、ジェスは最初からスコープ付きのアサルトライフルを持っているので、中距離から遠距離の戦闘に適している。ソフはドラムマガジン付きのクーゲルゲヴェーアというライフルを持ち、中距離から近距離の戦闘に適していると言える。これは専用武器ではなく、最初からちょっとした強化が施された武器を持てるということだ。

 また、ここでアビリティをひとつ取得できるのだが、軽量の敵に向かってダッシュすると敵を地面に倒せる“クラッシュ”、一時的に透明になれる“クローク”のふたつから選択することになる。アグレッシブなプレイが楽しみたかったら前者を、ステルスプレイに徹したいなら後者を選べばいい。もちろん、どちらもいずれ取得できるので、途中でプレイスタイルを変えることは難しくない。

 実戦デビュー(娘たちは実戦経験がなく、初めての戦闘で吐いたりする!)は“ナハトファルター”という名前のツェッペリン(飛行船)。ここでプレイヤーも、彼女たちと同じく戦闘や探索の基本を学ぶことになる。

 基本的にはプレイヤーとパートナーのふたりで進めていくことになり、ソロプレイの場合はAIがパートナーを動かす仕様だ。重いドアをジェスが支えてソフがくぐり抜ける、ふたりでアイテムボックスを同時に開ける……といったギミックもあるが、AIの場合は自動的に動いてくれる。CO-OPの場合、パートナーを呼び寄せることも可能で、離れていてもマップに位置が表示されているので、あまり迷うことはない。

CO-OPに特化した数々の新要素

 CO-OPプレイに特化した本作には、共有ライフというシステムがある。自分の体力やアーマーとは別に、ふたりで共通したライフが存在するのだ。ふたりのどちらかが失血死(体力がゼロになる)した場合、デフォルトでは3つある共有ライフがひとつ減る。3つともなくなった状態でどちらかが失血死すると、リスタートになるというわけだ。

 共有ライフを消費すれば、失血死したプレイヤーは体力を若干回復した状態で復活できる。パートナーに助けてもらえれば共有ライフを消費することはないが、救助には時間が少しかかるのと、失血死するのはだいたい敵がわんさかいる状況なので、気が付けば共倒れ……ということになってもおかしくない。

 もうひとつ、ハンドシグナルというユニークなシステムもある。有効範囲内にパートナーがいる状態で発動(方向キーの上を押すだけ)すると、“サムズアップ”で体力、“メタルアップ”でアーマーを少し回復できるのだ。冒頭のキャラクター選択時、どちらかのハンドシグナルを選択することになるが、ゲームを進めていけばいろいろなハンドシグナルが獲得できる。

 共有ライフは“残機制”に近い感覚で、無茶に戦っても「共有ライフがあるからまだイケる!」と安心できるもの。ただし、本作では、銃弾を撃ち込んでもなかなか倒れてくれない、堅めの敵がよく出現する。とくにアーマーが厚いスーパーソルジャーは正面からの攻撃に強く、一方が正面から撃って敵の注意を惹きつけているあいだに、パートナーは背後に回って装甲の薄い部分を狙うなど、連携が求められることも多い。

 失血死したプレイヤーは救助を求めるか、共有ライフを消費してその場で復活するかを選べる(制限時間はある)。大量の敵が待っていたり、強烈なボス戦などでは共有ライフこそ生命線となるが、要所要所に回復できる場所が用意されていたり、何よりも一度死んだら終わりではないので、あまりFPSが得意ではないというプレイヤーも意外とサクサク進めるはずだ。

 ソロプレイの場合でも、救助を求めればAIのパートナーが賢く立ち回ってくれる(とはいえ、無理な状況では共倒れになるので、そのときは潔く!)。

 『Wolfenstein』シリーズではおなじみの、敵に見つかると警報が鳴って増援が呼ばれるシステムは健在。司令官がいる場合は増援の敵レベルが上昇するので、真っ先に司令官を始末すべきというセオリーもそのまま。そして、ステルス状態で敵の背後に近づければ、ゴツい斧やナイフで一撃死を狙えるのも同様。

 これがCO-OPとなると、ひとりが司令官にステルスで近づくあいだに、パートナーは増援に備えて位置取りするといった戦略が可能となり、立ち回りを考える余裕が生まれる。入り組んだマップではけっこう気づかれてしまい、すぐに増援が湧いてくるからだ。ソロプレイの場合、ステルスプレイに徹するならクロークを習得して、自分がサイレントキラーとなったほうがよさげだ。

 ちなみに、前作から19年も経っているので、ナチスの技術も飛躍的にアップしている。ステルス機能を使って姿を消すボスなども登場し、ゴリ押しが通用しないこともある。しかし、どのような状況でも、パートナーと協力すれば突破できるようになっているので、挟み撃ちやおとり役に徹するなど、ふたりでいろいろ試してみるといいだろう。

探索にPERK……本作ならではのシステム

 ツェッペリンを突破すると、いよいよパリの地に降り立つことになる。本作ではMachineGamesだけでなく、『Dishonored(ディスオナード)』シリーズを手掛けるArkane Studiosも開発に参加しているので、パリの街は縦にも横にも広がった構造となっている。さすがに『Dishonored』のコルヴォのように飛び回れはしないが、あちこちを探索することで、スキンやハンドシグナルのアンロックに必要なコインや回復アイテム、ベセスダ・ソフトワークスと言えばの多彩なコレクション(収集物)などが入手できる。

 ダブルジャンプができるので探索範囲も広く、高所でレーザー砲台を発見したプレイヤーが下にいるパートナーを援護するといったマップも用意されているので、探索の楽しさがいままで以上になっているのは間違いない。その反面、迷いやすい場所があるのも事実。トラテープやランプといった、進行ルートのヒントはよく探せばあるのだが、ジャンプする位置などの操作は慣れておいたほうがいい。

 また、いままでの『Wolfenstein』はチャプターに分かれた物語を追っていく形で進行していたが、本作は地下墓地(カタコンベ)にあるレジスタンスの基地を拠点にして、地区に分かれたパリを好きなように攻略できる。ストーリーミッション以外にも、さまざまなサイドミッションが発生するので、寄り道しながら強化を重ねていくことも重要なポイントとなる。

 プレイヤーの強化は、レベルアップによって獲得するアビリティポイント(レベルアップでダメージ値も上昇する)を消費してPERKをアンロックしていく形。PERKは、回復系などの能力に特化された“MIND”、武器系列の能力が揃う“MUSCLE”、クロークやクラッシュのような特殊能力が並ぶ“POWER”の3ラインがあり、必要レベルに達すれば強化ができるというシステムだ。

 武器のカテゴリーはピストル、ブリッツゲヴェーア(マシンガン)、アサルトライフル、クーゲルゲヴェーア(ライフル)、近接武器。改造パーツでアップグレードしたり、ゲーム中に入手するシルバーコインなどを使用してスキンを変更することも可能だ。ちなみに、“MUSCLE”のPERK“ビッグガン”を習得すれば、敵が落とした銃火器を携行できるようになるので、武器の幅を広げたいなら必須となる。

 このように、プレイヤーの成長システムはいたってシンプル。当然、APは有限かつ貴重なので、ある程度の段階でプレイスタイルの方向性は決めたほうがいいだろう。

CO-OPを気軽に楽しめるFPSという側面も

 いろいろと書き連ねてきたが、やはり本作最大の魅力はCO-OPの楽しさにある。オンラインで遊んでいれば、シームレスにフレンドもしくはマッチングプレイヤーが参戦できるし、パートナーがオンラインから離脱してもそのままAIが動かしてくれるので、プレイが途切れることはない。

 すでに発売されている海外では「敵が固い!」という声が挙がっているが、ふたりで協力して撃てば、そこまでのストレスは感じない。何より、増援が押し寄せてくる場面やボス戦を、パートナーと大騒ぎしながら戦うのは、ふたり並んでシューティングゲームを遊んでいるような感覚に近い。大人数での対戦ではないので、コミュニケーションが自然と密になるのも、最近のタイトルにはないフィーリングで新鮮ではないだろうか。

 『Wolfenstein』シリーズのハードコアな展開を期待する人には、本作のノリは軽めに感じるのは確か。ジェスとソフ、参戦はしないがふたりをサポートしてくれるアビー(彼女もアノ人の娘)のやり取りも軽快さに拍車をかけているが、会話の内容はしっかり下品だったりするし、破壊表現もしっかり18歳以上のみ対象だ(切断面の色調は変わるけど)。
 
 本作には、『Wolfenstein』シリーズにニューカマーを呼び寄せる狙いがあると、個人的には思っている。CO-OPに特化したゲームシステム、主人公も含めた演出面の刷新、すっきりと整理された成長システム、そして3519円[税別]という価格。

 コアな『Wolfenstein』ファンには物足りない部分があるのも確かだが、ナチスを叩きのめす爽快なFPSというシリーズの魂はしっかりと残っているし、気軽に協力プレイが楽しめるFPSとしての完成度は高い。何より、80年代ならではの、微妙にナヨナヨしていたり、大げさなメロディーラインが流れるシンセサウンドが最高なので!