『ARTIFACT ADVENTURE 外伝 DX(アーティファクトアドベンチャー 外伝 DX)』のSteam版の配信が、PLAYISMより2019年7月31日に開始された。本作は、プレイヤーの選択によってさまざまな未来が紡がれるフリーシナリオ型2DオープンワールドのJRPG。開発は、おもに3人兄弟でインディーゲームの制作を手掛けている日本のチーム“bluffman”だ。

 もともとはゲームボーイライクな画面が特徴的な『ARTIFACT ADVENTURE 外伝』を2018年1月9日にSteam向けに配信。それが好評を博し、大幅にパワーアップしたNintendo Switch版の『ARTIFACT ADVENTURE 外伝 DX』が2019年6月6日に配信された。そして今度は、その『DX』が古巣のSteam向けに移植、配信と相成ったわけだ。

 今回の記事では、そんな『アーティファクトアドベンチャー 外伝 DX』の見どころを解説。とくに注目してもらいたい部分をピックアップしたので、未体験のゲームファンはぜひチェックしてみてほしい。なお、本作は外伝の名を冠しているが、シリーズを知らなくてもまったく問題なく遊べるのでそこは安心してほしい

世界の未来を選択できる

 やはりいちばん注目してほしいポイントは、自分の選択によって世界の未来がガラリと変わってしまうフリーシナリオだ。プレイヤーは故郷の村を破壊され、記憶を奪われてしまった冒険者となって、いまから3年後にやって来る“厄災”に備え、国内の問題を解決していくことになる。

 問題解決という部分は、世界を冒険しながら行く先々で人々を手助け……と、日本の伝統的なRPGのプレイフィールと同様。ちょっと変わっているのは、さまざまな問題をクエストという形で請け負ってこなしていく中で、プレイヤーは必ず選択を迫られる点。病人に薬を渡すのか渡さないのか、街のために高額寄付をするのかしないのか、胸に迫るストーリーが語られたうえで、いくつもの究極の選択を繰り返していくのだ。

 おもしろいのは選択した結果が出るのが3年後というところ。ふつうのRPGであればすぐ結果が出て一件落着となるものだが、本作は自分の選んだ行動が正解なのか、間違っていたのかはわからないまま、再び冒険の旅へとくり出すことになってしまう。早く結果を知りたいけれど、世界にはまだ困っている人がたくさんいるから放っておけないしと、非常にヤキモキ。でも本作はこれでいい。後で一気に怒涛のカタルシスがもたらされるのだから。

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 『アーティファクトアドベンチャー 外伝 DX』は選択の前半と、結果の後半の2部構成になっている。問題編と解決編と言ったほうがわかりやすいだろうか。ゲーム中で王様に話しかけることで問題編を終わらせ、時間を3年進めて解決編をスタートできる。これは完全にプレイヤーのタイミングで決めることができ、ゲーム開始直後に3年進めていきなりラスボスへ向かって突っ走ることだって可能。行き先も攻略する順番もプレイヤーが自由に決められるというわけだ。

 さて、3年後はついに厄災が世界へと放たれた世界が舞台となる。BGMも様変わりし、いよいよ最後の対決が近いことを予感させる。プレイヤーは王様から飛行船を与えられ、新たに厄災の中心地とケモノの楽園へも行き来が可能になる。前者は言わずもがなのラストダンジョンがある孤島。ラスボスやその力の源である、3つの神殿を攻略することになる土地。後者は大金を稼げる特別なエリアとなっている。

 ケモノの楽園で荒稼ぎして装備を整え、いざ決戦! でもいいのだが、前半でこなしてきたクエストの結果を見て回るほうが、本作の醍醐味と言えるだろう。勇者を目指す青年を応援してやったがどうなったのか、モンスターが湧き出す鉱山を爆破した村は平和になったろうかなど、さまざまな思いを胸に前半で手助けした町々を巡っていこう。

 望み通りのハッピーエンドもあれば、「ウソだろ!?」と思うような予想できない展開を迎えたり、目を覆いたくなるような悲惨な出来事も起きてしまうのだが、すべては自分の選択の結果。喜んだり笑ったり、またはへこんだり。感情を大きく揺さぶってくる、この“結果確認ツアー”が本当におもしろいのだ。もちろん実益もあって、結果に応じて多種多様な報酬が得られることもある。急がば回れではないけれど、結果確認ツアーを経ることで、主人公が確実にパワーアップできる点もうれしい。

 そんな感じなので、本作は一度ならず2度3度と違うストーリー展開を楽しめる。選択を変えてみるのもいいが、前述のようにいきなりラスボスを目指して、スピードランに打ち込むのも楽しいかもしれない。

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仲間選びで難度も変わる

 本作の自由度が高いことは、すでにお伝えしている通り。当然のごとく、旅のお供となる仲間を誰にするか決めるのもプレイヤー次第となる。冒険へ出発しようとする直前、大臣から「国内の優れた者3人の中からひとりと、城の中にいる志願者ふたりを選べ」と言われるのだが、これがホントに悩ましい! とくに優れた3人は誰にするかによって初期の難度が大きく変化してしまうので、人によっては決めるのにかなり時間を浪費するはめになる。もちろん、選び直すなどというヌルいことは不可能だし、あえてソロを選択することも可能。

 本作の仲間は、従来のRPGのようにパーティメンバーとなって戦ってくれるわけではない。それぞれが持つ特性を利用できるといった感じになっている。たとえば、貴族のハーシェルは仲間にしても戦力になるどころかダメージレジスト率がマイナスになってしまうが、いきなり旅の資金として100万Gを自由に使えるほか、別荘にも50万Gの蓄えがある。いきなり最強の武器を購入できるため、初期の冒険はめちゃくちゃ簡単になる。街の場所の情報を買って、全国へファストトラベルを可能にすることもできる。

 “神速の刃”の異名を持つローランドは老練の騎士。戦闘でスキルの神速の刃を使用することで一時的に呼び出して戦ってもらえる。入手経験値やダメージも増え、戦闘でかなり有利に立ち回れるようになる。難度的にはふつう程度。

 探検家のレックスは仲間にしてもステータスの変化はないが、いきなり世界のいたるところへファストトラベルが可能。街だけでなく、洞窟などにも飛べる特殊なファストトラベルなので超便利。ダンジョンなどからも一瞬で抜け出せる。ただし、戦闘的な優位性がないため、難度的には難しい部類になる。

 最初の3人でも誰にするか決まらないのに、ほかにもアイテム発見率アップや連続攻撃のチャンスを作ってくれる犬のグレン、隠し通路を見つけてくれる元盗賊のジャック、致命傷を与えるのと防ぐ方法に通じる剣士のピート、効果的に薬を使える薬剤師のエミリア、多くのアイテムを持てるようになるサタデー、不可思議な現象を巻き起こす術師のレイなど、志願者のふたり選びのほうも大いに悩ましいから困る。仲間それぞれにスポットを当てた、己のなすべきことを探し出すクエストもあるため、どんな物語が展開するのかも楽しみのひとつだ。

 仲間選びは最初に体験することになるが、じつはゲーム中でもっとも悩む選択かもしれない。めちゃくちゃ悩んで一通り遊んだ後は、違うメンツで冒険してみるのもいろいろ発見があっておもしろいはず。

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ツンツンバトルが思いのほか楽しい

 『アーティファクトアドベンチャー 外伝 DX』のバトルは、サイドビューのアクションになっている。地面から湧き出る敵をすべて倒すのが目的なのだが、基本の戦いかたはじつにシンプル。主人公がつねに構えている武器で敵をツンツンするだけ。だけど、これがけっこうおもしろいから不思議なもの。筆者のようなおじさんの感覚的には、昔懐かしい『イースI・II』の戦闘みたいな感覚を思い出すものだった。

 敵の体当たりや遠距離から放ってくる攻撃をジャンプで回避しながらツンツン! 敵の背後に回り込んではツンツン! 隙があれば強力なスキルを叩き込んで敵を全滅させてやればいい。多種多様なスキルは、ゲーム中に拾ったりもらったりするアーティファクトを装備することで同時に3つまで使用可能になる。爆弾やナイフのような攻撃用アイテムを使うのにも、それぞれに対応した“極意”と呼ばれるアーティファクトの装備が必要なので、好みの組み合わせを見つけていこう。特定の攻撃力を高めたり、状態異常を引き起こせたりできるパッシブスキルも3つ装備できるので、組み合わせは相当な数になるだろう。

 『LA-MULANA 2』や『UNDERTAIL』などのインディーゲームや情報サイトの“ゲームキャスト”などとコラボレーションもしており、アーティファクトとして登場したりもしている。効果もいろいろあるので探してみるといい。

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 敵とのエンカウント方法は、シンボルエンカウント方式。フィールドを移動中、不意にモンスターが飛び出してきて襲われることもあるが、基本的には配置された“蜘蛛の巣”や“渦”を自分で調べることでバトルがスタートする仕組みだ。自分のタイミングでバトルできるのはかなり助かる。ダンジョン内などでは行く手を阻むように蜘蛛の巣が張り巡らされているのだが、“種火”というアイテムがあれば蜘蛛の巣を燃やして戦闘の回避も可能だ。バトルが面倒なときは使いまくってドンドン進んでしまおう。

 装備品は武器、オフハンド(盾や宝珠を装備)、頭、胴体、足、装飾品1、装飾品2に装備が可能で、それぞれにかなり細かくパラメーターを変化させる性能が付与されている。ライフボーナス、ライフ回復量、移動速度、アイテム発見率、ダメージレジストなどなど、枚挙にいとまがないほどの種類が存在。武器自体も細剣、短剣、槍、大斧、長剣など、さまざまな種類があり、使い勝手が異なる。ぶっちゃけ、細かいパラメーターなど気にしなくても全然問題ないのだが、気にする人はトコトンこだわれる懐の深さが本作にはある。

 また、『DX』ではふたり同時にバトルに参加できるようにもなっている。メニュー画面で“協力プレイ オン”にするだけでオーケーだ。ふたり目のプレイヤーが操作するのは仲間として選んだ3人で、自由に切り替えながら戦える。あまり出番がなかった彼らも、ここにきてようやく日の目を見ることになった。たとえやられてしまっても、ふたり目、3人目と続けて戦えるため、おもに主人公のフォローが役割となる。逆に、主人公がやれてしまうと即バトル終了となるので要注意。

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カラフルで見やすくなった

 オリジナル版ではゲームボーイ然としたモノトーンの画面が印象的だったが、『DX』ではかなり色鮮やかなカラー画面となった。おかけで地形や蜘蛛の巣、渦などがめちゃくちゃ見分けやすくなって非常に重宝している。BGMも画面に合わせてカラーゲーム機風にパワーアップしたらしい。

 レトロゲーム好きは「前の画面のほうがよかった」という人が少なからずいそうだが、そういった人たちのためにオプションで画面のカラーモードの切り替えもできる。カラーも合わせて全5パターン用意されているので、好きなものを選ぶといい。個人的には白黒なんかはシュッとしている感じがしてよかった。ついでに言うと、オプションでは難易度設定で敵の強さも変えられる。難しく感じたら、これをいじってみるといいかもしれない。

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くり返し遊ぶべきRPG

 『アーティファクトアドベンチャー 外伝 DX』の見どころ解説は以上で終了。本作がおもしろいのは、やはり“選択と結果のRPG”というところ。ふつうのRPGみたいに事件解決して世界を回るのではなくて、結果を見ずにどんどん溜め込んでいくものだから、最初は「アレ? これで終わり!?」とちょっと肩透かしを食らうかもしれない。でもその長い仕込みを終えて、答え合わせをしていくときの楽しさといったらほかに類を見ないほど。これは、ぜひゲームファンには体験してもらいたいと思う。フリーシナリオ型2Dオープンワールドということで遊びかたも複数あり、1プレイで終わらせるのはもったいない。少なくとも2回、3回とくり返しプレイしてみてほしい。