2019年7月27日、東京都のBOOKMARK浅草橋で行われた、“ザンキゼロ展 ~ガレキ島同窓会~ スタッフトークショー”。これは、『ザンキゼロ』の発売1周年を記念して実施された展示イベントの企画で、同作のプロデューサー・寺澤善徳氏とクリエイティブディレクターの菅原隆行氏が登壇し、ファンの前でトークショーをくり広げた。

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画面左からスパイク・チュンソフトの菅原隆行氏と寺澤善徳氏。
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最初に行われたおふたりの自己紹介では、寺澤氏の肩書が“クローンプロデューサー”となっており、会場の笑いを誘っていた。

ファン必見の貴重な開発資料を大放出!

 今回のトークショーは、“ガレキ島課外教室~ザンキゼロはこうして生まれた~”をテーマに展開。最初の1時間目は、“根回しの時間~ザンキゼロの企画が通るまで~”と題して、下記のエピソードが語られた。

1時間目のおもなトーク内容

  • 最初はニンテンドー3DS向けの企画だった話
  • 老人が活躍するRPGから、クローン人間のRPGへ
  • タイトルはエピローグとセットで思いついた話
  • ゲーム開発をランカースさんにお願いした経緯
  • マスコットキャラクターが生まれた経緯
  • 動画や素材をいろいろ作ってプレゼンした話(蔵出し資料)

 そもそも『ザンキゼロ』は、『ダンガンロンパ』の1作目を作り終えた菅原氏が「そろそろ別のゲームを作りたい」と思い企画がスタート。当初は、ニンテンドー3DS向けの作品として企画書が作られており、タッチペンを使って攻撃するシステムを考えていたという。今回のトークショーでは、社内向けの企画書が公開された。

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貴重な企画書の一部を公開! “残機”や“怠惰”、“色欲”といったキーワードは、企画書の段階で盛り込まれていたのがわかる。
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企画書の段階では、クローン人間の寿命は“28日”だった。だが、菅原氏曰く、「ゲームのシステム的に長過ぎる」ということで製品版では13日に変更されている。

 また、“マスコットキャラクターが生まれた経緯”では、当初は野沢雅子さん演じる“ミライ”(主人公たちをガイドするアニメ番組“エクステンドTV”のMC。おもにツッコミ役)がいなかったことが明らかに。公開された社内用のプレゼン動画には、テラシマショウくんの相方として、“ハカセ”と呼ばれるキャラクターが登場していた。

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左が幻のキャラクターの“ハカセ”。このハカセが、『ザンキゼロ』のマスコットキャラクターになった可能性も!?

 ハカセがミライに変わった理由は単純明快で、「(ハカセは)グッズにしづらい」から。寺澤氏は、「もうちょっとあざとく、人気が出そうなキャラクターがほしいと菅原にお願いした」と当時を振り返った。菅原氏も「結果的にミライにしてよかった」と語り、その理由を「ハカセだとショウくんの暴走を抑えきれなかったと思います」と明かした。ほかにも1時間目では、プレゼン用の資料として貴重なイラストがいくつも公開された。

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初期に描かれたパッケージイラスト。完成品のイラストと見比べると、キャラクターや立ち位置などが異なるのがわかる。

 2時間目は、“ストーリーの時間~キャラクター制作秘話、収録秘話~”をテーマに、下記のエピソードが語られていった。

2時間目のおもなトーク内容

  • 『ダンガンロンパ』とは異なるストーリーテリングにした理由
  • シナリオ制作の失敗談。『ニューダンガンロンパV3』との同時進行で死にかけた話
  • 各章で語られるキャラクターの過去について
  • キャラクター制作の秘話。キャラクターデザインの苦労話など
  • モーションが3段階(幼年、青年、老年)あってたいへんだった話
  • キャスティングや収録の秘話。野沢さんの元気の秘訣

 “キャラクター制作の秘話”では、途中経過のキャラクターデザインがお披露目された。イラストを見ながら寺澤氏は、「ゼンがだいぶ違うかな。ミナモも肌が黒いね」とコメント。これを受けて菅原氏は、「このときのミナモは職業が保育士だったときで、ゼンは板前のころです」と教えてくれた。

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左上の肌が黒い女性がミナモ、右の包丁を持った男性がゼン。途中経過のデザインでは、左下の男性のマモルも髪の色が異なる。

 最後の“キャスティングや収録の秘話”で飛び出したのは、マモル役の声優・平田広明さんに、「幼年期の演技は難しい」と断られたというエピソード。寺澤氏と菅原氏は、悩んだ末にマモルの幼年期を松風雅也さんにお願いしたが、とある理由から「この配役はハマるんじゃないか」と閃いたそうだ。

 3時間目は、“音楽の時間~チップチューンやエンディング曲~”というテーマと、下記のエピソードをもとに、トークがくり広げられていった。

3時間目のおもなトーク内容

  • BGMのコンセプトは“チップチューン+エレクトロ”
  • ボス戦のBGMはシューティングゲームのボス戦っぽく
  • 廃墟内のBGMはアンビエントミュージックっぽく
  • PV用にいちばん最初に作った曲が『ZANKI∞ZERO
  • 権利関係や原曲の確認がたいへんだった『マザーグース』の話
  • 分島花音さんにエンディングテーマをお願いした経緯

 BGMのコンセプトである“チップチューン”とは、いわゆるファミコンのピコピコ音のような音のこと。菅原氏は「イベント曲に関しては、必ずどこかに“チップチューン”の要素を入れてください」と開発スタッフにお願いしたという。そのために苦労もあったそうで、寺澤氏は「チップチューンを入れるとBGMが安っぽく聴こえてしまうことがあって……。もう少し音を厚くしてください、ほかに弦楽器を入れてくださいとお願いして、作り直してもらうこともありました」と教えてくれた。

 また、“分島花音さんにエンディングテーマをお願いした経緯”では、当初菅原氏が、既存の曲をエンディングテーマに使おうと考えていたというエピソードが語られた。いろいろな問題で菅原氏のやりたいことが実現できなくなったときに、寺澤氏に分島花音さんを紹介してもらったそうだ。菅原氏は、「分島さんの曲を聴くうちに彼女にお任せするのがいいと思い、エンディングテーマをお願いしました」と回顧した。

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 続いては“放課後”と題して、“質問コーナーの時間~答えに詰まることもある~”がスタート。会場に詰めかけたファンの質問に、菅原氏と寺澤氏が答えていった。「“NEW GAME”を選んだとき、タイトル画面からそのままガレキ島を歩く演出が大好きです。このときの視点は誰かイメージがありますか?」という質問に、菅原氏は「マモルです」と回答。会場がどよめくなか、「マモルがハルトを起こすまでのイメージで作りました」と続けた。

 また、「主人公たちが抱えるトラウマに性的なものが多いですが、何か意味があるのですか?」という質問に菅原氏は、「シナリオを書いているときは、まったく意識していませんでした。結果的に性的なものが多くなって」と回答。すかさず寺澤氏が「ということは、あなたの内面が出ているんじゃないですか」とツッコミを入れ、会場の笑いを誘っていた

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息の合った掛け合いで、ファンを楽しませていた寺澤氏と菅原氏。

 トークショーは会場のファンに惜しまれながらも、 “下校時間”の“お別れのご挨拶~人類の明るいミライをテラシマショウ~”でついにフィナーレへ。

 菅原氏は「短い時間でしたが、来ていただいてありがとうございます。『ザンキゼロ』を好きになってくれた方と、こうやって直接話す機会はなかったので、すごくうれしかったです」、寺澤氏は「発売から1年たっても、応援してくれているのはうれしく思います。またこうやって皆さんとお話できる機会を作りたいと思いますので、また遊びにきてください。本当にありがとうございました」とコメントし、ファンとの楽しいひとときは幕を閉じた。

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