2019年8月3日(土)に発売される、真名隠匿型バトルロイヤルボードゲーム『Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-』(ドミネイトグレイルウォー 〜フェイト/ステイナイト オン ボードゲーム〜)。発売に先駆けて開催されたメディア体験会で、こちらを実際にプレイすることができた。

 本稿では、プレイによって判明した『Fate DGW』の具体的なゲーム内容や、ゲームプレイを通じて味わうことのできる“『Fate』らしさ”についてのリポートをお届けする。

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プレイのたびに異なるマスターとサーヴァントの組み合わせで、“聖杯戦争”に挑む!

 『Fate DGW』では、3〜7人のプレイヤーがサーヴァントを使役する魔術師(マスター)となり、手にした者の願いを叶えるという“聖杯”を求めて戦う“聖杯戦争”に挑むことになる。

 今回参加したプレイヤーは全部で5名。筆者は使用するマスターとしてイリヤスフィール・フォン・アインツベルンを選択した。イリヤは宝具の使用に必要な“魔力”の初期値が他のマスターより多いなど、初心者でも遊びやすいパワフルな性能となっている。

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他のマスターは魔力の初期値が2〜4なのに対して、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは6と、宝具や強力なカードをより使用しやすくなっている。

 ちなみに、ファミ通.comの『FGO』担当編集は、もっとも上級者向けの間桐慎二を選択した。6人以下でプレイする場合、慎二はプレイ中に戦闘で敗北、または令呪を使い切ると妹の間桐桜に交代できるという、ユニーク能力を持っている(7人プレイでは、慎二と桜を別のプレイヤーがそれぞれ受け持つ)。

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3〜6人でプレイする場合、間桐慎二が戦闘で敗北した際に、妹の間桐桜への交代を選択できる。

 聖杯戦争ではマスターに加えて、使い魔であるサーヴァントが召喚されて、共に戦うことになる。原作の『Fate/stay night』ではイリヤのサーヴァントはバーサーカーだったが、本作では各マスターの使役するサーヴァントが全9騎の中からランダムで決定される。

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サーヴァントは英霊召喚のように選択できず、裏返しとなったカードをプレイヤーが選ぶ形だ。

 つまり本作ではプレイのたびに、まったく異なるマスターとサーヴァントの組み合わせが盤上に出現するわけだ。そのため、以前と同じマスターでプレイしても、使役するサーヴァントによって勝利を目指す戦略が大きく変わってくるというのが、本作の大きな特徴となっている。

 さらにサーヴァントの“真名”、つまり各自がどのサーヴァントを使役しているのかは、プレイ開始時には他のプレイヤーに秘匿されている。

 サーヴァントの真名は基本的に、必殺技である“宝具”を使用する際に判明するが、それまでの各プレイヤーの行動や、戦闘時に使用するカードの内容から真名を推理して、対抗手段を考える駆け引きが本作のプレイのおもしろさだと言えるだろう。

 今回のプレイで筆者のイリヤが使役することになったのは……ランサーだ。敏捷性に長けており、宝具の“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”(※本作では対人宝具“刺し穿つ死棘の槍”と対軍宝具“突き穿つ死翔の槍”を使用可能)もなかなか強力で、戦闘での活躍が期待できる。初期値の高いイリヤの能力と合わせて、序盤から積極的に大暴れしたいところだ。

冬木市を舞台とする戦いを生き残り、クライマックスの一騎打ちに勝利せよ!

 マスターとサーヴァントの準備が終わったら、いよいよプレイ開始。まずは本作のプレイの手順を紹介しておこう。

 本作では各ラウンドごとにまず、自分のマスターを聖杯戦争の戦場となる深山町と新都、そして魔術工房の3カ所のうち、どこに配置するのかをローテーションで決められた順番に従って宣言していく。

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聖杯戦争の舞台となる冬木市を表しているメインボード。戦果の表示や戦闘で使用するトラック(マス目)がズラリと並んでおり、扱いやすい配置になっている。

 深山町または新都に複数のマスターが配置された場合は、そのマスター同士での戦闘が発生。カード2枚(追加でカードを使用できる場合もある)の数値の合計に、シチュエーションカードやイベントカードによる修正、“地の利”などのボーナスを加えて、もっともパワーの大きいマスターが勝利する。

 勝利したマスターは、その戦場の基本値にイベントカードの数値を加えた数の“戦果”を獲得できる。戦果はいわゆる勝利得点で、最終的に獲得した戦果の合計がもっとも多いマスターが、聖杯戦争の勝者となるわけだ。

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配置の宣言時には通常、深山町にはイベントカードをオープンした状態で、新都にはカードを伏せた状態で配置される。新都のほうが獲得できる戦果の基本値は大きいが、どんな効果があるのか宣言時には分からないというリスクがある。

 戦闘を避けたい場合は魔術工房に配置して、魔力の回復に徹することもできる。また、特殊カードや“令呪”を使用したり、魔術工房から移動したりして、戦闘を離脱して“偵察”による戦果を獲得したり、無人の戦場に移動して戦果を独り占めしたりすることも可能だ。

 ちなみに“令呪”は、各マスターごとに3画ずつ用意されており(遠坂凛は2画)、1画を使用することで魔力の増加、戦闘力の追加、交戦状態を無視した移動のうち1つを実行できる。ただし、いったん使用した令呪は絶対に回復しないので、使いどころが重要だ。

 戦闘で敗北しても戦果が手に入らないだけでペナルティはないが、移動と戦闘からなるラウンドを8回繰り返した時点で順位が低いマスターは脱落して、残ったマスターでクライマックスラウンドを戦うことになる。

 1回目のクライマックスラウンドを終えた時点で1位と2位のマスターが、2回目のクライマックスラウンドで一騎打ちを行い、最終的な聖杯戦争の勝者が決定される。

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各ラウンドごとにシチュエーションカードを引いて、戦場に置かれるイベントカードの追加や、戦闘属性に応じたボーナスなどが決定される。クライマックスラウンドには、専用のカードが用意されている。

秘匿した真名を解放して、強力な宝具をぶっ放せ!

 第2ラウンド、全体の場の雰囲気としてはまだ様子見といった感じだが、イリヤはキャラの特性的に、序盤から派手に立ち回りたいところ。そこで衛宮士郎と間桐慎二がすでに睨み合っている深山町にイリヤを突撃させて、2人まとめて戦うことにした。

 ここでランサーの真名を解放して、“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”の宝具カードを使用。1枚でパワー10という高威力で、見事2人に勝利! さらに宝具カードの特殊能力により、2人に勝利したことで戦果をさらにプラスして獲得することもできた。

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戦闘に参加するマスターは、各戦場のパワートラックに移動して、合計したパワーのマス目に置かれる。ランサーが宝具を使用したおかげで、イリヤが士郎と慎二を圧倒する結果に。

 『Fate』の戦闘の醍醐味といえばやはり、真名を明かして強力な宝具をぶっ放す瞬間の気持ちよさだ。特に今回は、真名の予想などもあまり進んでいないプレイ序盤での解放だけに、こちらもカードを出す際は緊張したが、対戦相手に与えたインパクトも強烈だったようだ。

 この後のラウンドでは、行動順の巡りがよかったこともあり、筆者のイリヤは戦闘を挑まれてもスルリと避けて、偵察などで地道に戦果を稼いでいく作戦を遂行。その一方では、イベントカードで大量の戦果が積み上げられた戦場を巡って、士郎と桜(慎二がイリヤに敗北したことで交代)が決戦を繰り広げることに。

 桜の使役するアーチャーが“無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)”を繰り出して、通常は3枚の手札から2枚を使用するところを、12枚の手札から4枚を繰り出すという数の暴力で挑みかかると、士郎のアサシンは“一の太刀”、“二の太刀”、“三の太刀”のカードを同時に場に出すことで発動できる宝具“燕返し”で応戦。多数のカードが乱れ飛ぶド派手な対決は、士郎が勝利を収めて戦果を獲得していた。

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 このように、『Fate』ファンなら戦闘に使用したカードの名前を並べるだけでも、その光景を活き活きとイメージできるはず。プレイヤーがゲームのルールに従って最適な戦略を練り上げると、原作のドラマチックな展開が自然と再現されていくのが絶妙だ。

 このあたりは、『桜降る代に決闘を』『惨劇RoopeR』といった傑作アナログゲームを生み出してきたBakaFire氏の手腕が、今回も見事に発揮されているところだろう。

宝具や令呪をどのタイミングでどう使うか、戦略の違いが勝敗を分ける!

 こうしてプレイは第8ラウンドを終了し、クライマックスラウンドに突入。間桐桜は2位以下でクライマックスラウンドに移行すれば、魔力が無限になる強力なボーナスが得られるはずだったのだが……なんと第8ラウンドの最後で、士郎が桜を蹴落として脱落させるという衝撃の展開が! 原作を知る他のプレイヤーから、士郎は一斉に非難を浴びていた(笑)。

 筆者のイリヤは序盤に稼いだ戦果で逃げ切りを図ったものの、他のマスターからの猛追を受けて、このラウンドで戦闘に勝利して戦果を稼がないと最終決戦に生き残れない。そこで言峰綺礼に標的を定めて、今まで温存していた宝具カードを、満を持して繰り出すことにした。

 ランサーが使用できるもうひとつのゲイ・ボルク“刺し穿つ死棘の槍”は、ゲーム中に1回しか使用できない代わりに、一騎打ちの勝負なら必ず勝利できるという強力なもの。これで勝ち確……と思いきや、隣の深山町で凛と戦っていたはずの士郎が、令呪を使ってこちらの一騎打ちに乱入してくるというどんでん返しが!

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 必勝が無効化されたため、通常のパワー計算によってなんとか2人に勝利した筆者のイリヤは、最後のクライマックスラウンドで、遠坂凛と対決。ここで凛のサーヴァントが真名を解放すると、相手はセイバー! 

 クライマックスラウンドにはパワーが16にもなるセイバーの宝具“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”の圧倒的な威力に、筆者のイリヤはこれまで温存していた令呪をすべて使ってパワーを底上げしても力及ばず。こうして凛とセイバーのコンビが聖杯を手にしたのだった。あぁ、乱戦でムダになった必中の槍を、最終決戦に残しておくことができていたら……トホホ。

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イリヤと凛の最終決戦は、凛のサーヴァントとなったセイバーの“約束された勝利の剣”が炸裂するという、原作をも凌駕する最優の展開に。

 以上、実際のプレイの様子を筆者の視点からお届けしたのだが、いかがだっただろうか。マスター各自の個性を反映した能力と、サーヴァントが操る強力な宝具の組み合わせが、各局面で思わぬドラマを生み出していく様子を感じ取ってもらえたのではないかと思う。

 今回はルール説明を受けながらのプレイということで、ゲーム終了までに約2時間半ほどかかった。プレイヤーがゲームの手順に慣れてくれば、1時間以内でプレイを終わらせることも可能だろう。ただし戦略に悩んで考え込んでしまうと、プレイ時間は少し長くなるかもしれない。

 本作はなによりも、自分自身で戦略を考えて実行するボードゲームとして、抜群におもしろいと感じた。その上で『Fate/stay night』のキャラクターや人間関係を知っていれば、各ラウンドごとに原作でありそうな場面や、逆に原作では絶対になさそうな場面が頭の中に浮かんできて、ゲームのコマやカードが活き活きと動き出すような感覚を味わうことができる。

 とにかく今は、また別のマスターとサーヴァントの組み合わせならどんな戦略を実現できるのか、早く試してみたくて仕方がない。やり込めばやり込むほど奥行きの深くなる作品だと思うので、皆さんもまずは発売日に入手して、プレイしてみてほしい。

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