2019年7月4日にコーエーテクモゲームスより発売された新作アクションゲーム『進撃の巨人2 -Final Battle-』(以下、『進撃2FB』)。
テレビアニメ『進撃の巨人』を原作に、強大な巨人を駆逐するアクションや、アニメさながらのドラマティックなシーンが味わえる。
本作『進撃の巨人2 -Final Battle-』には、テレビアニメSeason1~2の物語を楽しめた『進撃の巨人2』にSeason3部分のストーリーを加え、さらに“雷槍”や巨人以外の敵との戦闘といった新要素も加わっている。
また、操作アシスト機能も追加され、ワンボタンでの巨人討伐が可能になるなど、ここから『進撃の巨人』世界に入る初心者プレイヤーにもやさしい仕様になっているのも特徴だ。
そんな本作を作り上げたプロデューサーとディレクターを直撃。本作に懸ける想いを訊いた。
鈴木英生氏(すずき ひでお)
コーエーテクモゲームス『進撃の巨人2 -Final Battle-』プロデューサー。前作まではディレクターを担当していたが、本作からプロデューサーとして開発チームの指揮を執っている。まさに開発チームの団長的存在。
平田幸太郎(ひらた こうたろう)
ゲーム『進撃の巨人』1作目から開発に関わる。もともとディレクターを担当していた鈴木氏がプロデューサーになり、本作では平田氏がディレクターを担当。兵士長的ポジションとして活躍する。
スタッフのこだわりが光る! 『進撃2FB』の魅力に大接近
――『進撃2FB』の開発を終えて、現在の心境はいかがですか?
鈴木我々が関わったタイトルで、ここまでスムーズに開発が終わった作品は初めてなので、ホッとしています(笑)。
――前作『進撃の巨人2』までの経験の蓄積もあってスムーズにいったのかもしれませんね。プレイヤーからの要望に応えた形で本作に導入したものがあればお聞かせください。
鈴木オンラインのマッチングや、単純に「操作が難しい」などの声が多かったため、そのあたりはとくに意識して改善しました。
――操作部分に関しては、“操作アシスト機能”の搭載でかなり遊びやすくなった印象です。
鈴木 そうですね。アクションが苦手な人向けに追加した機能です。従来の攻撃方法では、巨人に近づく、攻撃する部位の選択、ロックオン、アンカーの射出、部位に近づいてタイミングよく攻撃ボタンを押す……という操作が必要でしたが、操作アシストを使えば、攻撃までの手順をすべて取り払い、巨人が近くにいたときに△ボタン(プレイステーション4の場合)を押したら、斬り付けまで全部自動で行うようになっています。
――『進撃2FB』での新モードになる“キャラクターエピソードモード”についてはいかがでしょう。
鈴木キャラクターエピソードモードでは、Season3の物語をアニメキャラクターの視点から踏襲しつつ、その裏側で起こっていることも描いています。「アニメを観たからもういいや」ではなく、テレビアニメを観た方はより楽しめるという作品にしたかったんです。ただ、アニメのセリフを全部ゲームには入れられないので、しっかり残すところと、簡略化する部分のさじ加減が難しいところでした。
平田それと、『進撃の巨人』は、テレビアニメではあえて省略されているシーンも多くて。たとえば“雷槍”についても、どうやって実験したのかなど、詳細に描かれていません。そうした部分をゲームで深堀りし、『進撃の巨人』の世界観をより理解できる構成にしたかったんです。
――そうした部分の調整に時間をかけられたと?
平田はい。構成に関しての話は鈴木ともよくしていて、そこを詰めることにいちばん時間をかけました。今回はさまざまなキャラクターを主役にして視点が変わっていくので、最初は調査兵団と104期のストーリーを描き、全体の話の流れを知ってもらうことにしました。その後、ライナーやベルトルトたち、いわゆる“敵の巨人”サイドの視点から、Season3部分の物語を描く“戦士編”を遊んでもらい、世界観の補完をする形となりました。
――ゲームを進めると開放される “戦士編”は、どんな部分が見どころでしょうか。
平田設定上、「こういうシーンもあったはずだ」という、テレビアニメで描写のないオリジナルシーンを盛り込んでいる点ですね。たとえばマルコを殺してしまう前のライナーとベルトルトの任務や、アニがリヴァイに追い詰められた後、ストヘス区に戻るまでのシーン。そのほか、結果だけが描かれていた獣の巨人VS鎧の巨人のシーンなども楽しめます。
鈴木敵側のキャラクターの目線で描かれるストーリーも、ファンの方は見たいのではないかということで入れさせてもらいました。版元に監修していただいたこともあり、非常に楽しめるようになったと思います。
――ゲーム開始時点では遊べない、いわば隠し要素にした理由についてもお聞かせください。
鈴木いきなりストーリーの裏側にあたる“戦士編”を遊べると、プレイヤーが混乱してしまうことも考えられますので、まずは表側のエピソードをクリアーしてもらったうえで「じつはこういうこともありました」と、“戦士編”を出現させるのが自然な流れだろうということですね。
平田やはり単純な勧善懲悪ではない『進撃の巨人』の物語が土台となっています。“戦士編”を入れたことで、敵側にも戦う理由があるということをゲームでもきちんと描きたいなと思って、最後に遊べるようにしました。
新アクション開発とオリジナルモード
――続いて、システム的な話をおうかがいします。射撃装備を追加した理由や、バランス調整についてもお聞かせください。
鈴木単純な話、本作でゲームも3作目にあたるため、新アクションを入れたかったんです。ちょうどテレビアニメのSeason3から、対人立体機動による銃や雷槍といった射撃要素が出てきたので、ゲームでもしっかり新要素として取り入れることになりました。
平田ただ、射撃装備をどんな操作にするかはかなり試行錯誤しました。初期に出た案には、“空中を飛びながら、右スティックで照準を合わせ、狙いを定めて、部位を撃つ”というものがありましたが、このプロトタイプは触って10秒で「これは難しすぎてダメだ」となりましたね(笑)。
――それは確かに難しそうです(笑)。
平田とは言えスタッフ一同、斬撃装備と差別化したい気持ちは強かったんです。空中を飛びながら射撃するアクション自体はその時点でよくできていたので、“立体機動をしながら射撃する”という点にコンセプトを絞り、操作を簡略化しました。ただ、じつはプロトタイプ的な動きも可能にはなっています。敵をロックオンしていないときは、カメラの真ん中に照準マークが出ていて、そのまま攻撃することもできます。ですので、やろうと思えば自由に部位を狙えるので、凄腕のプレイヤーはぜひフリー射撃で戦ってみてください(笑)。
――決戦兵装モード用武器“ガトリング”についても聞かせてください。個人的には、この実装は「けっこう思い切ったな」とも感じました。
鈴木ブレードと雷槍はテレビアニメでも使っているので、ゲームオリジナルの兵器も作りたいなという想いから生まれたものです。
平田版元には、「憲兵団から押収された技術があれば、こういう兵器も生まれるんじゃないか」という提案をさせていただき、許可を得たうえで制作が決まった形です。
――そういう発想があって誕生したのですね。同じくゲームオリジナルの要素である“壁外奪還モード”は、どういう経緯で作られることになったのでしょうか?
平田テレビアニメとは切り離した、オリジナル兵団を作ったオールスターで巨人と戦う。そして領土を100%取り戻すのが目的のモードを作ったらおもしろいのではないかという話が出たのがきっかけですね。
――オールスター兵団が作れるというのが熱いですよね。このモードオリジナルの会話イベントなどで、おふたりがオススメのものはありますか?
平田テレビアニメで放送済みなのですが、エレンが「進撃の巨人……」とボソッと呟くシーンをオマージュしたイベントが好きです。
鈴木今回は笑えるイベントなども用意しているので、そういう部分もぜひご覧ください。私は、ジークとリヴァイ、そしてペトラが絡んでくるイベントシーンが好きです。本来ならば敵対している者や、Season3ではすでに故人となっているキャラクターが共演するイベントなどは、このモードだからこそ実現できたドリームイベントかなと思います。
――仲間を集めて兵団を拡大していくのも醍醐味ですが、仲間となる人物の登場順は決まっているのですか?
平田基本はランダムですが、ある程度は制御されています。というのは、最序盤からジークやケニーなどのかなり強いキャラクターが集まってしまうと、仲間を勧誘していくモチベーションがなくなってしまう懸念があるためです。ゲームを進めて、難度が高いステージに行くと強いキャラクターと遭遇できるように調整しています。
――前作『進撃の巨人2』にも適用される、無料アップデートでは、さまざまな改善がなされましたね。これらはどういった意図で?
鈴木先ほど話した“操作アシスト”は、操作が難しくて前作をやめてしまった方に「アシスト機能をつけたので、もう一度プレイしてみませんか?」と呼びかけようと。それで前作をクリアーしていただいたら『進撃2FB』も遊んでもらいたいという想いもあります。もうひとつは、オンラインマッチングの仕組みを少し変えたことです。前作だけ持っている人と『進撃2FB』の購入者どちらもマッチングしますので、遊びやすいかと思います。
――最後に、本作を楽しみにしている人に向けてメッセージをお願いします。
鈴木『進撃の巨人』のSeason1~3の物語がすべて入っていますので、ファンの方はもちろん、あまり詳しくない人も、『進撃』世界の入門編として楽しめると思います。これを機に『進撃』ワールドに浸ってみてください。
――ありがとうございました!