ディライトワークスが、インディーズゲームメーカーを支援するレーベル“ディライトワークス インディーズ”を立ち上げた。レーベルからは、同社のコンシューマーゲームへのパブリッシング第1弾となる『タイニーメタル 虚構の帝国』(Nintendo Switch用、2019年7月11日発売)が発売中だ。

 そこで、レーベル設立の経緯やそこに込められている想いを、キーパーソンであるプロデューサーの猿渡晴義氏(第3制作部 ジェネラルマネージャー)、ゲームプロデューサーの林 真理氏(第3制作部 プロデュース・開発)、宣伝の横内皇太氏(第3制作部)の3人に聞いた。

猿渡晴義氏(さわたり はるよし)

ディライトワークス 第3制作部 ジェネラルマネージャー プロデューサー(写真左)

林 真理氏(はやし まこと)

ディライトワークス 第3制作部 プロデュース・開発 ゲームプロデューサー(写真中央)

横内皇太氏(よこうち こうた)

ディライトワークス 第3制作部 宣伝(写真右)

“純粋に良質なゲームを数多くのユーザーさんに届けたい”

――まずは、“ディライトワークス インディーズ”を立ち上げた経緯からお聞かせいただけますか?

猿渡ゲームっておもしろいですよね。そのおもしろさにも理由がいくつかありますが、昔から同じゲームをずーっと作られ続けているわけではなく、日々進歩しています。その進歩にもパターンがいくつかあると思うのですが、まずは技術的な進歩ですね。インフラの進歩、メモリの量、ROMの大きさ……など。一方で、それとは別に“作り手の発想が活かされている”というおもしろさがあり、そこがとても重要だと考えています。インディーゲームはとくに、その作り手の発想でチャレンジしている部分の魅力が大きいと思います。
 ディライトワークスとして、“より良質でおもしろいゲームを届けたい”と考えたときに、インディーゲームという、ジャンルであり、シーンであり、世界を、サポートしていくのが正しいのではないかと考えました。横内とそういう話をした結果、「では、社内にインディーゲームのレーベルを立ち上げよう」となっていったんです。

――インディーゲームならではのよさとして“作り手の発想でチャレンジしている”点を挙げましたが、そこを意識されるようになったのは、どういう背景があったのでしょうか?

猿渡今回インタビューを受けている私たち3名はこれまでさまざまな会社にいまして、みなゲーム業界歴が20年を越えています。それぞれ大手と言われる会社で規模の大きなプロジェクトにも携わらせていただきました。その経験も含め、さまざまなゲーム業界での経験から“大手パブリッシャーとしてのノウハウ”というものが身についているわけですが……逆の意味でとらえると、そこに縛られているし、そこに囚われているとも言えます。

――囚われている?

猿渡たとえば、大企業ではさまざまな理由から社内の決裁を通せないゲームというのがありますが、そうしたプロジェクトでも、インディーゲームの世界ではピュアに「こういうゲームはおもしろいよね」と思って作っていらっしゃる方がいて、私たちの枠を越えた発想でチャレンジしています。私たちはどうしても“採算”や“市場性”、“競合”ということを考えてしまったりいろいろな枠に囚われがちなのですが、インディーはもっと純粋におもしろいゲームの制作にチャレンジしている。その挑戦が魅力だと感じるんです。
 「ゲームってこういうものだから、こう作れば売れるよね」という考えで作られたことがわかってしまうゲームってあるじゃないですか。そういう考えではなくて、自分たちの主義と主張をしっかりともって、おもしろいゲームを作りたいと考えている人たちを、ディライトワークスでサポートしていけたらいいなと考えたんです。

――おもしろさ至上主義ですかね。

猿渡インディーゲームの作り手さんのなかにはそういった気持ちが強いがゆえに、“ユーザーさんが置き去りになっている”というケースもよくあります。そういうゲームを触ったときに「もうちょっと、ここにこうやって手を加えたら、すごくおもしろいゲームになるだろうし、もっと多くのユーザーさんに伝わったのに……」と気づくことがあるんですよ。私たちもゲーム制作者ですから、ゲームをプレイすると「きっとこういうことがやりたかったんだな」と読み取れるんですよね。でも、すべてのユーザーさんがそうではないと思うんですよね。最近はスマートフォンアプリでゲームを遊ぶ人が多くなったこともあって、ユーザーさんがより気軽にゲームに触れる機会が増えました。そのため、ゲーム開発者は、ユーザーさんにゲームのおもしさを、より幅広く、より多くの方々に伝えられるよう配慮されていると思います。そういうところを私たちがサポートできたらと思うんです。もちろん、パブリッシングや宣伝の展開を担当したり、デバッグをしたりというのも、レーベルとしての役割であり大きなサポートになると思いますがが、それに加えて“開発ノウハウの共有”を行い、いっしょにゲームを育てていけたらと考えています。

――なるほど。猿渡さんと横内さんのおふたりで企画してインディーゲームレーベルを立ち上げたとのことですが、“こういう活動をしよう”という指針としてはどのようなものがありましたか?

猿渡くり返しになってしまいますが、純粋に良質なゲームを数多くのユーザーさんに届けたいという目標があり、それに向かって動いていきました。ディライトワークスには、 “ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。”という理念があるのですが、その理念に沿っていっしょに活動していける方々と組めればと考えています。「開発中のゲームをもっとおもしろくしたい」とか、「このゲームをもっと大きくしたい」とか、そういう気持ちを持った開発者の方々と手を取り合って進めていきたいと考えています。逆に、たとえば「とりあえずお金だけ出してください」という要望の開発チームとは組んでもうまく行かないかもしれないですね。

――たとえば、作っているゲームはおもしろいものの、考えかたや理念はディライトワークス インディーズとは合わないとなると、組むのは難しくなる?

猿渡お互いの理念が合わない場合、極論を言ってしまえば別のパートナーさんを探されるほうがお互いにとってよいのではないかと思うんです。というのも、根底に同じ理念をもっていないと、いずれいっしょにがんばっていけなくなると思うんです。ゲームを作るというのはすごくたいへんなことで、その過程で何回も挫折するし、頓挫しそうにもなります。私たちは、そういうときでも、協力して乗り越えていけるパートナーであり、仲間にならないといけないと思うのです。たとえば、金銭面だけのサポートでそういう仲間になれるかと言えば、そうではないと思うんですね。ゲーム開発はもちろん楽しいときも多いのですが、苦しい思いをすることもたくさんあり、楽しいままに創りきることはできません。私たちは、そういうたいへんさを、仲間として一緒に乗り越えていきたいんです。

――インディーで活動しているメーカーさんには個性的な人も多くいますし、人によっては「作品に口を出してもらいたくはないけど、お金は出して欲しい。そして、できあがったゲームを評価して欲しい」というような人もいるのではと思います。ディライトワークス インディーズは、そういうことではなく、お互いがパートナーと言える関係となって作品を作り上げていく関係を目指していると?

猿渡むしろ「作品への口だしをして欲しくない」という方々とこそ、しっかりとお話ししたいと考えています。インディーゲームデベロッパーには、“ゲームの仕様をもう1mmたりとも変えたくない”という強いこだわりがある人は多いと思うんです。むしろ、そういったこだわりは大事にしたいと考えています。その上で、“開発者の皆さんがみずから修正したくなるようなアドバイスができるかどうか”が私たちのサポートのポイントであり、私たちの力量にかかっている部分だと思っています。

――ああ、なるほど。

猿渡私たちのアドバイスに賛同いただいて「それは絶対にやったほうがいい」と想ってもらえたなら、手を加えてもらえますよね。ゲーム開発については、そういうかたちになるようなサポートをしたいんです。

――相当ゲーム作りへの情熱が感じられますね。そして硬派だ(笑)。

猿渡私たちは、やはりゲーム創りへの想いが強いですし、情熱を持ってインディーゲームレーベルを立ち上げました。インディーゲームメーカーの皆さんも、自分たちのタイトルをよりよくしたいとか、ひとりでも多くのユーザーさんにプレイしてもらいたいという熱意をお持ちだと思います。そういうところをお互いが共感しあってやっていきたいですね。仕事だからやっているというスタンスではなくて、インディーゲームメーカーさんとともに、熱い気持ちを持ってタイトルを出していきたいです。

開発段階からパブリッシング、宣伝まで、まさにフルサポートをする

――先ほど「ゲーム開発には苦しくなるときがたくさんあるので、サポートしていっしょに乗り越えたい」というお話がありましたが、たとえばどんなときがありますか?

猿渡そうですね……。ディレクターの方って“迷う”場面がたくさんあるんですよね。いろいろなことを決めなければいけない。選択肢をたくさん作って、どれが最適かに悩み、ときには、そこから迷走が始まることもあるんです。そういうときに違う視点を持った相談相手が必要になると思います。開発畑の人なら、「ちょっと売り手側(宣伝担当など)のコメントが欲しいな」と思ったりしますし、もしくは同じフィールドの方に経験をもとにした話が聞きたいと考えたりします。そういうときに、私たちに声をかけていただければ、アドバイスできますし、また、迷走していることにご本人たちが気づいていなくても、私たちが一歩引いたところから見て気づいたら、こちらから相談を持ちかけることもできます。

――俯瞰の立場で判断できるということですね?

猿渡実際のところゲームの仕様って盛りたくなるんですよ。どんどん山のように盛ってしまう。頭の中にあるやりたいことをリアルに実現するために、これもできなきゃいけないし、あれもできなきゃいけない……となっていって、気がつけば何のゲームだか分からないぐらい元から変わっていたりする。そういうときには私たちから「このゲームの魅力はここだと思うよ」と立ち返るポイントをアドバイスできます。

――お金の関係だけではなく、ゲーム作りの相談役であり、ノウハウの共有をしてくれる存在ということですね?

猿渡はい、仲間です。

――インディーゲームデベロッパーには、ディレクター的な立ち位置の人だけというケースも多いですが、プロデューサー的な視点やマーケティング的な視点からのアドバイスがあれば、よりゲームをよくしていけると?

猿渡たとえば、「プログラマーさんがあと何人いてくれれば」とか、「デザイナーさんに加わって欲しい」というときには、私たちがアライアンス(提携や縁組み)の提案をすることもできます。

さらに、技術的なサポートもできますよ。対戦要素のあるゲームを作っていて、ローカル対戦するとすごくおもしろいんだけど、オンライン対戦を作る技術やノウハウはないというデベロッパーさんでしたら、技術的なサポートをしたり、できる人をご紹介したりということも可能です。

――開発段階からマーケティング・販売、人材に至るまで、幅広くフルでサポートしていくということなのですね。

メインになるのは共同開発と国内パブリッシングになるとは思います。そのほかに、海外パブリッシングのサポートや、サーバーを使った仕様などの技術サポート、QA(品質向上)なども手助けできます。あとは、弊社ではグッズ製作もできますので、そうした商品化の支援も視野に入れています。

――まさに全面的なサポートだ。

僕らがやれることは何でもやろうと思っています。ただ、だからこそ、先ほどもあった“目標がいっしょかどうか”というところを大事にしているんです。ユーザーさんが求めているゲームを作ろうと目指しているインディーゲームメーカーさんがいて、彼らのゲームがユーザーさんに届くまでのところで支障になることは、僕らが解決できたらいいなと思います。

開発現場のたいへんさをちゃんと知っているのが強み

――なるほど。インディーゲームのパブリッシングをする会社は増えてきているわけですが、“ディライトワークス インディーズ”の強みというのはどこになるでしょうか?

弊社はゲームの開発会社でもあるんですよね。自分たちでゲーム開発をしています。同時にパブリッシャーでもあるという会社なので、開発現場のたいへんさも理解しています。それこそ、“開発途中には何が欲しくなるか”というのも分かります。パブリッシングだけの会社さんと違って、現場の細かなところまでサポートできます。

――経験豊かなディライトワークスの皆さんが、いろいろな立ち位置からの視点を持ってプロジェクトに協力していく?

協力していくスタートラインにもいろいろありますよね。たとえば、インディーゲームを1本完成させたばかりの人たちなら、「つぎはいっしょに何かやってみませんか?」というお声かけから始めて、つぎに作りたいものを聞くところからやっていきます。一方で、開発中のゲームが7~8割はできているけどそのつぎの展開に迷ってしまわれていたり、ある程度は完成したもののユーザーさんに届ける方法がわからないというデベロッパーさんの場合は、皆さんと同じ目線に立って、その方のタイミングで話をしていくことができるのが私たちの特徴かなと思います。
 「できあがったら見せに来てください」とか「ROMが完成したら連絡ください」みたいな、パブリッシングするだけというような、そういう付き合いかたはしないですね。

横内プロモーションにおいても、いまの国内のインディーゲーム市場では画一的なやりかたしかしていないように見えます。ゲームの公式サイトには、テンプレートに当てはめてスクリーンショットとゲーム情報を載せて、つぎにプレスリリースを出して情報発信をしていくというかたちです。でも本当は、そのゲームならではのプロモーションを考えていくべきだと思うんです。実際にゲームを売るときにはそういうことを考えていると思いますし、ある意味では当たり前のことだと思うのですが、インディーではゲーム開発に集中するあまり、なかなかそこまで手が回っていないように思えて。私たちディライトワークス インディーズではそこも、しっかりとサポートしていきたいです。

――プロモーションや宣伝に関しては、国内のインディーゲーム界隈はまだ弱いというか。まだ手が及んでいないかもと思えるところはあるかもしれません。

横内そうですね。タイトルによっていろいろな売りかたがあると思います。ユーザーさんへの届けかたのなかでも一番いいかたちを、インディーゲームデベロッパーさんと話し合いながら一緒にやっていきたいです。

――あらゆる面において非常に手厚いですね。そうすると、タイトルをたくさん扱ってどんどん出していくのではなく、厳選してひとつひとつしっかりと注力していきたいという方針になるでしょうか?

そうなっていくでしょうね。

猿渡やはり同じチームの仲間となってゲームを届けたいという想いがありますので、短期間に数を出していくというかたちにはならないでしょうね。ゲームとその開発チームにちゃんと寄り添ってユーザーさんにゲームを届けていきたいです。扱っていくタイトルはある程度厳選していくことになるかとは思うのですが、ただ、最初からそう決めているというわけではありません。たとえば、同じ時期によいタイトルが複数あったなら、体制をフレキシブルに変えて、できるかぎりやっていきたいです。ただ、現実問題として、毎月1本出すとか、2週間に1本とか、3本同時リリースとか、そういったスパンにはならないとは思います。

――ディライトワークス インディーズのサポートは手厚いけど、結果として狭き門になってしまうかもしれない?

狭き門にしたいという気持ちはないのですが、ただ弊社側のプロデューサーが担当する作品をたくさん抱えすぎても、1本あたりにかけられる愛情の量が減ってしまいますし、そうなるとパートナーとなっていただくインディーゲームスタジオさんとしても納得いかないだろうなと思うんですよ。

――インディーゲームメーカーさんからとても注目されていると思います。ちなみに、タイトルを選んでいくときの基準というものは何か考えていらっしゃるのでしょうか?

3つ考えています。ひとつは “こだわりのあるゲーム創り”をしているということ。ありきたりなものではなくて、開発者が情熱をもってこだわって創っているということですね。
 ふたつ目は“届けたいユーザーさんが明確である”ということです。大手ゲームメーカーでゲームを作ると、どうしてもマス(大多数)に向けて創ることになりがちですが、インディーゲームであればそうではなく好みに合わせて対象を絞ったゲームでもよいと思うんです。たとえば、シューティングゲームが好きな人に向けてとか、特定の趣味を持つ女性ユーザーの人向けとか。こういう人たちに喜んでもらいたいという気持ちが明確なチームのほうがいいですね。

――それは、単純にニッチな層をターゲットにしたいという話では、もちろんないですよね。

そういう話ではないです。自分たちは「こういう人たちに喜んで欲しい」と考えているんだということを、開発者みずからがしっかりと把握できていることが望ましいと思っています。

――ユーザー層が明確に見えていることそのものがよいことであると?

横内そういった意味では、第1弾の『タイニーメタル 虚構の帝国』も分かりやすいタイトルかと思います。本格的なウォーシミュレーションゲームで、往年のターン制バトル。好きな人はすごく大好きなジャンルですよね。プロモーションも、そういうユーザーさんに向けてしっかりと情報を届けるように動いています。

――なるほど。ユーザー層が見えていることでプロモーション展開も明確になるというわけですね。

3つ目は、“収益を見ている”ということです。インディーゲームであっても、これからは収益をしっかりと見るべきだと思っています。2014年のGDC(※)に行ったときに感銘を受けたのですが、海外のインディーゲーム市場にいる人たちって、自分たちが成功するビジョンを強く持ち、かつ愛情を持ってゲームを作っています。売れなくてもいいとは考えておらず、いいゲームを作っていい評価をもらいたいというところも情熱を持っている。そこは日本人だとちょっと優しいところが出てしまうというか。いいゲームを創りたいという気持ちは欧米の人と変わらないものの、「私たちはユーザーさんからもっといい評価をされるべきだ!」という気持ちはかなり謙虚だったりします。

※GDC……ゲームデベロッパーズカンファレンスの略。毎年春にアメリカ・サンフランシスコで開催される世界最大規模のゲーム開発者のための集まり。

――それはあるかもしれないですね。

でも、インディーゲームのクリエイターさんだってご飯を食べて、ご自身の生活基盤を整えていかないといけないです。創ったゲームに対して、収益がキチンと入るような支援をしていきたいと私たちは思っています。「お金は儲からなくてもいいんです」と考えている人だと、ちょっと考え方が違うのかなと思います。プロのインディーゲームクリエイター……というとちょっと変ですけど(笑)、そういう考えを持った方と仕事をしていきたいと思っています。

――お金を度外視してしまうと成り立たないですし、収益性を考えないと本来はいけないですよね。

収益性を度外視してしまうと、2本目、3本目のゲームを作ることもできなくなってしまいますよね。そうすると、日本のインディーゲーム市場自体が狭まってしまいます。それは結果としてよくないと思うんです。

――採算度外視ではあるけど、すごく尖っているいいゲームを作っている人たちの場合、どういうスタンスのお話をされることになりそうでしょうか?

猿渡それは、採算度外視のレベルにもよるのですが、“ターゲットユーザーをきちんと設定しましょう”という話をすると思います。採算度外視って、“やろうとしていることとプロジェクトの規模感が合っていない”ということだと思うんです。ですので、まずそこをちゃんとマッチングしていただけるようなアドバイスをしていきます。ほかにもやりかたはいろいろあると思うのですが、そういうことをしっかりやっていくというお話になりますね。ただ、その時にも尖っているいい部分を削ってしまうということはしたくないんです。強いこだわりと情熱を持っている人であれば、そこは活かしていかないといけないと考えています。採算度外視の部分だけ、採算が合うようにする支援を私たちがする、ということですね。

レーベル第1弾タイトル『タイニーメタル 虚構の帝国』は体験版も配信中

――第1弾タイトルが『タイニーメタル 虚構の帝国』になった経緯はどのようなものだったのでしょうか?

猿渡インディーゲームレーベルの立ち上げのころ、パートナーになっていただく開発会社を探しているときに、ちょうどいいタイミングでAREA 35さんが『タイニーメタル 虚構の帝国』というタイトルを持ち込んできてくれたんです。先ほどの3つの条件もちゃんと満たされていますし、タイミングよく、いいお話をいただけた、というのが正直な感想です。

ディライトワークス インディーズの第1弾タイトル『タイニーメタル 虚構の帝国』。豪華声優陣によるフルボイスも魅力。

――縁だったということのようですね。

猿渡『タイニーメタル 虚構の帝国』は本格的なウォーシミュレーションゲームで、魅力がすごく分かりやすいですし、ターゲット層もしっかりと見えています。AREA 35は、すごく小さなチームで、ディレクター1名、プログラマー1名、プランナー1名で、あとは少し外部の人に手伝ってもらいながら……というような体制なのですが、すごく熱意を持っています。PVなどをご覧いただければ伝わると思うのですが、熱意を持って取り組めば小規模でもあれだけのゲームを作ることができるんです。それで、私たちもそのチームを支援し、このゲームをより多くのユーザーさんに届けたいという気持ちになりました。同時に、もう少し、手を加えたらもっといろいろな人に遊んでもらえるゲームだということも感じたので、いっしょにやらせていただくことにしたんです。

――『タイニーメタル 虚構の帝国』ではどのような開発アドバイスをされたのでしょうか?

猿渡『タイニーメタル 虚構の帝国』は、ゲームのポイントが分かってくるとすごくおもしろいんです。ただ、これはターン制、リアルタイム制に関わらずウォーシミュレーションゲーム全般に言えることだと思うのですが、やるべきことが整理できていれば楽しめるけれど、プレイしはじめのころは何をしたらいいのかわからなくて、何が正解なのかわからないままにプレイすることになり、辛いと感じることがあります。ですので、私たちがまずアドバイスしたのは、「チュートリアルを充実させましょう」ということでした。チュートリアルは、彼らも手厚くしたいと考えていたようでしたが、それでも私たちが見たとき、まだまだ不足していると感じました。ほかにも、たとえば敵のターゲットを指定したときにテキスト表示だけでなくて、絵も見せてあげたほうがいいのではないかというような細かなところもいろいろと提案しましたね。

難易度調整についても、小規模なチームでやっていると難しいかどうかが分からなくなってきてしまうんですよね。私たちにはQA/CS部門がありますので、そこでテストプレイをして情報をまとめることができます。「ここだけ突出して難しくなってしまっている」とか、「プレイした5人中の5人が難しいと言っている」とか。逆に「ハードモードでもここだけやさしすぎる」といったこともあります。そういう小さなチームだと見切れなくなる部分を明確化して、アドバイスしています。

――プロモーションや宣伝についてはいかがでしょうか。

横内『タイニーメタル 虚構の帝国』はターゲットがすごくはっきりしているゲームですので、そのユーザーさんにしっかり情報を伝えていくというのが最大のプロモーションだと思っています。あまり変化球を投げる必要はないと思っていて、体験版も配信中です。体験版でおもしろさを知ってもらった上で購入していただくという展開を考えています。

――すごく王道なプロモーションを考えているというわけですね。

猿渡『タイニーメタル 虚構の帝国』についてはそうですね。それぞれのゲームに合ったプロモーションをしっかりと考えてやっていきたいですし、その過程でできる限り、開発者の想いや気持ちが現われるような形にしていきたいです。ですので、毎回同じようなプロモーションをするわけではなくて、ときに王道で、ときに変化球で……といった具合に、タイトルごとに対応していくことになります。レーベル全体で型にハマった活動というのはしたくないです。

――ディライトワークス インディーズの今後のラインアップやリリース予定はどのようになるでしょう?

現在、いくつかのチームが実際に開発を進めています。現時点では明確に言えないのですが、年間3~5本程度のタイトルをサポートできたら、私たちも嬉しいなと考えています。

――少し突っ込んでお聞きしてしまいますが、つぎのタイトル発表はいつくらいに?

つぎの動きというと……、インディーゲームのローンチタイミングって、メジャータイトルとは違って、ときにズレたりしますよね。開発者さんの状況などにもよりますし、小規模なチームでやられていたり、情熱の部分でもっと作り込みたくなったりと、そのあたりがインディーゲームらしさという話でもありますけども……。そういうところがありますので、時期を明示できる段階のものはまだありません。

国内インディーゲーム市場を盛り上げるべく、まだ見ぬ世界を目指す

――最後に、今後のディライトワークス インディーズの目指すところ、目標を教えてください。

横内宣伝という立場からすると、国内インディーゲームの世界はまだプロモーションにおいて確立されたものがなく、積極的にうまく動けているとも言えないのではないかと思っています。おもしろいゲームを、届けたいと思っているユーザーさんにしっかり橋渡ししていくことが私たちの役割だと思っています。純粋に、ゲームにあったプロモーションをやっていきたいです。

――タイトルによってしまうとは思うのですが、こんなプロモーションができたらいいなというプランなどはありますか?

横内対象のゲーム次第なので具体的なお話をするのは難しいですね。でも、国内でのインディーゲームのプロモーションを見ていると、まだプロモーションという領域にうまく入れていないのでは……というケースも多く見受けられます。予算の規模など、いろいろと理由はあると思うのですが、海外を見ると、お金がない中でもうまくプロモーションされていたりしますし、ゲームの特性にあったうまい見せかたをしています。それに、海外発で発売後に人気が出たゲームって、最初に情報が出た時点からもうコアなユーザーさんから注目されていたりするんですよね。それも自発的にそういう動きが起きている。

――それはユーザーさんの違いもあるのかもしれないですね……。

横内海外発の注目されているインディーゲームには、日本のユーザーさんも反応していたりするんですよ。その差は何なのか。そこがじつは、プロモーションの力の差が何か出てしまっているところなのかもしれないと考えています。そこを研究して変えていきたいです。私たちのプロモーションもそういう領域に高めていきたいですね。

私は、ディライトワークス インディーズの窓口という立場ですので、ゲーム開発をしている人たちと目線を合わせて、しっかりと話ができるレーベルにしていきたいです。私自身も長年ゲーム開発をしてきていますので、開発の苦しさは分かります。そこに、上から目線で何かを言うのではなくて、いっしょの立ち位置で相談を受けられる場所にしていきたいです。海外のインディーゲーム市場と比べると、国内はまだまだ遅れているかなという印象があります。海外ではゲーム開発へのサポートも豊富ですし、出資などの動きも盛んです。インディーゲーム市場はまだまだ成長していくと思いますので、そういうところへ仲間の皆さんといっしょに入っていければいいなと思います。

猿渡目指すところはふたつあると思っています。ひとつは仲間となってくれた開発チームの方々から、「ディライトワークス インディーズと組んでよかった」と言ってもらえるようなレーベルにしたいということ。ふたつめは、プレイしてくれるユーザーさんに「ディライトワークス インディーズのゲームって、ちょっと変わってたり尖ってたりするけど、純粋に面白いね」って言ってもらえるようにすることです。インディーゲームの開発チームが考えているおもしろさをしっかりと届けて、ユーザーさんに楽しく遊んでいただく。ひとつでも多くの良質なゲームを支援していきたいです。ちなみに、ディライトワークス インディーズのロゴは、ロケットが飛び立つマークなのですが、これには、“新しい市場やおもしろさを開拓していこう”という気持ちが込められています。見たことがない世界、行ったことのない世界を、仲間といっしょに目指していきたいと思っています。