2019年6月11日~13日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されたE3 2019。その会期中に、2019年8月22日に発売予定のNintendo Switch、プレイステーション4、Steamソフト『鬼ノ哭ク邦』開発陣にインタビューを実施。"現シ世"と"幽リ世"という生と死の世界を行き来して物語を進める注目のアクションRPGについて話を聞いた。

――まずは皆さんが本作において、どのような役割をされているのか、改めてお聞かせください。

佐々木 ふだんは宣伝を担当しています。最近では『オクトパストラベラー』や『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の宣伝をやっていました。Tokyo RPG Factory1作目の『いけにえと雪のセツナ』、2作目の『LOST SPHEAR』もですね。その後、本作からプロデューサーというかたちで関わることになりました。

橋本 自分は『いけにえと雪のセツナ』、『LOST SPHEAR』から引き続き、ディレクターを務めます。

時田 今回はクリエイティブプロデューサーという形で参加しています。じつは、Tokyo RPG Factoryに関しては『いけにえと雪のセツナ』から、オブザーバー的な立場で参加していたのですが、本作では企画の立ち上げから関わっています。

『鬼ノ哭ク邦』インタビュー。「スクウェア・エニックスってこういうこともやるんだ」を目指して。ハクスラ系のやりこみ要素の情報も【E3 2019】_03
画像左から、ディレクター・橋本厚志氏、クリエイティブプロデューサー・時田貴司氏、プロデューサー・佐々木隆太郎氏

――今回はE32019での出展とのことで、海外の方からの反応はいかがでしょうか?

佐々木 そうですね、反応はいただいております。“鬼”という字が入るタイトルを始め、本作の“東洋らしさ”を、海外のユーザーさんが気に入ってくれたのかと。

――本作はアクションRPGということで、Tokyo RPG Factoryの従来の2作品とは違うジャンルになりましたよね。

橋本 最初はターンベースのRPGをイメージしていたのです。主人公がヒロインを守るため、ひとりで戦うと言った内容のもの。その中で、「ジョブチェンジをして戦うゲームがいいのではないか」、「ジョブチェンジをリアルタイムで行えたら楽しそう」、「だったらアクションRPGにしてみよう」と手順を踏んで決めていきました。

――遊びかたをイメージする中で、ジャンルも変えていったということなのですね。クリアーまでのボリュームは大体どのくらいでしょうか?

橋本 大体30時間ですね。

佐々木 最初は20時間程度を目指していたんですが、ハクスラ的な遊びを入れ、より遊べるようになりました。シナリオをしっかりと見て、ある程度キャラクターをカスタマイズすると、30~35時間くらいになると思います。

――ハクスラで装備を整えていくのですね。クリアー後のやりこみ要素としても、ハクスラ的な遊びを使うのでしょうか?

佐々木 そうなりますね。また、本作は時間を掛けて遊んでいただこうと思うと、何時間で終わる、というものではないです。周回的なやりこみではありませんが、やりこんでいただくぶんにはいくらでもやりこめると思います。

――本作の戦闘において重要な“鬼ビ人”は、たくさんの数がいるとのことですが、各人に込められたコンセプトなどはありますか?

橋本 鬼ビ人は、主人公・カガチが切り替えて戦う、ジョブの役割を担うキャラクターです。コンセプトと言いますか、彼らはバトルを担うキャラクターなので、使用したときのプレイ感の差は出そうとしています。たとえば、斧の鬼ビ人を使うときは重量感を、刀の鬼ビ人だと軽快な爽快感、槍は竜騎士っぽいジャンプのアクションなどですね。

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"刀"の鬼ビ人を用いたアクション。
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"槍"の鬼ビ人を用いたアクション。

――ちなみに、鬼ビ人はどのくらいの数がいるのでしょうか?

佐々木 正確な数字は申し上げられませんが、10人以上は確実にいます。

――鬼ビ人をジョブとして使い分けるとのことですが、主人公自身が武器を持つことはあるのでしょうか?

佐々木 主人公と鬼ビ人の両方とも、武器を装備できます。また、主人公、鬼ビ人ともに成長要素もあり、鬼ビ人は任意で成長させることができます。

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――鬼ビ人の詳細を知ることができるストーリーは用意されているのでしょうか。

佐々木 鬼ビ人とは、彷徨える死者の魂である“迷イ人”がまれに、非常に強い想いを持っており、“魔物”化もできず、輪廻転生もできなかった、なれの果てなのです。鬼ビ人は記憶を持っていないので、主人公と出会うときはバックボーンがわかりません。そこを紐解いていくシナリオを用意しています。

――それは、メインシナリオ中ではなく、サブクエストとして楽しむような?

橋本 そうですね。ちょっとおもしろい形で入っているので、楽しみにしていただければと。

――鬼ビ人は切り替えて戦うようになっていると思うのですが、1体の鬼ビ人を使い続けることもできるのでしょうか?

佐々木 できなくはないですが、切り替えたほうが進めやすいと思います(笑)。1体ではキツいところが出てくるかもしれません。ただ、シナリオ上で入手する鬼ビ人以外は増やさずに進めることも一応可能です。

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――お三方がいちばん力を入れた部分をお教えください。

佐々木 この作品ならではの雰囲気、方向性を指し示す部分ですね。タイトルや、イラストレーターさんへ描いていただくイラストのイメージなど、こだわって決めています。

橋本 絞るのは難しいですね。大きく言えば、時田さんと組ませていただくにあたり、シナリオを“エグイ”というか、人の心をかき乱すものを作ろうと力を入れたところ。アクションRPGということで、アクション性を追求し、鬼ビ人というシステムをこだわったところ。この2点ですかね。

時田 “たくさんのゲームがある中で、新作としてどうインパクトをだすか”、という部分に関して、メリハリを出せるように手を入れていました。どちらかといえば、開発の最初に“いかに開発陣を迷わせないか”という部分が大きな仕事でした。

佐々木 時田に関しては、目指す部分に対して、どういうルートで進むのかということ、また道をそれたときにはゴールを指し示してくれていたイメージです。

橋本 開発中はスタッフの視野が狭まってしまいがちです。外から意見を言ってくださる方がとても大事で、時田さんはそれを担ってくださっていました。

時田 むかしはロムカセットで容量も少なく、入れたいものが入れられない中で、いかに工夫をするかというところが重要でした。でもいまは、スペックも上がり、容量も増えているため、なんでも入っちゃうんですよ。

――たしかにそうですね。容量が増えたことにより、盛り込める要素も増えたと思います。

時田 そうなんです。なんでも入れちゃえるんですよ。ですが、もちろんスケジュールもありますし、要素を詰め込み過ぎると、メリハリがなくなるんです。ゲーム体験として、ボリュームがあって均一だとプレイヤーの方は飽きちゃうんです。ジェットコースターも怖い部分ばかりじゃおもしろくないですよね。緩急が重要で、僕らの時代はその部分が、否が応でも身についているのです。それについて、いまの開発陣へアドバイスをしています。

――先ほど橋本さんのお話で“シナリオがエグい”とありましたが、そのようなストーリーになったのには、何か理由があるのでしょうか?

橋本 最初から方向性は決まっていました。いままでのTokyo RPG Factoryの作品より、プレイヤーの方の感情を揺さぶりたいと思い、意図的に“エグ”くしています。さらに時田さんが背中を押してくださり、「お前らはまだまだ甘い」と(笑)。

『鬼ノ哭ク邦』インタビュー。「スクウェア・エニックスってこういうこともやるんだ」を目指して。ハクスラ系のやりこみ要素の情報も【E3 2019】_01

――当初よりProject SETSUNAで作られると言われていた3作品は、本作で出し切ることになりましたが、今後の展開は?

佐々木 Project SETSUNAでは、作品としてまず、3つ作ろうという話があり、それらは明確につながったタイトルではないのです。ですので、今回はスタイルをガラッと変え、僕と時田が加わった際には「『いけにえと雪のセツナ』、『LOST SPHEAR』の延長線上のゲームを作る必要はないんだよ」と開発陣に強く伝えています。

橋本 開発的には、“3部作”と言われても、1本ずつ別のゲームを作っている感覚でした。どの作品も意識してないわけではないですが、バラバラのタイトルなのです。

――ではこれからも、“Project SETSUNA”の続きというわけではなく、いままでとおなじように“新たなゲーム”を作る可能性があるということですよね。

橋本 まだ未定ですが、やるとなったら、そうなると思います。

――いよいよ2019年8月22日に発売を控える本作について、コメントをお願いできますでしょうか。

時田 最近は、新規IPでも皆さんに受け入れられているタイトルが発売されており、開発の中でも「新作でもトライできるんだ」、「やっぱり新しいものを生み出したい」という気持ちがあると思います。既存のIPはプレイヤーの方にとっては安心のブランドで、スクウェア・エニックスの強みでもありますが、そこの期待をいい意味で裏切って「スクウェア・エニックスってこういうこともやるんだ」と見ていただければと思いますね。今回はそういったことに挑戦しているタイトルですので、ぜひ楽しみにしてください。