2019年5月20日、中国・広州にてNetEase(ネットイース・網易)によるプレスカンファレンスが開催された。
NetEaseと言えば、いまや中国ゲーム市場でシェア第2位を誇る巨大企業。1997年の創業時はeコマースやポータルサイト運営を展開してきたが、2001年にオンラインRPGゲーム『大話西遊Online』をリリースするや一気にゲーム事業を拡大してきた。日本でも、近年では『荒野行動』や『IdentityV 第五人格』といったヒット作を飛ばしていることから、ご存じの方も多いのではなかろうか。
今回、広州国際会展中心にて行われたプレスカンファレンスは、そんなNetEaseの誇る人気作の進捗や最新作を、中国のゲームメディアとゲームファンに向けて披露する場で(生配信あり)、すでに何回か回を重ねている。なお、なぜ5月20日に開催されるかというと、NetEaseが同日を“ゲームを愛する日”と制定したことに由来している。正式名称ではないと思うが、イベント名は“520発表会”との愛称で呼ばれており、まさに、“ゲームを愛する人々に向けての発表会”ということなのだろう。ちなみに、どうして5月20日がゲームを愛する日なのかというと、中国語における“ゲームを愛する”の読みが“5月20日”に近かったからとのことらしい。何となくほのぼのした感じでよろしいかも。
ChinaJoy(中国最大規模のゲームイベント)などには参加した経験のある記者だが、中国企業による発表会を取材するのは今回が初めて。実際に“520発表会”を体験してみたあとで、頭に浮かんだ率直な感想は、「これは圧巻のボリュームだなあ……」というもの。「発表会は、4時間以上にもおよび披露されたのは50タイトル近く」と概要を紹介するだけでも、そのスケール感がおわかりいただけるのではないだろうか。そもそも1社だけで50ライン以上も抱えているのも驚異的なら、それだけのユーザー数が見込めるという中国ゲーム市場の規模にも驚き。4時間以上のカンファレンスには、さすがに取材陣もいささか疲労気味になってしまったわけですが、NetEaseの圧倒的な勢いを感じさせるカンファレンスだった。まあ、さすがの中国でも、ここまでの規模の発表会が開けるゲームメーカーはそこまで多くはないような気はする。
かように大ボリュームな“520発表会”だが、発表会冒頭では、NetEase 創設者兼CEO ウィリアム・ディン氏(丁磊氏)が登壇し、2001年に最初のゲームをリリースして以降、「中国文化と歴史、インターネットと家族の融合を目指した」と前置きしたうえで、今後のNetEaseの方針として“デジタル化のイノベーション”、“他国との交流の架け橋”、“社会的な責任”の3つを挙げた。いくぶんかの中国政府に対するアピールも含まれるかと思われるそれらの目標は、一方で、中国国民に対するゲームコンテンツの影響力の広がりをうかがわせる指針でもある。スパイダーマンではないが、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というわけだ(発表会ではその後、『スパイダーマン』などのIPを保持するマーベルとの提携を発表することになる)。
“デジタル化のイノベーションを取り入れる”では、博物館や国家図書館とのコラボの推進、“社会的な責任”では未成年保護の見地から独立したアプリのリリースなどが明らかにされたが、日本人として極めて深かったのが、“他国との交流の架け橋になる”との方針。それまで異国の人は限られた映画でしか中国のことを知ることができなかったが、いまはゲームがその役割を果たしているといった趣旨の発言をした上で、「日中の友好関係は『旅ガエル』や『荒野行動』次第と半分冗談交じりで言われますが、ゲームはジェネラルランゲージであり二ヵ国の架け橋になります」とコメント。そして、「ゲームクリエイターは新世代のマルコ・ポーロになのです」というのだ。新世代のマルコ・ポーロとは、何ともかっこいいコメントだが、NetEaseがグローバルマーケットにさらに注力するという気概とも受け取れる。
さて、ウィリアム・ディン氏のスピーチのあとは、怒涛のタイトルラインアップの披露……に移るわけだが、その前に特別枠のような形で“戦略コラボ”が紹介された。ひとつめは、『ポケモンクエスト』。「(中国人も)みんな『ポケモン』が大好きです。ただ、映画やマンガなどを見ながら何かが足りないと感じていました。中国初の公式『ポケモン』ゲームが配信されるのです」と、NetEase Gamesの総裁テイ・ゲイホウ氏は誇らしげにコメント。ビデオ出演したポケモン代表取締役社長 石原恒和氏からは、「NetEaseさんには何よりも『ポケモン』に対する深い愛があります。私は今回の事業提携に大いに期待しています」とのメッセージを聞くことができた。
もうひとつはマーベルとの提携。マーベルが中国で絶大な人気を誇っているのはご存じのとおりだが、両者は今後オリジナルのエンターテインメントコンテンツを開発するために戦略的業務提携をおこなうとのこと。「ファンのみなさんに斬新なゲームをお届けします」とテイ・ゲイホウ氏は抱負を語った。提携の証として、マーベル EVP Head of Marvel Games & Strategic Lead of Marvel Asiaのジョイ・オン氏からテイ・ゲイホウ氏に手渡された、ソーのハンマーが何ともかっこいい。
その後のタイトルラインアップ披露では、怒涛の49タイトルが5つのカテゴリに分けて紹介された。“デジタルで古代を語るタイトル”、“デジタルで授業をするタイトル”、“時代を継ぐタイトル”、“第二の人生を送るタイトル”、“未来を切り開くタイトル”だ。話題作のアップデート情報あり、完全新規ありとバラエティーに富んだラインアップのすべてを紹介するのはさすがに骨なので、ここでは日本でも展開予定があるタイトルを中心に、記者が個人的に気になったタイトルをピックアップしていこう。
ちなみに、今回お披露目されたタイトルのうち、スマートフォン向けが40タイトルと圧倒的な数を占める(残りはPC向けが7本とVRタイトルが2本)。
『陰陽師本格幻想RPG』は『BLEACH』とのコラボも
陰陽師の世界観をモチーフにしたスマートフォン向けカードゲームもリリース3周年。中国では数1000万人近くのプレイヤーを擁するなど絶大な人気を誇る同作だが、さらなるIPの広がりを見せるべく、陰陽師IPを使っての新タイトルや、中国では2020年に公開予定のアニメ、さらに広州にて展開予定のカフェなどが明らかにされた。日本のファンにとってうれしいのは、『BLEACH』とのコラボ。世界観はマッチするだけに、どんな展開になるか楽しみ。「プレイヤーの熱意があるから、生命力をもって展開できます。これからも継続して歩んでいきたいです」とは担当の方の力強い言葉。
ちなみに、発表会では後半で紹介されたのだが、同じIPつながりで先に紹介してしまうと、『陰陽師』IPを使った新規タイトルとして、『陰陽師:妖怪屋』と『陰陽師:百聞牌』も当日は披露された。『陰陽師:妖怪屋』は、妖怪を育成していくという“カジュアル育成”ゲームで、6月にオープンテストを実施(中国で)。『陰陽師:百聞牌』は、式神のカードをコレクションするのが楽しいカードゲームとなっている。こちらも6月にテストが行われるようだ。
『Minecraft』は中国では登録ユーザー数が2億人を突破
中国大陸ではNetEaseと協業して展開している『Minecraft』。中国における『Minecraft』登録ユーザー数は2億(!)などというとんでもない数字が開示されつつも、歴史的な建物を復元するデータベースを構築しているとの興味深い発言も。さらには、古い村の作成にも取り組んでいるようで、この7月には第一期として、安徽省の西遞や山西省の平遥古城といった古村なども再現されるようだ。なかなかに興味深い取り組みです。
『SKY 光・遇』は『flOw(フロー)』や『風ノ旅ビト』のクリエイターによる最新作
正直言ってプレゼンでは、どんなゲームかよくわからなかったが、なんとなくおもしろそう……と思わせたのが、『SKY 光・遇』。それもそのハズで、プロデュースを担当する陳星漢氏は、『flOw(フロー)』や『Flowery』、『風ノ旅ビト』を作ったクリエイター。「なぜゲームを作るのかとよく聞かれるが、私はゲームといっしょに成長しました。歴史や地理、文化をゲームから学んだんです。ゲームがなければいまの自分はいません」と語る陳星漢氏の語りは、たしかにほかのプレゼンとは一線を画していた。ゲームとしては、あまり言葉を使わずにジェスチャーなどで感情表現をするタイトルになるようだ。7年越しの制作になるという『SKY 光・遇』は、6月にはスマートフォン向けに配信されるとのこと。日本での展開は未定ながら、大いに期待したいところ。
『荒野行動』は『新世紀エヴァンゲリオン』とコラボ!
張海星氏による『荒野行動』のプレゼンは、日本語での「日本のゲームファンの皆さんこんにちは」に始まり、「ありがとうございます」との挨拶で終わるなど、日本市場を意識したものに。実際のところ、発表会の配信は中国国内だけに留まるように思われるので、この日本語のメッセージがどこまで日本のファンに届いたのはか定かではないが、作り手の日本市場に対する注力ぶりはしかとうかがうことができた。「中国発のシューターとして、プレイヤーのニーズに合わせて日々成長してきた」(張氏)という『荒野行動』だが、その成長の手綱を緩める気は一切ないようで、今後のアップデートによりアクションとグラフィックを最適化。専門家にアドバイスをもらってリアルな動きを再現しているようだ。
そして極めつけは『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボで、日本先行で5月31日~6月13日までの期間に行われる。『進撃の巨人』に続いての日本発IPとのコラボは、中国企業のアグレッシブな姿勢がほの見えるような気がする。
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『IdentityV 第五人格』はeスポーツ的な取り組みを?
続いては、『荒野行動』に続いて日本市場でも話題を集めている『第五人格 IdentityV』。ゼロから始まったプロジェクトをここまで広げられたことを誇らしげに語った向浪氏は、「これから7ヵ月をかけてコンテンツを広げる」と明言。中国全土のみならず、香港や東南アジア、日本などで競技としての『第五人格 IdentityV』を展開していくプランを明らかにした。競技の開始は2020年5月を予定しているようだ。
『EVE Mobile』のリリースが決定
記者は不勉強にも、中国ではNetEaseが展開しているとは知らなかったCCP Games開発によるMMORPG『EVE Online』。NetEaseのゲーム事業がMMORPGの『大話西遊 Online』に端を発していたことから、海外の優良なMMORPGコンテンツを……との発想かとも思われるが、さらに中国らしいのが、IPを活用してのモバイル版を自社で開発すること。『EVE Mobile』では、8000以上の惑星を探索できるなど、『EVE Online』にも負けないボリュームとなるようだ。同作の日本での展開は未定。
戦車建造サンドボックスゲーム『重装上陣』
“戦車建造サンドボックスゲーム”という、男の子がとくに好きそうなタイトルが『重装上陣』。200以上のモジュールの組み合わせで、自由に戦車が作れるようになっている。本作は、ユニークな乗り物をデザインして楽しめる『TerraTech』にインスパイアを受けて制作されたと聞くと、何となくゲーム性の想像がつくかも。『重装上陣』の開発チームは、あまりに『TerraTech』が好きすぎて開発スタジオであるPayload Studiosと提携したほど。イベントでは、Payload Studios CEOのラス・クラーク氏が登壇し、「『TerraTech』が中国で受け入れられてうれしいです。協力関係を築くなかで、中国とイギリスのデベロッパーは考えに違いがあることがわかりましたが、同じゲームマニアであることは共通しています。才能あるチームといっしょに仕事できることに感謝しています」との、ゲームファンなら心温まるコメントも。
『重装上陣』は、中国では7月26日に正式サービスを開始。ワールドワイドで展開とのことだが、果たして日本はどうなるかしら?
その世界観に惹きつけられる『アンノウン・フューチャー』
PVからしてぐいぐいと惹きつけられてしまうのが、中国と日本で展開予定の『アンノウン・フューチャー』。発表会では、出演声優の花澤香菜さんや音楽担当の林ゆうきさん、橘麻美さんがビデオメッセージを寄せていた。ローグライク要素が加わった“美少女カードゲーム”となる本作。過去に遡ることができる主人公エルザが、世界の崩壊を回避すべく冒険するというストーリーが描かれる。当然のことストーリー分岐などもあるようだ。ビジュアルといい、ストーリーといい、大いに日本のゲームファンを意識しているのではないかと思われる1作だ。
※[2019年6月12日午後4時30分]記載の一部に誤りがあったため修正させていただきました。関係者各位にはお詫びして訂正します。
コンプラなんて気にしない!? 不倶戴天の決意で作った『ライフアフター』
本作は、終末世界をテーマにしたサバイバルアクション。「プレイヤーに没入感を味わってもらうためにはどうすればいいのか?」を最大の指針に、“終末の世界観をいかに再現するか”を実現すべく、世界の過酷な地域にロケハンとして開発陣を派遣。何日間が実際にサバイバル体験をさせたという。「そ、それはコンプラに引っかかるのでは……」とは、取材していた記者の念頭に思わず浮かんでしまった疑問だが、文明社会から離れて生存のプレッシャーを感じることが、実際の開発にあたっては、大いに役立ったようだ。『ライフアフター』はただいまiOS、Androidで配信中。いかに終末の世界観が再現されているか、確認したくなりました!
NetEase Games期待の1作『アカツキランド』
5月30日に130の国や地域でリリース予定の『アカツキランド』は、NetEase Gamesの新機軸とも言える大型RPG(国内ではiOS版が5月30日、Android版が6月4日に配信)。大海原に広がる小さな島々を舞台に、さらわれてしまった妹を取り戻すために戦う“海の民”である主人公の冒険が描かれることになる。クエストをこなしながらストーリーを進めていく一方で、楽しいのは自身の拠点となるホームアイランドを発展させること。とにもかくにもやりこみ要素満載のスケールの大きなタイトルのようだ。
発表会でサプライズ発表されたのは、ご存じ“くまモン”とのコラボ。セルフアニメーションの『アカツキランド』と“くまモン”とはいかにも相性よさげだが、しっかりとなじんでおりました(“くまモン”は中国でも大人気のよう)。
【かくれんぼ楽しんでるかなぁ♪】
くまモンとの冒険やかくれんぼは楽しんでるかなぁ?
全部見つけたかなぁ?
グーグーはトモダチだけど、隠れている場所は…
へへへ~♪( *´艸`)
知らないんだなぁ♪
ごめんなんだぞぉ
全… https://t.co/yD6Lm2BRut
— 【公式】アカツキランド (@AkatsukiLandJP)
2019-06-05 18:31:53
プレスカンファレンスでお披露目されたタイトル一覧
タイトル/ジャンル/プラットフォーム
ポケモンクエスト/RPG/スマートフォン
MARVEL:オールスターバトル/RPG/スマートフォン
夢幻西遊Online/MMORPG/PC
夢幻西遊Mobile/MMORPG/スマートフォン
大話西遊2Online/MMORPG/PC
大話西遊Mobile/MMORPG/スマートフォン
新倩女幽魂/MMORPG/PC
倩女幽魂Moblie/MMORPG/スマートフォン
天下3/MMORPG/PC
天下Mobile/MMORPG/スマートフォン
陰陽師本格幻想RPG/カードRPG/スマートフォン
大三国志/SLG/スマートフォン
楚留香/MMORPG/スマートフォン
逆水寒/MMORPG/PC
逆水寒-遇見/恋愛シミュレーション/スマートフォン
夢幻西遊3D/MMORPG/スマートフォン
青璃/謎解きアドベンチャー/スマートフォン
軒轅剣:龍舞雲山/MMORPG/スマートフォン
華と剣/MMORPG/スマートフォン
天諭Moblie/MMORPG/スマートフォン
Minecraft/サンドボックス/PC/中国
SKY 光・遇/アドベンチャー/スマートフォン
荒野行動/バトルロワイヤル/スマートフォン
IdentityV 第五人格 /非対称型/スマートフォン
Rules of Survival/バトルロワイヤル/スマートフォン
EVE Online/戦争シミュレーション/PC
EVE Mobile/戦争シミュレーション/スマートフォン
The Room 3/謎解き/スマートフォン
The Room:Old Sins/謎解き/スマートフォン
Stick Fight The Game Moblie/乱闘/スマートフォン
重装上陣/戦車建造サンドボックス/スマートフォン
陰陽師:妖怪屋/カジュアル育成/スマートフォン
陰陽師:百聞牌/CCG・TCG/スマートフォン
アンノウン・フューチャー/ローグライクDBG/スマートフォン
ライフアフター/サバイバル/スマートフォン
決戦!平安京/MOBA/スマートフォン
神都夜行録/カードRPG/スマートフォン
非人類学園/MOBA/スマートフォン
流星蝴蝶剣/アクション/スマートフォン
ビルドトピア/バトルロワイヤル/スマートフォン
キングオブハンターズ/アクション/スマートフォン
チャンピオンオブザフィールズ/サッカー/スマートフォン
機動都市アルファ/バトルロワイヤル/スマートフォン
アカツキランド/サンドボックス/スマートフォン
殺気童話2/MMORPG/スマートフォン
隠世録/バグRPG/スマートフォン
幻書啓世録アポカリプス/カードRPG/スマートフォン
NOSTOS/オープンワールドアドベンチャー/VR
荒野潜伏者-STAY SILENT/シューティング/VR
※ジャンル表記はメーカーの発表に準拠しています。