事前に発表されたアワードのノミネート作品で、大賞にあたる“朱色賞(バーミリオンゲート賞)”ほか、三部門にエントリーされていたこともあり、間違いなく今年のBitSummitの主役の1本になると予想されたDESKWORKSの『RPGタイム!~ライトの伝説~』 。事実、見事“朱色賞(バーミリオンゲート賞)”を受賞するわけだが、記者としても「これは何とかコメントをもらわんと……」と、会期中頻繁にブースに足を運んだのだが、試遊台の前は文字通り黒山の人だかり。まさに貫禄の人気ぶりといったところだが、なかなかクリエイターの藤井トム氏に会えずに気は焦るばかり。「まあ、インディーゲームのイベントは出会いの縁だからなあ……」と半分あきらめそうになりつつも、さすがに運がなかったで断念するのも悔しい。と、そんなことを考えていたらあっさり藤井トム氏に遭遇。「インディーゲームの神は我を見捨てなかった!」ということで、お話を聞いてみた。
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藤井トム氏
DESKWORKS所属のゲームデザイナー
――今回出展されたバージョンはどのようなものなのですか?
藤井内部的には1年ぶりくらいに更新しまして、新しくなっています。動き的にはほぼ製品版に近いくらいのバージョンですね。これまで試遊できたバージョンと比べて新しいギミックが追加されたわけではないですが。
――内部的にはと言いますと?
藤井1年くらい前のものを修正また修正という感じで、最新のバージョンは別のもので作っていたのですが、いまはコンソール化に向けて対応済みのバージョンになります。出展しているのはiPad版なのですが、内部では対応済みですね。で、(目に見える変更がないと)少し地味なので、今回じつは“デュアルシェイクシステム”というのを開発しまして、ゲームの進行に応じて机がブルブル揺れるというギミックを用意したのですが、機械トラブルがあったり、思ったよりもお客さんが多かったので、やむなく断念しました。ゲームの進行に応じてライトが点いたり、風が吹いたりとかというので、イベントだからできる体験ということで遊んでもらおうと思っていたのですが、なかなかオペレーションがたいへんで……。
――あくまでもサービス精神満点ですね(笑)。お話をうかがっていると、ほぼ完成状態のような感じですね。
藤井そうですね。制作的には完成に近づいているのですが、やっぱりまだバグとか調整とかが必要なところがあります。あと、コンソールに向けて対応しているとどんどん欲が出てきてしまって。
――追加要素的なものも考えている?
藤井そうですね。たとえば、コンソールだと大きな画面で遊べるのですが、せっかく大きな画面で遊べるのならば、いまだとノートの中が2K画質で用意しているのですが、4Kで遊べるようにしたいなとか。そういうところに時間がかかってしまって。また、大きい画面で見るとめちゃめちゃおもしろいんですよ(笑)。
――BitSummit 7 Spiritsに出展してみての手応えはどうですか?
藤井日に日に増している感じがします。今回のBitSummitでもすごくお客さんに喜んでいただけていますし。以前から喜んでいただけている手応えはありましたが、今回は雰囲気作りがうまくいったからなのか、とくに喜んでいただけている気がします。
――スタッフとも話していたのですが、展示のディスプレイのセンスがものすごくいいですよね。
藤井今回は集大成のつもりで臨みました。
――集大成!?
藤井はい。1年前のBitSummitで初めて公の場に出展して、ちょうど1年目になるんですよ。ですので、いままで1年間ちょっとずつ更新してきたのですが、それを全部ここに注ぎ込もうと思いました。
――集大成ということは、発売前の試遊の機会はこれが最後になるということですか?
藤井そうですね。国内の出展はBitSummitで止めようかなと思っています。あとは海外とか……。
――ということは、発売はそんなに遠くない感じですか?
藤井発売日ついては改めてアナウンスしたいなと思っています。今年の夏発売とは言っているのですが、もうちょっと……。改めてちゃんと発表したいなとは思っています。
――ちなみにパブリッシャーは決まりました?
藤井まだ決まっていないんですよ。
――あらまあ!嘘だ。
藤井そうなんですよね……。もちろん候補はいくつかあるのですが……。ダメですよね、決めないと。なかなかタイミングがないというか……。年がら年中いろいろなイベントに出ていたので、出るたびに新しいところからお声がかかって、「では話だけ聞いてみてから」ということで。
――モテまくり状態だ。みんなが『RPGタイム!』の結婚相手を気にしていると思うのですが……。
藤井お話してみないことにはわからないので、ずるする行ってしまって、候補のパブリッシャーさんにはご迷惑をかけてしまっています。
――最後にファンに向けてのメッセージをお願いします。
藤井いまチームが一丸となって、開発しています。日に日におもしろくなっている自信もあるので、ぜひ楽しみにしていてください。発売日のスケジュールのほうは改めてお話させていただきます。
言葉の端々から人柄のよさがにじみでる藤井トム氏。藤井氏だからこと、『RPGタイム!~ライトの伝説~』が作り得たのだという気がする。これだけの期待作、納得のいく形でリリースしてほしい。