2019年6月1日~2日、京都にてBitSummit 7 Spiritsが開催。ここでは、プラチナゲームズの稲葉敦志氏と田浦貴久氏によるセッションの模様をお届けしよう。

 BitSummit恒例となっているプラチナゲームズ稲葉敦志氏による講演は、記者が毎年もっとも楽しみにしているセッションのひとつ(今年で通算5回目)。2017年はディレクター論を、2018年はプロデューサー論を語り、「おお、なるほど!」と新たな知見を与えられることもたびたびだったわけだが、今年はその実践編というべきか、“プラチナゲームズの新世代ディレクター”との演目で、今年は、8月30日発売のNintendo Switch用ソフト『アストラルチェイン』で初めてディレクターを担当する田浦貴久氏を交えてのトークとなった。

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 「新しいタイトルを作ると新しいディレクターが登場する。その最前線にいるのが田浦」と稲葉氏に紹介された田浦氏は、「ディレクターになるのはどうだったのか?」と問われると、「難易度で言えば簡単だと思う」と返答。「プラチナゲームズは作りたいゲームがあって、熱意と本気度を汲み上げてくれる。ゲームに真摯に向き合っていたら、なれる空気がありました」と続けた。ゲームが好きで、ゲームと真剣に向き合うことが、ディレクターに向かういちばんいい道だという。田浦氏はゲームを作っていても飽きることがなく、「ずっと作っていたい」というから、根っからのゲーム好きのよう。

 その後、「僕からも聞きたいことがある」という稲葉氏からぶっこまれた質問は、田浦氏の身近にいる神谷英樹氏や『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のヨコオタロウ氏といったディレクターは、「敵かはたまた師匠か?」というもの。これに対し田浦氏は、「いちばんはファンです。偉大なる先輩の作るゲームを楽しみにしています」とのマジメなお答えがありつつも、稲葉氏の「という建前がありつつも?」というツッコミに促されるようにして、「いつかは倒されないといけないというか、その席を空けてもわらないといけないという思いがあって、彼らの方法論を盗んでいる部分はあります。いろいろな思いがありますね」と、若手ディレクターらしい気概を見せた。

会場には神谷英樹氏も顔を見せていたようで、「終わったら殺されるかもしれない……」と田浦氏。

 さらに、「これから先どんなディレクターになっていきたいか?」との質問には、「プラチナゲームズのイメージとして、どんどん新しいことをやるというのがあるが、自分の感覚もそれに近くて、完成したらぜんぜん違うものを作りたくなります。今後ディレクターを続けられたらと思っています。ただ、一度ディレクターをやってみたあとで、プランナーもやってみたいですね」との興味深い発言が聞かれた。詳細は語られなかったが、ディレクターをやってみたからこそ、プランナーに活かせるフィードバックもあるということなのだろうか。

 そんな田浦氏の心構えを聞いた稲葉氏の口からは、「プラチナゲームズは、“こういうものを作りたい”という思いは大切にしたいです。神谷はそういう思いを出していて、若手にもそういう思いがある者がいるので、チャンスを与えたいし、チャンスを与えられる会社でありたい」との言葉が聞かれた。そんな稲葉氏の姿勢に対して、英語通訳も担当した司会役のベン・ジャッド氏は、「健全な争いですね」とひと言。

 続いて田浦氏の『アストラルチェイン』の話題に。田浦氏は、同作に対して「紆余曲折があってもあきらめなかった。熱意や“作りたい”という気持ちがあったので、あきらめずにできた」と、なかなかに難産だったことを予想させるコメントを発したあとで、「初ディレクションとしてたいへんだった点は?」との質問に対して、「ご覧のとおり、あまりしゃべるのが得意ではないので……」と口を開きつつ、「『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』は新しいゲームなので、“こういうふうにしたい”と伝えるのは口でしゃべるしかなくて、そこから絵が描かれたりするが、最初の伝えるということがたいへんでした。10人いれば10人の感性があるので……。迷いながら進んでいます」と、田浦氏らしい真摯なコメントが聞かれた。

 最後に、『アストラルチェイン』を待っているファンに向けてのメッセージを求められたふたりは、「オリジナルタイトルをつぶそうとする圧力は高いのですが、発売にこぎつけたのは田浦の情熱があればこそ。全身で田浦を浴びられるタイトルです」(稲葉氏)とお褒めの言葉。一方の田浦氏からは、「開発チームのみんなのがんばりによってできています。『アストラルチェイン』のスタッフは若い人が多く、ゲームを作るのは初めてという人もいます。やる気だけで組み上げたゲームになっています」とアピールした。

 若いパワーで作り上げた『アストラルチェイン』の発売日を心待ちにしたい。