2019年4月25日、ファミ通グループ代表・浜村弘一氏による講演"ゲーム産業の現状と展望<2019年春季>"が開催された。

 2019年4月25日、ファミ通グループ代表・浜村弘一氏(以下、浜村代表)による講演"ゲーム産業の現状と展望<2019年春季>"が開催された。

 本講演は、毎年春・秋の2回にわたって、アナリストおよびマスコミ関係者を対象に実施されているもの。今回は、"プラットフォーム バトルロイヤル"というタイトルで、既存のハードメーカーほか、Google社を始めとするWebサービス企業などが参入を表明し、多様化が予想されるゲームプラットフォームについて語られた。

多様化するゲームプラットフォーム

 まず、浜村代表は次世代ハードの情報が徐々に出始めていることに触れながら、これまでとは様相が異なり、まったく新しい提案のプラットフォームが飛び出しそうだといまの印象を語った。

 その例のひとつが、先日Googleが発表した“STADIA”。STADIAは、専用ハードウェアが不要で、PC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスでプレイ可能なクラウドゲーミングサービスとして、米国、カナダ、英国、欧州で2019年内にサービス開始予定となっている。

 YouTubeとの連携も大きな特徴のひとつで、プロモーションビデオから専用のボタンを押すことで、数秒後にはそのタイトルがプレイできたり、実況プレイ中のストリーマーのゲームにワンボタンで参加する機能も搭載されている。この機能について浜村代表は、ゲーム動画の市場が年々大きくなっていることを紹介しつつ、「Youtubeでワンストップでゲームが遊べるというのは、STADIAにとってもっとも大きな強みになるのではないか」と見解を示した。

 STADIA以外にも、ソフトバンクがNVIDIAの“GeForce NOW”について国内向けにサービスの開始を予定していたり、UnityがTencent Cloudをサポートするなど、さまざまなクラウドゲームプラットフォームに注目が集まっている。では、なぜここにきて注目を集めているのかというと、5G(第5世代移動通信システム)の登場が大きく関係していると、浜村代表は解説。5Gの特徴である、超高速、超低遅延、多数同時接続により、クラウドゲームで表現可能なコンテンツの幅が広がり、パフォーマンスの向上が期待できるとのこと。

 ゲームプラットフォームに関する2018年の大きなトピックとして、“Epic Games Store”の登場も見逃せない。これまでPCゲームストアの王者であった、Valveの“Steam”だが、Epic Games Storeは、デベロッパーの取り分についてSteamを上回る高い分配率を提示している。また、ユービーアイソフトのPC版『ディビジョン2』がEpic Games Storeでのみの販売になるなど、状況が変わりつつあることを紹介。そのほかにも、ゲームユーザー向け高機能チャットツール"Discord"もPCゲームストアを開設しており、競争はさらに激化していくだろうとコメントした。

 浜村代表は、年々売上げを伸ばしているサブスクリプションサービスにも着目。Netflixで配信されている選択肢を選ぶことで、物語が分岐していくインタラクティブドラマ『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』を例に挙げながら、これまでゲームとは深い関りがなかった動画サイトが、動画を見ている感覚で楽しめる新たなゲームをつぎつぎと配信してくるのではないかと予想した。また、「こういったコンテンツが増えていけば、もっと売上げが伸びるのではないか」と語った。

既存のゲームハードメーカーはどのように対抗していくのか?

 続いての話題は、さまざまなプラットフォームが乱立してきている中、家庭用ゲーム機はどのような形で対抗していくのかについて。

 マイクロソフトは、先日、新たなハードとして、Blu-rayディスクドライブ非搭載の“Xbox One S All-Digital Edition”を発表。一方で、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2019では、Xbox Liveのクロスプラットフォーム化に向けて舵を切る旨のアナウンスを行った。また、浜村代表は、発表済みの“Project xCloud”では、ゲーム機でプレイしていたゲームをPCやスマートフォンで、いつでもどこでも切り替えて遊べることを紹介し、性能だけではない別の方向の進化を目指しているような印象があるとした。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のプレイステーション4(以下、PS4)については、近年、日本市場で売れている作品のパターンが変化してきていることに着目。ゲームファンがその年に発売されたベストゲームを選ぶファミ通アワードでは、2015年~2017年には海外産タイトルは1~2タイトルしかノミネートされていなかったが、2018年には5タイトルにまで増加した。これについて、浜村代表は「SIEが推し進めてきた、海外のゲームのよさをアピールする施策が成功してきているのではないか」と分析。そんなPS4の国内累計販売台数は800万台を突破し、プレイステーション3よりも早いペースで普及していることに加えて、海外産のゲームが受け入れられている現状から、さらに市場を拡大させる可能性を秘めているとコメントした。

 また、2019年3月に実施された、PS4のアップデートでは、iOS端末でリモートプレイが行えるようになったことに触れ、「次世代では、いつでもどこまでも遊べるというのは当たり前のことになってくるのではないか」と見解を述べた。

 2019年4月21日時点で国内累計販売台数が800万台を突破したNintendo Switch(以下、ニンテンドースイッチ)。任天堂が発売した据え置き型機の中で、いちばん売れたWiiと比較しても、それを上回るペースで普及している。オンラインサービス"Nintendo Switch Online"も好調で、2019年1月時点で有料会員数は800万アカウント(※ファミリープランのメンバーアカウントを含む)を突破。そのほか、VR機能を追加したり、流行りのバトルロイヤルと『テトリス』を組み合わせた『テトリス99』を配信するなど、順調な滑り出しとなっている。浜村代表は、ニンテンドースイッチの強みである、据え置き型機であり、携帯ゲーム機でもあるという特徴について、「今後、『ポケットモンスター』や『どうぶつの森』のシリーズ新作の発売が予定されているので、携帯ゲーム機としての遊ばれかたがどんどん増えてくると思う。そうなってくると、一家に一台から、ひとり一台の時代になってくる。日本では、据え置き型機の普及台数の限界は1000万台だと言われているが、ニンテンドースイッチはそれを遥かに超える可能性もある」と期待を寄せた。

 続いての話題は、ゲームアプリやVRについて。クラウドゲームが普及し、スマートフォンなどで、いつでもどこでも家庭用ゲーム機レベルのコンテンツが楽しめるようになると、アプリはどうなってしまうのかという問題だが、浜村代表は、『ポケモンGO』などを手掛けるNianticの新作として配信が予定されている『ハリー・ポッター 魔法同盟』を例に挙げ、「ARや位置情報など、アプリにはアプリにしかできない魅力がある」と解説した。

 またVRについては、Oculusより特徴の異なる3つのデバイス"Oculus Rift S"、"Oculus Quest"、"Oculus Go"が発売されることや、HTCのVive向けゲームが定額制で無制限に遊べるサービス"Viveport infinity"が2019年4月から開始予定であることを紹介。

 このように、VRではさまざまな取り組みが行われているが、そんな中、VRの可能性を広げる動きとして、浜村代表が注目しているのがソフトバンクの"LiVR"だという。同サービスは、プロ野球の試合をVR映像でライブ配信するというもの。今後は野球だけではなく、音楽ライブなど、各種エンターテインメント系のコンテンツを追加する予定ということで、「いままでVRに興味がなかった人が購入するキッカケになり、VRの普及が一気に加速する可能性がある」と語った。

 浜村代表によると、もうひとつ新たなゲームプラットフォームとして期待されているものがあるのだという。それがブロックチェーンゲーム。これまでのアプリやソーシャルゲームでは、飽きてしまったり、ゲームのサービスが終了してしまうと、ゲームに使ったお金はなくなってしまう。しかし、ブロックチェーンゲームでは、ゲームを始めるときに仮想通貨を購入し、これによってアイテムの売買などが行えるため、ゲームをやめるときにアイテムを売却して、その売上で新しいゲームを始めるということも可能となっている。ただし、ブロックチェーンゲームにも課題は存在する。それは、マネタイズの方法が固定化されていないということ。アプリやソーシャルゲームでは、アイテムやキャラクターなどのガチャがマネタイズのひとつの手法となっていたが、ブロックチェーンゲームでガチャを行うと、賭博罪になってしまう可能性がある。そのため、現在はゲーム性とビジネス性のバランスを模索している段階だが、もしマネタイズの仕組みに発明が生まれとしたら、かつてのソーシャルゲームバブルのようなことが起きる可能性があると浜村代表は語った。

国内家庭用ゲーム市場は微減の中、ニンテンドースイッチは好調

 2018年度の国内家庭用ゲーム市場は、前年比でハードが84.2%、ソフト(店頭販売分のみ)が94.4%、合計が89.2%となった。そんな中でも、ニンテンドースイッチは好調で、ハードが108.8%、ソフトが165.7%と前年を上回った。また、ハードの累計販売台数では、2019年3月末時点で、トップのPS4とニンテンドースイッチの差は約15万台となっており、浜村代表は「あと2~3週間でニンテンドースイッチの販売台数がPS4を上回ると思う」と予想した。

ゲーム業界の一帯一路

 海外市場の中では、伸び盛りの中国市場に注目。中国ではゲーム販売の承認凍結があったものの、中国のビッグ2と呼ばれる、テンセントとネットイースの海外収益が382%増加した。とくにテンセントは有力会社にどんどん出資を行っており、世界のゲーム市場において、同社の影響力は日々高まっている。eスポーツ市場にも力を入れており、中国のeスポーツ市場はここ4年で3.7倍にも成長していることを説明した。

日本でも徐々に盛り上がりを見せるeスポーツ

 話題がeスポーツに移ると、浜村代表はまず世界の市場規模を解説。売上規模では、2017年には6億5500万ドルだったが、2022年には17億9000万ドルにまで伸びると言われている(※詳細はこちらをチェック)とのこと。では、eスポーツではどのようにお金が動いているのか。2019年を例にすると、いちばん大きな割合を占めるのがスポンサーシップで42%。つぎにメディアライツが23%、広告が17%と続く形になっており、浜村代表は「メディアライツと広告は放送についてのスポンサー。つまり、現在のeスポーツは大会のスポンサーと、放送のスポンサーに支えられているというのが大きい。こうして見ると、eスポーツは大きく盛り上がってはいるが、まだ投資フェーズから実用フェーズに変わりつつある途中だと思う」と補足した。

 eスポーツはとくに放送コンテンツが重要ということで、続いてはオーディエンスついて。2017年に全世界トータルで3億3350万人だったオーディエンスは、2022年には6億4200万人になると予想されているそう。そんな中、2019年の常連ファンである2億100万人にのうち、57%をアジア圏が占めていることから、eスポーツはアジアで熱狂的に盛り上がっていることが読み取れる。

 その後、世界のeスポーツに関するトピックを紹介。日本は海外と比べるとまだまだという印象が強いかもしれないが、浜村代表によると日本でも徐々に盛り上がりを見せてきているのだという。

 メーカーでは、カプコンが主催する"ストリートファイターリーグ"の開催が発表されたほか、KONAMIがeスポーツの発信拠点ビルを東京・銀座に設立するなど、さまざまな取り組みが行われている。また、EVO JAPANやRAGEなどのeスポーツイベントに大手企業がスポンサーとして参加したり、企業がeスポーツ選手をサポートする事例も増えてきているとのこと。さらに、2019年茨城国体に併せてeスポーツ大会(全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI)が開催されることも決定。こうした動きもあり、2018年7月には41.1%だった日本のeスポーツ認知度が、2019年1月時点で48.0%まで増加しており、市場規模も大幅な成長が見込まれている。

 徐々に盛り上がりを見せ始めた日本のeスポーツだが、課題も残っていることを浜村代表は指摘した。それは、世界で流行っている競技と日本で流行っている競技とのギャップ。具体的には、海外では『リーグ・オブ・レジェンド』や『カウンターストライク』といったチーム競技が人気だが、日本ではチームをスポンサーするほどの企業や団体が数多くなく、練習する環境を整えられたのは一部のチームに限られていたため、他国に比べて遅れをとってしまったとのこと。しかし、「これからeスポーツが盛り上がっていけば、チーム競技のスポンサーも増えて、どんどん強くなると思う」と浜村代表は語った。

 講演の最後に浜村代表は、以下の概念図を使ってゲームプラットフォームの現状を整理した。

 まずは家庭用ゲーム機について。いちばんの強みはやはりオリジナルコンテンツ。XboxのProject xCloud、プレイステーションのリモートプレイ、ニンテンドースイッチの携帯性など、家庭用ゲーム機にもどこにでもゲームを持ち出せるという流れがきているため、クラウドゲームとはどこが違うのかということになってきている。その上で、浜村代表は「コミュニティをしっかりと支えるオリジナルコンテンツがあれば、(家庭用ゲームは)ほかのプラットフォームに十分対抗できるのではないか」と解説した。

 PCやスマホのゲームは運営型のコンテンツが多いため、ユーザーコミュニティをつねに刺激して活性化させる必要がある。だが、軌道にさえ乗れば、ユーザーが支えてくれるようになり、いつまでも遊び続けられる作品になる可能性が高まるとのこと。

 STADIAのいちばんの強みは動画からの太いリコメンドライン。そもそも、Youtubeが、ユーザーコミュニティ(リテンション)の集合体とも言える。そこでワンストップでゲームを遊ばせるということは、ほかにはない圧倒的な有利性になるのではないかと浜村代表は語った。

 動画サイトの強みはすでにある集客力。そこにインタラクティブドラマやクラウドゲームの提供が始まれば、これ以上ない強敵になり得るとのこと。

 そして、浜村代表は、今後のプラットフォームバトルロイヤルについて「オリジナルコンテンツを武器にしたり、ユーザーコミュニティを武器にしたり、リコメンドを武器にする形で、ゲームのプラットフォームはどんどん盛り上がりを見せようとしている。このバトルロイヤルを始める号令をかけるのは5Gでしょう。どれが勝つのかまったく予想がつかないが、今後、ゲームをプレイする人の数やゲームを消費する時間が圧倒的に増えるということは間違いない。どこに行ってもゲームが遊べる環境ができるわけなので、つぎの世代ではいままで以上にゲームに投資されるお金や時間が増えて、ゲーム市場がますます大きくなっていくのではないか」と語り、講演を締めくくった。