よりすぐりの1本を丸ごと公開!

 週刊ファミ通で連載中の、ゲームデザイナー桜井政博氏による人気コラム“桜井政博のゲームについて思うこと”。このコラムをまとめた単行本の最新刊『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』が、いよいよ2019年4月25日に発売となります!

 本書の発売を記念して、担当編集者オススメの回を、2019年4月22日から2019年4月25日まで、毎日午前10時に、1本ずつ丸ごと公開中。ついに発売当日となる今回は、先日(2019年4月18日)Nintendo Switchで日本語版が配信となった『Cuphead』に関連するテーマで執筆されたVol.541“ソンさせないのが今風だけど”をお届け(約1年半前、海外で『Cuphead』が発売されたばかりのころに書かれたものです)。

 本書には、こんなにおもしろいコラムが103回分(※電子書籍版は99回分)も収録されています。ほかの回も読みたくなったら、ぜひ本書をお買い求めください!

以下、『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』より抜粋

※週刊ファミ通2017年10月26日発売号掲載(原稿は掲載当時に執筆されたものです)。
※書籍内から本文のみを抜粋しています。追記・補足部分は記事末の画像でご覧ください。

Vol.541 ソンさせないのが今風だけど

桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_01

 『Cuphead』が発売されました。待ってた! どんな作品か知らない方は、この写真を見てください!! 

桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_05
桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_06
桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_07
『Cuphead』

 魅力は動きを見てこそですが、1930年代のカートゥーンテイストで構成されたグラフィックは本当にステキだし、音楽も高レベル。が、ゲームの内容は、『ロックマン』や『魂斗羅』めいた、硬派なアクションシューティングです。ルールもクラシックで、ステージ最後でミスしても、スタート地点まで戻されてしまいます。これは最近のゲームの感覚では、かなり長く戻されて面倒だと思う人も少なくないでしょう。

 横スクロールステージでミスして戻ったら、プレイヤーが直接得られる利益は何もないのですよね。パワーアップ用のコインはステージクリアーしなければ手に入らないし、経験値などによって強さが増すわけでもない。プレイを重ねることで有利になる要素が自身のスキル以外にはないので、自分は一生クリアーできないかも? と思ってしまう人もいるかも。こういった昔風の仕様を好まない層がいることも、理解できます。

 ユーザーが行った行為が、ムダになりすぎないように気を配るのが今風のゲームデザインというものです。たとえば『ファイアーエムブレム無双』では、ゲームオーバーになっても経験値はそのまま引き継がれることが都度明示されます。

 でも、もちろん最初まで戻されることによって生まれる楽しみも確実にあります。遊び手が「なにくそ!!」とがんばれるようにできるか否かが、ゲーム性の分かれ道になります。個人差が非常に大きい部分だとも言えますが、その気持ちに導かれるかが大事ですね。『Cuphead』の場合、ボスと短く戦うだけのステージが多かったり、ゲームオーバー時に進捗が表示されるなどの仕様で補っています。しかし何より、グラフィックの魅力が最大のご褒美になっていますね。先を見たい気持ちが原動力。同じ仕様でも、グラフィックなどが違えば、あるいはみずからの興味が違えば、がんばり度もかなり変わるハズ!!

 クラシック関連で、もうひとつうれしいものが発売されました。“ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン”。わたしは収録タイトルのひとつを手掛けています。が、個人的には予約に失敗し、入手できていなかったりして……。いいのいいの。作った人が買えないことなんて、昔もいまもよくあることですしね。

 こちらは、タイトルごとにいつでも中断セーブできます。それどころか、プレイ時間を巻き戻して楽しむことも。ゲームそのものはもちろん昔の仕様。昔、楽しんでオチを知っているゲームを懐かしむことが主体なので、大胆な中断セーブ機能が採用されたとも言えますが、何より、いまから楽しむ人には、逐一セーブポイントなどまで戻されたりするのは合わないのでしょう。とくに、『超魔界村』などに代表される高難度アクションゲームはそう。中間地点の道のりは、当時も手を焼きました。

 何でも親切にしようと思うと失われるものもあるし、すでに失われたために戻れないものもあるし。個人的には定石に染まらず、さまざまな仕様のものが混ざり合う状況がいちばんうれしいです。唯一の方法なんてありません。いろいろな狙いがあるのがベストですね。

桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_08
『星のカービィ スーパーデラックス』
(ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンの画面)
どこでもセーブ、巻き戻して再開。キーデータでリプレイ保存しているのかな。
桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_03
桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_04
※画像は電子書籍版のものです。書籍版では、画像がモノクロになります。

書籍情報

桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019
発売日:4月25日(木)発売
価格:1620円[税込](電子書籍版も同価格)
判型:A5判
ページ数:224ページ

桜井政博氏が『Cuphead』から感じた、昔といまのゲームの違いとは?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その4】_02

 約4年ぶりとなる単行本最新刊。2015年、前作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』の発売後から、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』発売後の2019年2月のコラムまでの時期に書かれたコラム4年分が掲載されています。収録にあたり、桜井氏が改めて監修するとともに、以下のような大量の加筆も行ってくれています。読み応え満点!

【巻頭特集】
桜井氏が制作現場で使っている道具などを公開! 桜井氏がどんなふうに仕事をしているのか、見えてくる!?
【スーパーヘルプ】
ファミ通誌面ではフォローしきれなかった用語解説や豆知識を掲載。すべて桜井氏の書き下ろし!
【ふり返って思うこと】
桜井氏と編集担当者との対話形式で、各回のテーマをさらに深く掘り下げている。
【そのころゲーム業界では】
掲載当時の出来事を掲載。時代背景を念頭に置くと、コラムをより深く理解できるかも。
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※電子版は、書籍版を再編集して収録しています。
※電子版の画面写真は、すべて週刊ファミ通掲載時と同じカラー写真になっていますが、一部、書籍版と異なる場合があります。また、電子版には、諸般の事情によりVol.503、508、522、526は掲載しておりません。あらかじめご了承ください。

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