桜井政博氏による人気コラム単行本最新刊発売を記念して、より抜きのコラムをご紹介。今回は、Vol.517“3Dはやりすぎてちょうど”をお届け。

よりすぐりの1本を丸ごと公開!

 週刊ファミ通で連載中の、ゲームデザイナー桜井政博氏による人気コラム“桜井政博のゲームについて思うこと”。このコラムをまとめた単行本の最新刊『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』が、いよいよ2019年4月25日に発売となります!

 本書の発売を記念して、担当編集者オススメの回を、本日(2019年4月22日)から発売当日の2019年4月25日まで、毎日午前10時公開で、1本ずつ丸ごとお見せしちゃいます! 本書には、こんなにおもしろいコラムが103回分(※電子書籍版は99回分)も収録されています。ほかの回も読みたくなったら、ぜひ本書をお買い求めください!

以下、『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』より抜粋

※週刊ファミ通2016年11月2日発売号掲載
※書籍内から本文のみを抜粋しています。追記・補足部分は記事末の画像でご覧ください。

Vol.517 3Dはやりすぎてちょうど

『ストリートファイターII』のリュウ

 これは『ストリートファイターII』における、“しゃがみ強パンチ”。3枚の絵でアッパーし、逆送りで戻します。攻撃発生まで約8フレーム(以下、“F”)。原作が登場して25年経ちますが、いま見ても見事なドット絵。躍動感があります。

 たとえばこれを3Dのモーションにする場合。ふつうは原作に忠実なポーズを取り、あいだを補間します。ポーズが似ていれば原作そっくりの動きになるハズ。ここが同じでなければ、当然似ない。だけど、実際はそうではありません。それはワナです。コマ間が補間されているということは、攻撃の中間の絵が表示されている時間が多くなり、もっさりします。3Dポリゴンのゲームでは、2Dドット絵のようなメリハリを感じにくい場合が多いですが、こういったことが要因のひとつにあります。

 『スマブラfor』でリュウを作りましたが、原作における最初の絵、しゃがみポーズに該当するモーションは、こうなっています。

『スマブラfor』のリュウ【1】

 原作よりも、グッと拳を引いています。右腕は斜め上向きのところを、斜め下になるぐらい下げる! 左肩もぐいっと上げる! つまり、より極端にプルバックしています。

 AからBまで、1パターンで切り換わる絵があった場合。それを3Dモーションで表現しようとしたら、AからBまでを単純に結べばよいというわけではなく、1Fで切り換わればよいというわけでもなく。Aよりももっと下がってから一気にBにいく! という感じにすると、動きが活きてきます。そして時間ギリギリまで溜めた後、つぎの絵を一気に送ります。

『スマブラfor』のリュウ【2】

 それぞれ中割の絵は1Fしか表示されていません。象徴的なポーズも含まれますが、一気に。ここからヒット判定が入るので、相手に当たれば視覚的な印象にも残るでしょう。つまり、コマのタイミングが原作と異なっていたとしても、本作ではしゃがみに多くの時間を費やしているのです。ポーズ自体も、原作より引き締めが入っています。このくらいがちょうど。

 その後、アッパーを伸ばし切っている時間はもちろんですが、攻撃後にも気を遣います。原作では同じパターンを逆送りしていましたが、同じ軌跡を描いて攻撃を戻すと単調になるので、よりしっかりしたアクションに変えていきます。

『スマブラfor』のリュウ【3】

 攻撃後は“フォロースルー”と呼んでいるのですが、攻撃までの時間より、フォロースルーのほうがよほど長いです。ここが適当だと印象がだいぶ違うので、パンチを下に引く印象を踏襲しながら、フックしてしっかり制御します。攻撃の印象を欠き、動きに負けているモーションができることも多々あるのですが、そこは都度指摘し、よくなるまで手直しします。

 3Dモーションは、ゲームを豊かにすると同時に、中割によってもっさりしてしまう側面があります。動きの歯切れのよさでは2Dドット絵には敵いません。ならば、より多くの誇張が必要です。作り手の方は“ちょっと大げさに引く! 一気に動かす!”を、心掛けることをオススメします。やりすぎてよし!

※画像は電子書籍版のものです。書籍版では、画像がモノクロになります。

書籍情報

桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019
発売日:4月25日(木)発売予定
価格:1620円[税込](電子書籍版も同価格)
判型:A5判
ページ数:224ページ

 約4年ぶりとなる単行本最新刊。2015年、前作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』の発売後から、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』発売後の2019年2月のコラムまでの時期に書かれたコラム4年分が掲載されています。収録にあたり、桜井氏が改めて監修するとともに、以下のような大量の加筆も行ってくれています。読み応え満点!

【巻頭特集】
桜井氏が制作現場で使っている道具などを公開! 桜井氏がどんなふうに仕事をしているのか、見えてくる!?
【スーパーヘルプ】
ファミ通誌面ではフォローしきれなかった用語解説や豆知識を掲載。すべて桜井氏の書き下ろし!
【ふり返って思うこと】
桜井氏と編集担当者との対話形式で、各回のテーマをさらに深く掘り下げている。
【そのころゲーム業界では】
掲載当時の出来事を掲載。時代背景を念頭に置くと、コラムをより深く理解できるかも。

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※電子版は、書籍版を再編集して収録しています。
※電子版の画面写真は、すべて週刊ファミ通掲載時と同じカラー写真になっていますが、一部、書籍版と異なる場合があります。また、電子版には、諸般の事情によりVol.503、508、522、526は掲載しておりません。あらかじめご了承ください。

★第二回は以下のリンクから。