ひたすらゲームを遊ぶイベント“別府おんせんLAN”が開催された。開催地はもちろん“日本一のおんせん県おおいた”。そんなの行ってみるしかないだろう。

好き勝手にゲームするイベントが“おんせん県”で開催

 温泉はいいものだ。

 ゲームもいいものだ。

 ということは、温泉でゲームをやったら最高に違いない。そんなピュア丸出しの夢を叶えるイベントが2019年3月30日~31日に開催された。

 その名も! 別府おんせんLAN!

会場内に本気の温泉(足湯)がある。こんにちは。ファミ通.comの派手な服担当ミス・ユースケです。
会場内ではみんなやりたいゲームを好きにやってた。すばらしい空間だ。
自由に使える卓球台もあった。温泉感のドーピングだ!
アムロみたいな人がVRラーメン屋ゲーム『カウンターファイト』やってた。
ゲーミングPCを自在に使いこなす少年。頼もしい。
うまい棒がもらえる射的屋。こういうのは温泉街っぽいような気がする。

 まとまりがなくて、よくわからないイベントに感じるかもしれない。だが、これが正解なのだ。

 混沌とした空間の中、不意に鎌首をもたげる温泉感。This is 別府おんせんLAN!

開催地は世界最強の温泉リゾート地

 記事の開始早々、テンションがわからなくなってしまった。心を落ち着けて要素を整理していく。

 別府おんせんLANの開催地は大分県別府市。“日本一のおんせん県おおいた”の中でもぶっちぎりの湯量を誇る別府温泉だ。

 別府温泉の湯量は世界2位。気軽に入浴を楽しめる整備済みの温泉としては世界No.1らしい。完全に温泉リゾート界の化け物である。

 “別府おんせんLAN”は別府市開催という理由だけで地名を冠しているわけではない。別府市も協賛しており、自治体側からも認知されたイベントなのだ。

自治体からも認められているイベントだから別府温泉がブース出展してるし、
別府市宣伝部長のべっぴょんも来てくれた。かわいい。
射的を楽しむべっぴょん。
外してしまい、落ち込むべっぴょん。
残念賞をもらってご機嫌なべっぴょん。
会場内を練り歩くべっぴょん。
街のNPCだと思って話しかけたら敵として襲い掛かってくるべっぴょん。

 イベントの開催日は2019年3月30日~31日の2日間。

 僕は3月30日に東京で別件のイベント取材があり、大分空港に到着したのは21:00過ぎだった。

大分空港着。
大分空港名物の足湯もクローズした後。

 一般的なイベントなら初日の日程が終了している時間である。

 ふつうなら取材は諦めて温泉に入って関アジと関サバととり天とから揚げ食お! 食お食お! と、なるところだが、別府おんせんLANはひと味違う。

 3月30日12:00から31日16:00まで夜通しノンストップなのである。夜に到着しても入場できた(参加者の年齢によって、夜は入場制限あり)。

 別府おんせんLANは“LANパーティー”タイプのイベントだ。

 LANとは“Local Area Network”の略。オンライン上ではなくオフの場で遊ぶものと考えるとわかりやすい。語感からもわかるように、魅力の度合いで言えばTM NETWORKとほぼ同レベルである。

 よくあるオフラインイベントとは参加者のスタイルが少々異なる。自分でPC本体やゲーム機を持ち込むのがLANパーティーの基本だからだ。

 そして、いちばんの目的はゲームを遊ぶこと。自分が持ち込んだゲームを遊び、ほかの人がやってるゲームを遊ばせてもらう。お腹がすいたらご飯を食べ、眠くなったら寝る。

 LANパーティーとはゲーマーが本能のままに行動できる場なのだが、別府おんせんLANではそこに“足湯でリフレッシュ”という項目が加わる。ゲーム→足湯→ゲーム→足湯……。無限ループできそうだ。

 トークショー的なステージが実施されたり、会場内で大きなスクリーンを使ったゲーム大会が開かれたりもする。僕が取材できなかった30日には『ぷよぷよ』大会で小学生男子が大人たちをバッタバッタと倒して優勝したそうだ。すごい。

 それでも、好き勝手にゲームを遊ぶほうが主軸。ゲームイベントとして圧倒的にストロングスタイルである。

 主催者がそうとうのゲーム好きじゃないと、LANパーティーを開こうなんて発想が出てくるはずがない。温泉地でちょっとゲームやったらいいんでしょ? のような場当たり的なイベントではないのだ。

開けた印象のあるLANパーティー

 そうそう、僕はイベントを取材しに来たのだった。リポート記事を書くために会場内を歩き回る。

 みんなゲームやってるな。そう感じる。ほかの感想があまり出てこないのがLANパーティーのいいところだ。

 ゲームを遊ぶと楽しい。ゲーマーにとって、これ以上に大切なことはないからである。

 LANパーティーは友だちの家に集まるのに似ている。ゲームしたり、マンガ読んだり、おかし食べたり、それぞれがばらばらのことをしているのに、何となく一体感がある。それの拡大版だ。お母さんがブルボンのお菓子を持ってきてくれそうである。

過去に参加したLANパーティーも別府おんせんLANも、基本的な部分は同じ。

 LANパーティーはどちらかと言うとコアなゲーマーに人気のイベントだ。だが、別府おんせんLANには開けた印象があった。

 要因のひとつは親子連れ率の高さだ。有料チケット制のイベントではあるが、お子さんは無料。体験プレイ席もあったので自由に遊んでもオーケー。取材中に何組も見かけ、30日はもっと多かったそうだ。

 子どもたちは何のてらいもなくプレイ席についてゲームを遊び、お父さんお母さんはスタッフさんと世間話なんてしながら見守る。のんびりした空気が流れていて、その中にはごく自然にゲームがある。すごくいい。

ふだんはコンソール系のゲームが好きなようだが、スポンジのような吸収力ですぐにPCの操作方法をマスター。

 最近は大きな会場で開かれるゲームイベント=eスポーツと考える人もいると聞く。LANパーティーがeスポーツかどうかは捉えかた次第だが、別府おんせんLANはeスポーツと結びつけているらしい。

 プロ野球も草野球も小学校の運動会も“スポーツ”だ。同じように、ゲームを使った真剣勝負も友だちどうしで楽しくゲームに触れ合うのも“eスポーツ”ということなのだろう。

 なるほど、そういう考えかたもいいなと思う。

べっぴょんがeスポーツをアピールするステッカーを配布していた。かわいい。

 本イベントのベースには、おそらく“C4 LAN”がある。

 C4 LANは年2ペースの大規模LANパーティー。2019年2月には、ファミ通.comに主催会社の社長とプロデューサーのロングインタビューを掲載している。

C4 LANは日本最大のLANパーティー。

 2018年12月開催のC4 LANには大分県eスポーツ連合もブース出展。LANパーティーの熱気を肌で感じた彼らが、C4 LANのDNAに温泉成分をブレンドしたのが別府おんせんLANなのだと思う。

 最近は地方のゲームコミュニティーがにわかに活気づいている。土地のよさを活かしたイベントで盛り上がりつつ、ほかの地域の参加者も巻き込んでいく。僕もまんまと巻き込まれた。

 巻き込まれたのは僕だけではない。「これはおもしろそうだな」と、協賛各社も前のめり。3社がブース出展し、ほかにもアイ・オー・データ機器、AOC、ロジクールなどが機材を提供していた。

C4 LANを支援するPCメーカー・サイコムがブース出展。同社はC4 LANで毎回のように足湯を提供している。別府との不思議な縁を感じる。
ゲーミングチェア・DXRACERもC4 LANスポンサーのひとつ。座り心地&寝心地がいいので、長時間のイベントに最適だ。
冒頭の射的ブースを仕切っていたのは的屋のおじさんではなく、C4 LAN主催会社ニチカレの社長・小林泰平さんだ。

 僕は「何かおもしろそうだな」という雰囲気に弱い。協賛各社も僕と同じで、ついつい引き寄せられてしまったのだろう。

 今後、別府おんせんLANを主催する大分県eスポーツ連合は何を目指すのか。動きが気になったので、会長の西村滉兼さんに話を聞いてみた。そしたらいきなり、

「やっぱりですね、ゲームはおもしろいなあと思って」

 という反応が返ってきた。

大分県eスポーツ連合会長の西村滉兼さん。冒頭で僕と卓球やってた人です。

西村滉兼

大分県eスポーツ連合会長。文中では西村。

ミス・ユースケ

この記事の担当者。大分県が誇る銘酒“いいちこ 日田全麹”が好き。文中ではユースケ。

西村ゲームを通して地元を盛り上げたい気持ちがあったんですよ。企画を具体的に掘り下げていって、大分といえば温泉だよね、と。

ユースケ町おこしみたいな感じですけど、別に自治体の職員というわけじゃないんですよね?

西村はい。ふつうのサラリーマンです。「できることは協力するよ」と、会社からも後押ししてもらってます。

ユースケゲームに温泉という資産を組み合わせて、お互いにメリットがあるような仕掛けを作りたかったわけですよね。

西村そうですね。地元を活性化させたり観光資源をPRしたい気持ちはあります。それと、子どもたちにゲームを楽しんでもらいたくて。LANパーティーは楽しいですけど、子どもが参加しにくいですよね。24時間(続くようなイベントだと)だと法律の問題もあるので、できるところからクリアしていきました。

ユースケ子どもにゲームを楽しんでほしいという気持ち、超わかります。

西村私なんかはファミコン世代で、小さい頃は一家に一台もゲーム機がなかったんですよ。で、友だちとか親戚の家に集まると、年齢関係なくいっしょに遊んだりするわけです。たまに大人も「ちょっとやらせてよ」みたいに入ってきたりとか。ああいうの好きなんですよね。

いまヘッドバンキングみたいに首を振ってる人がたくさんいると思う。僕もそうだった。

西村子どももゲームしたいと思うので、親御さんたちといっしょに来てもらって。別府なので旅行がてら行って見ようみたいなのもいいじゃないですか。日中は親子で遊んで、夜は温泉に入ったり旅館に泊まったりとか。

ユースケ観光プランの中にゲームイベントが組み込まれているイメージですね。会場の問題はどうですか? ここ(フェリーが発着する観光港の2階スペース)ってふだんはこんなイベントやらないですよね。

西村24時間イベントはまずないです。相談したら「新しいイベントで別府を盛り上げたいのなら」と賛同していただきました。

ユースケいつか別府市長(※)を引っ張り出してくださいよ。あの人ほどネットでの話題作りを活用してる自治体リーダーって珍しいですからね。

※別府市長の長野恭紘氏のこと。温泉テーマパーク“湯~園地”を期間限定オープンさせたり、別府市アピールのために自身が湯(You)Tuberになったりなど、話題に事欠かない。

ユースケこれからのイベント予定はどうなってます? 別の展開や会場も含めて、どんなことを考えてるか聞きたくて。

西村もちろん考えてます。今回みたいなイベントも、これはこれで続けたいですね。子どもや親子連れを中心にしたLANパーティーとして。それとは別に、より観光に特化したプランにも興味があります。旅館をジャックした地獄蒸しLANとか。

ユースケ名前に地獄が入ってるイベント、すごくいいなあ。地獄蒸しって温泉の蒸気で蒸す料理ですよね。わりと観光寄りなのかな。旅行会社と組んで、旅行のプランとして売り出すのもよさそう。

西村僕らが車でお迎えして、少し観光しながら旅館に向かって、着いたら「よし、ゲームするぞ」みたいなアイデアも出てますね。eスポーツツーリズムですよ。ステージのある宴会場で、お酒を飲みながらゲームしたり。

ユースケうわー、それもいい。日本初のLANパーティー会場は熱海の旅館だった説ありますからね。原点回帰だ。

 話を聞いているうちに、「大分県eスポーツ連合すげえな、別府市すげえな」と思えてきた。

 土地の資源を活かし、そこでしかできないイベントを開催できたら、それはすごく価値のあることだ。別府市が協力的というのもすばらしい。

 親子連れ・子ども向けLANパーティーという発想は目から鱗だった。親子で安心して参加できるイベントとして定着したら最高だ。ゲームの楽しさや親御さんの理解を次代に伝えていかないと、僕らゲーム好きの未来はないからである。

 地方コミュニティーの動きはおもしろい。つぎは6月14日~16日に広島県で開催される“瀬戸内LAN Vol.0”に興味がある。スケジュールは合うかなあ。

おじさんふたりの入浴シーンでこの記事を締める。