2019年4月24日に行われる大規模アップデートで“エピソード6”がスタートする、セガゲームスの『ファンタシースターオンライン2』(以下、『PSO2』)。新エピソードの開幕前に、エピソード6ディレクターの吉岡哲生氏にインタビュー。エピソード6の特徴や今後の展開だけでなく、2019年4月21日に行われる“ファンタシースター感謝祭2019 名古屋会場”や放送予定のテレビアニメについても聞いてみた。
吉岡 哲生(よしおか てつお)
『PSO2』が好きで、関係ない業種から転職して開発チームに飛び込んだという異色の経歴の持ち主。エピソード6ではディレクターを務める。
懐かしさを感じながらプレイできるエピソード6
――エピソード6が2019年4月24日からいよいよ配信となります。開発はいつ頃から始まったのですか?
吉岡着手したのは、2017年の4月です。コンセプトを固めたり、どういう方向性にするかといった叩き台の資料を作っていたのがその時期なので、エピソード5の配信よりも前には動いていました。
――エピソード5と6で“フォトナー編”となっていますが、最初から両エピソードにつながりを持たせる予定だったのですか?
吉岡そうですね。エピソードどうしがつながるというのは、初期段階から決まっていました。
――エピソード6のコンセプトは“原点回帰”ですが、これもその時期から?
吉岡そうです。まだ遊びの根幹の部分は決まっていなかったのですが、世界観に関しては早い時期から「宇宙に帰ろう」という話がありました(笑)。ですから、艦隊迎撃戦みたいなものをエピソード6では入れよう、というところからスタートした形です。
――その時期の構想と現在で、変わったところなどはありますか?
吉岡クラス自身に対してアップデートをするという部分の比率が上がったと思います。ほかにも考えていたことや、やりたかったことはあったのですが、エピソード5の配信を受けて、まずは既存クラスをしっかりアップデートしていこうという方針に変更しました。
――現状、言える範囲でかまいませんので、エピソード6の開発でこだわった部分、見てほしい部分などを教えてください。
吉岡コンセプトの“原点回帰”というところにも近いのですが、とくにエピソード1や2など、以前『PSO2』を遊んでいて、現在は少し離れている方も、「ああこの感じ、懐かしい」と思っていただけるように作っています。いろいろな伏線だったり、ストーリー上の設定なども「こういうことだったんだ」と、懐かしい部分を思い出しながらプレイしていただけると思います。
――エピソード6では、終の女神のコスチュームや座っていた椅子、閃機種など、三角形や菱形のイメージで、これまでとは異質なデザインになっています。こういったデザインになった理由は?
吉岡フォトナーの世界は、これまでよりもさらに進んだ超文明ですから、過去エネミーとの差別化というところから始まりました。それで、シンプルだけれども攻撃的に見えるという、ああいった幾何学的なデザインになっています。デザインだけでなく、アクション的にもこれまでになかった、見た目からはイメージしづらい技を使ってくるようなエネミーにしています。
ファントムともうひとつの新後継クラス
――新クラスのファントムですが、実装しようと考えたタイミングはいつごろなのですか?
吉岡エピソード6の企画段階で、わりと早く決まっていました。名前は決まっていませんでしたが、ヒーローと比べてダークな感じのクラスにしようと。
――ファントムのカラーは、黒や紺といった影を連想させるイメージです。これはフォトナーのイメージカラーである白との対比からというのもあるのですか?
吉岡むしろ逆で、どちらかと言うと、エピソード5との対比という形で決まった記憶があります。
――ヒーローとの対比、ということでしょうか?
吉岡そうです。正統派なヒーローに対して、ファントムは主人公としてはダークな形にしようと。先にそれがあって、敵側のフォトナーはその対比になるようにしたという感じです。ファントムの意匠はダークなSF感を表現するためにゴシックなテイストを取り入れていますが、ハンター男性のデフォルトキャラクター、通称アッシュのコスチュームは黒ですし、アークスのテーマカラーは青もしくはオレンジなので、原点回帰というコンセプト上のものではあります。
――ファントムが使用可能な武器種をカタナ、アサルトライフル、ロッドに決めた理由をお聞かせください。
吉岡法撃を扱うクラスを作りたい、ということで、ロッドが最初に決まりました。その後、軽装備なファントムのイメージに合わせて、取り回しのいいカタナやライフルを選びました。ユーザーさんのあいだで、射法(射撃&法撃)のクラスが欲しいという声も挙がっていたので、望んだ形で提供できているかどうかは難しいですが、ファントムは射法イメージで作っています。
――遊んでみて、ファントムは操作がテクニカルな感じという印象を受けました。
吉岡ヒーローのわかりやすさに対して、コンボやアクションの組み立ての楽しさを出せるように作りました。結果としてテクニカルになってしまったわけですが……。開発でも3種すべて使いこなすのは難しいと考えていますので、最初はなじみのある武器から使っていただければと思います。
――自身がサブクラスに設定できるというのがヒーローと異なる点ですが、これにはどのような意図が?
吉岡この仕様は、ヒーロー配信後に追加で決めたものです。ヒーローの場合、後継クラスに興味を持っていただけた方はいいのですが、既存クラスだけをプレイされる方には、新クラスが追加されても遊びの広がりが生まれなかったという反省がありました。ですから、ファントムでは、既存クラスで遊んでいる方も改めてサブクラスを考えていただけるように、自身をサブクラスに設定できるようにしました。
――ファントムをサブクラスに設定したときの特徴を教えてください。
吉岡ギアゲージの上昇スピードが上がったり、PPまわりにすごく手が入っていたりだとか、サブクラスとしてアクションが広がるスキルが多いのが特徴になります。
――サブクラスに設定することで、既存クラスの可能性の幅も広がるということですね。
吉岡我々のバランスチェックの幅が広がってしまったのが難点ですが、その分楽しんでいただけるかと思います。
――ロードマップで、さらなる新クラスの予告がありましたが、こちらもファントム同様、ある程度早い段階から決まっていたのでしょうか?
吉岡当時は後継クラスではなく、上級クラスと呼んでいましたが、上級クラスも3択くらいは欲しいというのがありました。エピソード5ではヒーローだけというのが決まっていたので、エピソード6になったら、残り2クラスを入れていこうと。
――その新クラスも打撃、射撃、法撃武器をそれぞれ使うことになるのですか?
吉岡趣向は変えつつではありますが、基本的な後継クラスのルールに則る形にしようと思っています。
――武器種は何にします?
吉岡さすがにそれは早いです(笑)。ですが、ユーザーさんが予想していた中では、近い組み合わせもありました。ヒーローもファントムも、それぞれ決まったルールに則って武器種を決めています。これは新クラスも同じですね。
――武器種の被りはないですよね。そう考えると、ある程度予想できそうですね。
吉岡そのあたりは、発表後に「なるほどな」と思っていただければ(苦笑)。
新たなA.I.Sを操る“終の艦隊迎撃戦”
――5月下旬に実装される予定の新しい緊急クエスト“終の艦隊迎撃戦”は、これまでのA.I.Sの戦闘とはガラッと変わっています。いちばん苦労された点はどこでしょうか?
吉岡全部ですね(笑)。その中でも、フィールドの広さは、ギリギリまで悩みました。ただ広くするだけだと密度が薄くなって、いろいろなものを置いているだけという感じになり、密度を高めようとすると、宇宙としては狭苦しい印象になってしまいます。そこのさじ加減が難しかったところです。
――操作自体もこれまでのA.I.Sとは異なる形になっています。
吉岡吉岡意外と『PSO2』のノウハウが使えないというか、別のゲームを作っているみたいな感覚で、操作に関してはかなり試行錯誤しました。いまのA.I.Sで、第8世代くらいだと思います(笑)。
――比較的自由に動けるようにしたのは、幻創戦艦・大和戦とは異なる戦いをさせたいという部分があったのでしょうか?
吉岡それはありましたね。ユーザーさんのあいだでも「幻創戦艦・大和戦みたいになるんじゃないの?」と懸念されていたので、そこは最初に超えないといけない壁でした。
――新しいA.I.Sの武装は、戦闘のシステムに合わせて決めたのですか?
吉岡宇宙戦闘に合わせて更新していった感じです。とくにマルチロックミサイルなどは、敵をたくさん出すので、こっちもたくさん倒すという感じですね。
――カウンターシールドを導入したのも、敵の撃ってくる弾が多いから、という理由ですか。
吉岡カウンターシールドについては、足を止めて守るターンを作って、戦闘にメリハリを付けたいというのがあって、攻防一体のアクションを導入しました。うまくカウンターが決まったときは見栄えがするし、おもしろい感じになっていると思います。
――先日のセガフェスで試遊できたのが、艦隊迎撃戦のラストの部分ということですが、その前にいろいろとあるということですか?
吉岡そうですね。試遊していただいたクエストとは別の艦隊戦としての終わりがあったりとか。いろいろと展開があります。
――最後のボス戦では、ロックオン状態で戦うことが多いと思いますが、ここの動きは調整に苦労されたのではないですか?
吉岡今回、A.I.Sのロックオンしたカメラをかなり調整しました。ロックオンして移動したときに、カメラをあまり振らないようにしています。上下も見られるようになっていますし、カメラの調整にはかなり手間が掛かりました。
――今回の“終の艦隊迎撃戦”は、ひとつのシップでプレイしたほうがうま味がある仕様になっていますが、こういった仕様にした理由は?
吉岡最近のレイドボスなどは、多シップ回しや多キャラ回しなど、報酬のために効率を求めたプレイになってしまっているところがあったので、展開としてひとりのキャラクターで攻略できるような仕組みを入れました。これも原点回帰に近いところがあり、昔のように、ファルス・アームをガンガン回すというような感じで、クエストをひとつのキャラクターでプレイしてみるのはどうだろうと、少し趣向を変えてみたところです。
――なるほど、ファルス・アームですか、懐かしい(笑)。では、今回のA.I.S戦で、吉岡さんのイチオシとなる部分はどこでしょうか? やはりカウンターシールドですか?
吉岡移動まわりのほうが、推したい部分ではありますね。既存の操作とは少し異なりますが、使いこなしたときには、上下左右思い通りに動けるように作っていますので、疾走する気持ちよさが感じられると思います。
――これはまだ先の話になると思いますが、防衛戦のように、艦隊迎撃戦のバージョン違いなどが出る可能性はあるのでしょうか?
吉岡クエストのシステムなどはまだお話しできない部分が多いのですが、宇宙を舞台にしたり、戦艦を戦闘フィールドとして使うというようなところは、またやっていけたらと思っています。
“終の艦隊迎撃戦”紹介ムービー
新難度“ウルトラハード”はキツいけどおいしい!?
――新難度のウルトラハードを実装することにした経緯を教えてください。
吉岡プレイヤーのアップデートが続いて、攻撃力が上がったので、エネミーもアップデートしようというのがいちばんですね。あとは、アイテムの質を上げるためにも、ひとつ上の難度を作ろうと。
――では、既存の難度よりも、ドロップはだいぶよくなると?
吉岡単純に、エネミーが強いので、倒す労力に見合った見返りを、ということですね。直接ドロップするものもそうですし、エマージェンシートライアルの報酬も全部見直しています。Eトライアルの報酬は、消耗品を入れるという基本ルールがあるのですが、ウルトラハードに関しては、S級特殊能力のカプセルなど、まったく別のものになります。
――これまでは、常設クエストの場合、緊急クエストよりもドロップが渋い、というのがあったと思いますが、ウルトラハードはどうなるのでしょうか?
吉岡最高レアリティのものがボロボロ出ると価値が崩壊しますし、それはそれでつまらないので、ユーザー間で取引ができるアイテムや、強い特殊能力など、いろいろと趣向を凝らしながらドロップを作っています。
――エネミーがシールドを発生させるギミック(エネミーシールド)も、エネミーのアップデートの一環なのですか?
吉岡シールドには、どのクラスでも必ず攻略できる弱点が用意されていて、シールドの弱点を突けばダメージが1.2倍になります。しっかり狙えば、より早く倒せますので、一概にエネミーを強化するだけのシステムではありません。
――フォトナー侵食核は、これまでの侵食核とどう違うのでしょうか?
吉岡吉岡白と黒の2種類があって、フォトナー侵食核・白のほうは、これまでの侵食核と同じように、ショットを撃つだけですが、黒の場合はプレイヤーの座標へ攻撃をしてきたりします。
――シールド、侵食核・黒を両方持っているエネミーが出る場合もあるんですよね。できれば出会いたくないですけど(笑)。
ただ、エネミーシールド付き、侵食核付き用の特殊能力のドロップもありますので、ドロップアイテム的にはおいしくなるんです。超化エネミーで、シールド付きで、侵食核が付いているようなヤツから★15武器がドロップすると、すごい特殊能力の組み合わせになると思います。
かゆい所に手が届く、細かい改修
――グループチャットが実装されることで、チームにとらわれないコミュニティー形成が可能となりました。このシステムを導入しようと思った理由は?
吉岡エピソード5運営中の実装を目標に、新しいコミュニケーション機能を実装
したいと考えて開発を進めていましたが、思った以上に開発が難航し、結果、エピソード6のタイミングに合わせて実装することになりました。チャットについては、いまの形以外にも、いくつか設計プランがあったのですが、最終的には自由度が高いいまの仕様がいいだろうと判断しました。いちばんの特徴は、ログアウト中でも会話ログが残る機能です。情報の流れが追いやすくなるのは、これまでになかった便利さですね。
――アークスミッションを導入しようとなった経緯を教えてください。
吉岡すでに★15武器を持っているような方たちにどうすれば追いつけるのか、ゲームの流れの部分をこちらからしっかり案内しようということです。クライアントオーダーでチュートリアルがあっても、受注しないとわからないですから。過去のクライアントオーダーやアークスロードの反省点を活かして、こういった自動受注型のシステムを作りました。
――アークスミッションや序盤のチュートリアル(序章クエスト)など、とくに今回はプレイヤーをガイドする役割のものが強化されていますが、このタイミングでこれらの改修に力を入れた理由は?
『PSO2』では、導入部分が分かりづらくて離脱する方が多いということがありました。新しいエピソードが始まりますし、今後放送される新テレビアニメを観てゲームを始めるという方も増えると思います。ですから、このタイミングで序盤のチュートリアルを見直して、作り直すことにしたんです。
――武器パレットにテクニック、サブパレットにPAを配置できるようにしたのは、ファントムを入れたことが理由ですか?
吉岡ファントムが理由というわけではありません。とくにコントローラーで遊ぶ場合にですが、必要なPAが入りきらなくて、パレットを切り換えて変えて戦う必要がありました。こういった操作のしづらさがアクション性の難しさにつながっていた部分があったんです。アクションの敷居を下げるという意味でも、カスタマイズ性を上げる方向で改善させていただきました。
――ドリンクの飲み直し、表示の設定など、細かい部分の改修は、かねてからやろうと思っていたことが、このタイミングでできたということですか?
吉岡新しいものを作るのに注力するので、改善系は難しいところがあるのですが、エピソード6では、アークスミッションのように、まずは土台をしっかりしようという考えがありました。そこで、遊びやすさや戦闘のしやすさ、といったところを1回改めて見直しました。とくにドリンクの飲み直しなどは、以前から話に上がっていたのですが、ズルズル先延ばしにしていたところがあったので、このタイミングでやろうと。
――ユーザーからの要望が多いものは、実現度も高くなるという認識でいいですか?
吉岡そうですね。そういった声はうまく拾い上げていきたいので、いろいろなところに書いてください。きちんと見ていますので。
テレビアニメのマル秘情報&感謝祭に対する想い
――先ほど、アニメの話も出ましたが、いまの段階で、お話しできることは?
吉岡あまりないですね(笑)。ただ、アニメのプロデュースサイドの話では、わりとハードなSFアニメ寄りになると。SFに造詣が深いベテランのスタッフが、エピソード1~3までを完全に把握したうえで作っているらしいです。その上で、伏線を入れたり、エピソードの取捨選択をして組み替えたりというアレンジがあるので、全部流れが分かっているという方でも、新しい気持ちで見てもらえるものになるようです。
――前回のアニメとは、また違う雰囲気になりそうですね。
吉岡そうですね。前回のアニメは、『PSO2』というゲームを知ってもらうという感じの作りでしたが、今回は、『PSO2』の物語を、アニメとしておもしろく見せる、というコンセプトです。
――気になる放送時期などは?
吉岡それはまだ(笑)。今後発表になると思います。
――そのあたりは、感謝祭などでおいおい発表されそうですね。感謝祭と言えば、2019年4月21日の名古屋
会場が目前ですが、見どころを教えてください。
吉岡難度ウルトラハードの話とか、クラスバランスの調整など、2019年4月24日の配信内容で、まだお伝えできていないところをお話しようと思っています。エピソード6直前でキャンペーンをやっていますし、エピソード6では序盤の改善もやっています。名古屋会場の放送は、「エピソード6をやってみようかな」という内容になると思いますので、楽しみにしていただきたいです。アニメに関しても、今後の感謝祭で新しい情報が出てくると思いますのでご期待ください。
――ちなみに、謎解きクイズの内容は、東京のものと同じなのでしょうか?
吉岡そうですね。僕はまだ解いていないので、名古屋では時間を見て、参加したいですね。その場でユーザーさんと協力して解いていければと思っています。
――では、ネタバレは厳禁ですね。
吉岡いまのところそのような流れはないようなので、この調子でお願いしたいです。
――あと、ジェネの公式コスプレイヤーさんも、名古屋会場から参加になるとうかがいました。
吉岡ジェネは『PSO2es』のコーナーあたりにいると聞いています。放送にも出る予定がありますので、期待していてください。
――最後に、エピソード6を待っていたファンに向けてひとことお願いします。
吉岡発表から配信まで、これほど長い期間をかけた大きなエピソードはなかったので、期待感は高まっている部分があると思いますが、その期待に応えられるように、開発一同頑張っています。また、ファントムに関しては、セガに入社する前から思い描いていたアクションがそのまま実現できた、個人的にも非常に思い入れが深いコンテンツです。ぜひ皆さんもエピソード6をプレイして、楽しんでいただければと思います。