GDC 2019開催初日に行われたHTC VIVEによるキーノート、“Developer Day Keynote: Platform Strategy for 2019”は、同社がVRのプラットフォーム戦略を明らかにすべく実施したもの。ハードの盛り上がりのためにはソフトが不可欠。開発者にソフトを作ってもらうためにはプラットフォームの充実がいちばん……との発想のもと、VRコンテンツのプラットフォームの方向性を示したキーノートだ。
プラットフォームというと、まず念頭に浮かぶのが、HTC VIVEのアプリストアVIVEPORT。HTC VIVE プレジデントのリカルド・スティーバー氏によると、それまで映像コンテンツなどを提供していたVIVEPORTは、2018年に満を持してという形でゲームコンテンツを配信。2018年第4四半期だけで、2017年全体の売上と肩を並べるという、驚異的な伸びを見せたという。その好調ぶりを牽引したのが、月額6.99ドルで、月に5タイトルまで遊び放題というサブスクリプションサービスだ。
HTC VIVEでは、この好調なサブスクリプションサービスをさらに推し進め、さらなる定額サービスとしてVIVEPORT Infinityを開始することを先日明らかにしたばかり。これは、月額12.99ドルで、その名の通りすべてのタイトルが遊び放題になるというサービスで、これにより、VIVEPORT Infinityの利用者は、VIVEPORTの3倍になると、スティーバー氏はことを見込んでいるという。
続いて、登壇したバイス・プレジデント・オフ・プロダクト・アンド・カスタマー・エクスペリエンスのビネイ・ナラヤン氏は、HTC VIVEが誇るデバイスとして、今後のフラグシップ機種と目されるアイトラッキング機能付きのVIVE Pro Eyeやナラヤン氏がVIVE Pro Eyeと「両輪になる」と期待するVIVE Focus Plus、さらには使いやすさを重視したVIVE Cosmosを紹介しつつも、「ハードウェアはしっかりとした“基礎”となるものであり、それをどう推し進めていくかはプラットフォームにかかっている」と、あくまでもプラットフォーム重視の姿勢を貫いた。
また、すぐれたプラットフォームに欠かせないのが開発環境の整備。ということで、ナラヤン氏は、VIVEハードウェアの性能を最大限に引き出してくれるSDK(開発キット)のVIVE SENSEや、モバイルVR向けのマルチプラットフォーム展開を容易にしてくれるVIVE WAVEを解説。このVIVE WAVEを最大化するために、半導体メーカーのクアルコムと提携したと説明した。
ここでゲストとして登壇したのが、クアルコムのヘッド・オブ・XRのヒューゴ・スワルト氏。スワルト氏は、同社のSoC(System-on-a-Chip)であるSnapdragon 835や845などにより、さらにVRデバイスも進化しつつあるのだということを語ってくれた。
ふたたび登壇したナラヤン氏が、「よく言われますが、VRは短距離走ではなくてマラソンです。とにかく走り続けましょう」と聴講者である開発者に語りかけつつ、最後に示した今後のビジョンがVIVE Reality System.さらには、クラウドVRやフェイシャル・エクスプレッション・トラッキング、アイトラッキングといった新テクノロジーにも取り組んでいることを明らかにした。
ちなみに、今回の講演はサブタイトルとして、“Your journey begins at VIVEPORT”と銘打たれていた。数々のVRデバイスがリリースされ、“VR元年”とも言われた2016年から3年。VRコンテンツ開発の旅路は、まだまだ始まったばかりと言えるのかもしれない。