コーエーテクモゲームスより、2019年3月20日に発売予定の『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~』。『アトリエ』シリーズと言えば音楽の評価が高いことで有名だが、本作でも、聴き応えのある曲の数々を楽しむことができる(なお、それらの楽曲を収録したサントラは、ゲームと同日に発売予定)。

 本記事では、『ルルアのアトリエ』に参加している作曲家のひとりである柳川和樹氏と、柳川氏が作詞・作曲を担当したアバンタイトルテーマ『Presea』を歌うボーカリスト、山本美禰子さんのインタビューをお届け。両名とも、『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~』のころから“アーランド”シリーズに関わっているだけに、最新作への思い入れもたっぷり。その胸の内をうかがった。

柳川和樹(やながわ かずき)

作曲家。過去にコーエーテクモゲームス ガストブランドにてサウンド業務を担当。現在はフリーとして引き続き『アトリエ』シリーズなどに携わっている。

山本美禰子(やまもと みねこ)

ボーカリスト・作詞家・作曲家。ロックバンド“ジギタリス”のボーカルとして音楽活動を始める。“アーランド”シリーズでは、すべての作品においてオープニングテーマの歌唱を担当。

もう一度“アーランド”シリーズで再会できる喜び

――『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』発売から7年以上、一度完結したと思われた“アーランド”シリーズが再始動すると聞いて、おふたりはどう思われましたか?

柳川まずは素直に驚きました。『アトリエ』では、一度大団円を迎えたものが再度動き出すことはなかなかないので、4作目を出すということは、それだけユーザーさんがアーランドを好きでいてくださっているんだなと。そして、そんなプロジェクトに関わらせていただけて、うれしかったですね。

山本今回のお話をいただいた当初は、“アーランド”シリーズだということはうかがっていなかったんです。お話を進めていく中で、じつはアーランド4作目であるということを知って、うれしい驚きがありました。アーランドのファンの方がたくさんいらっしゃることは知っていたので、皆さんの喜ぶ顔がまた見られると思うと、楽しみになりましたね。

――山本さんは、ゲームの歌を歌うのは『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~』が初めてだったんですよね。

山本そうなんです。それまではバンドで活動していて、ソロで歌わせていただいたことはなくて。ですので、私にとっても思い出深いシリーズですし、感慨深いです。

――柳川さんは、『アトリエ』の楽曲制作には『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』から参加されていますが、やはり“アーランド”シリーズは思い出深い存在ですか?

柳川思い出深いですね。 じつは、ガスト(当時)で最初に携わったお仕事は、『ロロナのアトリエ』のデバッグでした。ガストに入社したのが、『ロロナのアトリエ』開発末期のタイミングだったんです。デバッグをしながら、ゲームの仕組みや『アトリエ』シリーズの世界観などを学んで、それを活かして『トトリのアトリエ』ではサウンド職として携わりました。

『ルルアのアトリエ』OP曲の歌詞にはヒミツがある? アーティスト陣が音楽の聴きどころを語る! サントラは「アーランドの輪が広がった」と感じられる内容に_01
『ルルアのアトリエ』OP曲の歌詞にはヒミツがある? アーティスト陣が音楽の聴きどころを語る! サントラは「アーランドの輪が広がった」と感じられる内容に_02
『ロロナのアトリエ』オープニングより。物語の始まりを予感させる、幻想的なオープニング曲『Falling, The Star Light』を山本さんが歌った。

――『ロロナのアトリエ』は、柳川さんのキャリアの始まりとも言えるタイトルだったんですね。そんな『ロロナのアトリエ』の主人公だったロロナが、なんとお母さんになっているのが最新作『ルルアのアトリエ』なのですが、本作のどんなところに期待していますか?

柳川過去に『アトリエ』を遊んでくださった方にはもちろん喜んでもらいたいですし、今回から遊ぶ人にも楽しんでほしいです。過去作のキャラクターも勿論出てきますが、 主人公である新キャラクターのルルアの視点で出会っていくことになるので、新しいユーザーさんも入りやすくなっていると思います。従来のファンの方も、キャラクターたちがどう成長したかを違う目線で見られますし。

山本資料をいただいたときは、ロロナちゃんがお母さんになっているということに、まず驚きました(笑)。ここまでいけるのか! って。『ロロナのアトリエ』では、岸田メルさんのかわいらしい絵が皆さんに強い印象を与えたと思いますが、あのロロナちゃんがママになって、どういう活躍をするのか? というのが、個人的に期待しているポイントですし、皆さんも楽しみにされていると思います。それと、つぎの世代の子が主人公ということで、昔の世界観を引き継ぎながらも、新しい出会いや冒険がたくさんあるはずです。柳川さんがおっしゃった通り、“これまで”の方にも“これから”の方にも楽しんでいただきたいですね。

――では、『ルルアのアトリエ』の曲作りについて詳しくうかがいます。今回は、柳川さんのほか、中河健さん、阿知波大輔さんと、歴代のアーランド作曲家が大集合していますね。

柳川ロロナ』は中河さん、『トトリ』は中河さんと私、『メルル』は阿知波さんと私で作曲を担当したので、3人全員で同じ作品に関わるのは、今回が初めてなんです。ちょっとお祭り感がありますね。

――ロロナ・トトリ・メルルが3人とも出るなら、俺たちも3人だ……! と(笑)。

柳川(笑)。自分としては、久々に大先輩たちの中に放り込まれる形になったので、ちょっと緊張しました(笑)。

――曲の割り振りは、どのように行ったのですか?

柳川今回は、私が割り振りの草案を作って、おふたりの意見をうかがいながら調整しました。久しぶりのアーランドということもあって、ユーザーさんも各作曲家のいろいろな曲を聴きたいだろうなと思い、フィールド曲やバトル曲など、混ぜこぜにして担当しています。

――過去作の曲が、アレンジされて登場するのも見どころですよね。

柳川過去作から『ルルアのアトリエ』にいたるまでで、作品内で あまり変化していないものについては、アレンジも抑えめにしています。成長キャラクターですとか、環境が変わったフィールドなどは、その変化に合わせてアレンジを心掛けました。

山本聴くのが楽しみですね。

――アーランドの街の曲は、大人っぽいアレンジになっていますよね。

柳川その曲のアレンジを担当したのは中河さんですが、アーランドはもともと王国だったのが共和国になって、人のありかたも変わっているので、そういうところを表現されたのだと思います。

――柳川さんご自身が担当された曲の中で、思い出深いものは?

柳川新しい街であるアーキュリス関連の曲です。“アーランドらしさは残しつつ、ルルアたち新世代らしい曲”……というコンセプトのもとに、楽しみながら作らせてもらいました。それと、『メルル』から再登場したとあるフィールドなのですが、当時そのフィールドを担当したのは、若手のグラフィッカーだったんです。そして、曲を担当した私も若手で。つまり、若手が協力して作ったフィールドとなったのですが、先輩からお褒めの言葉をいただけて、うれしかったんですね。そんな思い入れのある曲を、今回もう一度作ることができて、感慨深かったです。

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アーキュリスで流れる「馴染みの道を走り抜けて」は、とくに後半の盛り上がりがすばらしい1曲。のどかな町並みを眺めながら、ぜひじっくり聴いてほしい。

『Presea』の歌詞にはヒミツがある

――アバンタイトルテーマ『Presea』は、柳川さんが作詞作曲を、山本さんが歌唱を担当されています。曲の聴きどころを詳しくお聞かせいただけますか?

山本まず、笛で始まるのが、アーランドらしくて「来たー!」という気持ちになりますよね。

柳川今回は、アーランドのオープニングらしさを強く意識して作りました。

――サビの旋律も素敵です。でもこのメロディー、歌うのは難しそうですが……?

山本この曲は、けっこうたいへんで……。

柳川あははは(笑)。

山本柳川さんの曲って、各所で「難しい」って言われているんですよ。maoちゃん(『トトリのアトリエ』、『メルルのアトリエ』でエンディング曲を担当)は「柳川くんはドSだよね」と言っていて(笑)。パッと聴くと、アレンジなどはとても自然に聴こえるんですが、歌っている身からすると、「えっ、ここでこう変わるの?」という点が多くて。チャレンジし甲斐のある曲でした。

柳川まろやかに表現していただいて、ありがとうございます(笑)。難しくしようと思って、しているわけではないんですよ。自然に出てきたアイディアを表現したら、こうなってしまったんです。「これは歌うのは厳しいかな……」と理性的に考えることもあるんですが、「山本さんだから大丈夫!」って(笑)。

山本長年の信頼関係のおかげということですね(笑)。

※アバンタイトルテーマ『Presea』は、『ルルアのアトリエ』プロモーションビデオ第2弾で、その一端を聴くことができる。

――(笑)。先ほど、アーランドらしさを意識したとおっしゃっていましたが、一度大団円を迎えたシリーズの新しいオープニングを作るにあたり、どんなところから着想を得たのですか?

柳川今回は“ロロナがお母さん”という点がフィーチャーされているので、『ロロナのアトリエ』の曲に近い形にするということを考えました。とはいえ、まったく同じにするというわけではなくて、元気なルルアっぽさももちろん表現して。歌いかたも、ロロナっぽさとルルアっぽさをミックスしてもらいました。

山本もっと力強く歌うこともできたのですが、この曲をいただいたとき、『Falling, The Star Light』(『ロロナのアトリエ』オープニング曲)で抱いた印象に近いものを感じたので、歌いかたもロロナに寄せながら、細かいニュアンスを決めていきました。

――歌詞はどのような内容になっているのですか?

柳川歌詞については、詳しく言うとネタバレになってしまうんです。ゲームをクリアーした後に、歌詞をもう一度見直していただくと、楽しんでいただけるような内容になっています。ぜひ、プレイ前とプレイ後に聴いてもらいたいですね。

――ところで、山本さんは以前、『Falling, The Star Light』、『Pilgrimage』(『トトリのアトリエ』オープニング曲)、『Cadena』(『メルルのアトリエ』オープニング曲)には“起承転結”の流れがあるとおっしゃっていたのですが、今回の『Presea』は、起承転結を経て、どんな立ち位置にあると思いますか?

“起承転結”の話の詳細は、2014年に行われた“ガストプレミアムライブ Vol.2 ~アトリエシリーズ&サージュコンチェルト~”会場にて行った山本さんのインタビューにて確認してほしい。なお、同記事では、maoさんが柳川氏の“変態っぷり”について語っており、そちらも必読だ。

山本『Falling, The Star Light』はロロナちゃんという14歳の女の子の目線、『Pilgrimage』はトトリちゃんを見守るお母さんやお姉ちゃんの視点、『Cadena』はメルルちゃんのイケイケで華やかな感じを意識して歌ったところ、だんだん起承転結の流れが出来ていきました。今回は、どの視点で歌うのかというのが難しくて……先ほど歌詞のお話が出ましたが、レコーディングのときに「これは、どういう歌詞なんですか?」と質問しながら、考えました。聴いた方が、その場の空気に溶け込めるような歌を歌えればいいな、と思って……何かを伝えるというより、聴いてくださった方をゲームの世界に引き込んでいくような、そんな歌にしたいと思って歌いました。

柳川歌詞だけを見ると、ちょっと視点がふわっとしているんです。やはりぜひ、ゲームと合わせて楽しんでいただきたいですね。

――ちなみにタイトルの『Presea』は、スペイン語で“宝石”、“宝物”、“大切なもの”といった意味ですが、これにはどういった意図が?

柳川『Cadena』がスペイン語でしたので、今回もスペイン語から選ばせてもらいました。スペイン語はカッコいい響きの言葉が多いですし。

山本『Presea』のサビには“あなたに届ける宝物”というワードがあるのですが、『Falling, The Star Light』の歌詞“あなたの宝物 早く届けたいな”と対になっていますよね。

柳川そことの絡みも、ちょっと狙っています。その“宝物”が何を意味しているかは……さあ、なんでしょう? プレイして考えてもらえるとうれしいです。

――『Falling, The Star Light』から約10年、どんな宝物の物語が描かれるのか、楽しみにしています。

柳川“アーランド”シリーズは、自分がゲームサウンドの仕事をする始まりとなったシリーズです。自分はこの10年で『アトリエ』に育ててもらって、いろいろな経験を積ませてもらって、もう一度“アーランド”シリーズに携われるのは本当にうれしいです。

山本同じく、私も『ロロナのアトリエ』でソロデビューさせてもらって……そのとき、まさか3作すべて歌わせていただけると思っていなくて、まずそれがうれしかったです。その後もいろいろな歌を担当させていただいて、“『アトリエ』の歌を歌っている”ということが、私の大きなアイデンティティになりました。この10年、歌手としても、ひとりの人間としても、ちょっとずつ違う歌を歌ってきています。『アトリエ』を遊んできた皆さんも、いろいろな変化があったと思いますが、そんな中でもう一度アーランドに再会できるというのは、本当に奇跡ですばらしいことだと思っています。私たちが10年で成長した姿を、『ルルアのアトリエ』で皆さんに見ていただきたいですし、ゲームの世界をより深く楽しんでいただけるとうれしいです。

『ルルアのアトリエ』サントラ情報

 柳川和樹氏、中河健氏、阿知波大輔氏が手掛けた楽曲をまるっと収録した『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~ オリジナルサウンドトラック』が2019年3月20日に発売。“アーランド”らしさはありつつも、アーキュリスという新しい舞台の登場に伴い、音楽面でも新しい要素をプラス。“アーランドの輪が広がった”と感じられる内容になっている。

『ルルアのアトリエ』OP曲の歌詞にはヒミツがある? アーティスト陣が音楽の聴きどころを語る! サントラは「アーランドの輪が広がった」と感じられる内容に_03

『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~ オリジナルサウンドトラック』
2019年3月20日(水)発売
3600円[税抜](3888円[税込])
発売:株式会社コーエーテクモゲームス
販売:ユニバーサル ミュージック合同会社

サントラ予約サイト:https://shop.salburg.com/product/lulua_comboset/music/