3D対戦格闘ゲーム『デッド オア アライブ』シリーズ最新作である、『デッド オア アライブ 6』(以下、『DOA6』)が、2019年3月1日に発売された。そこで、『DOA6』の発売前にプロデューサー兼ディレクターの新堀洋平氏に実施したインタビューを掲載。最後には、発売後に新堀氏に追加で聞いた質問もあるので、ぜひ読んでみてほしい。

『DOA6』の追加キャラクターは? バトルの調整は? 現状と今後について新堀洋平氏が語る。システムに関するマニアックなことまで聞いた『デッド オア アライブ 6』発売記念ロングインタビュー_22
『DOA6』の追加キャラクターは? バトルの調整は? 現状と今後について新堀洋平氏が語る。システムに関するマニアックなことまで聞いた『デッド オア アライブ 6』発売記念ロングインタビュー_07

新堀洋平(しんぼり ようへい)

『DOA4』ではバトルや、キャラクターに関わるゲームデザインを担当。『DOA5』ではディレクターとして、“やわらかエンジン”を開発するなどの功績を残す。『DOA6』では、プロデューサーとディレクターを兼任。

“揺れ”表現はさらに進化する!?

――本作は以前の発売日より、約2週間の延期を経て発売となりました。延期した期間中、具体的にどこを改善したのですか?

新堀 お待たせしたのは本当に申し訳なく思いますが、不具合の修正やバランス調整を入念にできたのは大きいです。オンラインベータテストを実施したので、ネットワークまわりの調整と、いただいた意見の反映も行えました。

 それと、セクシーな表現を追求できたことも。世界中で遊んでいただくことを目標にしてはいますが、セクシー表現は、やはり本作では欠かせない要素です。「もう少し柔らかくできないかな?」などと、ギリギリまでこだわりました。でも、まだ納得していません。

――というと、いわゆる“乳揺れ”表現などは、まだまだこれから進化すると……?

新堀 もちろんいまでも、しっかり揺れます。ですが、私が持つ“揺れ”へのこだわりや情熱みたいなものは、まだまだ盛り込めていません。ほかのアップデートとともに、揺れの表現を強化する気マンマンです!

――期待しています! ですが、『DOA6』の発表当初は、揺れの表現がないと思っているユーザーも多かったように思います。

新堀 そんなことは一度も言っていないのですが、“eスポーツを意識している”という発言がそう誤解されたのかもしれません。そして、実際に発表当初は揺れていなかったんです。

――それは何か狙いがあったのですか?

新堀 ゲームエンジンが完成していなかったんです。『DOA6』は、ゲームエンジンをイチから作り直しました。『DOA5』までは、初代『DOA』からシリーズごとに改良を重ねたエンジンを使っていたんです。ですが、増築に増築を重ねたエンジンなので、大きな変革を加えたら、全部が崩れてしまうような脆さがあって。

 ですから、一部の重要なパーツだけは残しつつ、新しいエンジンを作り上げました。ただ、これがあまりにも時間が掛かってしまって……。また、かすみの新衣装がピッタリとしたスーツなので、さほど揺れないというのも、誤解を招いてしまったのかなと。衣装の素材によって、揺れかたを変えるようにしているので、ほかの衣装ではしっかり揺れます。ただ、クールな衣装がデフォルトになっているのは、やはりワールドワイド展開を考えてのものです。ほかの衣装はもちろんセクシーなので、“脱いだらスゴい”的な感じなんです(笑)。

――実際、世界のプレイヤーたちからはどんな反応がありましたか?

新堀 これまで『DOA6』発売に向けて、世界各国のメディアを旅するかのようにPR活動をしてきました。セクシー表現にきびしい時代の流れというのはわかっていますが、それ以外にわかったことがあったんです。日本人から見ると、海外の方々は求めるものが、すごく極端なんですね。もちろん、全員ではなく平均的に見た場合に、ということですが、たとえば、暴力表現も突き詰めたものがいいですとか、セクシー表現も出ることろは全部出せ! くらいの感覚なんです。日本人は、こうちょっとしたチラリズム的な、微妙なニュアンスもイケますよね。

 そして、逆方向にも極端です。ほんの少しでもセクシーだと、ものすごく恥ずかしくて遊べないという人もいて。かすみのデフォルトの衣装は肌の露出や揺れがほとんどありませんが、それでもちょっと揺れるので、恥ずかしいと言われるくらいです。揺れ表現をオフにできることを説明したら、「これなら遊べる!」って言われたくらいです(笑)。ですから、今回暴力表現、揺れ表現のオンオフが大事なのだと思いました。

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――表現といえば、フェイシャル表現の強化も見どころですよね。なかでも“ブレイクブロー”での顔の歪みは衝撃的でした。

新堀 とくに男性キャラクターの顔はうまくいきました。バトル中の顔なども、男性キャラクター全員がすごくカッコいいんです。この表現、女性キャラクターではできないんです。表情をこわばらせて作りすぎるとシワが増えてしまって、たとえばキュートなマリーちゃんではなくなってしまいます。ですが男性キャラクターは、シワがあってもカッコいい。『DOA』シリーズは女性キャラクターの魅力はもちろんお伝えしていますが、今回は男性キャラクターにもぜひ注目してほしいです。

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――ちなみに、ブレイクブローで顔面がアップになって殴られる演出がありますが、マリー、ほのか、NiCOには導入されていませんよね。しかも、試遊版などの以前のバージョンには演出がありました。それはなぜですか?

新堀 プレイヤーから、「アップで殴られる姿を見るのはイヤだ!」という声が圧倒的に多かったんです。現状はアップになりませんが、またプレイヤーからの反応をうかがおうかなと思っています。少なくとも、東京ゲームショウ2018での試遊では、悲鳴が聞こえるほど、マリーやほのかが殴られる姿を嫌がる人が多かったです。また、“DOAフェス2018”(『DOA』シリーズの大会やコスプレコンテストなどを行う公式イベント)でも同じような声があり、とくに『DOA エクストリーム』シリーズのファンからは、彼女たちが殴られる姿を見て衝撃的だったという声もありました。

――ですが、もともと『DOA』は対戦格闘ゲームですよね?

新堀 『DOA5』ですらもう何年も前ですし、『DOA エクストリーム』シリーズしか知らない、という人も多くなりました。“DOAフェス2018”で、あやねがワープしてる!? ほのかの手から火が出てる!? と、驚くプレイヤーも多かったようです(笑)。

――そんなことが(笑)。今後、プレイヤーの反応があれば、アップにする可能性もあると。

新堀 そうですね。現状でもオフにできるので、見たくない人は暴力表現をオフにしてもらえればいいですし。

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――では、先ほどお話に出た、新しいゲームエンジンでの制作は、いかがでしたか?

新堀 これがまだまだ改良が足りず、正直難しいです。ですが、クオリティーの高いものは作れます。作りにくいまま、がんばって走ったという感じです。開発環境を改善して、よりよいゲームエンジンにすることも、今後の課題となっています。

――そんな中、開発していて思い出深いエピソードなどはありますか?

新堀 忘れられないのは、ゲージシステムを採用したときのことです。ゲージを絡めた攻防が『DOA』に合ってるのか不安だったのですが、いざ完成してみるとすごくマッチして。これはいけるぞと、自信につながりました。

NiCOとディエゴのコンセプトは?

――新キャラクターのNiCOは、どんな狙いで制作したのか、コンセプトを教えてください。

新堀 NiCOの目標は、マリー・ローズ以上の人気を獲得できるような、いままでにないキュートなキャラクターを作ることでした。原型が完成した後で、もっともっとかわいらしいNiCOを生み出すために、デザイナーたちを集めて話をして、髪型を変えたり、装飾を変えたりと、試行錯誤を重ねたんです。そして、いまのNiCOが誕生した瞬間は「よし、これでマリーにも負けない!」と叫びました(笑)。

――ストーリーモードのシナリオとしては、NiCOがかなりヒール役として絡んできますよね。

新堀 DOATECから分離した悪の組織“M.I.S.T.”が誕生しましたが、新たな悪役が必要だったんです。とある目的を達成するために天才的な科学者が暗躍する、という設定でしたから。

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――もうひとりの新ファイター・ディエゴは、かなりワイルドなキャラクターですよね。

新堀 ディエゴは、北米のプレイヤーの方をターゲットにしています。バックストリートでケンカをしていそうなキャラクターで、初心者でも遊びやすい能力にしました。そのおかげか、北米プレイヤーからの人気は、かなり高いですね。

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――最初から26人ものキャラクターを登場させたのは、相当な苦労があったのでは?

新堀 そうですね。ですが、みんな出してあげたかったんです。今回は、まずストーリーを語るのに必要なキャラクターを考える手法を取りました。そこで外せないキャラクターを当てはめていったら、現在の26人になったんです。いま思えば、多すぎましたね(苦笑)。何かを調整するたびに、すべてが26倍になって返ってくるので……。ただ、苦労したおかげで、プレイヤーの皆さんには、満足してもらえるものになったのかなと思います

――これまで登場していたファイターの中では、ゲン・フーがいませんよね。

新堀 物語的にチョイ役として出すことは可能でしたが、ゲン・フーほどの人物をそれだけのために出すのはどうだろうと、悩んだ末に登場させませんでした。ただ、何も決めていませんが、今後追加の可能性はあります。

――それは楽しみですね! それと、紅葉やレイチェルは、『NINJA GAIDEN』シリーズとのコラボキャラクターだったので参戦していない、ということなのでしょうか?

新堀 その通りです。『DOA エクストリーム』シリーズにも紅葉が登場しているので誤解されますが、彼女たちは『NINJA GAIDEN』シリーズのキャラクターなので、出すたびにしっかりと社内で確認を取るようにしています。それはリュウ・ハヤブサに関しても同じで、両方の世界で活躍するキャラクターですから、コスチューム含めて協議を重ねているんです。

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――そんな裏話があったのですね。ストーリーのお話も聞きたいのですが、今後エピソードが追加されることはありますか?

新堀 じつはシナリオやボイスなどを用意していたものの、都合により泣く泣くカットしたというエピソードが30個くらいあります。それをどこかで追加したいとは思っていますが、簡単に作れないからカットしたわけでして……。また、追加キャラクターたちにシナリオを用意するものすごい労力なので、できればやりたいとは思いますが、残念ながらお約束はできません。ただ、個人的にはどちらも追加したいとは思っています。これは本作がヒットすれば、実現できるかもしれません。

――予約特典キャラクターの女天狗については、すでにシナリオがありますよね。

新堀 それも本来はカットするはずだったものの、無理をしてでも入れることにしました。本来ストーリーラインには必要ないのですが、個人的にどうしても入れたくなってしまって。というのも『DOA エクストリーム』シリーズに女天狗が登場してから、とても人気が高くなったんですよ。セクシー系のキャラクターはやはり必要だろうと、どうにかして発売に合わせて登場させました。

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――デラックス版特典のフェーズ4も、同じような理由ですか?

新堀 じつは開発当初、発売時の参戦キャラクターは25人の予定でした。フェーズ4はシナリオでは最初から登場する予定でしたが、プレイアブルキャラクターではなく、コンピュータ専用のキャラクターにするはずだったんです。でも、やはりフェーズ4を使いたいという声が多かったですし、ゲームに登場しているのに遊べないのは、モヤモヤしてしまうだろうなと。ですから、本当にギリギリのタイミングでしたが、フェーズ4をなんとかプレイアブルキャラクターにしました。

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――なるほど。また、シナリオでは、ほのかがメイン級のヒロインで描かれていましたが、なぜほのかがメインに?

新堀 『DOA5』シリーズで語られていなかったということもありますが、じつは『DOA5 ラスト ラウンド』からこのシナリオの核の部分は考えていまして。じつは、『DOA5 ラスト ラウンド』にシナリオを追加しようとしていたくらいです。残念ながら叶いませんでしたが、今回『DOA6』で描くことができました。

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細かな部分について聞く!

――今回、“DOAクエスト”を導入した狙いを教えてください。

新堀 『DOA』シリーズはやり応えがあり、やり込めばやり込むほどおもしろいゲームです。ですが、多くの人はそのおもしろさを知る前に、諦めてしまうことが多いです。これまでコスチュームだけを集めたい、というプレイヤーはアーケードモードを何度もプレイして衣装を集めていましたが、それでは格闘ゲームとしてのおもしろさが伝わらないのではと。

 そして、これまでの『DOA』シリーズは、ゲームをもっと遊びたくなる仕組みになっていなかった、ということもあります。そこで、まずミッションを用意して、クリアーできない場合はチュートリアルで学んで、ミッションを再度クリアーするという流れを作り、しかも衣装の設計図が多めにもらえるという仕組みにしました。

――たとえば“エキスパールドホールドを決めろ!”というお題がありましたが、ゲーム側から答えを出さずに、トレーニングモードなどで技表を確認する必要がありますよね。一見わずらわしいのですが、“調べる”という行為があることで、楽しく学べるのだと感じました。

新堀 そうなんです。答えを先に出すのではなく、このキャラクターならどうなんだろう? と自分で探して、考えてもらうのも上達方法のひとつなんです。また、“特定の技をヒットさせろ!”というお題を用意しているのは、開発側からのオススメ技のひとつだからです。実際に当ててみて、どんな効果があるのかそこで確認してもらう。ですから、DOAクエストモードは、チュートリアルのひとつみたいなものなんです。

――チュートリアルと言えば、今回のチュートリアルは前作以上にみっちり詰まっていますよね。

新堀 ええ、わざわざメニューに“すべてクリアーしなくてもゲームは楽しめます”と書いたくらい、最後までやるのはたいへんなほど詰め込みました。それくらい、基本的な疑問はすべて解消できるように、すべてを入れ込みましたね。というのも、『DOA』シリーズは対戦格闘ゲームでありながら、対戦格闘ゲーム部分にあまり興味がないというファンの方も多いです。もちろん、対戦格闘ゲームが苦手だという人もいますから、それはしかたのないことです。ですが、そういった人たちも“対戦格闘”で楽しませたい、魅力を知ってほしいと考えているんです。見た目だけ楽しむのは、家の門をくぐったところです。対戦という玄関まで、ぜひ入ってきてほしいんですよね。

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――ゲーム部分もぜひ楽しんでいただきたいですね。ステージの話題になりますが、“DOAミュージアム”ステージは懐かしい要素がたっぷり詰まっていて、感動しました。

新堀 最初は『DOA』の集大成的なテーマパークを作ろうと思ったのですが、設計が難しかったことと、現在のDOATECのトップがエレナなのに、テーマパークではちょっとイメージと合わないと思いました。また、以前から“相手をジオラマの中に吹き飛ばして闘う博物館ステージ”を考えていたんです。そこで、アイデアをふたつ合体させて、“DOAミュージアム”にしました。

――これまでもメチャクチャなデンジャーはありましたが、プテラノドンやクラーケンが登場するなど、デンジャーはいままで以上に現実離れした演出になっていますよね。もちろん、『NINJA GAIDEN』と同じ世界観なので、そりゃ出るものは出るとは思いますが(笑)。

新堀 『DOA』の物語としても、遺伝子操作とかクローン体の生産をやってますから、世界観としてはSFなので、おかしくはないかなと。また、メカもののデンジャーはやり尽した感もあり、今回は“生物”をテーマにデンジャーを作りました。たとえば、押し返してくる観客たちのデンジャーも、そのテーマです。

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