先日、米国サンフランシスコのNiantic本社にて、ARモバイルゲーム『ハリー・ポッター:魔法同盟』のメディア向け体験会が開催された。その詳細リポートをお届けする。

 3月上旬、アメリカ・サンフランシスコのNiantic本社にて、ワーナー ブラザースとNianticが開発を進めるARモバイルゲーム『ハリー・ポッター:魔法同盟』(原題:Harry Potter: Wizards Unite)のメディア向け体験会が開催された。本記事では、体験会で明かされた最新情報とその印象をリポートしていきたい。

 その前におさらいしておくと、本作はワーナー ブラザース社内で“Wizarding World”(ハリー・ポッター魔法ワールド)を専門に扱うレーベル“Portkey Games”のモバイルゲームで、『Ingress』や『Pokémon GO』で知られるNianticと共同開発している最新ARモバイルタイトルだ。発表以来3本のティーザー動画が公開されているが、具体的なゲームプレイが分かる動画はなかった。今回の体験会では、それを初めて実機で体験することができたわけだ。

 なお、長い文章なんて読んでいられない!という魔法使いの皆さんのために要点をまとめてみると、以下のようになる。

1.時間軸は7作目となる『ハリー・ポッターと死の秘宝』のあと
2.ハリー・ポッター』と『ファンタスティック・ビースト』シリーズの両方を含む“Wizarding World”(ハリー・ポッター魔法ワールド)ユニバースが舞台
3.マグルの世界に“魔法の痕跡が現れる”という危機が発生、これを受けて魔法省が事態収拾のため魔法使いに協力を呼びかけている
4.プレイヤーは魔法使いとして“魔法の痕跡を回収”していく(戦闘を含むものもある)
5.ストーリー要素も充実。解明すべき謎もあり、「何年も楽しめるゲームにしていきたい」との意気込み
6.魔法使いとしての能力は、闇払い、魔法動物学者、教授の3つの職業を選びスキルツリーを開放して成長させていく
7.魔法薬調合も可能(ただし今回は体験できなかった)
8.高度なAR+機能を採用
9.マップで遭遇する内容は“時間・月の満ち欠け・気候・位置情報・場所の環境”に応じて変化する
10.『Ingress』の青・緑や『Pokémon GO』の赤・青・黄のような陣営は存在しない

 以上を踏まえた上で、さっそく体験会で明かされた情報について紹介していこう。なおゲーム自体の仕様はまだ最終版ではないため、今後変更になる可能性があることはご了承願いたい。

 体験会の最初に行われたプレゼンテーションでは、まず開発指針として“The magic is all around you(魔法は周囲に満ちている)”、“Realize your wizard potential(魔法使いとしての潜在能力を具体化する)”、“Stronger united(力を合わせればより強い)”の3つが紹介された。いずれも原作でダンブルドアが語ったセリフであるところに開発チームの愛が垣間見える。この3つがどうゲームに反映されているかは、以後各ゲーム要素を紹介する際にお伝えしていく。

ゲームスタートからの流れ

 プレイヤーは“魔法省からの招集要請に応じた”ところからスタートするため、まずは魔法使いとしての登録証を作成する。ここでは名前のほかに、自撮り写真も付けられる(もちろん顔にはメガネや帽子、杖といった魔法使いらしい小物をオーバーレイできるので顔がそのまま表示されるわけではないが、このあたりは国や地域によっては抵抗がある人も少なくなさそうだ)。

 一連のチュートリアル(音声とテキスト)が終了すると、さっそくワールドマップが表示される。『Pokémon GO』と同様の構図だが、そのビジュアルはいわゆるトゥーンレンダリング調であり、印象は大きく異なる。まだ開発中であるにもかかわらず、かなり滑らかに動作しており、独特の雰囲気があった。
 なお本作では、「音をしっかり聞ける環境でのプレイを推奨する」ということだったので、オープンイヤー型のイヤフォンなど外部の音とスマートフォンの音を同時に聞ける機器を使うのがベストだろう(体験会のビルドでは映画のBGMが流れていたため記者のテンションが上がったことも補足しておく)。

 マップに表示される要素の種類は『Pokémon GO』よりも多い。
 紫色の建物は“Inns”(宿屋)で、活動するためのエネルギーを回復できる。この他には各種魔法の痕跡(戦闘を要するものもある)、魔法薬の素材(タップで拾える)、“Greenhouse”(温室、訪れると一定時間ごとに素材を入手できる)、そして複数人で戦闘を挑む“Fortress”(要塞)が表示される。
 種類は多いものの形状に一貫性があるため、10分程度プレイすれば各要素はすぐに判別できるようになった。

 なお出現する魔法の痕跡や素材は時刻や月の満ち欠け、気候・位置情報・場所の環境によって変化するため、“外に出かける動機付け”のひとつになるだろう。「今夜は満月で晴れているから、△△あたりまで出かけて○○を採取しようよ」なんて会話が日常になるプレイヤーも出てくるかもしれない。開発指針の“魔法は周囲に満ちている”が実感できそうなポイントだ。

 今回の体験会では魔法の痕跡回収を中心にプレイしたので、以下ではその流れを紹介してみる。

魔法的存在を回収せよ

 本作のメインアクションは“マグルの世界から戻れなくなっている魔法的存在を助けて回収する”イベントだ。基本的な流れとしてはマップでシンボルをタップする→AR画面に遷移する→タップやスワイプなどのアクションで開放するという流れで完了となる。このAR画面は360度表示に対応しているため、たとえばデミガイズが出てきたら回り込んで後ろ姿を見る、ということも可能だ。『Pokémon GO』のAR+機能のように動く、と言えば分かりやすいかもしれない。

 時には危険な状況に陥っている生物・人物が見つかることもあり、そういった場合には魔法を駆使して救出する必要がある。たとえばつぎの例ではディメンターがハリーを邪魔しており、プレイヤーは“エクスペクトパトローナム”の呪文を示す記号をなぞって救出している。

 もっとも危険なイベントでは人狼などの相手が襲ってくるため、こちらも魔法で応戦しつつ退治する必要がある。この場合はタイムリーに防御呪文と攻撃呪文を使いつつ、魔法薬などのアイテムも使って撃破していく。個人的にはこのイベントがもっとも“魔法を使っている”感覚が強く感じられた。

 これらのイベントを無事クリアーすると、マグルの世界から魔法の痕跡を回収することができる。回収した魔法の痕跡はRegistry(登録簿)に記録される。Registryを充実させていくことで“Fortress”に挑戦するためのアイテムが手に入り、レベルアップに必要な経験値が獲得でき、レベルが上がればより強い魔法使いになれる…というのが基本的な流れだ。

 なお最初に示した要点でも記した通り、本作には職業(クラス)とそれに対応するスキルツリーが存在する。職業はいつでも選び直すことも可能だが、どの職業を選び、スキルツリーをどう進めるかは“自分がどのような魔法使いなのか”を表現する選択となる。開発指針“魔法使いとしての潜在能力を具体化する”が強く示されたポイントだ。

 今回の体験会では上記の要素をひと通りプレイした後、皆で“Fortress”(要塞)攻略をプレイし、ボーナス要素である“移動キー(ポートキー)”(シリーズでたびたび登場する“瞬間移動装置”、乗り物酔いを誘発するアレ)を体験して終了となった。なお、本作の移動キーは擬似的なVR空間へ入る窓を開き、“Wizarding World”ユニバースの世界をのぞき見しながら経験値などのボーナスを獲得できるというものだった。こちらもまだ試験段階と思われるため今後仕様が変更になる可能性はあるが、現時点でもスマートフォンの先にまったく別の世界が存在しているように感じられたことはお伝えしておきたい。

 なお、今回の体験会ではハンズオン体験に先立ってNianticからはCEO John Hanke氏、ワーナー ブラザースからはサンフランシスコスタジオのスタジオヘッドJonathan Knight氏が参加し、両氏が本作にかける思いを語る気合の入ったプレゼンテーションが行われた。プロの開発者として、そして『ハリー・ポッター』シリーズのファンとして真摯に開発に取り組んでいる姿勢は本作のクオリティーを期待させる上で十分すぎるものであったことを最後にお伝えしておく。

“本気で魔法使いの団結を作り出す”という決意が感じられる

 さて、概要の紹介が終わったところで、以下には記者による所感を述べていきたい。あくまで個人的な見解であることをご承知いただいた上でご笑覧いただければ幸いだ。

 最初にお話するのは体験会でもっとも驚いたポイント、“陣営がひとつ”という点だ。NianticのAR位置情報ゲームにおける陣営の数は『Ingress』2→『Pokémon GO』3→『ハリー・ポッター:魔法同盟』1と変化してきている。ゲームプレイに大きく影響を与える部分であるため、これが何らかの意図を込めた決定であるのは間違いない。

 原題『Wizards Unite』(団結する魔法使いたち)をそのまま解釈するならば、危機に直面した魔法使いたちが陣営に分かれて争っていては道理が通らないという側面もあるかもしれない。しかし“陣営がないほうがうまくいく”ゲームデザインが準備できているから陣営を分けなかったと考えるほうが説得力が高いように思える。
 グリフィンドールやスリザリンといった寮ごとに陣営を分ける選択肢がありながら、あえてひとつにしてきたところに“安易に対立を作るのではなく、本気で魔法使いの団結を作り出すのだ”という決意が感じられる……と言ったらナイーブすぎるかもしれない。それでも筆者としては、これが位置情報ARゲームというジャンルとストーリー要素、そして人どうしの交流のありかたを変えるための試みであってほしいと願う。

 つぎに、今回明かされなかったゲーム要素“魔法薬調合”にも触れておきたい。ハンズオン中にも何度か完成品の魔法薬は使用できたが、体力回復、魔力増強など戦闘における魔法薬の重要性は高かったため、ここはかなり重要なポイントになるのではないかと予想している。本作ではマップ上で収集した素材を用いて魔法薬が作れるようになるとのことだが、さらに精製時の行動やタイミングによって成果物が変化するという話も出ていた。おそらく一定のやりこみ要素として機能するだろう。

 一方で、『Pokémon GO』のポケストップ・ジム情報やポケソース情報が本作でも使われることになるのは間違いないため、おそらく都市部のほうが“魔法使いとしての強さを鍛えやすい地域”になることは避けられないだろう。だが魔法薬作りが協力プレイに大きく影響するということになれば、“レア素材がたくさん採れる地域”にも地の利が出てくる可能性があり、それが従来のタイトルで都市部とそれ以外のプレイヤー間で生じていた格差を多少なり縮めたり、互いに遠征する動機付けになったりすれば……と想像した。

 体験会終了後にNiantic CEOのHanke氏と少しだけ雑談する機会があったのだが、将来的には集めた素材の交換もできたらいいね、と話されていたこと、そしてNianticがつねに目指してきた“ゲームを通じて社会にポジティブな影響を与える”(運動や外出の動機付けとなる)はいまでもずっと意識していると話されていたことを踏まえると、(かつて田舎で『Pokémon GO』をプレイしていた身としては)どうしても期待したくなってしまうところだ。

 最後に、実際にビルドを触ってみての“手触り“について言及してみたい。2019年中のリリースを予定している本作だが、AR部分のパフォーマンス/精度は現時点でも申し分なかった。とくにARで交互に魔法をくり出して戦闘するパートは反応性のよさも手伝って爽快感と緊張感があった。今後ゲームデザイン面からの洗練化とパフォーマンスの改善が進んでいけば、2019年を代表するARタイトルになる可能性は高いと言える。

 プレゼンテーションをしてくれた方全員が興奮して早口になってしまうほど愛に溢れている開発チームが作っているのだから、期待しがいがあるというものだ。彼らの愛が大きな実を結び、世界が魔法に包まれることをいまから祈りたい。