『アイアンマン』や『攻殻機動隊』に出てくるようなパワードスーツに憧れた経験が、誰しも1度ぐらいはあるはずだ。重厚な鉄の塊を身にまとって大空を飛び回り、巨大な敵を前に大立ち回りしてみたくはないだろうか。
そんな子どものころの夢を叶えてくれるのが、カナダのデベロッパー・バイオウェアによるアクションRPG『Anthem(アンセム)』だ。
この記事では、2019年2月22日にプレイステーション4、Xbox One、PCで発売された『Anthem』のプレイレビューをお届けする。
自分好みにカスタムできる4種の”ジャベリン”
『Anthem』最大の特徴は、プレイヤーキャラが装着するパワードスーツ”ジャベリン”だろう。
ジャベリンには4つの種類が存在し、それぞれに得意な戦い方やステータス上の特徴が設定されている。以下簡単に、各ジャベリンの概要を紹介しよう。ジャベリンはゲームを進めれば最終的に4種類全て解放されるが、序盤のジャベリン選びの参考にしてほしい。
攻撃に支援なんでもござれの万能屋”レンジャー”
攻めも守りも余念がない、まさしくバランスファイターと呼ぶにふさわしいジャベリンが”レンジャー”だ。
全属性の武器を使用できる唯一のジャベリンであるため、装備の自由度は非常に高い。味方にバフをかけたりシールドを貼ったりできるのも万能屋たる由縁だ。
ほかのFPS・TPSで培った経験を生かしてプレイしたい人にとくにオススメのジャベリンだが、説明した通りバランスがいいため迷ったらレンジャーに決めるにも大いにアリ。
最強の盾にして最強の矛“コロッサス”
全ジャベリン中、もっとも耐久力が高いのが巨大な体躯を誇るジャベリン“コロッサス”。その耐久力を生かして味方をかばったり、味方の防御力にバフをかけたりとチームの防御面を一手に引き受ける頼れる盾役だ。
また、コロッサスのみメイン武器に機関銃やグレネードランチャーを装備できたり、近接攻撃の火力や攻撃範囲も優秀だったりと、攻撃面でも高いポテンシャルを持っている。
高耐久を生かして大暴れする姿は、まさしく“タンク”そのもの。ダメージを食らってもそう簡単にはやられないため、初心者にもオススメできる。
燃やして、凍らせて、感電させて、範囲攻撃の鬼”ストーム”
ワラワラと湧いて出る雑魚敵を一掃したいなら、選ぶべきジャベリンは“ストーム”で決まり。
ストームの火力源は炎・氷・雷の3属性の範囲攻撃。後述するコンボを活用した立ち回りを覚えれば、集団戦でストームの右に出るものはいない。
空中に長時間浮遊できるのも大きなメリットで、空中に攻撃できない敵に対しては一方的に攻撃を仕掛けることができる。しかし、一方で体力は全キャラクター中もっとも低く、高難度では“気がついたら死んでいた”というケースも起きやすいジャベリンだ。
体力の管理に気を配る必要はあるが、敵の集団を吹き飛ばす爽快感を味わいたいならストームを使ってほしい。
蝶のように舞い蜂のように刺すスピードファイター“インターセプター”
最後に紹介するのは、高い機動力が自慢の“インターセプター”。敵の攻撃を避けながら、高火力の近接攻撃で一気にダメージを与えるヒット&アウェイが基本戦法のジャベリンだ。
3段ジャンプと回避行動をうまく使えば、フィールドを自由自在に駆け巡れるようになるだろう。インターセプターの機動力は、クエスト中の謎解きやアイテム運びでも重宝する。
一方で、大型の敵には近接攻撃では思うようにダメージを与えられず苦労する場面も多い。使いこなすには少々慣れが必要なジャベリンだ。
ハクスラ的な周回要素は中毒性バツグン
『Anthem』はアクションRPGの中でもいわゆる“ハック&スラッシュ”と呼ばれるジャンルの要素が多分に含まれている。本作ではクエストを何度もクリアーしながら、自分のジャベリンを徐々に強化していくことが大きな楽しみとなる。
ジャベリンの強化要素はメイン武器(銃火器)やジャベリンごとの固有スキルに加えて、ジャベリンの基礎ステータスを強化できる“MOD”まで設定できる。
それぞれの装備品にはコモンからレジェンダリーまで6段階のレアリテイが存在し、当然レア度が上がるほどステータスも付与されている追加能力も強力になっている。
ジャベリンをより強くするためには、より難易度の高いクエストに挑まなければならない。そして強い敵を倒すためには、ジャベリンの強化が必要だ。強化とクエスト周回のくり返して少しずつ強くなるハクスラの醍醐味を、『Anthem』で心ゆくまで堪能しよう。
コンボシステムによって生まれる爽快感
本作のアクションを爽快感のあるものにしているのが、独自の“コンボ”システムだ。
ジャベリンの武器には基本的に“プライマー”か、“デトネーター”という性質が付与されている。プライマーはいわばコンボの始動技で、敵を炎上状態にしたり凍結状態にしたりと属性ごとの状態異常にできる。
プライマーで状態異常になった敵にお見舞いするのがデトネーター。状態異常状態の敵にデトネーターを叩きこむとコンボが成立し、通常よりも多いダメージが与えられ、ド派手なエフェクトが発生する(コンボの効果はジャベリンによって異なる)。
コンボは高難易度のクエストをクリアーするには必須のテクニックであると同時に、コンボを使わなくてもクリアーできる難易度であっても単純に“気持ちいい”ので、プレイにマンネリを感じてきたら、ぜひ積極的に使ってみてほしい。
気負わずサクサク遊べるマルチプレイ
『Anthem』は最大で4人までのマルチプレイに対応しているCo-oP型のゲームだが、「マルチプレイって味方に気を使うからなんとなく苦手」という方もいるのではないだろうか。
チームゲームにはシングルプレイでは味わえない魅力もあるものの、緻密な協力プレイが求められたり、マッチングに時間がかかったりとストレスの溜まるポイントも少なくない。
だが『Anthem』のマルチプレイは、マッチングも快適でプレイヤー間の協力プレイも積極的には求められない。マッチングはクエストに出発した時点でゲーム側が自動的にパーティを組んでくれるため、わざわざ部屋を立てたりする必要はないし、マッチング速度も快適だ。
そしてマッチ後のゲームプレイでも、よほどの高難易度でなければ“このタイミングで誰々がこの行動をしなければいけない”といった役割分担はいらず、それぞれ自由に敵と戦っていればクエストはスムーズに進行していく(もちろん、息の合った連携がとれれば、通常より効率よくダメージを与えられる)。
マルチだからといって、気負わなくていい。ただ、倒れている味方を見つけたら近寄って復活させてあげよう。
欠点も少なくないが、今後のアップデートに期待
ここまで『Anthem』の基本的なシステムや特徴を紹介してきたが、これだけでは本作の魅力は語りきれない。
ゲームプレイには直接関係ない背景の部分まで作り込まれた設定や世界観は、プレイヤーを『Anthem』の世界に没入させるきっかけになるし、わからない固有名詞が登場した際には、いつでもゲーム内で単語の意味を調べられるのも勝手がいい。
また、継続的なアップデートによって新しいクエストの追加やマップの変化が予定されており、長いスパンで遊び続けられるのも嬉しいポイントだ。
しかし、『Anthem』にも欠点がないわけではない。
クエストの進行中に求められるアイテム集めや謎解きは単調で退屈さを感じてしまう。そして、敵モンスターの種類や攻撃パターンが現時点ではまだまだ少ないのも、周回時に生じる飽きを加速させてしまう。
ハクスラ特有の中毒になるような周回プレイは『Anthem』の大きな魅力だが、いま挙げたいくつかのマイナスポイントは周回プレイの醍醐味を部分的に削いでいる。
とはいえ、『Anthem』は数ヵ月に渡るアップデートを控える言わば“第1形態”のような状態だ。多少の欠点は今後のアップデートで解消・改善されることに期待が持てる。
鈍く輝く金属製のジャベリンに身を包んで大空を飛び回りたい、大量の火薬と弾丸で大暴れしたい、昨今のスーパーヒーロー映画にも似た爽快なアクションを体験したい。
そんな方には『Anthem』ほどぴったりのゲームはないだろう。
■脳間 寺院(のうま・じいん)
ゲーム・動画ジャンルが専門のライター。京都生まれポケモン育ち、ボンクラオタクがだいたい友達。Twitterでも面白い動画やゲームについて情報を発信中。
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