プレイステーション4の日本発売5周年を記念して、SIE ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏にお話しをうかがった。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の家庭用ゲーム機プレイステーション4が、2014年2月22日の国内発売から5週年を迎えたことを記念して、SIE ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏にインタビューを実施した。ファーストパーティータイトルを取りまとめる吉田修平氏に、プレイステーション4の5年間の手応えを聞いた。

吉田修平(よしだしゅうへい)

SIE ワールドワイド・スタジオ プレジデント。1986年にソニーに入社。1993年ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)に配属後は、プレイステーションプラットフォームの事業に従事する。2008年より現職に就任。自他ともに認める大のゲーム好き。

ネットワークでユーザーをつなぎ、コミュニティーを築く

――国内でプレイステーション4が発売されたのが2014年2月22日(欧米では2013年11月15日)、そこから5年の時が経ち、台数の普及も順調です。発売当時に思い描いていた状況といまを比べてみて、いかがでしょうか?

吉田とくに日本市場での印象としてお話しすると、まずプレイステーション4というプラットフォームのコンセプトとして、ネットワークでユーザーさんをつなぎ、コミュニティーを築くというものがありました。SHAREボタンで自分のプレイを共有したり、いまで言うeスポーツのようなことをしたり、というものです。ただ、発売当時を振り返ってみると、ほかのアジア諸国や欧米に比べて、日本ではそういった盛り上がりはまだあまり見られませんでしたよね。

――国内ではeスポーツ的な流れが本格的に大きくなったのはここ数年という印象ですね。

吉田最初はプレイステーション4の開発コンセプトと日本市場の状況とのあいだには、かなり差がありました。当時はユーザーどうしがつながったり、たとえば大学生がみんなで集まって対戦をして盛り上がる、みたいなことが本当に起こるのか、という風に考えていました。ところが5年経ってみると、日本にもeスポーツ的な盛り上がりがきていて、ここまでになるとは正直想像していませんでしたね。

――時代が大きく動いている瞬間、という感じですね。

吉田そうですね。もちろんプレイステーション4がこの流れを引っぱった、という風には考えていなくて、やはり日本のユーザー層自体が変化してきたのだと思います。我々の世代、40代や50代の層はゲームと言えば『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といったシングルプレイでしたが、いまの大学生や20代の方たちは、『コール オブ デューティ ブラックオプス4』や『レインボーシックス シージ』、『オーバーウォッチ』といったタイトルを自然に楽しんでいます。そういった変化が表れてきたな、というのが日本市場を見て感じるいちばん大きな印象ですね。

――ある意味で、プレイステーション4の開発コンセプトが日本市場においても間違っていなかった、という形になった。

吉田世界と比べて特殊だった日本市場が、だんだんと世界的な部分とブレンドされてきたのかな、という感じがします。

――発売当時、プレイステーション4はSIEがユーザーに押し付けるものではなく、ユーザーとコミュニケーションを取りながら、いっしょに広げて育てていくもの、というお話をいろいろな方からインタビューなどで伺った記憶があるのですが、まさにその通りの形となった5年間だと思います。

吉田そう言っていただけるとたいへんうれしいです(笑)。当然ですが、プレイステーション3があってのプレイステーション4だったんですよ。プレイステーション3の開発コンセプトは、ハードエンジニアの夢のような超高性能、スーパーコンピューター的な技術主導のものでした。それに対してプレイステーション4は、最初からユーザーの使いやすさやディベロッパーの開発のしやすさを中心に据えたんです。

――スーパーコンピューター的な発想ではなくなった。

吉田もちろんハードも高性能ではありますが、そこを突き詰めるというよりも、ある程度値段を抑えつつ、ユーザーさんにとって使いやすい機能を入れていこう、という決めかたをしていました。当時ちょうど、ゲームのライブストリーミングやYouTuberのようなものの流れが世界的にあるのを感じていたので、SHAREボタンひとつでストリーマーになれる、という部分も推し出していました。

「プレイステーション4だからこれはできる」という考えかたになっていった

――5年が経ち、プレイステーション4自体も進化しましたが、ソフト面での進化も大きいと思います。SIEワールドワイド・スタジオという視点で見ると、この5年間はいかがでしたか?

吉田ワールドワイド・スタジオとしては、まずローンチはがんばりました。『キルゾーン シャドウフォール』や『RESOGUN』、『インファマス セカンドサン』を出して、そこから少しお休みする形となりました。我々はPCゲームを作ってはいないので、プレイステーション3世代からプレイステーション4世代に変わるときに、開発の規模がガツンと上がるんですよね。ローンチタイトルは発売タイミングが決まっているので、そこに合わせて実現性の高いものの中で、プレイステーション4のよさを出していこうという作りかたをしました。

――ローンチより後は考えかたが変わってきた?

吉田2年目以降は、たとえばプレイステーション4ならオープンワールドができるよね、という風に、「プレイステーション4だからこれはできる」という考えかたになっていくんです。当初のプランとしてはプレイステーション4発売の1年目、2年目、3年目とリリースしていく予定で制作していたのですが、2年目以降のタイトルは、作り込んでいった結果、発売が遅れるタイトルもありました。もちろん『Bloodborne(ブラッドボーン)』などのヒット作もありましたが、我々が出そうと計画していたタイトル数は用意ができませんでした。

――ただ、その後の『Horizon Zero Dawn(ホライゾン・ゼロ・ドーン)』(以下、『ホライゾン』)や『ゴッド・オブ・ウォー』、『Marvel's Spider-Man(スパイダーマン)』(以下、『スパイダーマン』)などのクオリティーや評価を見ると、そこで焦って出さなかったのはすごくいいことだと思います。

吉田そう思っていただけるとうれしいです。私としても、「プレイステーション4世代の作品を作るぞ!」と意気込んでじっくりと作っていたタイトルが出始めたことで、「ついにプレイステーション4が始まった!」という感覚がありました。当時インタビューなどで私の発言を見た人は「何を言っているんだ」と思われたかもしれませんが、私にとっては2017年がプレイステーション4発売の年、という感じがしました。本当はどのタイトルももっと早く出したかったんですけどね(笑)。

――想定のスケジュールより遅れてはしまったものの、目標からブレずに作り込んだ結果、高評価のタイトルが生まれた。

吉田そうですね。やりたいことは変えませんでした。ただ、それをプレイステーション4で実現するためにはどれだけの時間が必要なのか、という部分が未経験だったので、想定以上にかかってしまった、というところです。

――発売を焦らなかったおかげ、というのも変ですが、ここ1年、2年でワールドワイド・スタジオが出したソフトは軒並みクオリティーや評価が高いですよね。『スパイダーマン』などもそうですし、『Detroit: Become Human』(以下、『Detroit』)のようなタイトルも非常に好評でした。

吉田本当にうれしいです。あとは、最近はあまり発表した発売日を変えていませんよね(笑)。タイトルの規模が大きくなればなるほど、我々がαと呼んでいる最後の部分、コンテンツが入った状態からの調整が、ものすごく時間がかかるんです。ものによってはそこで1年ぐらいかかることもあります。ですので、そこをしっかりと見極めたうえで、自信のある時期に発売日を発表するようにしたんです。

――『ホライゾン』などは最初に想定していたよりも開発期間が延びてしまったというお話でしたが、『Days Gone(デイズ・ゴーン)』などの開発は順調に進んでいますか?

吉田開発でいちばん時間がかかるのは、まず新しいIP(知的財産)を作るときで、これはやっぱり試行錯誤もありますから、時間が必要になります。そしてもうひとつは、新しいプラットフォームで制作するなど、技術の進化があったときです。『ホライゾン』や『Days Gone(デイズ・ゴーン)』は、その両方が重なったんですよね。そのため、開発期間が長くなりましたが、続編を作る場合には、そういった期間はかなり短縮できます。あとは、ビッグタイトルの発売だけでなく、そのあいだに追加DLCなどをユーザーさんに提供できればいいな、と思っています。

――いま、ユーザーの評価などをご覧になって、率直にいまのゲームファンが求めているものを、ワールドワイド・スタジオは作れているかという点において、手応えはいかがでしょうか?

吉田そこはイエス、アンドノーみたいな部分がありますね。各タイトルには“お客さんにこういうものを届けたい”というコンセプトがあって、そういう意味では伝わっていると思います。『Detroit』がまさにそうだと思います。他社さんの例ではカプコンさんの『モンスターハンター:ワールド』についても、お客さんがまさにこれを待っていた、というものだったのではないかと思います。我々としては「お帰りなさい」なのですが、これまでポータブル機で出ていたものが、いきなり4Kのテレビで見ても遜色のない『モンハン』の世界が広がって、しかもオンラインでいっしょに遊べるようになったじゃないですか。

――発表時も発売時も大きく盛り上がりましたね。

吉田私もすごくうれしかったです。『バイオハザード RE:2』や『キングダム ハーツIII』もすごく評判がいいですよね。これはやはり、いまの世代にふさわしいタイトルとして、日本のメーカーさんやクリエイターさんが、ファンが多くいるタイトルをプレイステーション4向けに出すことができたというのは、私にとって「『ホライゾン』でプレイステーション4が始まった」、という感覚に近いのではないかと思います。

――誤解を恐れずに言えば、プレイステーション3のころは海外メーカーに差をつけられて、今後どうなってしまうのか、と騒がれていたのが、いまは逆に、日本のメーカーもやっぱりいいじゃん、という流れになっていますよね。

吉田そうですね。ただ一方で我々としては、評価をいただいて、売り上げも上がっているというのはよかった部分ですが、市場全体を見ると、いまはオンラインマルチプレイが主流になってきていますよね。この前もイベント会場の『フォートナイト』のブースに小学生がものすごく集まっていて、15歳以上対象なんだけどな、みたいな(笑)。そういった流れには、我々はあまり乗っていないですよね。

――確かに、逆にシングルプレイヤーのタイトルが多いですね。

吉田唯一そういった要素を取り込んでいるのが『グランツーリスモ SPORT』で、去年開催した世界大会は大成功でした。コンテンツとして、見ている人がすごく感動するイベントになりましたし、今後の自信にもつながりました。そこで得られた知見は、ほかのタイトルも含めて今後活かしていけると思います。

――そういった部分でまだファンの求めるものを作るためにできることは多い、と。

吉田もちろん、シングルプレイのタイトルも求められているからこそ、これだけ多くの方に購入していただけているので、それは続けていきます。ただ、まだまだやっていないこと、できていないこと、学ばなければいけないこともたくさんある、という認識です。