2019年2月15日に発売となるPS4&Xbox One用ソフト『メトロ エクソダス』をより楽しむために、シリーズの魅力を振り返る。

 スパイク・チュンソフトから2019年2月15日に発売されるサバイバルシューター『メトロ エクソダス』。本作は、ロシアの人気小説家、ドミトリー・グルホフスキー氏の小説『メトロ 2033』の世界を下敷きにした、シングルプレイ専用FPSシリーズの3作目となる。

 『メトロ』シリーズは、その重厚なストーリーと骨太なアクションで根強いファンを持つタイトルだが、前作の発売から6年ぶりの新作となるため、「『メトロ』ってどんなゲーム?」、「タイトルだけは知っている」という方もいるだろう。

 そこで、本記事では“『メトロ』の世界がいかに過酷か”というポイントにフォーカスを絞り、過去2タイトル『メトロ 2033』(以下、『2033』)と『メトロ ラストライト』(以下、『ラストライト』)の魅力を振り返っていく。

過酷ポイント1 人々が暮らすのは地下鉄構内。しかも勢力争いがある

 本シリーズはいわゆる“終末もの”で、舞台となるのは“最終戦争”と呼ばれる世界規模の核戦争により、荒廃してしまったロシアの首都モスクワ。人々は放射能で汚染された地上から逃れ、“メトロ”と呼ばれる地下鉄の駅を都市化して暮らしている。

 都市化されたとはいえ、地下鉄は地下鉄。人々はお世辞にも広いとは言えない駅構内で窮屈そうに身を寄せ合っている。彼らの主食は豚やキノコだ。駅によっては、“キノコのキノコソースがけ”という耳を疑うメニューの名前を聞くこともある。それがメトロなのだ。

家庭用では日本語ローカライズもバッチリ。吹き替え音声でNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の会話に聞き耳を立てて、世界観に浸るのもおもしろい。

 しかも、その食事にありつくための通貨は軍用弾薬。もう一度言うが、“軍用”の、“弾薬”である。そのため、少年が「1発くれたら道案内してあげるよ!」と朗らかに話しかけてきたり、職にあぶれた男性が「1発恵んでくれ」と催促してくることもある。

かつては演劇評論家だったという男性。早く自分で働いてくれよな。

 筆者はふだんゲームを遊ぶとき、守銭奴プレイに徹して無駄な出費は極力避けるのだが、本シリーズでは「少しでも彼らの生活が楽になるなら……」という思いから、要求されるがままに弾薬を渡していた。それほどまでにメトロの人々の過酷な生活にはリアリティーがある。

 ただ、男性のほうは1発渡した後に、文明崩壊前の自分がいかに身分の高い人間であったかを熱く語り、さらに追加の1発をねだってきた。だから働けって!

 しかし、メトロにおいては、そうしてコミュニケーションできるだけマシ。というのも、駅によって政治体制を始めとする特色が異なるのだ。たとえば、ファシズム政権の“第四帝国”なる組織が牛耳る駅がある一方で、“レッドライン”と呼ばれる共産主義の勢力下にある駅なども存在。しかも、住民が問答無用で攻撃を仕掛けてくる場合もある。そのうえ、それらの駅は交戦状態にあり、互いに攻撃し合っている。

 そんな、混沌とした状態のメトロで故郷の人々を救うために立ち上がるのが、寡黙な男・アルチョム。プレイヤーはアルチョムとなってさまざまな駅を訪れ、そこで出会う人々の思想に触れながら、重厚な物語を体験することになる。

過酷ポイント2 駅には好戦的なミュータントが容赦なく攻め込んでくる

 人々が地下鉄で細々と暮らす理由は、放射能による土壌の汚染だけではない。地上には放射能の影響で誕生した不気味なミュータントたちが棲息しており、人を見るなり牙をむいて襲い掛かってくるのだ。

 さらに、ミュータントは駅構内にまで侵入しようとするため、各駅は地上へと続くシャッターを固く閉ざし、数人体制で警備にあたっている。それゆえ、メトロに住む子どもたちは空を見ないまま大人になっていく。

 アルチョムも、そうして空を見ぬまま大人になったメトロ住民のひとりだが、『2033』では、“ダークワン”と呼ばれる人間の精神に干渉する特殊な能力を持った新種のミュータントを討滅するため、幾度となく地上へくり出すこととなる。

人に似た姿をした二足歩行のミュータント、ダークワン。『2033』では、まるでアルチョムの行動を監視するかのように、行く先々で現れる。

 地上に棲まうミュータントは基本的に非常に獰猛。ふつうの生き物ならば、銃声を聞いただけで逃げ出すところだが、ミュータントに後退の二文字はない。銃弾を食らっても逃げ出すどころか、ますます勢いよく食らいついてくる。

 何より厄介なのが、種類の多さだ。体格が大きくなったネズミのような外見の“ノリサス”や、敵を発見すると吠えて仲間を呼ぶ“ウォッチメン”、名前の通り悪魔めいた姿をした“デーモン”など、その種類によって行動パターンが異なるため、その特徴を覚えることは本シリーズをプレイするうえでもっとも重要なことだと言える。

駅への侵入率ナンバーワンのミュータント、ノリサス。たいてい群れで出現するので手を焼くことが多い。見た目が気持ち悪い。
大きな翼を持つデーモンは人を軽々と持ち上げて空へと飛び去る。動きも素早いため、ミュータントの中でもとくに手強い。見た目が気持ち悪い。

 だが、ミュータントごときにやられるアルチョムではない。リボルバーや、ショットガン、すぐオーバーヒートするが連射の効くサブマシンガン“バスタード”など、特徴的な銃火器を持って立ち向かう。

持ち運べる武器は最大3種類。武器の重量は移動速度に影響を及ぼし、重い武器ばかりを持っていると、敵から逃げづらくなる。

 武器の種類によって使用する弾薬は異なるうえ、持ち運べる最大弾数も決まっているため、どの武器で戦うかを考えながら戦略を組み立てるのも楽しい。

 ちなみに、一部の武器には軍用弾薬を装填して使用することも可能。軍用弾薬は通常の弾薬に比べて威力が高いので、強敵との戦闘ではとくに有効な戦法となるが、先述した通り軍用弾薬は通貨になるので、戦闘で使用すれば、それだけお金をばらまくことになる。よほどの“弾薬持ち”でなければ浪費に注意だ。

 戦闘は基本的に、ステージ内の敵をすべて倒してつぎのステージに進んでいくオーソドックスなスタイルだが、攻略法はひとつではない。なかには、敵に気づかれないようにすることで戦闘を避けられるステージもある。

 アルチョムが身に着けている腕時計を見れば、現在自分が敵からバレやすい位置にいるかどうか判断できる。これを目安にすれば、弾薬がないときは敵から隠れて進んだりすることも可能。逆に、あえて逃げも隠れもせずに男らしく正面突破を試みるのもまた一興だ。

過酷ポイント3 必要な物資は自分で調達! 自給自足がメトロの掟

 核の炎で包まれたメトロの世界ではさまざまなものが不足しており、人々は過去の遺産を頼りに暮らしている。当然、それはアルチョムにおいても同じで、必要なものは敵から奪ったり、落ちているものを拾ったりと、自分で現地調達しながら旅を進めていく。

 たとえば、空気汚染された地上に出る際に欠かせないガスマスクを手に入れるには、基本的に行き倒れた人のものや、使い捨てられたものを拝借するしかない。地下の闇を照らすヘッドライトの電力も、手動式発電機というガジェットを使って、自分で作り出す必要がある。

敵からの攻撃を食らってガスマスクが壊れると、たちどころに死んでしまう。フィルターも時間経過で劣化していくため、地上での探索は非常にスリリングだ。

 そうした現地調達は、プレイするうえで手間ではあるものの、けっして不快ではない。むしろ、敵がいない場所でもつねに適度な緊張感があるため、シングルFPSにありがちな、“プレイに慣れるにつれ緊張感が薄れていってしまう”という問題を解決するいいアクセントとして機能している。世界観に没入させるための仕掛けとしても非常にうまい。

『ラストライト』ではガスマスクの汚れによる視界悪化の要素が追加され、サバイバルの臨場感はいっそうリアルに。

 筆者の場合は、崩壊した地上の様子に見とれるあまり、“物資の枯渇”という見えない敵と戦うことになるケースが多かった。過去2タイトルを収録した『メトロ リダックス』(以下、『リダックス』)では、弾薬などの消耗アイテムが手に入りやすくなる“スパルタンモード”も選択できるため、敵との戦闘に集中したいという方はそちらのモードでプレイするのがオススメだ。

過酷ポイント4 登場キャラクターはむさくるしいほど男ばかり!

 旅は道連れ世は情け。アルチョムの旅は過酷だが、行く先々にはさまざまな頼れる同行者が現れる。正義感の強い男や、ミステリアスな男、愉快な男、共産主義の男……そう、アルチョムの同行者となるキャラクターの9割は男だ。

メトロの治安を維持する“オーダー”という組織の司令官であるミラーは根っからの軍人で、正義感の強い男。
ダークワンと人間は共存するべきだと訴えるミステリアスな男・カーン。メトロで起こる超常現象にも精通している。

 だが、そんな男くささも本作の魅力。男どうしのアツい友情や、固く結ばれる信頼関係が描かれるため、“漢”と書いてオトコと読ませるような作品が好きな筆者は、つねにツボを刺激されっぱなしだった。

 なお、先ほど9割と書いたように、登場キャラクターの全員が男というわけではない。『ラストライト』ではミラーの愛娘で、名狙撃手のアンナが旅に同行してくれるので、「きれいなお姉さんが見たい!」という方もご安心を。

 そうした個性的な登場キャラクターたちが織りなす物語は、ベストセラー小説を原作に作られているだけあってかなり濃密。アルチョムは旅の中で人々のさまざまな思想に触れるのだが、その多様な思想を通じて「どう行動するのが正しいのか」と、ゲーム内での行動について自然と考えさせられるような作りになっているのだ。

 また、死者の影や過去の幻影が見えたりする“アノマリー”と呼ばれる怪現象など、物語においてスピリチュアルな要素がキーになっている点は、終末ものの作品としてもユニーク。

 とくに文明崩壊前の過去の描写が秀逸で、探索中に道端に転がる亡骸を見つけたときにも、ふとその死に際に思いをはせて物悲しい気持ちになる瞬間があったり、ステージの風景からも物語を感じ取れる。

ステージではアルチョムの日記を収集アイテムとして入手でき、そのときどきの彼の心情を読み解くことができる。

アルチョムの過酷な物語はまだまだ続く!

 ここまで述べてきたように、『メトロ』シリーズは、原作小説の過酷な世界観をゲームシステムとしてうまく引き出すことに成功しており、物語を体験させる作品として非常にクオリティーが高い。

 筆者は本シリーズをプレイしてからその世界観のとりこになり、原作を一気に読破したプレイヤーのひとりなのだが、原作を読みこんだ後で改めてプレイしても、駅の閉塞感や、トンネルの不気味さなど、本シリーズの原作再現度はすばらしいと感じる。

 一風変わった銃器で戦うサバイバルシューターとしても、奥深い物語を体験するアドベンチャーゲームとしても楽しめる本シリーズ。アルチョムが蒸気機関車“オーロラ号”を手に入れ、ロシア全土を横断する旅に出る最新作では、これまで隠されてきた“新たな真実”が明らかになるという。モスクワの外には何が待っているのか、そして、旅の中でどのような物語が描かれるのか。間近に迫った発売が待ち遠しいばかりだ。