声優、アーティストとして活動する今井麻美さんの20thシングル『Believe in Sky』が、本日2019年1月30日に発売。同シングルの魅力を今井さんに語っていただいた。

 声優、アーティストとして活動する今井麻美さんの20thシングル『Believe in Sky』が、本日2019年1月30日に発売。表題曲『Believe in Sky』は、テレビアニメ『ぱすてるメモリーズ』の主題歌となっており、今井さんの歌手活動としては初のテレビアニメのオープニング曲となっている。

 また、今井さんは2019年に声優活動20周年、歌手活動10周年を迎える。そんなメモリアルイヤーの幕開けを飾る20thシングルについて、今井さんに語っていただいた。

今井麻美(いまいあさみ)

5月16日生まれ。山口県出身。『アイドルマスター』シリーズ(如月千早役)を始め、『閃乱カグラ』シリーズ(斑鳩役)、『超次元ゲイム ネプテューヌ』シリーズ(ノワール/ブラックハート役)など多数の作品に出演。また、そのほか歌手としても活動を精力的に行っている。(文中は今井)

――今回のシングルは、声優活動20周年、歌手活動10周年など、さまざまな記念が重なったものになっていますが、まず20枚目のシングルということについて、どのような印象でしょうか?

今井自分的には、2017年に発売した100曲入りのコンプリートアルバム『rinascita』のインパクトが大き過ぎたので、20枚目のシングルと言われても、あまりピンときていなかったんです。でも、ファンの方から「声優活動20周年、歌手活動10周年 、20枚目のシングル、どれもすごいですね」と言っていただいて、そのすごさを徐々に感じています。

――もうひとつの記念として、表題曲の『Believe in Sky』は、今井さんの歌手活動としては初のテレビアニメのオープニング曲となっていますが、最初にお話を聞いたときの心境はいかがでしたか?

今井正直にお話しすると「私で大丈夫ですか?」と何度も確認しました。というのも、『ぱすてるメモリーズ』は、とてもかわいい女の子たちがたくさん登場する、ちょっと電波チックなところがある作品なので、「私の声質で合うのかな?」と不安だったんです。もちろん、私は声優なので、本来はいろいろな声質で歌うことはできますが、歌手の今井麻美としては、これまでストレートに歌う機会が多かったので、そうすると作品のイメージに合わないのではないかと。でも、原作であるスマートフォンのゲームの内容をそのままアニメ化するのではなく、まったく違うオリジナルストーリーになると聞いたときに、私の声質でも大丈夫かもしれないと納得しました。

――これまでもさまざまな作品の楽曲を歌われてきましたが、そのように感じたのは今回が初めてだったんですか?

今井これまでの作品は、わりと自分の引き出しにあるようなものが多かったので、あまり思わなかったですね。『ぱすてるメモリーズ』は、わかりやすく女の子がたくさん出てくる異世界飛び系の作品なので、「声質も電波チックのほうが合うのでは?」という先入観があったり、「いまどきの勢いのある雰囲気が合うのかな?」とテンプレートに当てはめて考えちゃっていたんですよね。でも、『ぱすてるメモリーズ』は、いろいろなパロディーをやっていたりする攻めた作品なので、セオリー通りで考えちゃいけなかったんだなと気付きました。

――現在は1話が放送されたタイミング(※インタビュー実施時)ですが、ご覧になりましたか?

今井まだ、怖くて見ていないです。

――アニメのタイアップのときは、いつもそのようなことを話されていますよね。

今井そうなんですよ。今回も怖いからあとでこっそり見ようと思っていたら、忘れちゃいました(笑)。

――楽曲はすごくストレートで爽やかですね。最初に楽曲を聞いたときの印象はいかがでしたか?

今井「(キーが)高いなー」と(笑)。私のキーは広くて高めなのですが、そんな私が「高いよ……」と弱音を吐いたほどです。しかも、疾走感を追求していった結果、サビが「どこで息を吸ったらいいのでしょうか?」というくらい休みがないんです。私の楽曲の中にはそういった曲も多いのですが、レコーディングするときには、なるべく一気に録るようにしています。Aメロだけを録って、つぎにBメロというように部分ごとに収録すると、全部リセットされちゃうので苦手なんですよね。だから、できることなら最初から最後まで一気に録りたいのですが、さすがに私もスタッフさんもたいへんなので、「とりあえず1番を録りましょう」という感じで収録していくことが多いです。そんな中、『Believe in Sky』の2番のサビ前に1番にはなかった変則的なメロディーで追加されているんです。その部分の歌詞が「がんばれ私」なのですが、2番に入って「これからがんばらないと」と思っているところに、ピッタリな歌詞が出てくるので、毎回、ニヤッとしてしまいます(笑)。

――ライブだと一気に歌うことになるので、さらに辛くなりそうですね。

今井「がんばれ私」と歌いながら「そうだよね!」と自分でツッコミを入れたくなります。すごく爽やかな楽曲に仕上がったのですが、作品のことを詳しく知ってからは、この爽やかさが逆に怖かったです。「本当にこの爽やかさでよかったのか?」とか、「本当はもっと声を作って歌うべきだったのかも?」とか考えたりしました。

――でも、いつもとは歌いかたを変えているような印象を受けました。

今井そうなんです!

――具体的にはどういった部分を意識されたんですか?

今井いま世の中に出始めている、10代や20代の若い子が歌っている音楽をいっぱい聞いて、そのテイストを入れたりしました。世代にもよると思いますが、私たちが子どものころは、言葉をしっかりと歌うのがふつうだったんです。それでいて私は声優なので、言葉をしっかり伝えたいという部分がうまく噛み合っていて、そういった歌いかたを突き進んで、いままでやってきました。でも、洋楽に慣れているいまの若い世代の人たちは、日本語の歌でも言葉を洋楽みたいに当てはめていくんですよね。それが私からすると、羨望の眼差しみたいなところがあったのですが、これまで「人には向き不向きがあるからできなくてもいいんだよ」と自分に言い聞かせていました。でも、『Believe in Sky』に関しては、「そういった歌いかたが合うのでは?」と思って、いろいろ聞きましたね。とくに同じレコード会社の亜咲花ちゃんの歌いかたは、めちゃくちゃ聞いて研究しました。ただ、亜咲花ちゃんとまったく同じものにするのであれば、私ではなく亜咲花ちゃんにお願いすればいいということになるので、私らしさを残しつつも、若い世代の音運びを取り入れました。その影響で歌いかたがいつもと違うという風に感じていただけたのなら、作戦通りでうれしいです。

――いろいろ研究されたんですね。

今井世代だけではなく、いわゆるJ-POPの歌手の方と声優さんでも、ぜんぜん発音の仕方が違うんですよね。だから、今回は声優さんではなく、歌手の方の曲をたくさん聞きました。それがすごくおもしろくもあり、ないものねだりになってくるのかなと。それこそ、先日、森口博子さんにお会いしたときに、「声優さんだから、すごく言葉が伝わってくるわ」とおっしゃっていただいたんです。それが声優兼歌手の特権であり、弱点であるとも思っています。うまく使い分けられる方もいらっしゃると思いますが、私は不器用なので、自分なりのやりかたを追求しちゃうんです。でも、今回は若い世代の声の出しかたを研究して、意識的に変えてみました。はっきりと言っていることが聞こえなくていい歌いかたなんですよね。英語と日本語が入り混じっていても違和感がないというか。そういったこともあり、今回はすごく楽しい収録でした。

――先ほども少し話題に出ましたが、聞いてほしいポイントなどはありますか?

今井やっぱり、「がんばれ私」が最高に好きですね。本当にニヤッとしちゃいます。あと、作詞家の森由里子先生に聞いたのですが、1番は作品に沿った歌詞、2番の歌詞は私を想像して書いてくださったということなんです。それで、『Believe in Sky』のMV撮影をする数日前に由里子さんとお会いしたときに、どうして私がMVで自転車に乗ることになったのかをすっかり忘れていて、「私は自転車に乗れないのに、MVの撮影で乗らなきゃいけないんです……」と話してしまいまいて。そしたら由里子さんが「私が自転車って歌詞を書いたからだ」と気にされてしまったので、これは事故なく乗りこなさなくてはいけないと思いました。

――なるほど。確かに2番の歌詞はすごく今井さんらしい感じがします。

今井由里子さんがあえてそうしてくださったんですよね。しかも、それが違和感なく混ざっているという感性が本当にすごいなと思いました。

――1番のサビに“信じるもの”や“守りたいもの”という歌詞が登場しますが、今井さんにとって“信じるもの”や“守りたいもの”はありますか?

今井仕事の面で言うと、私たちは声優であり、歌も歌わせていただいているという、ある種、特殊な環境下にあると思います。そんな中で、声優は求めていただけるから仕事があるんです。でも歌手活動のほうは、スタッフさんの協力が絶対的に必要ではありますが、自分たちが歌いたいから歌わせてもらえるんですよね。その受身であり、能動的であるという仕事のスタンスが私はすごく大事だなと思っています。声優の仕事はどんなに私が「やりたい!」と言っても、役に合わなければ起用してもらえないですし、オーディションに受からなければ仕事もなかなかありません。そういう環境下にあるからこそ、歌手活動のときは「私の歌を聞いて」というメッセージを伝えていくべきだと思いますし、そのバランス感覚をつねに大切にしていきたいです。私がこうしてお仕事をさせていただけるというのは、絶対的に自分の力だけでは不可能ことなので、いっしょにお仕事をさせていただける方への感謝の気持ちや恩返しの気持ちは、何年経っても忘れたくないと思っています。と、真面目にお話しましたが、私生活で守りたいものは猫ですね(笑)。

『Believe in Sky』Short Music Video

――(笑)。MVの撮影はいかがでしたか?

今井めちゃくちゃ楽しかったですね。ただ、撮影の予定日が香港でのライブの数日後で、その日だけ天気予報がピンポイントで雨だったんです。今回は外での撮影なので、香港滞在中にスタッフから「撮影日を変更しましょう」と連絡があったのですが、その候補日が香港から帰国した翌日で「さすがに死んじゃう」と……(苦笑)。それで、最近はライブやイベントの日が晴れていることが多かったので、「私の晴れ女っぷりをなめるな」と撮影日を変更しなかったんです。そしたら、撮影当日は天気予報が雨だったことをまったく感じさせないほどピーカンで、テンションが爆上がりでした(笑)。『Believe in Sky』にピッタリな空で景色も最高でしたし、自然が大好きな私としては久々にめちゃくちゃ楽しい撮影でした。

――晴れ女パワー炸裂ですね(笑)。自転車に乗るシーンの撮影は大丈夫でしたか?

今井おもしろかったですね。先ほど自転車に乗れないとお話しましたが、じつは乗れないわけではないんです。初対面の人にわかりやすく説明するために、「自転車に乗れないんです」と言うことが多いのですが、正確には運転することは可能という感じです。ただ、判断力が弱かったり、まっすぐ走るのが得意ではなかったりして、前に人が歩いていたら自転車から降りないと怖くて抜かせないので、都会では乗らないと決めて20年くらい乗っていないだけだったんです。

――そうなんですね。

今井でも、PV撮影のときにたまたまADの女の子も自転車に乗れなかったんです。その子がすごくノリのいいかわいい子で、カメラのリハーサルで私より先に自転車に乗ったのですが、「私も自転車乗れないんですけど、私が乗れたので今井さんも大丈夫です」と軽い感じで話してくれたのが印象的でした。その後も、お互い自転車に詳しくないから、ギアがいちばん重くなっていたことに気付かないまま撮影をしていたり(笑)。だから、下りでは死ぬほどスピードが出て、逆に上りでは押すだけでもめちゃくちゃ重くて。

 それでふたりで「自転車ってたいへんなんだねー」と能天気に話していたときに、私がふとギアがあることに気付いたんです。ただ、ギアの数字が大きいと重くなるのか、それとも軽くなるのかまでわからなかったので、ADの子と「どっちなんだろう?」と討論していたら、隣りに居たカメラマンさんに「変えてみればわかるでしょ」と冷静につっこまれました。それで変えてみたら、いちばん重くなっていたという。しかも、ギアが重くなっていただけでもたいへんなのに、あの自転車はサドルが高いので足がまったく付かないんです。とくに乗り始めがたいへんで、毎回ふらふらしていたので、MVでは乗ってから少し経った後の安定してきたタイミングの映像が使われています。でも、撮影の後半でギアに気付いてからは、スッと乗れるようになって、私のほうから「もうちょっと自転車に乗ったほうがよくないですか?」と監督に提案したのですが、「もう十分です」と言われてしまいました(笑)。

――映像では笑顔で楽しそうに乗っていましたが、裏ではそんなことがあったんですね。衣装は2着登場しますが、それぞれコンセプトなどはあったのでしょうか?

今井いつもライブの衣装を作ってくれている、おりえちゃんのインスピレーションです。私は基本的におまかせの部分が多くて、今回も靴だけは自分で用意しました。そのほかの部分は、『Believe in Sky』を聞いた、おりえちゃんがイラストを送ってくれて「最高です!」と返信しました。ジャケットも既製品のように見えるかもしれませんが、オリジナルなんですよ。

――2曲目の『懐かしい街』は、今井さんとも関わりの深い森由里子さんと椎名豪さんのタッグによる楽曲ですね。最初に聞いたときの印象はいかがでしたか?

今井この楽曲は、THE・森さん、THE・椎名さんという感じに仕上がっていて、聞いたときは「素敵!」と思ったのですが、聞くのと歌うのとでは印象がガラリと変わるくらい難しい楽曲なんです。

――2018年12月28日に東京国際フォーラムAで開催された“Composers Summit Concert 2018”でも歌われていましたね。

今井安請け合いしちゃったことを後悔したくらい本当に豪華なライブでした。じつはフルオーケストラで歌うのは、今回が人生で初めてだったんですよ。本当にすごかったのですが、当日は余韻に浸る余裕もないくらい必死でした。そのリハーサルのときに『懐かしい街』をライブ用にアレンジしてくださった方が「この曲は、たいへんなのがわかってもらえないのがたいへんよね」とおっしゃっていて、その言葉が私にズバーンと刺さりました。「そうなんです! 聞いているとそうでもないように聞こえるんですけど、なんでこんなにたいへんなのかわからなくて、いまは楽曲に振り回されているので、本番までには歌いこなします」と伝えたら、笑顔で応援してくださって、本番ではすごく気持ちよく歌えました。これから先もいろいろなところで歌っていくことになる楽曲だと思うので、もっともっと自分のものにしたいなと感じさせるハードルの高い曲です。

――初披露がフルオーケストラだと、次回以降のハードルが上がりそうですね。

今井本当にそうなんですよ。正直な話をすると、私はすべてにおいて、わりとフワッとしているので、リハーサルまでちゃんと理解していなくて。ほかの方はフルオーケストラで、私はバンドだけなんだと思っていたんです。それで、能天気に「ほかの方の出番が楽しみだな。ワクワク!」と思っていたら、私の曲もフルオーケストラで演奏してくださると聞いて、目が点になりました(苦笑)。でも、逆にあんまり理解していなくてよかったなとも思いました。このオファーをいただいたのが、2018年の夏ごろだったのですが、もしそのときからフルオーケストラだと知っていたら、それからずっと不安になっていたと思うので、直前に知れてよかったなと。

――人生初のフルオーケストラはいかがでしたか?

今井あまりにも皆さんの演奏がお上手なので、イヤモニをしてちゃんと混ざった状態で聞いたときには、CDと遜色がないほどのクオリティーなんですよね。おこがましい話ですが、今回、初めてフルオーケストラを体感して、自分に合っていて楽しいと感じちゃいました。上を知るのはあまりよくないかもしれないですね。ほかのときに寂しく思っちゃいそうで怖いです。やっぱり体感する音がすごいんですよ。たとえイヤモニをしていても、後ろからリアルな音が響いてくるのが本当に気持ちよくて、実力以上のものを引き出せている気がしました。リリースイベントでは、カラオケで歌うことになると思いますが、それでもその感覚を再現できるくらいまで歌えたらいいなと思っています。

――本当に贅沢な時間でしたよね。

今井ただ、当日は舞い上がり過ぎていたので、怖くて誰にも感想を聞けていないんです。ボイストレーナーの先生には動画をお見せしたら、すごく褒めてくださって、「みんなから褒められたんじゃない?」と言っていただきましたけど、ほかの出演者の方も本当にすごい方ばかりだったので、生きた心地がしなかったです。ただ、あの空間は本当に楽しくて、椎名さんからも「懲りずにいっしょにやりましょう」と言っていただけたのがうれしかったので、また機会があればぜひ参加したいですね。いまの私の力だけでは絶対にできないですし、一生の思い出にもなりました。おそらく、『懐かしい街』を聞くたびにあの日のことを思い出すんでしょうね。

――楽曲の話に戻りまして、過去に森さんの椎名さんのタッグで制作された楽曲としては、『旅人』がありますが、『懐かしい街』とはかなり方向性が違いますね。

今井『旅人』は、私がフォルクローレみたいな曲がいいとプロデューサーにお願いして、私の好きなテイストの楽曲を椎名さんに作っていただいたという感じでした。

――椎名さんが作曲を担当している今井さんの楽曲というと、これまで『オーロラの音』以外は、『Hasta La Vista』、『旅人』、『little legacy』というアップテンポな楽曲でしたよね。ただ、今井さんがキャラクターソングとして歌われてきた椎名さんの楽曲はスローテンポなものが多く、印象がぜんぜん違いますが、今井さんの中で椎名さんはどのようなイメージですか?

今井確かに椎名さんに書いていただいた、キャラクターソングは、ゆったりとしたイメージがあると思うので、私の演じているキャラクターを通じて、椎名さんことを知った方には、アップテンポな楽曲は珍しく感じるかもしれないですね。でも、ふだんの椎名さんはわりと攻撃的な楽曲が多いんです。私としては椎名さんと言えば、クラシック系の楽器を使っているけど攻めているというイメージが強いので、アップテンポな楽曲に違和感はなかったですね。ただ、私は椎名さんの枠にはまらない感じが、いちばんすごいところだと思っていて、そういう意味では、壮大なバラードも椎名さんの得意分野のひとつではあるので、どちらも椎名さんらしいなと感じます。

――先ほど、『懐かしい街』は難しいということを話されていましたが、具体的にはどのように難しいのでしょうか?

今井それが私にもわからなくて。おそらく、脳の中で「こういう風に表現したい」と思っているものを、再現することが難しいんだと思います。そのくらい技術やテクニックが必要とされているのですが、それをテクニックだと気付かせてしまうと、やさしい感じが出なくなるので、楽曲の雰囲気に合わないんです。ポイントは、そのせめぎ合い部分なのかなと思うのですが、「どこが?」と聞かれると難しいんですよ。だからこそ、先ほどお話したように、音楽の専門の方に「たいへんなのがわかってもらえないのがたいへん」と言われときには、青天の霹靂でした。

――こちらの楽曲で印象的な歌詞はありますか?

今井『懐かしい街』は、『夢現Re:Master』という作品のエンディング曲で、サビの前に「夢か現?」という歌詞が出てくるのですが、最初は読めなくて。もちろん、作品の資料はいただいていましたが、振り仮名がなかったので、作品のタイトルも、ずっと“むげん”だと思っていたんです。そんなときに「夢(ゆめ)か現(うつつ)?」と読むことを知って、「なんて素敵な表現なんだろう」と感動しました。タイトルの読みかたも『夢現(ゆめうつつ)Re:Master』で、すごく素敵だと思いますし、その印象的な言葉を歌詞に入れてくださっているのがとてもお気に入りです。

 でも、私はこの曲の歌詞が切ない恋が破れた話にしか読み取れなくて、心配で何度もプロデューサーに確認しちゃいました。『夢現Re:Master』は、私が出演させていただいていた、『白衣性恋愛症候群』や『白衣性愛情依存症』を手掛けた工画堂スタジオの作品で、女の子どうしのピュアなラブを描いているのですが、歌詞を見て「報われないのかな?」と不安になったんです。タイアップにはいろいろなパターンがあって、曲を先に作ってから作品のイメージに合っていたから採用というようなこともあるので、今回もそっちかなと思ったのですが、もしエンディングが幸せな感じになっていたら、どうしようと不安でしょうがなかったです。

――ということは、『懐かしい街』は作品のことを意識せずに作った楽曲ということですか?

今井私はそう思っていたんですけど、由里子さんはシナリオをすべて読んでから作ってくださったみたいです。でも、ということは……。

――逆に怖いということですね。

今井そうなんです。私は『夢現Re:Master』には出演していないのでハラハラです。でも、切ないエンディング以外もあると信じています。

――もしかすると、エンディングを見た後に聞くと楽曲の印象がガラッと変わるかもしれないですしね。そして、最後の『レプリカの森』は、今回のシングルで唯一のノンタイアップ楽曲ということで、自由に作られたとのことですが、どういったコンセプトなのか教えてください。

今井いちばんは、やっぱり歌手活動10周年、20枚目のシングルという記念なので、濱田さん(今井さんの音楽活動のプロデューサー濱田智之さん)に曲を書いていただこうというところから始まりました。作詞については、同じ理由で私がするとみんなが漠然と思っていたのですが、出来上がってきた曲を聞いたときに「この楽曲には独特の世界が合う」とすごく思ったんです。その独特の世界を書けと言われれば、私なりにがんばって書けたかもしれないですが、「きっと、この曲にピッタリな歌詞を書ける人がどこかにいるはずだ」と無理を言ってコンペにしていただきました。期間が短かったにも関わらず、多くの方が参加してくださって、その中で私はこの歌詞に胸を鷲掴みにされるようなキラキラしたものを感じて、惹き込まれてしまったんですよね。私には絶対に書けなくて、私にはない世界だけど、すごく惹かれる世界だと思って「これだ!」と選んだのですが、そこですごく悩んじゃったんです。

――それは何故ですか?

今井声優活動20周年、歌手活動10周年、20枚目という記念のシングルで、タイアップもなく好きに作っていいと言われた楽曲の歌詞が「来ないで」と言い続けるというところが、すごくネガティブに捉えられるのではないかと(苦笑)。でも、この曲にはこの歌詞がピッタリだったんですよね。それですごく悩んでいたのですが、聞けば聞くほど、「来ないで」、「帰りなさい」という歌詞が、本心ではないからこそ、最後まで意思を貫いて言い続けているのかなと思ったら、とても私の感情に合うように感じたんです。

 というのも、私はライブをやらせていただくときに、お客さんに来ていただかないとライブは開催できないし、たとえできたとしても、つぎのライブが開催できなくなってしまうかもしれないことをもちろん理解しているので、本当は来てほしいと思いつつ、たくさんライブやイベントがあると全部を追い掛けるのはたいへんで、申し訳ないという気持ちになるときがあるんです。だから、私は「来てくれるのはうれしいんだけど、無理しないでね」ということをよく言ってしまうのですが、そのときの感情にすごくリンクしているなと思ったんです。おそらく、この歌詞にはもっと深い意味があるとは思いますが、私がこの音楽生活を送るうえで、「来てほしいけど、無理しないで」とずっと思い続けてきたものが、私の根本にあるとすれば、逆に声優活動20周年、歌手活動10周年、20枚目シングルに相応しいのではないかと。私は『レプリカの森』のことを“天の邪鬼な曲”と呼んでいて、最初はインパクトがあると思いますが、私の本心はこういうことなんだよという風に伝わればいいなと思っています。ちょっと皮肉れていますが、これも私らしいかなと(笑)。

――その解説を聞くと、確かに今井さんらしい楽曲だと感じます(笑)。

今井そうですよね。

――曲調もこれまでの楽曲にはなかった雰囲気ですね。

今井濱田さんが仕上がったときに、「Aメロとサビがいっしょなんだよ。これは新しい試みだ」と自信満々でした(笑)。

濱田智之さん 30年間、音楽をやってきましたが、初めてのことですね。キーが違うだけでAメロとサビがいっしょなんです。

今井すごく自慢げにおっしゃっていたのが印象的でした。でも、その曲に対する存在意義みたいなものは作った人が迷っていると、すごくふわふわしたものになりがちですし、型にはめようとすると型にはまったものになってしまうと思うんです。それを自由に作り込んでいるという意味では、すごく攻めた楽曲だなと。

 そういうこともあったので、歌唱方法も私は滅多にやらないダブルという手法を使っています。ダブルは、ふつうに歌ったのに対して、もう1回、自分が歌ったものを重ねる手法で、わざとラフに混ぜ合わせることで、双子がいっしょに歌っているみたいに聞こえるんです。音楽的にはよく使われる手法だったりするのですが、私があまり好きではなかったので、これまで使ってきませんでした。でも、『レプリカの森』には、そういう歌唱方法が合うのではないかと思ったので、レコーディングのときに提案したら、「いいね!」と受け入れてくださって、私のイメージ通りの楽曲に仕上がりました。

 じつは編曲時には、Dメロの後の長い間奏のところで転調して、明るい雰囲気になっていたんです。でも、「『レプリカの森』はそういうイメージじゃないんです。転調しないでください」と想いを伝えて、作り直していただきました。とくに意識はしていなかったのですが、明確なイメージが自分の中で出来上がっていたんだなと、そのときに実感しました。

――作曲が濱田プロデューサーかつ、ノンタイアップの楽曲ということで、20枚目のシングルに相応しい、いまの今井さんを象徴するような楽曲になるのかなと思っていましたが、まさにそのような曲に仕上がったんですね。

今井だからこそ、「来ないで」ということを表面的に捉えないでほしいです。本当は「ライブやイベントに来てー!」と思っていますから(笑)。

――そんな3曲が収録された20thシングルですが、全体の印象はいかがですか? ちなみに10thシングル『Dear Darling』のときには、「ある意味、私の音楽活動の集大成になるといいなと思えるものになりました」と話されていましたが。

今井相変わらずぜんぜん違うジャンルの曲を入れたがるなという印象です(笑)。それこそ、10thシングルのときは、「あえて方向性を変えたんです」と、話していたように狙ってやっていたのですが、今回はまったく狙っていないにも関わらず、こうなったところを見ると、方向性を決めなくなったんだなと実感します。私は、さまざまなジャンルの楽曲を歌うということは、声優兼歌い手の特権だと思っているんです。そのことに対する迷いがなくなって、「私の音楽はこういうことなんです」とアピールできるようになったのかなと思います。

――各楽曲のイメージカラーはありますか?

今井『Believe in Sky』は、空をイメージする水色です。『懐かしい街』は、難しいですね……。私の中で歌詞に出てくる“公園にいた野良猫”は三毛猫なので茶色かなとも思っているのですが、夕焼けという歌詞も出てくるので、夕焼け寄りのセピア色のイメージもあります。『レプリカの森』は、深緑と茶色と霧ですかね。あっ、サイリウムを振るのはたいへんそうな色ばかりですね(苦笑)。

――自身が出演している作品と出演していない作品の主題歌を歌うのでは、心境に違いなどはありますか?

今井やっぱり、不安な気持ちがありますね。たとえば、これまでたくさん主題歌を歌わせていただいている『コープスパーティー』の場合は、私も出演していて作品の全体図を知っているので、「こういう雰囲気の楽曲は合いそうだな」とイメージできるんです。でも、出演していない場合、概要などを教えていただくことはあっても、作品のすべてを把握しているわけではないので、いつも不安になります。ただ、主題歌を担当させていただくときには、私が出演しているかに関わらず、作品が好きな方、出演者のファンの方、スタッフさんなど、皆さんが幸せになってくれるといいなという想いで、いつも歌っています。

――今回の発売記念イベントはいつもの東名阪に加えて、仙台でも開催されますね。

今井かなりひさしぶりなので、すごくうれしかったです。本当は、仙台以外にも行きたいと思っているのですが、会場の都合などもあり、なかなか難しくて。とくに、最近はアニメや声優さんのイベントの数も増えてきているので、開催自体ができるかもわからないという状況の中、こうやってイベントをやらせていただけるのは、本当にありがたいことです。まだまだ、私の力不足で、いろいろな場所に行けないのは残念ですが、今回仙台で開催できたことはいい一歩だと思います。

※発売記念イベント情報はこちら(http://5pb.jp/records/sp/asami/info_detail.html?id=2588

――10周年記念盤には、10年の活動を振り返るヒストリーブックが同梱されるということですが、ご覧になりましたか?

今井一切見ていないです。なんなら、チェックのときに私のところには届かなくなりました(笑)。でも、事前には確認しないと決めたので、皆さんといっしょに見たいと思います。

――『Believe in Sky』は、10周年記念の年の幕開けということで、今年の活動について、現段階でお話ができることがあれば教えてください。

今井本当はけっこう決まっているのですが、まだまだ言えることが少なくて。でも、詳細はまだ発表できませんが、ライブは必ずやるので楽しみにしていてください。

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

今井継続は力なりという言葉をリアルに体感して、噛み締めています。じつは、私は記念日を大切にするタイプの人間ではなかったのですが、年齢を重ねるに従って、その意味をようやく天の邪鬼の私も理解できるようになりました。若いころは、お祝いされるのが恥ずかしかったのですが、それを素直に受け止められるぐらいに、私も大人に成長したんだなと(笑)。そんな中、『レプリカの森』では、「来ないで」と言っていますが、これは反語という意味で捉えていただいて、本当に多くの方に来ていただきたいなと思っています。これから先、どれだけ活動を続けられるのかは私にもわかりませんが、求めてくださる方がいる限り、そして私の心が折れない限り、こんな素敵な環境を与えてくださっているまわりの方に感謝しつつ、活動を続けていきたいと思います。そして、今年は声優活動20周年、歌手活動10周年という記念すべき年を、皆さんといっしょにお祝いしたいと思っているので、こんな私が素直になれるように、これからも温かい目で見守ってくださるとうれしいです。楽曲は間違いなくいいものに仕上がっているので、ぜひ購入して聴いてみてください。

商品情報

アーティスト:今井麻美(読み:いまい あさみ)
タイトル:Believe in Sky(読み:ビリーブ イン スカイ)
発売日:2019年1月30日(水)
発売元:5pb.
販売元:MAGES.
価格/品番:
・10周年記念盤(CD+DVD)2800円[税抜]/USSW-0143
・通常盤(CD)1800円[税抜]/USSW-0144

【ジャケット】
・10周年記念盤:今井麻美撮り下ろし写真を使用。
・通常盤:TVアニメ「ぱすてるメモリーズ」描き下ろしイラストを使用。

【初回生産分封入特典】
10周年記念盤:「今井麻美プリントサイン入りポストカード」封入(3種から1枚をランダム封入)

【仕様】
(CD)※10周年記念盤・通常盤共通
01.Believe in Sky(作詞:森由里子/野村勇輔、作曲/編曲:野村勇輔)
02.懐かしい街(作詞:森由里子、作曲:椎名豪、編曲:濱田智之)
03.レプリカの森(作詞:大石徳子、作曲:濱田智之、編曲:宮藤優矢)
04.Believe in Sky - off vocal -
05.懐かしい街 - off vocal -
06.レプリカの森 - off vocal -

(DVD)※10周年記念盤のみ
01.Believe in Sky Music Video
02.Believe in Sky Music Video メイキング影像
03.今井麻美コメント映像

『Believe in Sky』通常盤ジャケット
『Believe in Sky』10周年記念盤ジャケット