2019年1月26日、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)主催の“eSPORTS 国際チャレンジカップ ~日本選抜 vs アジア選抜~”が開催された。
そのステージの最初を飾ったゲームは、Blizzard Entertainmentのチーム対戦型アクションシューター『オーバーウォッチ』。日本選抜チームとアジア選抜チームによる国際マッチが行われた。
対戦ルールはBo5(3マップ先取で勝利)で、最初はじゃんけんでマップ選択チームを決定。その後は前の試合で負けた側がマップ選択権を得て、もう片方のチームが攻守を選択する。『オーバーウォッチ』の試合としてはスタンダードなルールである。
『オーバーウォッチ』は6対6の対戦ゲームだが、中でも試合開始前から注目される選手が各チームにひとりずついた。
日本選抜チームの注目選手は、一度は『オーバーウォッチ』から引退したものの、競技シーンに復帰した古強者・SamuraiD選手。
そして、アジア選抜チームの注目株はPatiphan選手。ワールドカップで突如として台頭して世界中のプレイヤーを驚かせた、若干15歳の天才だ。
神業連発の頂上対決を制したのは……?
第1マップ HANAMURA/第2マップ LIJIANG TOWER
第1マップの開幕直後から、さっそく魅せてくれたのはSamuraiD選手だった。日本選抜チームはSamuraiD選手のラインハルトを中心としたGOATS編成(3人のタンク前衛役をヒーラーたちでサポートしていくスタイル)。
両チームともにラインハルトを軸に戦う中で、陣形を乱さずに集団戦を展開し、SamuraiD選手による連続キルが止まらない。
対するアジア選抜チームは、日本ではあまり見られないルートなどを活用して反撃を試みる。それでもSamuraiD選手の勢いは止まらなかった。
第1マップで勝利し、第2マップでも同じGOATS編成同士のぶつかり合いで圧勝する。一気に3本先取へと王手をかけた。
第3マップ NUMBANI/第4マップ BUSAN
日本選抜チームのストレート勝ちもあり得そうな雰囲気の中、アジア選抜チームが選択したマップはNUMBANIだった。このチームがとくに強みを発揮できるという得意マップだ。
得意マップを選んだ効果は絶大でった。アジア選抜チームは相手が出てくる端から狙い撃ちにしていき、接近すら許さない。
日本選抜チームは不慣れな戦法に苦戦するも、GOATS編成に切り替えてこれを突破する。アジア選抜チームはこの攻勢に対応すべく、Patiphan選手がエイム(照準)能力を問われるマクリーを選択し、勝利をもぎ取った。
続く第4マップの対戦では、開幕当初は拮抗していたが、ここでもアジア選抜チームのヒーローピックや、役割の交替が光ることになる。
アジア選抜チームがGOATS編成へのカウンターを狙ってか、ファラ・マーシー編成を採用したところから大きく流れが変わった。上空からのファラの爆撃と、マーシーによる蘇生による粘りが、勢いを得そうになっていた日本選抜チームを押しとどめる。
日本選抜チームがファラ対策にマクリーを投入し、また拮抗状態になりかけたこのとき、解説陣から悲鳴じみた声が挙がる。Patiphan選手が伝家の宝刀、ウィドウメイカーをついに選択したのだ!
アジア選抜チームの動きは冴えわたる一方だった。狙撃の脅威に加え、THK選手のファラによる空爆、ここぞという隙を突いて4人を倒したOlivier選手のD.Vaの自爆など、すばらしいプレイの連続で第4マップを制した。これが世界クラスの実力か!
第5マップ ILIOS
日本選抜チームの2連勝に続き、アジア選抜チームも2連勝し、2-2で迎えた最後の第5マップはILIOS。空が開けたマップということもあり、活躍するのはやはり飛行能力を備えたファラ。アジア選抜チームのTHK選手がチームを引っ張っていく。
対する日本選抜チームは、SamuraiD選手がウィンストンをピック。Sabagod選手のゼニヤッタとともに、猛攻で押し返してラウンド1本を先取する。
日本選抜チームが勢いづいた局面で、Patiphan選手はマクリー、トレーサーとヒーローを使い分けた後に、満を持してウィドウメイカーをピックした。エンジンが完全に暖まってきたのか、アウェイの地で、しかもオフライン大会の場で、観客全員が唖然とするような狙撃を披露していく。
1ドットを射抜くPatiphan選手に、日本選抜チームは完全にペースを崩されてしまった。こんなときに頼りになるのがSamuraiD選手だ。ウィンストンのアルティメットスキルで連続キルをしっかりと決めて、押される中でも局所的な人数差を生み出してチャンスを作る。
このチャンスを日本選抜チームの他選手がしっかりと受け取め、粘るアジア選抜チームのメンバーをひとりずつ倒していく。手に汗握る攻防を制し、日本選抜チームが僅差で勝利を収めた。
『オーバーウォッチ』国際試合は、Patiphan選手の神のごとき妙技と、鬼神のごとく暴れ回るSamuraiD選手の突破力に、始終驚かされ続ける対戦となった。ふたりを支え、ワンマンプレイをチームプレイへと昇華するチームメイトとの連携力もまた、すばらしいのひと言に尽きる。
日本国内だけではなかなか見られない、ワールドクラスの対戦で魅せてくれた両チームには、最大の賞賛を送りたい。そして、今回の対戦を糧にして、つぎはさらに上を行く戦いを見せてくれるはず。心から期待したい!