2019年1月26日、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)主催の“eSPORTS 国際チャレンジカップ ~日本選抜 vs アジア選抜~”が開催された。

 そのステージの最初を飾ったゲームは、Blizzard Entertainmentのチーム対戦型アクションシューター『オーバーウォッチ』。日本選抜チームとアジア選抜チームによる国際マッチが行われた。

『オーバーウォッチ』天才撃破のカギは侍が握っていた。“eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本選抜vsアジア選抜~”リポート_01
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世界で活躍する海外選手のスーパープレイを、日本のこの場で、オフラインで見られるという贅沢!
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テレビ東京アナウンサーの田口尚平氏が総合司会を務めた。
実況を担当したゲームキャスターの岸大河氏。
解説を担当したプロゲーミングチーム“Green Leaves”所属のgappo3氏。
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イベント冒頭にはJeSU副会長・浜村弘一氏が登壇。JeSUとAESF(Asian Electronic Sports Federation)との共催により、26日と27日の両日4タイトルの試合で、賞金総額1500万円の大規模イベントが実現したという。
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日本選抜チーム“JUPITER”。左から順に、Sabagod選手、rayu選手、SamuraiD選手、ta1yo選手、Ameken選手、CLAIRE選手。
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タイの強豪がそろうアジア選抜チーム“Xavier Esports”。左から順に、Tae選手、THITIKORN選手、THK選手、Patiphan選手、Olivier選手、QueEn選手。
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試合前の挨拶で、アジア選抜リーダーのTae選手は「いい試合にしたい」とさわやかに宣言。日本選抜リーダーのCLAIRE選手は「Patiphan選手を倒します!」と宣言した。観客一同はこのひと言の重さを試合で目の当たりにすることになる……。

 対戦ルールはBo5(3マップ先取で勝利)で、最初はじゃんけんでマップ選択チームを決定。その後は前の試合で負けた側がマップ選択権を得て、もう片方のチームが攻守を選択する。『オーバーウォッチ』の試合としてはスタンダードなルールである。

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 『オーバーウォッチ』は6対6の対戦ゲームだが、中でも試合開始前から注目される選手が各チームにひとりずついた。

 日本選抜チームの注目選手は、一度は『オーバーウォッチ』から引退したものの、競技シーンに復帰した古強者・SamuraiD選手。

 そして、アジア選抜チームの注目株はPatiphan選手。ワールドカップで突如として台頭して世界中のプレイヤーを驚かせた、若干15歳の天才だ。

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SamuraiD選手の雄姿再びと、観客の期待も高まる。往年の活躍を知らない人でも、“サムライ”という名前から強さを感じ取れるのではないだろうか。
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世界規模で噂となっているPatiphan選手のスーパープレイを目の前で見られるのか、注目だ。

神業連発の頂上対決を制したのは……?

第1マップ HANAMURA/第2マップ LIJIANG TOWER

 第1マップの開幕直後から、さっそく魅せてくれたのはSamuraiD選手だった。日本選抜チームはSamuraiD選手のラインハルトを中心としたGOATS編成(3人のタンク前衛役をヒーラーたちでサポートしていくスタイル)。

 両チームともにラインハルトを軸に戦う中で、陣形を乱さずに集団戦を展開し、SamuraiD選手による連続キルが止まらない。

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ダメージディーラー役の奮戦もあるからこそ、ラインハルトも暴れられる。

 対するアジア選抜チームは、日本ではあまり見られないルートなどを活用して反撃を試みる。それでもSamuraiD選手の勢いは止まらなかった。

 第1マップで勝利し、第2マップでも同じGOATS編成同士のぶつかり合いで圧勝する。一気に3本先取へと王手をかけた。

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高速でゲージを溜め、アース・シャターを複数の相手に当てる。的確なプレイングこそ、SamuraiD選手の真骨頂! 上空に放たれたためにわかりにくいD.vaの自爆を、とっさに盾を上に向けて防ぐなど、守備でもいぶし銀の活躍が光る。

第3マップ NUMBANI/第4マップ BUSAN

 日本選抜チームのストレート勝ちもあり得そうな雰囲気の中、アジア選抜チームが選択したマップはNUMBANIだった。このチームがとくに強みを発揮できるという得意マップだ。

 得意マップを選んだ効果は絶大でった。アジア選抜チームは相手が出てくる端から狙い撃ちにしていき、接近すら許さない。

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タレットも含めた一斉射に始まり、回復阻害にハッキングと、あらゆる妨害を駆使した堅い守りが展開する。一回もアルティメットスキルを使わずに相手全員を追い返すことに成功したほど。

 日本選抜チームは不慣れな戦法に苦戦するも、GOATS編成に切り替えてこれを突破する。アジア選抜チームはこの攻勢に対応すべく、Patiphan選手がエイム(照準)能力を問われるマクリーを選択し、勝利をもぎ取った。

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マクリーでリードを奪った後はD.Vaに切り替えるなど、あらゆるヒーローを使いこなすPatiphan選手。解説陣はその多芸さをして「どのヒーローも使える」、「ひとりオーバーウォッチ」と称した。

 続く第4マップの対戦では、開幕当初は拮抗していたが、ここでもアジア選抜チームのヒーローピックや、役割の交替が光ることになる。

 アジア選抜チームがGOATS編成へのカウンターを狙ってか、ファラ・マーシー編成を採用したところから大きく流れが変わった。上空からのファラの爆撃と、マーシーによる蘇生による粘りが、勢いを得そうになっていた日本選抜チームを押しとどめる。

 日本選抜チームがファラ対策にマクリーを投入し、また拮抗状態になりかけたこのとき、解説陣から悲鳴じみた声が挙がる。Patiphan選手が伝家の宝刀、ウィドウメイカーをついに選択したのだ!

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世界大会でPatiphan選手の実力を知らしめるきっかけになったのが、このウィドウメイカーだ。相手が上空のファラに注意を向けた瞬間、あらゆる場所から高精度な狙撃でキルを量産。相手が俊敏なトレーサーだろうが悪地形だろうが、彼の狙撃は当たる!

 アジア選抜チームの動きは冴えわたる一方だった。狙撃の脅威に加え、THK選手のファラによる空爆、ここぞという隙を突いて4人を倒したOlivier選手のD.Vaの自爆など、すばらしいプレイの連続で第4マップを制した。これが世界クラスの実力か!

第5マップ ILIOS

 日本選抜チームの2連勝に続き、アジア選抜チームも2連勝し、2-2で迎えた最後の第5マップはILIOS。空が開けたマップということもあり、活躍するのはやはり飛行能力を備えたファラ。アジア選抜チームのTHK選手がチームを引っ張っていく。

 対する日本選抜チームは、SamuraiD選手がウィンストンをピック。Sabagod選手のゼニヤッタとともに、猛攻で押し返してラウンド1本を先取する。

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SamuraiD選手のゼニヤッタやrayu選手のD.Vaなどが、高い火力を叩き出した。

 日本選抜チームが勢いづいた局面で、Patiphan選手はマクリー、トレーサーとヒーローを使い分けた後に、満を持してウィドウメイカーをピックした。エンジンが完全に暖まってきたのか、アウェイの地で、しかもオフライン大会の場で、観客全員が唖然とするような狙撃を披露していく。

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ファラの制圧爆撃の隙を突いて、日本選抜チーム側がスピードブーストからの猛攻を一気に決めても……。
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狙撃が通りにくく有利な場所に陣取っていた日本選抜チーム全員をあっという間に追い出した。これがPatiphan、世界トップクラスの怪物!

 1ドットを射抜くPatiphan選手に、日本選抜チームは完全にペースを崩されてしまった。こんなときに頼りになるのがSamuraiD選手だ。ウィンストンのアルティメットスキルで連続キルをしっかりと決めて、押される中でも局所的な人数差を生み出してチャンスを作る。

 このチャンスを日本選抜チームの他選手がしっかりと受け取め、粘るアジア選抜チームのメンバーをひとりずつ倒していく。手に汗握る攻防を制し、日本選抜チームが僅差で勝利を収めた。

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画面には映っていない場面も多かったが、SamuraiD選手は鬼気迫る猛攻をくり広げた。最後の攻防では一度も倒されることなく、相手チームのほぼ全員を追い込んだのだ。サムライの執念が神業を上回った!

 『オーバーウォッチ』国際試合は、Patiphan選手の神のごとき妙技と、鬼神のごとく暴れ回るSamuraiD選手の突破力に、始終驚かされ続ける対戦となった。ふたりを支え、ワンマンプレイをチームプレイへと昇華するチームメイトとの連携力もまた、すばらしいのひと言に尽きる。

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惜しくも敗れたものの、ワールドクラスの力を存分に見せてくれたアジア選抜チームには、賞金75万円が贈られた。
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勝利した日本選抜チームには賞金300万円と副賞が贈られ、日本国歌“君が代”が勝利を祝福した。

 日本国内だけではなかなか見られない、ワールドクラスの対戦で魅せてくれた両チームには、最大の賞賛を送りたい。そして、今回の対戦を糧にして、つぎはさらに上を行く戦いを見せてくれるはず。心から期待したい!

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またこの好カードが見られることを、いまから楽しみにしておこう。