一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の設立から約1年。同団体の副会長を務める浜村弘一氏に、この1年のJeSUの活動と今後の展望について聞く。

 2018年1月に設立された一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)。日本におけるesportsの振興と普及のために誕生した同団体の活動開始から約1年が経過した。2年目となる2019年には、年頭から“eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本選抜vsアジア選抜~”を開催(アジアeスポーツ連盟(AESF)との共催)、国体(いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会)に合せた初のesportsプログラム“全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI”にも主催として関わるなど、新たな展開が続くJeSUだが、これまでの活動をどう考え、どのような展望を持っているのか。JeSU副会長の浜村弘一氏(カドカワ株式会社)に聞いた。

一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長・浜村弘一氏

JeSU設立初年の手応えは?

――まずは、JeSUの立ち上げ初年の手応えから教えてください。

浜村 かなり手応えが感じられた1年でした。ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに“eスポーツ”が入賞するなど、esports自体の知名度がものすごく上がりましたよね。これはもちろんJeSUだけの力ではありませんが、JeSUが立ち上がり、平昌オリンピックで史上初となる五輪公認のesports大会が開催され、さらに第18回アジア競技大会(以下、アジア大会)では『ウイニングイレブン 2018』で日本が金メダルを獲得しました。話題にもよく恵まれて、とても順調な船出となった印象です。

――事前に想定した通りのマイルストーンを達成できた1年だったと。

浜村 そうですね。初年はアジア大会への選手派遣をひとつの目標としていたのですが、僕らが思っている以上にesportsの注目度が高まってきており、たくさんのお問い合わせをいただいている状況です。esportsチームを作りたい、esportsを応援するための組織を作りたい、といったお話が後を絶ちませんし、全国各地の自治体からも、esportsを中心に町おこしをしたい、というようなリクエストがあったりして、予想以上の反響と言えます。僕らはesportsという大きな岩を動かしたけれども、それがあれよあれよと言う間に大きく回転し始めているという感じですね。

――プロライセンスの発行が始まり、それに伴ってライセンス認定タイトルも増えつつありますね。

浜村 立ち上げ当初は賛否両論、本当にさまざまなご意見をいただきましたが、蓋を開けてみれば、1年のあいだにJeSU公認の大会の試合が40以上開催され、賞金総額も1億5千万円近くになり、前年よりも遥かに活動の規模が大きくなりました。もちろん、プロライセンス発行をすることについて行政からストップが掛かったり、警察からの取り締まりがある、ということは一切ありません。そうしたことを危惧される方はたくさんいましたが、僕らとしてはまずは予定通りに活動を進めることができて、本当によかったと。

――現状、ライセンス認定タイトルは11作品ですが、さらに増えていくのでしょうか。

浜村 もちろんです。これからまだまだ増えていきます。一昨年、昨年のesportsの盛り上がりを受けて開発がスタートしたゲームタイトルが今後はたくさん市場に出てきますし、それにともなってJeSUのプロライセンス認定タイトルも増えていくことでしょう。まだ詳細は明かせないのですが、かつての人気シリーズで、しばらく続編が出ていないようなIPについても、すでに我々のところにライセンス認定に関する相談が来ています。

――それは楽しみです。esportsのムーブメントに合わせて、既存IPも含めてゲーム業界に活気が出ているというわけですね。そのほか、JeSUの大きな役割のひとつとして、海外の大会に日本の選手を送り出すといったサポート面の動きもありますが、こちらの手応えはいかがでしたか。

浜村 これまで日本は、esports後進国だと言われてきたんですよね。国内では強豪選手へのリスペクトがあって、もちろん選手の質も高い。ところが、そうした選手たちを経済的にサポートする基盤が弱くて、海外に遅れを取ることが多かったわけです。JeSUではアジア大会に日本代表選手を派遣し、『ウイニングイレブン2018』部門で杉村直紀選手と相原翼選手が金メダルを獲得し、国際eスポーツ連盟(IeSF)主催のeスポーツ ワールドチャンピオンシップ(第10回大会は2018年11月9日~12日まで台湾で開催)でも『鉄拳』で破壊王選手が銀メダルを獲得するといった実績を出しており、改めて日本の選手の質が高いことを確認できました。こうした選手たちをしっかりとサポートできる環境作りをこれからも進めていきたいと思います。

――今後はさらにサポート体制を整えていくと。

浜村 そう考えています。先ほどお話ししたように、いまは企業や行政から多くの問い合わせをいただいているので、そうした動きと選手たちをつなぐ活動も考えています。その取り組みのひとつがJeSUがプロライセンスを発行した選手についてのデータベース公開です。地元の選手を応援したいとか、どこどこ出身の選手はいないか、というお問い合わせがものすごく多いので、データベースを公開することで、そうした声に対応できればなと。行政や企業と選手をつなぐことで、プロライセンスを持った選手たちが、よりよい環境で練習・活動できるようになれば、僕らとしてもうれしいですね。

1月26・27日開催の“eSPORTS国際チャレンジカップ”とは?

――さて、JeSUが関わる年頭の大きな動きとして、 “eSPORTS国際チャレンジカップ ~日本代表vsアジア選抜~”が開催されます(2019年1月26・27日/幕張メッセ ホール4/闘会議 2019・ジャパン アミューズメント エキスポ2019と同一チケットで入場可能)。こちらについてご紹介いただけますか。

浜村 その名の通り、日本選抜とアジア選抜が激突する大会になります。昨年、アジア大会やeスポーツ ワールドチャンピオンシップなど、さまざまな国際大会を見るなかで感じたのですが、日本の選手が上位に勝ち上がって表彰台に上がるのって、ものすごく感動するんですよ。現状、日本のゲームファンはその光景を現場で見ることがなかなかできないので、国対国、日の丸を掲げた大会の盛り上がりを感じてもらいたい、という想いからスタートしたイベントです。

――確かに、esportsの国際大会というと、いまは海外で開かれることが多いですからね。

浜村 アジアeスポーツ連盟(AESF)の代表と話した際に、esports普及のため、日本代表とアジア各国の強豪が戦っている場面を日本のファンに見せたいという話をしたら、向こうもすごく歓迎してくれました。そこで、彼らが日本以外のアジアの代表選手を選出するから、JeSU側で日本国内で最高峰の選手を選んでほしい、ということになったのです。日本の最高峰と日本を除くアジアの最高峰のガチンコ勝負ということで、とてもハイレベルな試合が見られるはずです。

――アジア選抜は、複数の国の選手が集まった混成チームになるわけですね。

浜村 そうです。試合後は勝利したチーム側の国歌を流すので、場合によっては数か国の国歌が流れる可能性もあります。もちろん日本が勝てば君が代が流れます。esportsで国の代表が戦って、勝利した国の国家が流れる瞬間をぜひ体験していただきたいです。

――サッカーなど多くのスポーツでもそうですが、クラブチームの大会とナショナルチームの大会では、見る側の心持ちが違いますよね。

浜村 そうですね。僕自身、ふだんはそこまでサッカーの試合をチェックしているわけでないですが、ワールドカップ本戦や予選大会となるとやっぱり注目しますから。出場する選手としても、賞金のこともありますが、それ以上に国の代表として、選抜選手として戦うとなると、大きなプレッシャーがかかると思います。

――種目となるのは、『ウイニングイレブン 2019』、『ストリートファイターV アーケードエディション』、『鉄拳7』の3タイトルのほか、『オーバーウォッチ』が加わるということですが。

浜村 そうです。1月26日の午前中に『オーバーウォッチ』の試合があって、その横で『鉄拳7』のプロライセンスを持った選手たちが予選を行います。そこで勝ち上がった人がそのままの勢いで午後の戦いに出るので、これはすごく盛り上がりを期待できると思います。『鉄拳7』は3対3となるのですが、アジア選抜には昨年のeスポーツ ワールドチャンピオンシップで金メダルを獲得したサウジアラビアのSora選手などが出場します。日本選抜にはその大会で銀メダルだった破壊王選手も当日予選から出場するので、展開次第ではメダリスト同士の再戦が見られるかもしれません。勝負ごとなので実際に誰が勝ち進むのかはわかりませんが、どんな形になってもすごく盛り上がるのではないでしょうか。

――予選も含めて、期待が高まりますね。

浜村 1月27日は午前中に『ウイニングイレブン 2019』の試合が行われるのですが、日本選抜3名のうち2名はすでに決定しており、アジア大会で金メダルを獲得したレバ選手とSOFIA選手が出場します。やはり金メダルを取ったという実績は尊重しないといけませんからね。そこに、ネット予選で勝ち上がってきた選手がもうひとり加わります。アジア大会では1on1、2on2、1on1という試合形式でしたが、今回は1on1、3on3、1on1となるので、こちらも盛り上がると思います。

――アジア選抜はどの国の選手がやってくるのでしょうか。

浜村 香港、タイ、韓国の代表チームですね。練習日も用意しているので、選手たちにはそこでしっかりとコミュニケーションを取って、チームになってもらえればと思います。とは言え、日本選抜もつねに3on3をやっているメンバーではないので、同じような条件になるでしょうね。

――そして、『ストリートファイターV アーケードエディション』が1月27日の午後に開催されると。

浜村 そうです。こちらはときど選手、ふ~ど選手、ネモ選手という、まさに日本国内の強豪3人が顔を揃えます。アジア選抜もすごいメンバーになっており、台湾のOil King選手、香港のHumanbomb選手、ベトナムのサイゴンカップで優勝した韓国のNL選手がやってきます。先ほどesportsの大会で国歌を聞いてほしいと言ったのですが、どのタイトルもどちらが勝つのか本当にわからなくて、もしかしたら、一度も日の丸が上がらないということもあるかもしれません……(苦笑)。いずれにしても本当に手に汗握る、ヒリヒリするような戦いが見られるんじゃないでしょうか。

――国を代表しての戦いとなると、選手の皆さんの緊張感がすごそうですね。

浜村 選手だけでなく、観客席にもかなり独特の緊張感が生まれるので、esportsファンであれば、一度は経験してみてほしいです。試合の一挙手一投足を見守り、決着の瞬間に思わず歓喜の声が上がったり、落胆のため息が会場を覆う光景は、なかなか味わえない体験だと思いますよ。

――まさに、固唾を飲んで見守るという……。

浜村 そうですね。しかも、日本選抜の選手は全員が日本代表のユニフォームを着るんです。それで観客の皆さんは「がんばれ、日本!」と応援しますから、それはプレッシャーかかりますよね(笑)。日本選抜は皆さん著名なプレイヤーで、個人名でさまざまな大会やエキシビジョンマッチに参加されていますが、ナショナルチームでの国際大会は、やっぱりちょっと趣きが違うはずです。

――観客としても、そうした雰囲気は直接会場で見たほうが楽しめそうですね。

浜村 そうですね。もちろん、ネット配信をご覧いただいてもいいのですが、今回はせっかく国内で開催しますし。どうせなら現地でじかに見ていただきたいですね。ある意味、選手よりも会場の観客のほうが緊張するかもしれません。選手たちはふだんの緊張が80とするなら、それが90になるくらいの感覚だと思いますけど、観客は和気あいあいとした観戦から緊張感に溢れたものに変化するので、より大きな違いを感じられるかもしれません。

――昨年までは闘会議とJAEPOが共同で同日同会場でイベントを行っていましたが、今年はそこにJeSUのeSPORTS国際チャレンジカップが加わりました。こうしたイベントを同時開催することには相互にメリットが大きいのでしょうか。

浜村 3つのイベントを行き来できることで、緩いものから硬派なものまで、温度感が異なるゲームコンテンツが楽しめると思います。そこは来場者の方にとってはメリットと言えるのではないでしょうか。その中でもいちばん硬派なイベントのひとつが4ホールのeSPORTS国際チャレンジカップになると思うので、ぜひ足を運んでいただきたいですね。

JeSU設立2年目の展望

――ご紹介いただいたeSPORTS国際チャレンジカップを皮切りに、2019年にもさまざまな動きがあると思いますが、JeSU設立2年目の活動方針をお聞かせください。

浜村 前述の通り、昨年はアジア大会での日本人選手の活躍が話題になりましたし、今年の“いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会”でも文化プログラムとして大会が開催されるなど、esportsの認知度が高まってきている状況です。2018年がesportsの存在を広く知らしめる1年であったとしたら、2019年はesportsというものをニュースで見聞きするだけではなく、実際にそういう大会が身近で開催されているんだ、ということに気づいていただく1年になると思います。1年目の活動は言わば“空中戦”のようなところがありましたが、今年は地に足をつけて、現場でイベントを観てもらえる年になるんじゃないかと感じていますね。

――先日発表された地方支部の開設は、そのあたりの動きにも関わってきそうですね。

浜村 その通りです。昨年12月にJeSUの地方支部を開設し、まずは11団体(2019年1月21日時点で北海道/山形/富山/石川/東京/静岡/愛知/大阪/兵庫/岡山/大分)を認定することを発表したのですが、これはまさに地方在住の競技プレイヤーの育成や支援、地元開催のesports大会をサポートするための動きです。たとえば、地域の町内会や学校でesportsの大会を開こう、ということなっても運営や許諾関係の確認など、不明瞭なことが多いじゃないですか。そういうときに質問する場所、あるいは手伝う組織となることが、地方支部の役割のひとつとなります。2019年は国体の予選が全国で行われますから、そこでもきっと活躍してくれると思います。

――茨城国体での“全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI”は、JeSUが関わる今年のesports大会としては大きなものになりそうですね。

浜村 そうですね。『ウイニングイレブン 2019』、『ぷよぷよeスポーツ』、『グランツーリスモ SPORT』と、競技タイトルのジャンルの幅も広いですし、運の要素が少なくて純粋にスキルを競うタイプのタイトルなので、非常に見応えがあると思います。ナショナルチームの戦いもすごく盛り上がりますけど、各都道府県の代表というのも十分に応援する理由になるんですよね。春夏の甲子園といっしょで、自分の地元が活躍しているとやっぱり気になるものです。大阪出身なら大阪、大阪が負けたら近畿地方のどこか、そこが負けたら最後には西日本の県を応援しようといった感じに、都道府県大会というのは観客が応援しやすいじゃないですか。これはこれで盛り上がる大会になると思います。2020年の鹿児島国体を始め、毎年各地の代表が戦うesportsの競技大会が続いていくといいですよね。

――国体という歴史の長いイベントにゲームコンテンツが関わることは、ゲーム業界側にもメリットが大きそうですね。

浜村 そう思います。とくに日本はゲームを遊ぶことに対してネガティブな声も大きいので、そうしたコンテンツが国体という歴史のあるイベントに関われることには価値があります。ゲームそのもののイメージが大きく変わっていることを象徴する出来事といえますから、すごく期待しています。

eSPORTS国際チャレンジカップ初日に注目の発表がある!?

――せっかくなので、JeSUの活動について中長期的なスパンでの展望もお聞きしたいのですが。

浜村 我々がまず目標としているのは、esportsを通じて多くの人が切磋琢磨し、健全なスポーツ精神を育んでいただくことです。そのためにesportsがより広く普及してほしいと思っています。いちばん早いのは、esportsから国民的なスター選手が生まれることですよね。藤井聡太七段の登場で将棋界が大きく盛り上がったように、多くの人々が「この人に興味がある!」と思える選手が出てくると、そのジャンル自体が活性化するじゃないですか。

――スター選手の存在は大きいですね。

浜村 そういったスター選手を輩出するためには、やっぱり活動のチャンスが増えたほうがいいわけです。賞金制大会、ライセンス大会、地方大会など、をesportsの大会を増やしていって、その一方で、国や県の代表戦など、これまでesportsを知らなかった人でも選手を応援したくなるような仕掛けを増やしていくと。そうした活動がうまく噛み合うと、これまで以上にesportsのムーブメントが大きくなっていくと思います。JeSUとしては、そうした動きをさらに強めるべく活動してきたいなと。

―― 一過性の流行に留めないためにも、2019年は重要な1年になりそうですね。

浜村 最初にも話しましたけど、2018年は本当に大きな岩が動き出したと思っていて。esportsの大会自体は昔からあちこちで行われていましたけど、急に話題になったのは去年からです。もちろんJeSUとしてがんばった部分もありますけど、いろいろな要素がタイミングよく重なった1年でした。ただ、ようやく動き出した岩ですが、スピードが思ったよりも速い。ゴロゴロと転がっていく岩をちゃんと制御しないとマズいぞ、という感覚はあります。僕らが支えるだけでなく、もっともっと企業や行政のサポートを増やしていく動きも作っていかなければと考えています。

――年明けには東京都もesports “東京都知事杯”について予算計上を予定しているという報道がありました。

浜村 我々も注目しています。そのほかの県からも知事カップのようなことを考えている、というお話をいただいたりしていますが、東京都知事杯についてもお話があれば、よろこんで協力させていただきたいと思っています。

――esportsといえば、オリンピック競技への参入も議論されていますが、最近の動きをどうご覧になっていますか。

浜村 いまはポジティブなこともネガティブなことも、とにかくいろいろなことを言う人がいます。パリオリンピックについて、esportsが正式な種目となるかどうか、その正式なコメントが出るのは、2020年なんです。それまでは「絶対に採用される」と言う人もいれば、「時期尚早だ」と語る人もいるので、正直なところどうなるのかはわかりません。なので、報道から漏れ伝わってくる言葉はあくまで数ある意見のうちのひとつとして聞くようにして、あまりそういった言葉に振り回されないようにしています。

――まずは自分たちにできるところから着実に、という感じでしょうか。

浜村 そうですね。まだ詳細は明かせませんが、ひとつ、JeSUとして考えていることをeSPORTS国際チャレンジカップの初日(1月26日)の檀上でお話ししようと考えています。サッカーの代表的な国際大会として、ワールドカップとオリンピックのふたつがありますが、より盛り上がっているのはどちらか? そのあたりを考えていただければ、当日お話しすることのヒントになるかもしれません。eSPORTS国際チャレンジカップでは、選抜選手たちによる熱い戦いだけでなく、JeSUの今後の活動に関わる発表も予定していますので、ご期待ください。

――ありがとうございました。

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