2019年1月25日発売の『キングダム ハーツIII』。発売を間近に控える本作のディレクター・野村哲也氏にお時間をいただき、インタビューを実施した。

 2019年1月25日発売のプレイステーション4、Xbox One用ソフト『キングダム ハーツIII』。発売を間近に控え多忙を極める本作のディレクター・野村哲也氏にお時間をいただき、インタビューを実施した。

※1月25日1時50分:難易度クリティカルに関する記述を、難易度プラウドに修正しました。

――ひと足先にプレイさせていただいていますが、遊び込める要素が満載ですね! ワールドクリアー後も、ずっと探索やミニゲームを続けてしまいます。ストーリー的にも、欠けていたパズルのピースがはまるような気持ちよさがあって、ファンにはたまりません。野村 ありがとうございます。『KHIII』は、言うなれば“マスター・ゼアノートを倒すお話”です。それをもってダークシーカー編が完結し、シリーズとしても大きな区切りとなるので、多くの謎が解消されています。

――これからプレイする方へ向けて、今回のソラの目的についていくつか解説していただければと思います。まず、マスター・ゼアノートに対抗するため、ソラが必要としている“目覚めの力”について教えてください。野村 いくつかの特性があるのですが、端的に言うなら“正常な状態にない心を、もとに戻す力”です。“閉じられたものを開いて、そこから心を取り戻す”ことができます。『KH3D』では、眠りに落ちた世界のポータル……玄関にあたるものを開いて、各ワールドに入っていきました。それが“目覚めの力”を得るための修練でもありました。しかし、マスター・ゼアノートの介入で、ソラは“目覚めの力”をきちんと身につけられなかった。そのため、『KHIII』冒頭では、力を取り戻すことが目的となっています。

――闇に対抗する光の守護者たちを揃えるために、その“目覚めの力”が必要になる、ということですね。もうひとつ、“ロクサスの復活”も目的になりますが、そもそもソラと同化した状態になっているロクサスの“復活”の定義とは?野村 肉体を持った状態で、独立した人格として蘇ることです。『KHII』では、ロクサスがソラの中に帰ったことですべて解決したように見えました。しかしその後、『KH3D』でソラはロクサスの心と記憶に接触し、「ロクサスはロクサスとして存在すべき」という思いを伝えています。ソラは、ロクサス自身に心があること、彼を待っている人(アクセル)がいること、そして今回は光の守護者として力を借りるために、彼の復活が必要だと考えています。

――『KHIII』はシリーズの節目となる作品とのことですが、『KH』は今後も続くんですよね? 『KHIII』では多くの謎が解消される一方で、新たな疑問も出てきますが……。野村 もちろん続きます。『KHIII』はダークシーカー編の完結であって、『KH ユニオン クロス』含む『KH』シリーズ自体の完結ではありません。これからの構想に関しては、今後を予見するエピローグ(1月26日配信)とシークレットムービー(1月31日配信)を観ていただけると、想像を掻き立てられると思います。

――エピローグとシークレットムービーを観るための条件はあるのでしょうか。野村 エピローグはエンディングの後に流れるので、発売翌日の26日にダウンロードしていただければ、ゲームクリアー後に観られます。シークレットムービーは31日に配信させていただきますが、視聴条件には“幸運のマーク”の撮影数が関係してきます。

――王様(ミッキー)のシルエットに似たマークを、ソラが持つモバイルポータルで撮影していく収集要素ですね。野村 ゲームの冒頭で選ぶ難易度に応じて、必要になる撮影数が異なります。いちばん簡単な“ビギナー”だとすべてのマークの撮影が必要で、“スタンダード”や“プラウド”はある程度撮り逃しても大丈夫です。“プラウド”はかなり少なくて済みますが、“スタンダード”でもそこまできびしくないと思いますよ。

▲幸運のマークは各地に点在しており、その写真を撮影していくとご褒美がもらえる。この写真でもわかる通り、背景に紛れて巧妙に隠されている場合も!

――ほかにも条件はありますか?野村 いえ、条件は幸運のマークの撮影数のみです。今回は、複数の条件を満たさずとも観られるようになっています。

――これまでの作品と比べると、だいぶ簡単ですね。野村 そうですね。昨今のプレイヤーのニーズもありますし、できるだけ多くの方に自力で観ていただきたいという思いもあり、そうしています。

――難易度で言うと、“スタンダード”ではバトルで詰まることがさほどなく、比較的サクサク進めました。味方のAIが優秀で、よく回復してくれるというのも一因です。野村 今回のバトルはキーブレードの変形などさまざまなことができる楽しさを軸に、ボス戦は歯応えはありつつも、できるだけ詰まらずプレイできるようにレベルデザインされています。とはいえ、“スタンダード”の上に“プラウド”があるほか、経験値を得ないようにするアビリティも最初から使えるので、やり込みたい方も満足していただけるかと。ちなみに、味方のAIの設定を変更して、回復を禁じることもできます。

――プレイヤーの選択次第で遊びかたを変えられるわけですね。野村 バトル自体も、キーブレードでの攻撃や魔法のほか、つぎつぎと出現するシチュエーションコマンドで、随時攻撃手段を選んでいけるようになっています。バトル含め遊びの面では、選択肢の多さと、それを選ぶ楽しさをコンセプトにしています。

――多数の新ワールドが登場するのも『KHIII』の大きな魅力です。とくに注目してほしいワールドはどこでしょうか。野村 どのワールドも見どころがありますが、なかでもじっくり楽しんでいただきたいのは、陸海空のバトルが楽しめるザ・カリビアン(『パイレーツ・オブ・カリビアン』)です。船を操って、カリブ海を自由に探索できるのも、冒険のワクワク感が味わえていいかと。個人的に思い入れがあるのは、トイボックス(『トイ・ストーリー』)ですね。『KHIII』は『トイ・ストーリー』のワールドありきで考えていましたから。プロジェクトの初期から着手し、ピクサー側と何度も協議を重ねて、プロットからシナリオまで自分で書いたのも印象深いです。

――野村さんがシナリオまで書いているんですか?野村 シナリオに関しては、セリフ含め、トイボックスだけでなくすべて自分が最終的には書いているんです。これまで公にしていませんでしたが、『KHII』以降、とくに『KH 358/2 Days』からは全般的に。

――そうだったのですね。野村さんがプロットを組んで、セリフなど細部はほかの方々が担当されているのかと。野村 初期はそんな感じでしたが、『KHII』以降は現在に至るまで、大まかに言うとシナリオの大筋を自分が作り、それをもとに岡(勝氏)が、レベルデザイン班の要望も考慮したうえでセリフを含めた叩き台のシナリオを組んでいます。その後改めて、自分が最終稿を執筆するという流れです。以前は、ほかのスタッフもシナリオに参加していたのですが、『KH』シリーズは設定が込み入っていますし、関わる人数が多くなるとそのすべてを共有することが難しくて。結局自分がもっとも把握しているということで、現在のスタイルになっています。

――しかし、これまでの作品では、スタッフロールで“Scenario(シナリオ)”担当としてはクレジットされていませんよね。野村 “Story(ストーリー)”でクレジットされているので、あえて言わなくてもいいかなと。また、自分はこの業界が長いこともあり、“野村哲也が書いている”という先入観は、プレイの邪魔になるのではないかという懸念もあって明確にしていませんでした。とはいえ、もうシリーズも17年になりますし、「おじさんが書いている」のは事実で(苦笑)、今回も自分が書いています。テキストに関することは、シナリオのみならずアイテム名まで自分が決めています。

――SNS風のロード画面も?野村 ああ、書きましたね。けっこういろいろなパターンがあって、ワールドのクリアー後に見られるものなどもあります。ちょっとくだけた感じのハッシュタグが設定されていたりもするので、ロードを待つあいだにじっくり見てみてください。

▲ワールドに入るときのロード中、SNS風の画像とテキストが表示される。こうしたところまで楽しめるようになっているのだ。

――ちなみにアイテム名と言えば、トイボックスのキーブレード“ファボデピュティ”が不思議な名前で気になっています。以前は違う名称でしたよね?野村 以前、公開していた“インフィニティバッジ”は開発名称です。“ファボデピュティ”は、原作でウッディが(内蔵されている音源として)言う「You are my favorite deputy(あんたは俺の相棒だぜ)」の、“favorite deputy”部分を短縮したものですね(笑)。文字数の制限があり、全部は入らなくて。

――予想外の由来!(笑)。しかし、そうしたテキスト含め野村さんが見ているうえに、あの複雑なシナリオも野村さんと岡さんのふたりで管理されているんですか?野村 管理という意味では岡がその立ち位置にあって、今回はほかに野島(一成)さんにスーパーバイザーとしてラストバトルからエンディングへの流れの叩き台をお願いしたり、悩んでいる箇所について相談しましたね。あとは、開発終盤に複雑化したシナリオの抜けがないかなど、校正作業をするコーディネーターもいて計4人です。それでもタイトル規模的には、かなり少人数ですが。

――なるほど。それから、発売後にDLCなどで追加されるシナリオやバトルがあるのかも気になります。野村 現在、スタッフがアップ休暇中で詳細を話せておらず、決定はしていないのですが、有料DLCについては何回かに分ける形ではなく、一度に内容の濃いものをご提供できればと考えています。また、それらとは別に、無料で配布するものも検討しています。長期間DLCの作業を行うより、次回作を優先したいですね。

――“次回作”……確かに! さて、いよいよ発売を迎えるということで、いまの心境をお聞かせいただければと。野村 ほっとできるかなと思っていたんですが、まったく休みも取れず気が抜けません(苦笑)。海外でROMが不正入手されるトラブルもありましたし。

――その件について、現状で言えることはあるのでしょうか。野村 事件の顛末については、すでに我々の手を離れていることもあり、あまり詳細はお話しできないのですが……。間違った情報として、“大量に流出していて、複数のリーク元がある”かのように思われていますが、実際に流出したのは4本に留まっていて、リーク元はひとつであるにも関わらず、多数あるかのように拡散されたということは確認できています。とはいえ、そのひとつのために、『KHIII』を楽しみにしてくださっている方々に悲しい思いをさせることになったのは、非常に残念です。この件があったことから、ワールドワイドでの同時期発売はリスクが高く、今後自分が手掛けるタイトルについては、少なくともパッケージ版の全世界同時期発売を含め、再考をせざるを得ない状態になりました。

――この件はファンには残念な出来事でしたが、風評で良し悪しを判断するのはナンセンスだと皆さんわかっていらっしゃると思います。ついに発売日を迎えるということで、あとは存分に楽しむだけです。野村 皆さんには、ぜひご自身でプレイして判断していただきたいです。『KHIII』は“おもしろいこと”を第一に制作しています。おもしろさのために、すべての要素やスタッフの努力があります。たくさんの“おもしろいこと”が詰まった『KHIII』を、ぜひ隅々まで遊び尽くしていただければと思います。