2019年1月16日より、東京・北千住のシアター1010にて舞台『逆転裁判 - 逆転のGOLD MEDAL -』が開幕。巧舟氏が完全監修をし、加藤 将(成歩堂龍一役)ら人気キャストが作り上げるステージとは……? 本公演前に行われたゲネプロの模様と、キャスト陣のインタビューをお届けする。
舞台『逆転裁判 - 逆転のGOLD MEDAL -』は、ご存知、法廷バトルゲーム『逆転裁判』を舞台化した作品で、今回は“国際司法オリンピック”で巻き起こる事件に、弁護士・成歩堂龍一が挑む。こちらのオリジナルストーリーは、『逆転裁判』の生みの親・巧舟ディレクターが完全監修、さらに舞台のオリジナルキャラクターは、『逆転』シリーズの絵師・岩元辰郎氏によるデザインとなっている。
ステージではラップあり、ダンスあり、そして推理ありの前代未聞の裁判がくり広げられるが、ゲネプロレポートでは重要な部分のネタバレは避けているのでご安心を。
【出演キャスト】
- 成歩堂龍一 役:加藤 将
- 綾里真宵 役:中村麗乃(乃木坂46)
- 御剣怜侍 役: 小波津 亜廉
- ゴドー 役: 友常 勇気
- 糸鋸圭介 役: 鈴木 雅也(SET/Grab“A”)
- 矢張政志 役: 反橋 宗一郎
- 狩魔 冥 役: 花奈 澪
- 大場カオル 役: 久下恵美(SET)
- 深鴫ヨーコ 役: 大矢真那
- ヨークシャー・ベルジャン 役: 小南光司
- ジャック・クローマック 役: 小西成弥
- アンティーノ・ニバンテス 役: 田上ひろし(SET)
- マルデア・バレンボー 役: 鵜飼主水
- コジロー 役: 竹村仁志
- タリーノ 役: 原 勇弥
- ネミーノ 役: 園田 玲欧奈
- ジュナン・マルットソン 役: 辻 大樹(SET)
【スタッフ】
- 原作:CAPCOM
- 監修:江城元秀(CAPCOM)、巧舟(CAPCOM)
- 脚本:斎藤栄作
- 演出:ほさかよう
- キャラクターデザイン:岩元辰郎
- 総合プロデューサー:大関真(SET)
インタビューで判明した、キャラクターとキャストの意外な共通点
開幕を控えるキャストに、舞台への意気込みや見どころを伺った。主演の加藤 将さん(成歩堂龍一役)は初っ端、「なるほ……」と役名を言うところで噛んでしまったが、明るく「リトライさせてください」と続ける。
そんな加藤さんの温かいお人柄のおかげで一気にその場が和むと同時に、原作のなるほどくん(成歩堂龍一の愛称)の初弁護のシーンが思い出された。初座長を務める加藤さんは、支えてくれる先輩方に恩返しすべく、本番でみんなを引っ張っていきたいと語った。
ちなみに、巧舟ディレクターからは「そのままでもなるほどくんだから」とお墨付きをもらった加藤さんだが、もっと追求したいと、稽古終わりに巧さんからたくさんアドバイスをいただいたそう。
印象的なアドバイスとしては、なるほどくんが困る場面で「もっと笑顔でいいよ」という助言や、「なるほどくんはスピード感なんだよ」という言葉が挙がった。そのスピード感を強調するため、なるべくギザギザの髪型のサイドを客席に見せるよう、心掛けるようになったとか。
乃木坂46の中村麗乃さん(綾里真宵役)は、緊張していると語りつつも、マヨイちゃんらしい愛らしさにあふれていた。稽古での愉快なエピソードとして、加藤さんが足を組みながら台本を読んでいたところ、靴が絡まって動けなくなったのを助けたという、まさに、なるほど&マヨイコンビのような出来事も明かしてくれた。
小波津 亜廉さん(御剣怜侍役)いわく、ふだんはカタい御剣のコミカルな一面も見どころだそう。
また、御剣の象徴である胸のヒラヒラ(シャボ)は、3段フリルで3つの波を再現するため、スタッフさんが努力を重ねられたもので、小波津さんもお気に入りと語る。小波津さんはゲーム『逆転』シリーズのプレイ経験もあり、裁判シーンや、効果音やギミックなどでゲームの世界が再現されているのもポイントとのこと。
オリジナルキャラクターである深鴫ヨーコ演じる大矢真那さんは、あまり緊張しない方ということだが、ヨーコは緊張感ある役どころのため「最後まで緊張感を保ちたい」と堂々たるコメント。ヨーコのビジュアルで印象的な、髪に挿したウサギの柄のナイフは物語でもキーアイテムとなるのだとか。
友常 勇気さん(ゴドー役)によると、ゴドーのマスクは目の前に装飾の線があるため、視界はかなり不良とのこと。しかし「キャストの皆さんとの関係は良好ですので、皆さんを信じて舞台に立とうと思います」と語った。
小南光司さん演じるヨークシャー・ベルジャンは、大会MCという役どころ。スピーカーやマイクをあしらった衣装について、「見た目もウルサイですが、この格好が大好きです」と愛着を見せる。「稽古場では静かですが、舞台では賑やかにいきたい」と語るも、キャストの面々から「全然静かじゃないよ?」とツッコミが入っていた。
『逆転』の伝統を受け継ぎつつ、VRなど新たな表現に挑む舞台
幕開けは、男性が追われている場面から。客席通路を使った演出で、目の前をキャストが通るたびにビュンビュンと風を感じる。ぶつかりそうな細い通路なのに、ためらいのない全力疾走……。キャスト陣の本気が伝わってきた。
追手を撒いた男は、VRのゴーグルを被り、ウサギの着ぐるみの人物と言葉を交わす。ウサギのいる仮想空間は、紗幕への投映で表現されていた。彼らの会話では不穏な言葉が飛び交い、どうやらウサギが何かを企んでいる様子。『逆転』シリーズでは、プロローグで犯人の犯行が描かれる(いわゆる『刑事コロンボ』形式)エピソードもあるが、それに倣うとこのウサギが犯人なのだろうか……?
場面は先ほどの男が再び追われ、逃げ込んだとあるオフィスに移る。この捕り物騒ぎを鎮めたのは、このオフィスの主で“国際司法オリンピック”の開催実行委員長であるゴドー検事だった。
彼のテーマソング『珈琲は闇色の薫』のアレンジ曲が流れるなか、コーヒーカップを片手に余裕たっぷりに現れたゴドー。何か考えがあるようで、世界司法連盟の若き理事長であるジャック・クローマックの顎を持ち上げ、密談に誘うのだった。
このときの流れるようなゴドーの仕草に、思わず「ギャア」と声を上げそうになった。女子も男子も、ゴドーにドキドキすること必至である。
ここでキャラクター紹介を兼ねたオープニング。おなじみの登場人物に負けず劣らず、オリジナルキャラクターたちも濃い顔ぶれ。名前も『逆転裁判』らしいダジャレが効いている。
ヨークシャー・ベルジャンは、よく喋るじゃん、クローマックは黒幕、アンティーノ・ニバンテスは安定の二番手、マルデア・バレンボーは、まるで暴れん坊……。どことなく日本語っぽいキャラクター名となっているが、あえて気にするまい。
本編の始まりはまたもや客席通路。アドリブを交えつつ、マヨイちゃんが客席から舞台へと上がる。そこで、なるほどくんと“国際司法オリンピック”の話題になるが、いつの間にか“大江戸親分オヤカタサマン”の話に。
『逆転』シリーズには、大江戸戦士トノサマンを始め、特撮ヒーローは欠かせないが、今回の舞台でもオリジナルヒーローの出現に妙にうれしくなってしまう。オヤカタサマンのマネであろう、歌舞伎の見得のような動きをするマヨイちゃん。なるほどくんもまんざらではなくノッてしまうのが微笑ましい。
御剣や狩魔冥などおなじみの面々も合流し、国際司法オリンピックについて意気込みを見せるなか、突如として深鴫ヨーコが歌とともに乱入する。彼女は世界司法連盟に抗議する団体“Rabbits”のリーダーだという。
続いて『逆転』シリーズでは、美女にはつきもの(!?)である、矢張が取り巻きとして登場する。ダンスのようなアクションがヤハリらしさ全開で、見事。
Rabbitsが配っていたビラをゲット! ヨーコの歌の歌詞のようです
そんなところへメイも参戦し、華麗なムチさばきを披露する。言いたいことだけ言って去っていくメイは高笑い。そこへ風の吹く音がしたかと思うと、御剣は悪寒を感じると言い出し、彼もその場を後にする。
御剣の悪寒といえば、そう、“ミッちゃんの大ファン”である名物キャラクター、オバちゃんこと大場カオルだ。ホイッスルを鳴らして現れるも、なぜか「フィョロ~……」っというカスれた音。
しかし、そこは『逆転裁判』の舞台で毎回オバちゃん役を務める久下恵美さん。そんなハプニングも笑いに変えながらの登場に、会場は一気に沸き立つようだった。その一方で、御剣の残り香を追って場をかき乱す場面は、背筋が凍りそうなほど恐ろしかった。
こんな裁判見たことない! ラップとダンスとカチカチ山
国際司法オリンピックに参加することになったなるほどくんだったが、その“競技”は意外なものばかり。まずは御剣とラップで勝負することに。ビートの効いた曲に乗せて「YO! YO! 弁護側、準備整いましたYO!」と発するなるほどくん。どことなく、ぎこちないのが彼らしい。対する御剣は、動じずクールに、つらつらと言葉を返していく。と、そこへパワフルなボーカルが差し込まれる。声の主はなんとオバちゃん! めっちゃ歌上手い!! さらに、ヤハリがダンスでも盛り上げる。なんだか影の薄くなってしまったなるほどくんだったが……?
つぎなる種目はダンス裁判。オリジナルキャラクターのマルデア・バレンボーと、なるほどくんの対決。マルデアは空手やカポエラを思わせる、キックで魅せるダンスを披露。
なるほどくんは、「ダンスは神への祈り」と言い、シャーマンのような独特の踊りをする。いきなり祈りとか言い出しちゃったなるほどくん……。彼から感じる、若干の痛々しさになぜか既視感があるのは、法廷でハッタリをかました姿や、的外れの尋問をしてゴマかすときの印象が重なったからだろうか。
3戦目は、VRでウサギとタヌキになりきって行う“カチカチ山裁判”。ステージ上部のウサギとなるほどくん、タヌキとメイの動きがそれぞれリンクしているという趣向で、分が悪いタヌキを無理やり正当化するメイがかわいらしかった。
事件は思わぬ瞬間に! なるほどくん大ピンチ
司法オリンピックの表彰式で、殺人事件が起こってしまう。なるほどくんは、被疑者となった深鴫ヨーコの弁護をすることになったが、彼女は自ら罪を認めているうえ、殺害の状況的にも圧倒的に不利。しかも、重要な証拠品の在り処がなるほどくんのお腹のなかにあって……?
ダブルのピンチがなるほどくんに襲い掛かるが、表彰式の映像から何とか突破口を見出す。ゲームにも度々登場した映像の巻き戻し・一時停止のシステムを、キャストの演技で再現するという演出がなかなかおもしろく、彼らが何度も同じ動きをするなかで、ちょっとしたアドリブも見られた。
なるほどくんは、さらなる危機に見舞われることになるが、その逆境をチャンスに変えていく。しかし、犯人を追い詰めながらも、決定的な証拠に乏しく、足踏みをする場面もあった。『逆転』ファンならば、このもどかしさに覚えがあるのでは。果たして、なるほどくんは真実にたどり着けるのか……? この結末はぜひ劇場で!
ゴドー好きライターの感想 強烈なキャラクターたちの競演
『逆転裁判 - 逆転のGOLD MEDAL -』は大胆な試みが盛り込まれた舞台でありながら、細かな部分にも見どころがいっぱいでした。「異議あり!」の演出はいろいろなパターンがありましたし、なるほどくんのスピード感や、ポーズの美しさも際立っていました(照明に当てられてできる影が、まさにゲームキャラクターなのですよ!)。
また、演劇の世界では当たり前なのかもしれませんが、セリフを発している人物だけでなく、それをじっと聴いている人々も全身でその役を演じているのが印象的でした。サブキャラクターを固めているベテランのキャストさんの演技もゾクッとするものがあり、惹きつけられましたね。
キャストの皆さんは「このキャラクターならこういう動きをするだろう」というところをしっかり理解されていて、人物がとても自然かつ身近に感じられました。個人的にはゴドーの人たらしな振る舞いが、強烈に焼き付いています。これから舞台をご覧になる方は最後まで彼から目を離さずに……!
公演は2019年1月29日まで連日開催中です!
ゴドーと狩魔冥が急接近する場面も……!? 舞台でいったい何が起きているのか、君の目で確かめてくれ!