2008年8月7日にXbox 360用ソフトとして発売され、2009年9月17日にはさまざまな新要素を追加したプレイステーション3版が発売された『テイルズ オブ ヴェスペリア』。シリーズとして、当時の新世代機に初めて対応した作品であった同作は、国内外で大きな反響を得た。

 そして、同作の誕生から約10年。リマスター版『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』が、Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PC(Steam)で、2019年1月11日に登場する。

 本記事では、リマスター版をひと足先に遊んだライターが、『テイルズ オブ ヴェスペリア』の魅力を改めておさらいしていく。なお、今回はPS4版を用いてプレイした。

『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』レビュー。10年前、シリーズ初の新世代機タイトルとして生まれた名作は、10年経ってもやっぱりおもしろかった_01

 『TOVR』の魅力としては、
・ブレない“仕事人”の主人公ユーリを始めとした、皆どこかワケありな登場人物たち
・コンボを始め、“仕掛け”が満載の、爽快感溢れるアクションが楽しめるバトル
・ボリュームたっぷり、かつコンプリートを目指しやすいやり込み要素
などが挙げられる。

テイルズ オブ』シリーズのキャラクター人気投票企画で初登場から3回連続1位を獲得し、最速で殿堂入りしてしまったユーリを始め、本作のキャラクター人気は、シリーズ作品の中でもとくに高い。

 かつて、RPGと言えば、未熟な主人公が失敗をくり返しながらも、仲間と力を合わせて少しずつ一人前になっていく“成長物語”が王道だった。しかし本作の主人公ユーリは、最初から一人前の“大人”であり、むしろエステルやカロルなどの年少組を導くポジション。

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主人公ながら、パーティーの精神的支柱でもあるユーリ。随所で見せる、仲間たちへのさりげないフォローがカッコいい。

 成長物語の主人公たちは、未熟であるがゆえにプレイヤーが望む行動にいたらず、もどかしさを感じさせることも多々あった。だがユーリは、自分の“正義”に忠実に行動する。それが法に触れる行為であっても躊躇しない。最初から最後まで、ブレずに信念を貫いていくユーリの物語は、観ていて痛快極まりないはずだ。

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 一方、仲間になるキャラクターたちは、そのほとんどが“隠しごと”や“知られていない真実”を抱えているなど、物語を通じてかなり細かい設定がなされているのが特徴。

 そして、それらの設定が作中でしっかり表現されており、各キャラクターの性格や事情についてより深く理解することができるようになっているのだ。深く理解できれば愛着も湧きやすくなる。ゲームをクリアーするころには、敵方のキャラクターも含めて皆好きになってしまうかもしれない(笑)。

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ほぼすべてのキャラクターに、何らかの“秘密”が設定されており、そのことが物語に深みを与えている。

 アクション要素を盛り込んだバトルは『テイルズ オブ』シリーズのアイデンティティーとも言えるもの。『TOVR』ではキャラクターごとにかなり強い個性を持ったアクションが設定されていて、かなり“極め甲斐”があるシステムに仕上げられている。

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 と言っても、基本的にはユーリだけ使っていれば問題ない。とにかく使いやすく、なおかつ強い。適当に技を使っているだけで何となくコンボがつながるなど、見栄えがよく、操作していて楽しいのはうれしいところ。

 そのうえで、バトルに慣れてきたら、非常に多彩な選択肢があるというのが本作の特徴なのだ。ユーリだけでもさまざまな戦法が採れるのだが、“フェイタルストライク”と呼ばれる強力な技を狙いやすいラピード、術のエキスパートであるリタ、敵を浮かせて空中戦を挑めるジュディス、接近戦&遠距離戦どちらもこなせるレイヴン、トリッキーなパティなど、格闘ゲームばりのバリエーションが用意されている(なお、オリジナル版の制作プロデューサーである樋口義人氏は、かつて『ソウルキャリバー』シリーズなどの制作に携わっていた。その経験が活かされているのでは)。

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“オーバーリミッツ”を活かしたリタの“タイダル祭り”(タイダルウェイブの連発)や、ジュディスの空中コンボなど、オリジナル版でユーザーたちが編み出した強力かつ気持ちいい戦法も健在。

 また特定のボス戦では、“シークレットミッション”という、特定の行動を取ることで達成される隠し要素も盛り込まれており、それを狙う楽しみも。ほか、術・技の使用回数によって、特殊効果が発動するなど、いろいろなアクションを試してみることで達成できる要素が多いのも、本作の特徴のひとつだ。

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 また本作には、『テイルズ オブ』シリーズではすっかりおなじみとなった“やり込み要素”も、もちろん多数収録されている。

 その中のひとつ“スキット”は、パーティーメンバーたちの道中の雑談がボイス付きで展開するというもの。冒険中にある条件を満たすと発生し、本編中では見せてくれなかったキャラクターたちの意外な一面が見られることも。

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 さらに、“モンスター図鑑”や“コレクター図鑑”などのコンプリートや称号集め、多彩なミニゲームなど、かなりの要素が用意されている。プレイステーション4版などでは“トロフィーコンプリート”、略して“トロコン”を狙いたいという人もいると思われるが、そんな人にはとくに本作はオススメの作品でもある。

 じつは、要素は豊富だが、難度の高いものはそこまで多くない。周回プレイの特典を利用することで、アッサリ達成できるものもある。そのため、ゲームを楽しみながらトロコンもしたい、という欲張りな人にはうってつけなのだ。

 なお、ゲーム本編そのものはかなりボリュームがあり、初見プレイなら本編だけでだいたい50~60時間くらいかかると思われる。と言っても、ドラマチックな物語に一喜一憂したり、上達していくバトルにハマったりしているうちにゲームが進むので、実際はそれほど長く感じないかもしれない。

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 こうして振り返ってみると、随所に“おもしろい”が敷き詰められた、何とも隙のない作品である。

 さらにリマスター版では、ビジュアル面が進化している。もともとHD画質に対応した作品であるため、ひと目にはそれほど変わったようには見えないかもしれないが、とくにフィールド移動時の地平線の処理など、細かいところの表現が大きく向上している。また、描画速度が上がったことで、とくにバトルで動きの“残像感”が減り、より滑らかに動いている印象がある。アクションがゲームの多くを占める本作において、この進化は非常にうれしい。

 加えて、『TOVR』には、オリジナル版当時の有料ダウンロードコンテンツ衣装の多くが収録されている。衣装(が変わる称号)をチェンジすると、移動時だけでなくイベント時の容姿にもそれが反映されるため、いつもと違った気分でプレイができるのがおもしろいところ。

 オリジナル版から10年、改めてリマスター版が発売されるようなゲームなのだからおもしろいはずなのだが、遊んでみたらやっぱりおもしろい。もうプレイは3度目なのだがおもしろい。ということは買ってハズレがない、つまり買えば勝利! まだ遊んだことがない人はもちろん、以前遊んだことがある人にもまたオススメしたい、そんな作品である。