世界的インディーゲーム賞・IGFアワードの今年度ファイナリスト作品を今年も全紹介。

 インディーゲーム賞IGFアワード(インディペンデント・ゲームス・フェスティバル)の今年度ファイナリスト作品が発表されたので、今年も全作品をご紹介しよう。

 IGFアワードは、ゲーム開発者の国際カンファレンスであるGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)会場で出展・表彰されるインディーゲーム賞。超大作も扱われるGDCアワード本賞と同じ会場でインディーゲームが表彰される、会期中の花形イベントのひとつだ。

 今年のファイナリスト作で注目したいのは、Lucas Pope氏によるアドベンチャーゲーム『Return of the Obra Dinn』。新奇性・実験性を表彰するNuovo Awardと学生部門以外の5部門すべてにファイナリストとして残っている。

 同氏のひとつ前の作品である入国審査ゲーム『Papers, Please』は2014年のIGFアワードで大賞、美術賞、ゲームデザイン賞の3冠に輝いており、ふたたび席巻することになるのか気になるところだ。各受賞作の発表はサンフランシスコで現地3月20日に行われる。

SEUMAS MCNALLY GRAND PRIZE (大賞)

Minit』 (Kitty Calis, Jan Willem Nijman, Jukio Kallio & Dominik Johann)
4人のインディーゲーム開発者のコラボによって生まれた本作は、「1回のプレイで1分間だけ行動できる」という変則ルールによるアクションアドベンチャーゲーム。1分間のあいだに探索して手近な所から謎を解き、アイテムを手に入れたりすると行動範囲が広がっていくという寸法だ(再スタート地点を移動することもできる)。

1回に行ける範囲がだいぶ制限されているにも関わらず「こういう繋がり方をするのか!」と世界が開けていくゲームデザイン面や、白黒ドット絵で描かれるちょっとかわいくてちょっと不思議なゆるい世界、さまざまなインディーゲームに参加しているJukio Kallioによるサウンドなど、コンパクトな中にギュッと詰め込まれた秀作だ。日本語に対応し、Nintendo Switch/PS4/Xbox One/PC/Mac/Linuxで配信中。

Opus Magnum』 (Zachtronics)
IGFの常連であるZachtronicsは、『Spacechem』、『Infinifactory』、『SHENZHEN I/O』、『TIS-100』など、プログラミング言語そのものや、プログラミング的な効率化手法をテーマにしたパズルゲームをリリースしてきた(『マインクラフト』に影響を与えたと目されている『Infiniminer』の作者でもある)。
『Opus Magnum』はプレイヤーはお題通りにパーツを組み立てる錬金術の機械を作成するという内容で、『Spacechem』系統の処理効率化をテーマにしたタイプのパズルとなっている。日本語対応のPC/Mac/Linux版が配信中。

Noita』 (Nolla Games)
『Noita』はドット絵2Dのローグライクなダンジョン探索アクションゲーム。たくさんある同系統のゲームと異なるのは、ドットひとつひとつにこの魔法世界なりの物理シミュレーションが行われるということ。
溶岩に水が流れ込めば固まり、炎で氷を溶かせば水になり、酸は腐食を起こしてガスを発生させ……といった具合の現象が、各キャラクターのアクションと連動して起こる。まずはPCをプラットフォームに開発が続けられており、恐らく今年アーリーアクセスが開始される予定だ。

『Return of the Obra Dinn』 (Lucas Pope)
乗員乗客が消えた無人状態で港へと帰ってきたオブラ・ディン号の数奇な運命を、残留思念として遺された“死の瞬間”を再訪できる魔術的デバイスによって辿っていく一種の推理アドベンチャーゲーム。時間の凍りついた誰かの死の瞬間を歩き、その死因やその場に居合わせた人々をメモしつつ、この船に何が起こっていたのかを推測していくのだ。

往年のアドベンチャーゲームを想起させるディザリングの効いた1ビット(2色)の3Dグラフィックで描かれる異様な光景や、『Papers, Please』に引き続いて妙に怪しく引き込まれるサウンド、人間関係の推測をカギとする謎解きなど、じっくり遊んでみて欲しい非常に優れた作り。日本語ローカライズされPC/Mac版が配信中。

Hypnospace Outlaw』 (Jay Tholen, Mike Lasch, Xalavier Nelson Jr., Corey Cochran)
睡眠中にネットサーフ(※WebからWebへ閲覧することを意味する死語)を可能にする技術が発明され、“ヒプノスペース”なるサービスが提供されるようになった……という架空の1999年のネットをテーマにした作品。プレイヤーはその管理人として違反コンテンツを摘発したり、稼いだコインで(変な)ソフトを買ったりできるという。2019年の早い時期にリリースが予定されており、PC/Mac/Linuxで英語版が出る模様。

海外インディーのトレンド的には、今月リリースが予定されているRPG『YIIK: A Postmodern RPG』と同じ1999年設定や、近年さまざまなゲームで見られるハッキングテーマに引き続く、我々の生活を取り巻くWebやコンピューター、そしてロサンゼルスのGlitch City一派の流れを感じさせるデジタルなトラッシュアートといったトピックを挙げておきたい。

Do Not Feed the Monkeys』 (Fictiorama Studios)
秘密のWebカム覗き見クラブに入会し、生活をどうにかやりくりしながら観察を続けていくというゲーム。情報を売ったり対象に干渉したり、あるいは監視とは別にバイトで金を稼いでセール品の食料を買うといったことも可能。『Hypnospace Outlaw』と同様に、ハッキングテーマのゲームとの繋がりを感じさせる内容だ。PC/Mac/Linux版が配信中(日本語は非対応)。

EXCELLENCE IN VISUAL ART (美術賞)

Forgotton Anne』/邦題『フォーゴットン・アン』 (ThroughLine Games)
人々から忘れ去られたモノが辿り着く場所“フォゴットンランド”を守る少女アンの冒険を描く、美しいアニメーションによって彩られたアドベンチャーゲーム。日本ではコーラス・ワールドワイドからローカライズ版が2019年春にPS4/Nintendo Switch/Xbox Oneで発売予定で、PS4では体験版が配信されている(海外ではPC/Mac版も出ており、日本語ローカライズが追加されるのではないかと思われる)。

Alto's Odyssey』/邦題『アルトのオデッセイ』 (Team Alto)
壮大な砂漠の中をサンドボードで滑っていくアクションゲーム。『Alto's Adventure』の続編にあたる。iOSとAndroidデバイス向けに日本語対応で配信中。

Just Shapes & Beats』 (Berzerk Studio)
「図形とビートだけ」というタイトル通り、EDMビートが流れる中で、音楽と連動して動く図形だらけの弾幕ステージをくぐり抜けていくアクションゲーム。マルチプレイでノリながら遊ぶのがなかなか楽しい。日本語対応しており、Nintendo SwitchとPCで配信中。

Mirror Drop』 (Ian Lilley)
サイケデリックな合わせ鏡的3D空間の中を謎解きしながら探索していく、一種のパズルアドベンチャーゲーム。PC/Mac/Linuxで英語版が配信中。

その他の美術賞ファイナリスト

『Hypnospace Outlaw』 (Jay Tholen, Mike Lasch, Xalavier Nelson Jr., Corey Cochran)
『Return of the Obra Dinn』 (Lucas Pope)

EXCELLENCE IN AUDIO (音響賞)

ETHEREAL』 (Nonsense Arts - Nicolás Recabarren and Tomás Batista)
抽象的な図形で構成されたステージの中を謎解きしながら進んでいくパズルゲーム。Humble Storeの月額制サービス“Humble Monthly”のゲームとして配信され、今後SteamでのPC/Mac版の配信も予定されている(日本語は非対応)。

Moss』 (Polyarc)
ネズミの“Quill”の冒険を描いたVR専用のアクションアドベンチャーゲーム。三人称視点のVR作品になっており、3Dアクション的に遊べる一方で、ミニチュア的な世界に入り込めるというのが特徴。PS VR/Oculus Rift/Vive/Windows MRヘッドセットに対応し、日本語版が配信中。

Paratopic』 (Arbitrary Metric)
90年代スタイルのローポリゴンなグラフィックで構成されたデビッド・リンチ的な歪んだ世界をさまよっていく、一人称視点の短編ホラーゲーム。PC/Mac/Linuxの英語版が配信中。

その他の音響賞ファイナリスト

『Hypnospace Outlaw』 (Jay Tholen, Mike Lasch, Xalavier Nelson Jr., Corey Cochran)
『Return of the Obra Dinn』 (Lucas Pope)
『Alto's Odyssey』 (Team Alto)

EXCELLENCE IN DESIGN (ゲームデザイン賞)

What the Golf?』 (Triband)
ゴルフゲームの伝統的な仕組みをパロディ的に応用してあんまりゴルフじゃないことをする、ゴルフの概念をぶっ壊すゲーム。『Superhot』的なシューティングステージだったり、サッカーだったりレースだったりパズルゲーになっていたり、一発ネタ的ステージが盛りだくさん。2019年に日本語対応でPC/Mac/Linux/iOS/Androidをプラットフォームにリリース予定。

Dicey Dungeons』 (Terry Cavanagh, Chipzel, and Marlowe Dobbe)
サイコロの目に合わせたデッキを構成し、サイコロを振って進めていくローグライクなRPGゲーム。Itch.ioでPCのα版が配信されており、こちらは日本語対応していないものの、2019年配信予定のSteam版では日本語対応が行われるようだ。

その他のゲームデザイン賞ファイナリスト

『Do Not Feed the Monkeys』 (Fictiorama Studios)
『Noita』 (Nolla Games)
『Return of the Obra Dinn』 (Lucas Pope)
『Opus Magnum』 (Zachtronics)

EXCELLENCE IN NARRATIVE (物語賞)

※優秀なシナリオの作品だけでなく、ゲームならではのインタラクティブな物語体験の構築まで含まれる

Wandersong』 (Greg Lobanov & A Shell in the Pit)
吟遊詩人の冒険を描いた横スクロールのアクションアドベンチャーゲームで、さまざまな問題を歌うアクションで解決するというのが特徴。海外でPC/Mac/Switch版が配信中。

Genital Jousting』 (Free Lives)
男性のナニが暴れまわる最大8人プレイ可能なパーティーアクションゲームでもあるのだが、ここではシングルプレイのストーリーモードでのノミネート。同窓会で一発決めるために凛々しく雄々しくなろうという軟弱な“ジョン”の奮闘を描く。SteamでPC/Macの英語版が配信中。

Unavowed』 (Wadjet Eye Games)
悪魔に憑依され犯罪を犯してしまった主人公が、太古より続く秘密組織に加わって、邪悪な者たちの陰謀を食い止めるためにニューヨークを奔走する……という設定のアドベンチャーゲーム。英語のPC/Mac版が配信中。

Seers Isle』 (Nova-box)
中世ファンタジー世界を舞台にしたアドベンチャーゲーム。聖なる島にたどり着いたシャーマンの一団の冒険をグラフィックノベルスタイルで描く。英仏のPC/Mac/Linux版が配信中。

Watch Me Jump』 (Jeremy Gable)
女子バスケットボールのスター選手が突如巻き込まれたスキャンダルから自身の尊厳とキャリアを守るために奔走する、レトロスタイルのアドベンチャーゲーム。PC/Mac/iOS/Androidで英語版が配信中。

その他の物語賞ファイナリスト

『Return of the Obra Dinn』 (Lucas Pope)

NUOVO AWARD

※新奇性のあるゲームを表彰する賞

Circle0』 (yesyes)
カオスで壊れた世界を探索していくゲーム。Itch.ioでPC/Mac/Linux版が無料配信中。

eCheese Zone』 (Seemingly Pointless)
“親に隠れてエロサイトを見るゲーム”『You Must be 18 or Older to Enter』などをリリースしてきたチームによるパーティーゲーム。ナンセンスなミニゲームなどをプレイしながら親睦を深めるのが目的。司会による演出が肝心ということなのか、現在は一般配信等はされていない。

Black Room』 (Cassie McQuater)
さまざまなゲームアートで構成された世界をさまよっていくブラウザベースのゲーム。作者のサイトでプレイ可能。

Nth Dimension[al] Hiking』 (Zachariah Chandler)
ノイズと走査線の中に浮かび上がる怪しげな世界を探索していくゲーム。PC/Mac/Linuxのデモ版が配信中。

その他のNUOVO AWARDファイナリスト

『Noita』 (Nolla Games)
『Mirror Drop』 (Ian Lilley)
『Paratopic』 (Arbitrary Metric)
『Do Not Feed the Monkeys』 (Fictiorama Studios)

BEST STUDENT GAME (学生部門)

It's Paper Guy!』 (Paper Team)
紙の世界を舞台にしたパズルアドベンチャーゲーム。3Dと手描きアートを組み合わせたアートスタイルや、紙を切るアクションによる謎解きなどが特徴。Itch.ioでPC/Macのデモ版が配信中。

Grace Bruxner Presents: The Haunted Island, a Frog Detective Game』 (Grace Bruxner)
ゆるーい3Dグラフィックが印象的な、カエルが主人公の探偵アドベンチャーゲーム。PC/Macの英語版が配信中。

After HOURS』 (Bahiyya Khan, Claire Meekel, Tim Flusk, Abi Meekel)
子供の頃に受けた性的暴行のトラウマにより境界性パーソナリティ障害を持つ女性リリス・グレイの見る世界を追っていく実写アドベンチャーゲーム。昨年10月の配信を予定していたようだが、調べた限りではリリースを確認できなかった。

En Garde!』 (En Garde! Team)
17世紀スペインを舞台に女性剣士アダリアが活躍するアクションアドベンチャーゲーム。Itch.ioでPC英語版が配信中。

levedad』 (solimporta)
屋上で夜間撮影を行っていくゲーム。長時間露光によるブレやボケをテーマにしている。Itch.ioでPC/Mac版が配信中。

Sole』 (Gossamer Games)
闇に包まれた世界を光として探索していくアドベンチャーゲーム。2019年にPC/Mac版がリリース予定。